艦娘と巨人とネクサスと   作:瞳琥珀

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お待たせいたしました。受験の片手間にやっているので、
どうしても更新が遅れがちなのが頭が痛いところ…。
できるだけ早めに書こうと思うので、どうぞよろしくお願いします。


第弐話「救生者-saviour-」

吹雪は海の中だった。先程までのことが嘘だと思わせんばかりの、キラキラとした海面。吹雪は暫くうっとりと見とれていたが、すぐに大事なことに気づく。この光景は潜水艦以外は轟沈でもしない限り見ない、恐ろしい光景なのだ。吹雪は海上へ上ろうと必死に掻く。しかし中々思うように浮上しない。もがけばもがくほど海面から遠ざかっているようにも感じられ、息もどんどん苦しくなっていく。遂にはもがくことすら諦め、右手を海面に伸ばし、身体は海深くへと沈んでいくように思われた。

 

吹雪「っ…!え…?」

 

その時、彼女の右手を誰かが掴んだ。吹雪が手の主を見ると、はっきりとは視認できなかったが、少女のような姿であった。そのまま吹雪は海上へと引き上げられていく。上昇する度に視界が段々白くなっていくのだ。そして彼女の意識も段々と薄れていき、完全に落ちようとしたその時、少女の声が吹雪の脳内にこだました。

 

『あきらめないで』

 

 

 

 

吹雪「…んっ…?」

 

次に吹雪が目覚めると、先程までのヌメヌメした触手に吊り上げられ、宙を待っている感覚はなくなり、ちゃんと地面についていて彼女は少し安堵した。しかしやがて、その地面について、彼女は違和感を抱かざるを得なくなる。銀色の地面の感触は、波止場のコンクリートのそれとも、ベットのマットレスのそれとも違う。どちらかというと人間の皮膚に近い感じがしたのだ。

 

吹雪「え?私…今何処に…。」

 

吹雪が辺りを見回すと、自分が少し大きな窪みにいることが分かった。吹雪の視線先の丘の向こうには、四本の大きな"枝"と呼ぶには大きいものがあった。爪こそ無いものの、明らかに人間の指のように見えた。

 

吹雪「まさか…ね。」

 

立ち上がり、誇りを払った彼女が見上げると、目の前に今までの彼女の常識的にはあり得ない存在がいた。銀の巨人。その顔はまるで昔の甲冑を思わせるような形状で、目に当たるところには光が灯っている。更に全身銀色の中に、胸に赤く光るV字の発光体があった。

 

吹雪「あなたが…助けてくれたの…?」

 

掌の上の吹雪に視線を移した巨人は、吹雪の問いに答えるように、ゆっくりと頷いた。

 

化物「きゅううううん!」

 

巨人が化物の声に反応し、振り向くと同時に吹雪も化物の方向を見る。先程まで吹雪を追いかけていた化物は、今巨人に戦いの目標を移し、触手で海面を叩いて威嚇する。巨人は手のひらの吹雪をゆっくりと海へ浮かべた。

 

銀の巨人「シュッ!ハッ!」

 

巨人は左手を胸に当てると、左手が発光し、それを勢いよく降り下ろすと、水のごとく青きオーラに覆われ、晴れると巨人の身体は銀色から赤へと変わった。そのまま海面を駆け始めた巨人は、握り込めた右手を青く発光させ、化物にその拳を命中させる。小さな爆発がおき、化物が怯んでいる所に、巨人は更にキックを食らわせ、化物は大きく後退する。

 

化物「くうううん…。きゅううううん…。」

 

巨人の力強い攻撃に化物は逃げ腰となり、水中に潜っていこうとする。しかし、巨人はそれを見逃さず、後ろの触手を持ち、化物を引き上げる。

 

化物「きゅうううん…。」

 

銀の巨人「シュッ!ハァーッ…!」

 

化物が怯んだのを見て、巨人は自らの両腕を胸へ引き寄せる。すると両腕の間で蒼き放電が始まり、それは段々大きくなって行く。

 

銀の巨人「フッ!ヘァーッ!」

 

青いオーラを纏った両腕を高く上げ、そのまま胸の前でL字に腕を組む。すると巨人の右手首から右肘にかけてから青い光線が発射され、化物に直撃する。光線があたった箇所が大爆発を起こし、化物が悶え苦しみ始める。

 

化物「きゅおおおん!ぐおおおん!」

 

巨人が更に光線を発射し続けると、化物の身体全体が青く発光し始めた。巨人はそこで光線を射つのを止める。数秒も経たぬうちに化物の身体は青い光の粒子となり、砂山のごとく風に吹かれ、散っていった。

 

吹雪「あ、あなたは一体…?」

 

吹雪の問いに答えることもなく、巨人も赤く発光した後、光の粒子となって散っていった。吹雪は余りにも突然の事態にまだ理解が追いつかず、暫く呆然としていた。

 

 

 

やっと我に返った彼女は端末を見ると、

『警告;船籍不明艦接近中!』という表示があった。即座に吹雪はレーダーで示されている方角に探照灯を向けると、そこには雷巡チ級一隻と駆逐艦イ級二隻の姿があった。すぐに応戦の構えをとるが、燃料が零の為一切の身動きが取れなく、更に探照灯を多摩から受けとる際に唯一まともな武装の12.7cm連装砲を投棄していた。いよいよ只の的になったと感じた吹雪は雷巡チ級らが彼女に向かって撃った数発の魚雷の軌道を見ていることしか出来なくなった。

だが、その魚雷が吹雪に届くことはなかった。横から別の魚雷が迫り、その魚雷と衝突し、爆発した。

 

雷巡チ級「……!?」

 

驚いた雷巡チ級は魚雷が来た方向を向くと、その方向から探照灯の強烈な光が浴びせられ、目が眩む。

 

川内改二「ねえ、そこの君たち。そんないたいけな少女を苛めるなんてしないでさ、私と夜戦しよ!」

 

川内改二の挑発に乗るかのように、雷巡チ級は魚雷を数発彼女に向かって発射。しかし、彼女はそれらの殆どを避けきり、残りの魚雷も同じく魚雷をぶつけて相殺した。

 

川内改二「さあ、今度はこっちの番だよ!」

 

川内改二は魚雷六発を雷巡チ級らに発射。一発はそれたものの、他はすべて雷巡チ級らに正確に命中。雷巡チ級らは大爆発を起こし、その光は探照灯無しでも見えるほどだった。

 

川内改二「っと、もう終わっちゃったか。やっぱり夜戦は楽しいね♪」

 

そう満足そうに微笑む川内改二に、また一人新たな人影が近づいてくる。

 

瑞鶴改「ちょっと。勝利の余韻に浸るのはいいけど、目標の要保護艦娘のこと、忘れてない?」

 

川内改二「大丈夫大丈夫。ちゃんと覚えてるって。」

 

そう言って川内改二は吹雪に向かってくる。到着した川内改二はボロホロの吹雪の肩をポンと叩く。

 

川内改二「大丈夫?敵はこの川内が追い払ったから安心して。」

 

吹雪「え、えっと…。」

 

瑞鶴改「ところで、貴女は何処の所属なの?」

 

吹雪「え、えとえと…。私は特Ⅰ型駆逐艦吹雪…。」

 

瑞鶴改「そんなことは貴女の容姿で分かるわよ。何処の所属って聞いてるの。」

 

川内改二「ちょっと、瑞鶴。急かしすぎじゃない?」

 

瑞鶴改「敵がまたいつ、何処から攻めてくるか分からないでしょう?早くこの娘を送り届けたいのよ。で、所属は?」

 

吹雪「え、えっと…ぱ、は、はらむし…。」

 

瑞鶴改「あーもう焦れったい!いいから貴女の端末を寄越しなさい!」

 

そう言って瑞鶴改は吹雪の端末を奪い取り、端末を操作する。最初の画面には先程吹雪が見ていた燃料等の艦娘の状態を表すデータが出ていた。

 

瑞鶴改「あー、思ったより損傷が酷いわね、貴女。っと、そんなことより何々…。幌筵島南部泊地所属、艦娘ID38452317…。え?これって…。」

 

瑞鶴改は吹雪の端末を一旦本人に返却し、自らの端末を操作し始めた。吹雪は『南部』という言葉が少し気になったが、敢えて聞かずに彼女の応答を待った。

 

川内改二「え?ID3845…。確かそれって…。」

 

瑞鶴改「えーっと…。あった、これね。『今月中にID38452317の艦娘が本隊に配属されることが決まった。詳細は追って報告する。』…。なるほど。貴女なのね。」

 

吹雪「え?」

 

瑞鶴改「…貴女、新部隊への配属のこと、聞いてないの?」

 

吹雪「え、えっと…、明日付けで別部隊に転属すると提督から口頭で…。」

 

瑞鶴改「…何で彼処の提督はそんな大事なことを口頭で伝えるのかしらね?まあいいわ。その配属先に私達が所属してるのよ。言わば、貴女は新たな仲間って訳。」

 

吹雪「新たな仲間…って、貴女たちのですか!?えーっ!?」

 

瑞鶴改「何?不満なの?」

 

吹雪「い、いえいえ!でも先程私を救ってくれた人と同じ職場と思うと…。」

 

川内改二「まあ、積もる話は鎮守府に戻ってからにしよ?私達以外にも仲間はいるし。」

 

瑞鶴改「そうね…。川内、この娘の右肩をお願い。私は左肩を支えるから。」

 

川内改二「分かった。」

 

吹雪「すみません。こんなことしていただいて…。」

 

瑞鶴改「お礼は私達の泊地についてからにしてちょうだい。」

 

そうして一行は泊地に向けて北上を開始した。吹雪は二人に支えられながら、自分の新たな職場について期待と不安の気持ちを抱えていた。そして、自分を化物から救ってくれた銀の巨人に、感謝の念で一杯だった。

まさかその巨人とすぐに再開することになるとは思いもしないまま。

 

 

-第参話へ続く-




遂にネクサスを登場させられました!ここまで地味に長かった…。
前書きでも言いましたが、受験の片手間ですが、出来るだけ早く次もあげようと思いますので、気長にお待ちを。

次回、第参話「夜の狼達-SADN-」

瑞鶴改「あの巨人は一体何なの!?」
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