艦娘と巨人とネクサスと   作:瞳琥珀

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長らくお待たせしました。受験勉強の中、少し頑張ってみた次第。
今回は「ウルトラマンネクサス」episode03「巨人-ウルトラマン-」を元にしています。

それでは本編をどうぞ。

※今回からクロムチェスターα、βのクロムチェスターを省略し、
α、βと呼称しようと思います。後のγも同じく。


第肆話「巨人-ultraman-」

α,βの攻撃によって巨人が怯んだ隙に、ペドレオンは飛行形態に変態して地平線に逃亡した。巨人はすぐにその後を追い、間もなくしてSADNのレーダーから両者の反応が消失した。そして大淀改の口からの"作戦完了"という瑞城少将からの通達で、生存者二名を連れて、一行は幌筵島北部泊地に帰港したのであった。

 

 

 

 

そして翌日の〇七〇〇、朝食の席にて。吹雪改は偶々席が隣になった瑞鶴改に昨日の戦闘について話をしたいと言うと、彼女は

 

瑞鶴改「私、午前は改装があるから、一五〇〇に第三演習場に来なさい。」

 

と言い残し、朝食の席を後にした。そして一五〇〇。第三演習場についた吹雪改は瑞鶴改の姿を探すが、すぐにはその姿を見つけることが出来なかった。無理もない。彼女は昨日までの迷彩服とはうって変わって、紅白の服に身を包んでいたからだ。

 

瑞鶴改二甲「どうしたの?狐に摘ままれたような顔をして。」

 

吹雪改「い、いえ。ええっと、あ、新たな服ですよね?それ。結構お似合いだな~と。」

 

瑞鶴改二甲「…そう。まあ、ありがと。まあこの服は改以前のものだから原点回帰って感じだけどね。艤装こそ今までのとは大きく違うけど。」

 

そう言って彼女は左手に装着された飛行甲板を吹雪改に見せつける。昨日までの迷彩を施したものと違い、アスファルトのような単調な黒に破線状の白の中心線が映える。彼女曰く今回の改装によってα,βの離発着時の最大出力に飛行甲板が耐えられるようになり、また新たに装着されたカタパルトによってよりスムーズに発艦が可能になり、対ビースト戦において重要な両機の更なる活躍が見込めると言う。

 

瑞鶴改二甲「思えば改になるまでは、翔鶴姉と共に戦ってたのよね…。翔鶴姉、どうして…。」

 

ふと彼女がこぼした"翔鶴姉"という人物のことが気になった吹雪改だったが、轟沈などの触れてはいけない過去の類いだと察し、それ以上の追随は止めた。

 

瑞鶴改二甲「…で?昨日の戦いの話って?」

 

吹雪改「は、はい…。何故、あの巨人を撃ったのか、ということです。あの巨人は一度は私を救ってくれたんです。そして昨日の電さん、雷さんも同じです。なのに、有無を言わずに攻撃するなんて…。」

 

瑞鶴改二甲は予想通りだったといわんばかりの顔をして溜め息を吐き、

 

瑞鶴改二甲「その話の前に…、一発試し撃ちをやっていいかしら?まだ新装備の調子を確かめてないのよ。」

 

自身も興味のあった吹雪改はそのまま了承し、瑞鶴改二甲は一つの的の前に立ち、"α"と矢羽に描かれた矢を取り出し、艤装の弓につがえる。そして矢を射ると、矢は瞬時にαに姿を変え、その爆撃が数十メートル先の的の中央を射抜いた。

 

吹雪改「す、すごい…。」

 

吹雪改が横目に見ているなかで瑞鶴改二甲は次の矢をつがえ、今度は吹雪改の方に構える。

 

吹雪改「え!?ち、ちょっと!私は的じゃ…。」

 

瑞鶴改二甲「…貴女、昨日こんな風に私の前に立ち塞がったけど、もし私があのままαを発進させ、最悪貴女が轟沈ってことになっても、事故として報告されたでしょうね。貴女の重大な過失として。」

 

吹雪改「あ…。す、すみません。軽率でした。」

 

瑞鶴改二甲「肝に命じておきなさい。私も貴女のことをいつも気にかけて要られるわけじゃないから…。」

 

吹雪改「はい…。あの…、さっきの話のことですけれど…瑞鶴さんはあの巨人を敵だと思っているんですか?」

 

瑞鶴改二甲「逆に聞くわ。あの巨人に一度助けられただけで、何故無条件に命の恩人だと思えるの?もしかしたら巨人はただ餌を横取りしただけかもしれない。貴女も、昨日の二人にしたって私達が居なかったら、巨人の餌食になっていたかも知れないわ。」

 

吹雪改「ち、ちょっと。それは…。」

 

瑞鶴改二甲「よく覚えておきなさい。目の前にあるものが、全て真実とは限らないのよ。その単純なオツムでよく考えることね。」

 

吹雪改「ま、待ってください。それはどういう…。」

 

瑞鶴改二甲はそのまま吹雪改を置いて第四演習場を後にする。演習場を出たところで、瑞鶴改二甲は扉の横の壁に背を預けている時雨改二と遭遇した。

 

瑞鶴改二甲「あら、盗み聞きとは感心しないわね。」

 

時雨改二「盗み聞きじゃないよ。僕はSADN隊長として、皆の心のケアをする義務があるからね。第二の翔鶴を出さない為にも…。」

 

瑞鶴改二甲「…ものは言いようね。対象は吹雪かしら?」

 

時雨改二「まあね…。正直あの真っ直ぐさは危険だよ。昨夜も命令違反したしね。」

 

瑞鶴改二甲「そうね…。翔鶴姉も真っ直ぐだったのよね。それが災いして…。」

 

時雨改二「チームとして大事なのは信頼感だよ。だからこそ、吹雪の適性をしっかり見極めたいと思う。」

 

瑞鶴改二甲「ま、頑張ってね。それじゃ。」

 

そうして瑞鶴改二甲は廊下を進んでいく。吹雪改が後を追って廊下に出たときには彼女の姿は角の向こうに消えていた。

 

 

 

 

その翌日一一〇〇のこと。吹雪改は瑞鶴改二甲と共に千島列島の偵察任務に出掛けた。

 

吹雪改「…あの。瑞鶴さん。」

 

瑞鶴改二甲「何?哨戒ポイントまでまだまだだけれど。」

 

吹雪改「昨日の言葉なんですが。『目の前にあるものが、全て真実とは限らない』…。昨日一杯考えていたんですが、全く言葉の真意が分からなかったんです。」

 

瑞鶴改二甲は少し溜め息をついて自らの携帯端末を操作し、その画面を吹雪改に見せた。画面には吹雪改が以前にいた幌筵島南部泊地の除籍艦娘のリストがあった。瑞鶴改二甲がスクロールしていくと、吹雪改がSADNに加入した前日の日付の横に、多摩、初雪、深雪、叢雲の名前があった。あの日の悲惨な記憶が彼女の頭を過る。だがその横の除籍理由の記載が気になった。四人とも遠征の途中で雷巡チ級らの急襲に遭い、轟沈したことになっていたのだ。ペドレオンによって葬られたのを見ていた彼女にとって、納得出来るものではなかった。

 

瑞鶴改二甲「貴女は訓練中だったし、知る由もないでしょうけど、あの事は深海棲艦の急襲ってことで処理されたの。あの事だけじゃない。ビーストによる犠牲者は全て事故や深海棲艦の急襲として処理され、遺族や仲間がその事実を知らされることはない。」

 

吹雪改「事実をねじ曲げるなんて…、そんなの間違ってます!」

 

瑞鶴改二甲「あのねえ…。只でさえ深海棲艦の存在で人々は恐怖におののいてるのよ。艦娘だって例外じゃない。そんな中でビーストの存在まで明らかになったら、世界規模の大パニックよ。」

 

吹雪改「それは…。」

 

瑞鶴改二甲「これが『目の前にあるものが、全て真実とは限らない』、昨日の言葉の答えよ。」

 

吹雪改「で、でも、目撃者の証言があります!それまでねじ曲げることは出来ないんじゃ…。」

 

瑞鶴改二甲「目撃者が真実を語ることはない。全世界のSADN基地には、記憶処理を専門に行うセクションがある。旧日本地域ならば青葉情報局、通称AIA。一昨日の二人も彼女らの処理を受けて元の鎮守府に帰されたと思うわ。」

 

吹雪改「そ、それじゃ私がSADNへの入隊を断ってたら…。それがSADNのー」

 

その時、瑞鶴改二甲の顔が急に強ばる。どうやら何かを見つけたらしく、彼女は目線の方向に素早く進み、吹雪改も

 

吹雪改「ま、待ってください!」

 

叫びながら、それに続く。数キロほど進んだところで瑞鶴改二甲が

漸く止まり、吹雪改が追い付く。

 

吹雪改「はあ…、はあ…、一体何なんですか…?」

 

瑞鶴改二甲「誰かに見張られてる気がしたのよ。」

 

そして、二人の携帯端末がビースト振動波感知の警告音を同時に発した。

 

瑞鶴改二甲「ビースト振動波…!こっちか!」

 

吹雪改「あ、待ってください!」

 

吹雪改達は再び動きだした。暫くしてとある小島の裏側を捜索していたところ、赤城改と遭遇。吹雪改が遠隔照合したところ、一昨日遭遇した赤城改の艦娘IDと一致した。

 

吹雪改「じ、じゃあ貴女は…一昨日の…。」

 

瑞鶴改二甲「やっぱり、幻じゃなかったようね…。私達を付けてきたの?答えなさい!」

 

そう言って瑞鶴改二甲は赤城改に向かって弓を構える。吹雪改は弓を下ろすように促すが、彼女は聞き入れない。

 

赤城改「確かに貴女達は誰かに付けられていたわ。だけど、それは私じゃない!」

 

赤城改もまた、弓の代わりにスティック状のものを飛行甲板の裏から取り出し、瑞鶴改二甲に向ける。一昨日彼女が巨人に変身する時に振り上げたものと同じものだった。両者の間に緊張が走り、膠着状態になる。その静寂を、吹雪改の目を見ながら破ったのは、赤城改であった。

 

赤城改「逃げなさい!囲まれるわよ!」

 

吹雪改「え…?」

 

瑞鶴改二甲「……そこか!」

 

瑞鶴改二甲が後ろを振り向くと、大きさこそ小さいものの、ペドレオンが目前に迫っていた。

 

吹雪改「こ、こっちからも…!」

 

四方から同時にペドレオンが三体ほど接近してきて、吹雪改達は挟み撃ちの構図となった。

 

赤城改「離脱するわ!付いてきて!」

 

赤城改が目の前のペドレオン二体の間を突破し、二人もそこに続く。暫く逃走劇を繰り広げたが、一向に引かないペドレオン達を見て、三人も迎撃体制に移行する。

 

瑞鶴改二甲「α、β、発艦して!」

 

瑞鶴改二甲はα、βの両機を発艦させ、ペドレオンを攻撃させる。

吹雪改も12.7cm連装砲で攻撃するが、一発二発では倒れない。そんな中、赤城改が白いスティック状のものを構え、不可思議な蒼いエネルギー弾を発射した。今度はエネルギー弾をたった二発食らわせただけで、ペドレオン一体はたちまち蒼い光の粒子となり、消滅した。吹雪改と瑞鶴改二甲はその光景に愕然とした。

 

吹雪改「その銃、何なんですか?艤装じゃ無いようですし…。貴女は一体ー」

 

言い終わろうとした時、油断していた吹雪改の足にペドレオンの触手が絡み付き、彼女はペドレオンの元に引きずられる。逃れようと12.7cm連装砲で撃ちまくるが全く効かない。そうしてペドレオンの口が大きく開いたとき、吹雪改の頭に、あの日捕獲されたときの恐怖が甦った。

 

吹雪改「いやああああああ!!」

 

吹雪改は発狂し、12.7cm連装砲で撃ちまくる。

 

赤城改「あきらめないで!」

 

その声はあの時よりはっきりと吹雪改の頭に響き、彼女は落ち着きを取り戻した。すかさず赤城改がエネルギー弾を触手に発射し、吹雪改は解放された。

 

吹雪改「やっぱり、あの声は…貴女の…。」

 

瑞鶴改二甲「何ぼうっとしてんの!早く立て直しなさい!」

 

吹雪改「は、はい!」

 

吹雪改は咄嗟に立て直して、瑞鶴改二甲と共に攻撃を続ける。そして、赤城改のエネルギー弾により、二体目のペドレオンに漸く止めが刺さった。

 

瑞鶴改二甲「やっと二体目…。ん?二体?」

 

吹雪改「…!赤城さん、危ない!」

 

その声に、赤城改は飛行形態になって背後から襲いかかった三体目のペドレオンの攻撃を交わした。吹雪改と瑞鶴改二甲のα、βが追撃を浴びせるが、効果が又もなく、赤城改のエネルギー弾によって撃ち落とされ、四散した。

 

吹雪改「はあ~、やっと終わった…?」

 

赤城改「危ない所だったわね。貴女達は罠に誘い込まれたのよ。奴等は強いものと戦うことで情報を吸収し、模倣する。そしてより強力に進化するわ。まるで悪性のウィルスのように。奴等はまだうようよいるわ。それがひとつの個体になって活動を再開するのも、時間の問題でしょう。その前に居場所を見つけ出さないと…。」

 

そうして赤城改が立ち去ろうと背中を向けると、瑞鶴改二甲が弓を構えて威嚇した。

 

瑞鶴改二甲「待ちなさい。このまま黙っていかせるはずないでしょ。」

 

吹雪改「や、止めてください。」

 

瑞鶴改二甲「吹雪は黙ってて。武装解除しなさい。泊地まで連行するわ。」

 

赤城改「断るわ。」

 

その言葉に瑞鶴改二甲はαとβ両機に赤城改への攻撃を指示するが、間もなく彼女の携帯端末に両機とも『残弾0』という表示と音声メッセージが流れる。

 

赤城改「ふふっ。艦載機の残弾数は常に把握すること。貴女が翔鶴から教わって、日頃守っていたことじゃない?」

 

瑞鶴改二甲「くっ…!」

 

立ち去る赤城改をむきになって追おうとする瑞鶴改二甲を吹雪改が止める。瑞鶴改二甲が彼女を押し返して、前を向いたときには、最早赤城改の姿は何処にもなかった。少しして、吹雪改の脳にある声が響く。

 

赤城改『そうそう。ちょっと言っておくことがあったわね。私が変身したあの巨人の名前はーウルトラマンよ。』

 

 

 

 

その夜のこと。作戦指令室ではSADNメンバーが集まって、新兵器に関する会議が開かれていた。瑞城少将の指示のもと大淀がスクリーンに新兵器の青い艦載機を映す。横長でαやβとは毛色が違うようだった。

 

瑞城少将「これが新兵器の艦載機、クロムチェスターγ。運用はαやβと変わらないけど、機動性が上がった分、少し使いにくいかもしれない。瑞鶴、運用出来そうか?」

 

瑞鶴改二甲「ええ。これでビーストに二度と遅れを取らないわね…!」

 

瑞鶴改二甲が満面の笑みを浮かべる中、隣の吹雪改は考え込んでいた。結局瑞鶴改二甲は帰還してから、赤城改について報告しなかったのだ。彼女には何が信じるべき現実なのか、分からなくなりかけていた。

 

瑞城少将「どうした?吹雪。気分でも悪いのか?」

 

吹雪改「い、いや…。そ、そういえば、巨人の話なんですけど…。」

 

瑞城少将「おう。何だ?」

 

吹雪改「えっと、ウルトラマンって呼ぶことにしてはどうでしょうか…?」

 

 

 

 

会議が終わった後、自室に戻った吹雪は、ベットに横になり、携帯端末の通話画面を開いた。掛けた先はー

 

睦月「も、もしもし。吹雪ちゃん!?」

 

吹雪改「うん。睦月ちゃん、久しぶり。ごめんね。長らく電話出来なくて…。」

 

睦月「ほんとだよ!お別れもせずに行っちゃって、連絡もなくて…。心配だったし、寂しかったんだからねっ?」

 

吹雪改「うん。こっちも睦月ちゃんの声が急に聞きたくなって…。」

 

睦月「そうですかそうですか~。うふふっ♪」

 

吹雪改「うふふっ…!」

 

その後吹雪改は仕事のことについては上手く交わしながらも、睦月との他愛のない会話を楽しんだ。それは彼女にとって、心許せる現実であることは変わりないのだった…。

 

 

 

ー第伍話「異界ノ地-meta field-」へ続く-




やっと上げられました。受験が本格化して更に投稿が遅くなることが懸念されますが、例によって気長にお待ちください。

次回、第伍話「異界ノ地-meta field-」

吹雪改「ここは…どこ…?」
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