艦娘と巨人とネクサスと   作:瞳琥珀

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今回前半が予想より早くできたので、前編として先に投稿します。
なお、
・クロムチェスターα、クロムチェスターβ、クロムチェスターγのクロムチェスターを省略します。(三機とも瑞鶴改二の夜戦可能艦載機として扱う)
・θ島は実在の地域などには一切関与しません。
この事を留意してお楽しみください。

それでは、本編をどうぞ!


第伍話「異界ノ地-meta field-」(前編)

一七〇〇。睦月と再会の後、余韻に浸ったまま帰還した吹雪改だったが、帰還して早々艦内アナウンスによって呼び出され、SADN作戦会議室に急いだ。他のSADNの面々は席についており、吹雪改が席につくと会議が始まった。まずは大淀改の報告から始まる。択捉島付近のθ島の海蝕洞からビースト振動波をキャッチ。付近を航行していた遠征艦隊や哨戒部隊がいくつか被害に遭っていること等が報告された。

 

吹雪改「それだったらすぐにでも現場に急行した方がいいじゃないですか。何故ここで呑気に作戦会議をしているんですか?」

 

???「奴等は今一つになろうとしています。より強力なビーストとして進化するために。」

 

吹雪改の問いに答えたのは、瑞城少将の左隣に座る少女だった。赤紫のロングヘアーに陽炎型のシンボルとも言われている白い手袋。そして駆逐艦だとしたら比較的大きめの胸部装甲をもった大人しそうな少女だった。吹雪改は彼女に対して面識はない。

 

瑞城少将「紹介がまだだったかな?彼女は萩風。SADNの作戦参謀を務めている。」

 

萩風改「吹雪さんですよね。ふふっ。こんな駆逐艦が上官だなんて驚きました?」

 

吹雪改「あ、いえいえ…。まあ、確かに前の鎮守府では駆逐艦が上層部ってのはなかったですけど…。」

 

時雨改二「駆逐艦は基本、遠征の道具や随伴艦の扱いだからね。提督の様に駆逐艦大好き!って人なら話は別だけど。…艦娘として言うのもあれだけど、特に南部の浅間元帥は駆逐艦レイシストとして悪名高いし。」

 

吹雪改「え?そうだったんですか?確かに私達駆逐艦がぞんざいに扱われてるなって気はしなくもなかったんですが…。」

 

時雨改二「戦艦や空母以外の、中途半端な戦力は要らないと思っているようだね。まあ手柄はきちんと立ててるから、そんな暴論を振りかざしても問題にはされないみたいだけど…っと、話が逸れちゃったね。」

 

時雨改二は「すみません。」と一言謝って萩風改に会話のバトンを渡す。そして彼女による作戦概要の説明が始まった。

 

 

 

 

θ作戦と命名されたそれは、一言でいうと挟撃作戦だった。θ島には島を貫通する大きな海蝕洞がある。θ島周辺海域は当に封鎖を完了し、移動中の47体程の対象ースペースビーストを監視下に置いているという。約一時間でそれらは海蝕洞内に集結する見込みで、そこを両側の出入口から新型のγを含む集中砲火で撃滅する、というのが作戦内容だった。

 

萩風改「では、詳細説明は後ほど…。」

 

そう言うと萩風改の姿は陽炎の様に揺らめき、消失した。

 

吹雪改「あっ、あれ?」

 

霧島改二「ホログラムよ。イラストレーターは別の場所にいますからね。」

 

吹雪改「イラストレーター?」

 

霧島改二「誰が呼び始めたかも分からないけど、皆彼女をそう呼んでいるわ。」

 

足柄改「予知能力者って噂もあるけどね。」

 

吹雪改「え?」

 

足柄改「ビーストの出現を、専用電探やソナー無しで、感じとる力があるとか…。」

 

吹雪改「ビーストを…感じとる力…。」

 

その言葉に、吹雪改はある人物のことを思い出した。十日ほど前の出撃の時に会った、赤城改である。考えてみれば、彼女はペドレオン達の姿がろくに見えていなかったにも関わらず、囲まれるのを分

かっていた。そう吹雪改は感じざるを得なかった。

 

 

 

 

十分ほど経過して、作戦の詳細説明が萩風改の口から伝えられた。数多もの偵察などによって、目標のスペースビーストーペドレオンの体液が起爆性が高いことが既に判明していた。海蝕洞の両側の出口から集中砲火を浴びせれば、爆弾の連続起爆と同様ペドレオン達は木端微塵に吹き飛ぶ、ということだった。作戦には第一部隊旗艦の時雨改二を始め、足柄改や霧島改二、川内改二、瑞鶴改二甲と夜戦火力が高い面々が抜擢された。だが、そこに吹雪改の名はなかった。

 

吹雪改「あ、あの。私は待機ですか?」

 

萩風改「ご心配なく。貴女には最後の保険として動いてもらいます。」

 

吹雪改「ほ、保険?」

 

萩風改「万が一奴等が戦線を突破した時、択捉島など人類の居住地域が付近にあり、目標には飛翔能力があります。その時の為に、択捉島には続く航路を哨戒して下さい。」

 

吹雪改「は、はい!」

 

吹雪改は満面の笑みで敬礼をした。それは南部にいた時には遠征以外まともにやらせて貰えなかった反動かもしれない。

 

萩風改「それでは皆さん、今度こそ確実にお願いしますね。またあの巨人ーウルトラマンが来るとも限りませんので。」

 

 

 

 

 

萩風改のホログラムが消えたあと、各自は作戦司令室に戻り、携帯端末で各々の装備の状態を確認しながら、作戦開始時刻を待っていた。その間、瑞鶴改二甲は新たな相棒γの調整の確認を行いながら、昔のことを思い出していた。彼女が艦娘になる前の数少ない記憶。彼女は父、母、弟、妹がいた五人家族の長女だったのだが、林の中で家族とはぐれ、探し回るところから始まった。お父さん、お母さん、弟や妹の名前と呼んでいくが、返事は遂に来ない。ふと幼い彼女は林の木々に一瞬人影を見た気がして、立ち上がる。すると、目の前の樹に隠れていた人物が姿を現した。男なのか女なのか分からなかったが、口元に気味の悪い笑み浮かべていた。次の瞬間、その背中に異形のものが生え、幼心に恐怖を感じた彼女はそのまま地面にへたりこんだ。

 

???「…さん、…鶴さん、…瑞鶴さん?」

 

そこで瑞鶴改二甲は現実に話しかけている吹雪改の存在に気づき、我に帰る。

 

瑞鶴改二甲「…何?」

 

吹雪改「い、いや、十日前のことなんですけど…。」

 

瑞鶴改二甲は「何?」と高圧的な視線を向ける。少し怖じけづくも、吹雪改は続けた。

 

吹雪改「赤城さんのことを報告してなかったのは、何でなのかなと思って…。もしかして、あの日彼女に救われたからー」

 

瑞鶴改二甲「は?私が一航戦に恩を感じて報告しなかったとでも言いたいの?」

 

吹雪改「ち、違うんですか?」

 

瑞鶴改二甲「奴は艦娘じゃない。ビーストなの。報告しなかったのは、次にあったとき、私自身の手で撃沈させる為よ。」

 

そう言い残して瑞鶴改二甲は席を離れた。吹雪改はその後ろ姿をただ眺めることしか出来なかった。

 

 

 

 

SADN基地の第九会議室。上層部との話し合いなどに使われる会議室に、瑞城少将とAIAの北海道支部代表が集められていた。

 

瑞城少将「既にご存知の通り、ここ数ヵ月状況に微妙な変化が生じています。」

 

青葉改「例の銀色の巨人ーウルトラマンでしたっけ。極秘事項扱いだそうですね。」

 

瑞城少将はゆっくり頷く。

 

瑞城少将「正直、敵か味方かすら判断できません。巨人が事件に関与することで、貴女方の職務にも少しばかり影響が及ぶことが懸念されます。」

 

青葉改「ご心配なく。今まで通り完璧に処理します。それが私達の職務ですから。」

 

 

 

 

 

暫くして作戦開始時刻二〇〇〇になり、作戦司令室が作戦開始を伝えるアラームで満たされる。

 

時雨改二「時間だよ。出撃準備!」

 

時雨改二の勢いよい命令に、SADNの面々は一斉に出撃用リフトに駆け込む。全員が乗り込むと、安全バーが肩に降りて各自の体を固定し、「出動!」という時雨改二の声と同時にリフトは急上昇を始める。初めの頃吹雪改は急加速のGの為吐き気を催したが、今は慣れているようだ。リフトが止まると安全バーが上がり、ロボットアームによって各自の装備が取り付けられていく。取り付けが完了すると足の艤装が下の金属の床にロックされ、床が勢いよく前方に移動する。前方に移動して一時停止すると、目の前の扉が上に開かれ、足元が海水に浸される。足の艤装のロックが解除されると吹雪改達は時雨改二の「出撃!」という号令で一斉に大海原に出て、即座に光学迷彩装置を起動させる。お互いの位置は装着しているゴーグルを通して見える。そして吹雪改達はエンジンを吹かし、θ島を目指す。

 

 

 

 

 

その頃、SADN基地の一角。三畳にも満たない小さな部屋には壁一面に数々のモニターが設置され、基地内の様子や周辺海域のレーダー画面を映している。その真ん中に一人座っているのがイラストレーター、萩風改である。彼女はSADNの出撃を見届けると、背伸びをした。

 

萩風改「さて、あの巨人ーウルトラマンは現れますかね?」

 

そう言って彼女は好奇心の淡い笑みを浮かべた。

 

ー第伍話(後編)「異界ノ地-meta field-」に続くー




さて、今回も無事書き上げることができました。
今後も受験と折り合いつけながら投稿する所存です。

では、第伍話後編でまた会いましょう。
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