・クロムチェスターα、クロムチェスターβ、クロムチェスターγをα、β、γと表記。(いずれも瑞鶴改二甲の対ビースト艦載機として扱う)
・作者の艦これやウルトラマンネクサスの世界の独自解釈や展開も含まれる。
・通信による会話でインカムの向こう側から聞こえてると思われる台詞は『』で囲んで表記。
以上に注意してお読みください。ではどうぞ!
スペースビーストは大抵夜間に活動する。それは奴等の主食が人々の"恐怖"の感情であり、夜間の方が恐怖が増大することを知っているからだ。対ビースト迎撃部隊がShips for Attack &Defense in Night(SADN)と命名されたのはこの事に起因する。そしてここにビーストの存在が秘匿されなければならない最大の要因がある。ビーストの存在が公になることで、奴等にとっての餌が大量に増え、赤潮やイナゴの大群のように大量増殖を引き起こしてしまうのだ。そうなってはただでさえ深海棲艦の勢力によって脅かされている人類の防衛線が崩壊しかねない。そのために全世界のSADNの部隊は、表の世界の人々や艦娘が眠りに落ちている時に、深海棲艦よりも厄介な奴等を倒す孤独な戦いを今日も続けている。
SADN幌筵基地を出発した者達のうち、吹雪改は得撫島沖で一足早く時雨改二達と分かれ、予め決められていた自らの持ち場、ポイントへ向かう。後を付けているのはαだが、これは年のためにと瑞鶴改二甲が飛ばしたものだ。先程「何だかんだで心配性だね~。」と川内改二との台詞に、照れからか瑞鶴改二甲が彼女にビンタを返していたのを思いだし、くすりと笑う。やがて択捉島とθ島を結ぶ航路上の地点、ポイントDに到着した。吹雪改が推進機関を停止し、それを察したのかαが彼女の頭上で旋回飛行を始める。彼女の高機能時計は時刻二三〇〇を表示している。吹雪改は到着の連絡をすべく、右耳のインカムを押さえ、高機能時計のマイクに話しかける。
吹雪改「吹雪、ポイントDに到着しました。」
時雨改二『了解。流石特型駆逐艦、早いね。』
吹雪改「いえ、それほどでも…。」
複数の強いエンジン音が吹雪改のインカム越しに聴こえたことから、彼女らは吹雪改よりも更に近い目的地にまだ着いていないとこが窺えた。駆逐艦の強みはなんと言ってもその速力。時雨改二も駆逐艦だが、戦艦や空母といると彼女らに合わせないといけないため、遅くならざるを得ない。
時雨改二『そのまま待機して周囲警戒。いいね?』
吹雪改「はい。」
通信が切れると、吹雪改は探照灯を構え、周囲を照らす。探照灯には日中に睦月から貰った御守りのキーホルダーがぶら下がっている。他に彼女が装備しているのは12.7cm連装砲B型改二一つ。12.7cm連装砲B型改二は別名夕立砲とも呼ばれる。勇猛果敢な駆逐艦の一人;夕立のシンボルとも言われる主砲で、遠征部隊にいた頃の吹雪には間違っても支給されない代物であった。今回、彼女は飛行形態となったペドレオンと一騎討ちになる可能性があるからこその装備である。『よい装備を貰うときは死ぬときと思え』という遠征部隊の先輩が口にしていた不吉な言葉を思いだし、彼女は一瞬身震いする。暫く付近の海域は深夜ということもあり静かなもので、途中駆逐艦ロ級の群れに遭遇したものの、夕立砲の試し撃ちついでに撃沈した。退屈な気持ちがある一方、保険である自分の出番はない方がいいのだと、彼女は思い込み、作戦の成功を願った。
少し遅れて時刻二三三〇。時雨改二達もθ島に到着した。彼女らはA班とB班に分かれ、それぞれ海蝕洞の両側出口にある作戦地点、ポイントAとポイントBに各自向かう。
時雨改二「こちら時雨。各自状況を報告して。」
足柄改『こちら足柄よ。ポイントBで待機。問題ないわ。』
瑞鶴改二甲『瑞鶴。同じく。今度こそ仕留めてやるわ。』
時雨改二「…よし、吹雪も到着してるし、僕らの方も…。」
川内改二「うん。ここにいるよ。もうそろそろ夜戦だね!」
霧島改二「ええ。私もここに居ます。海蝕洞内の索敵を開始しますね。」
A班の時雨改二と川内改二、霧島改二。B班の瑞鶴改二甲と足柄改。其々が配置についた。霧島改二は装着しているゴーグルのサーモセンサーで海蝕洞内の敵の様子を探る。
霧島改二「前方海蝕洞内に目標を確認。絶賛融合中のようですね。」
萩風改『了解しました。攻撃レベル3にシフト!各自砲雷撃よーい!』
時雨改二と川内改二、足柄改、霧島改二は一斉に海蝕洞内を砲口を向ける。瑞鶴改二甲もβとγを発艦させ、砲口を海蝕洞内に向けさせる。
時雨改二「時雨、発射するよ!」
足柄改「足柄改、発射よ!」
他の面々も「発射!」と叫び、砲撃を開始した。対ビースト弾が各自の砲口から、βやγからは代わりにビームが放たれ、海蝕洞の奥に次々と吸い込まれていく。火薬が炸裂したと思われる赤い光は出口からも見え、煙は出口の彼女らを飲み込むが、構わず砲撃を続ける。やがて各自が弾を撃ち尽くし、煙が段々と晴れていく。最後に止めと言わんばかりに足柄改、時雨改二、川内改二の3人が魚雷を発射し、その爆風が外の煙を吹き飛ばす。通常海域の最深部に辿り着くまでの消費量に相当する弾を撃ち込み、敵の大ダメージは確定と見えた。可燃性の体液を纏っているのなら尚更だ。
…それだけに、ノイズが晴れた後に霧島改二が見た光景は彼女らにとって信じがたいものだった。霧島改二のサーモセンサーに映ったのは、何事もなかったかのように元気に活動する巨大なペドレオンの姿だったのである。
霧島改二「…!目標、健在…!」
瑞鶴改二甲『え…。まさか…!』
各自が狼狽える中、海蝕洞内のペドレオンが高熱の何かを形成し、発射しようとしている光景が霧島改二のサーモセンサーに映った。
霧島改二「熱源上昇!」
時雨改二「…!各自散開!退避して!」
時雨改二達は散開し、程なくしてAポイントとBポイントに向けて火球が発射された。Bポイント側の瑞鶴改二甲と足柄改は無事回避に成功。Aポイント側の火球は海蝕洞に対して真っ直ぐに逃げていた川内改二に迫る。彼女は自慢の回避力で避けようとするが、猛スピード更に若干のホーミング性能のあるらしい火球から逃れることは叶わず…。
川内改二「うわー!!」
火球は川内改二を掠っただけだったが、彼女の予備弾薬に引火し、炎上。装備していた緊急消火修理装置(ダメコン)が已む無く発動し、火は一分ほどで勢いが弱まる。
川内改二「状態、大破…。ちょっと、一足先に帰還するね…。」
彼女がそう告げると、背後の水中から緊急帰還用の回収ポットが出現した。川内改二が中に乗り込むと、ボットは潜水し、SADN幌筵基地に向けて出発した。
時雨改二「川内…。無事でよかったけど、今のは一体…。萩風?」
遠く離れているモニタールームでは、萩風がその光景を見て目を丸くしていた。
萩風改『体内の可燃性ガスを…火球として発射した…?奴は私達の攻撃を学習して、戦闘能力を進化させたの…?』
程なくしてθ島の地面が大爆発し、巨大になったペドレオンが姿を現した。
ペドレオン「きゅううううん!きょううん!ぐるるる…。」
瑞鶴改二甲「この…化物っ…!」
瑞鶴改二甲達に視点を合わせたらしいペドレオンは火球を発射し、彼女らは何とかそれを回避。するとペドレオンは飛行形態に代わり、飛翔して彼方に飛んでいく。
足柄改「あ、飛んだ!」
瑞鶴改二甲「βとγなら彼奴に追い付けるわ。私達も後を追うわよ!」
足柄改「ええ。わかった!」
瑞鶴改二甲の言葉通り、βとγはペドレオン(フリーゲン)後方にに張り付いており、絶えずビームを浴びせているが、相手は身体を捻らせながら回避する。その様子は艦載機の様子を映し出す瑞鶴改二甲の携帯端末の画面にもよく映っていた。
瑞鶴改二甲「ちょこまかと…!でも、絶対に逃がさないわ…!」
βとγはビームによる攻撃を止め、搭載されているミサイルを発射した。多くのミサイルが回避されていくなか、数発のミサイルがペドレオン(フリーゲン)に着弾した。ペドレオン(フリーゲン)はたまらず墜落し、海面に叩きつけられた。大きな水飛沫が止んだ後、グロース(巨大陸上形態)に姿を変えた。
瑞鶴改二甲「やっと追い付いたわ!足柄、ここで仕留めるわよ!」
足柄改「ええ。砲雷撃、用意!撃…。」
そこまで言いかけたところで足柄改の顔が青ざめ、構えていた主砲を力なく下げる。その視線は左手の携帯端末に向けられていた。
瑞鶴改二甲「足柄!どうして撃たないの!?」
足柄改「ビーストの近くに艦娘が…!艦娘ID38452136の曙改と艦娘ID38452137の潮改…。」
瑞鶴改二甲「撃破しなきゃ逃げられるのよ!撃ちなさい!」
足柄改「で、でも…!」
瑞鶴改二甲「ちっ、ああもう!」
瑞鶴改二甲達は已む無くペドレオンの注意を引かせ、人気のないところに誘導しようとする。だがそれは愚かな行為だった。誘導をする二人に向けてペドレオンは火球を撃ち、二人に加えβとγを巻き込んだ大爆発が起こった。
吹雪改「そ、そんな…。先輩達が…。新型艦載機が…。」
ポイントDで待機していた吹雪改にも、惨状は携帯端末の映像やインカム越しに傍受できる通信で伝わっていた。彼女の探照灯を持つ手は明らかに震えている。まだ対面していないにも関わらず、全身のあちこちが恐怖で震え始める。しかし、それが収まるのを敵は待っていなかった。彼女の携帯端末から急に警告音が鳴り、画面に《警告;ビースト接近中!》という赤い表示が出る。SADNの全艦娘は装備枠とは別にビースト専用電探を標準装備しており、そこからの情報だった。彼女が目の前を見ると、ゴーグルによる望遠機能により、前方10kmから此方に迫ってくるペドレオン(フリーゲン)が映る。吹雪改は探照灯を構えていた手を離し、夕立砲を構える。
吹雪改「…お願い!当たってください!」
ゴーグルには着弾支援機能があり、より正確に着弾するはずなのだが、射程距離が長いためかペドレオン(フリーゲン)は着弾寸前に躱してしまう。彼女は舌打ちしそうになるのを懸命にこらえる。途中ペドレオン(フリーゲン)が火球を発射するが、吹雪改は何とか横に避け、砲撃を続ける。αもビームを発射するが、こちらも当たらない。
吹雪改「…行かせない!絶対ここから先には…!」
何度か砲撃を続けた結果、一発が着弾し、ペドレオン(フリーゲン)を一瞬怯ませる。
吹雪改「や、やった…!」
ペドレオン(フリーゲン)は仕返しとばかりに火球を放つが、またもや横に回避する。そして砲撃を再開しようとした吹雪改だったが、引き金の感触が妙に軽く、引き金をいくら引いても弾がでない。数秒の後、吹雪改は端末画面に《残弾0》の表示がされていることに気がついた。
吹雪改「そ、そんな…。」
αはまだ撃ち続けているが、彼女は突然の状況不利に途方にくれている。そんな間にもペドレオン(フリーゲン)は吹雪改に迫る。彼女の脳裏を過るのは、あの日の記憶。ペドレオンによって仲間を葬られ、逆さ釣りにされ、喰われようとした記憶。
吹雪改「いや、いや…、嫌ぁ…!」
彼女は涙ぐみながらただ怯え、立ち竦んだ。
ちょうどその頃、一人の正規空母が吹雪改に向けて最大船速で向かってきていた。
赤城改「吹雪さん…!」
赤城改の見る携帯端末には彼女の不可思議な灰色の艦載機、ストーンフリューゲルからの映像が映っている。そこには、ペドレオン(フリューゲル)が吹雪改の前方5kmまで迫っており、それを目前にして吹雪改が呆然と立ち尽くしている光景があった。吹雪改の顔が青ざめており、主砲を構える姿が震え、一発も砲撃をしていないことから、ビビって引き金を引けないか、残弾0であるかのどちらかであるということは赤城改には容易に想像がついた。
赤城改「このままじゃ間に合わない…!戻って!」
赤城改はストーンフリューゲルを呼び戻した。光速の如く戻ってきたストーンフリューゲルは飛行甲板には向かわず、赤城改の右手に収まり、エボルトラスターに姿を変える。即座に赤城改はその鞘を左手に握って抜刀の姿勢をとり…。
赤城改「一航戦赤城、変身します!」
赤城改はエボルトラスターを抜刀の如く鞘から抜く。赤く輝きだした刀身を前に突き出すと、光はますます輝きを増し、彼女を包み込む。光の中で赤城改は銀の巨人へと姿を変え、赤き光弾はそのまま飛翔していった。
ペドレオン(フリューゲル)が吹雪改の目前に迫る。弾切れの彼女が呆然としていると、上空から赤い光弾が迫り、目前で止まる。その眩しさに彼女は目を細める。光が弱まってくると、赤いオーラに包まれる銀の巨人、ウルトラマンネクサスの姿がそこにあった。ネクサスはペドレオン(フリューゲル)を吹雪改に衝突する寸前で受け止め、右手で掴んでいる。
吹雪改「ウルトラマン…!赤城さん…!」
ネクサス「フウウウワッ…シュッ!」
ネクサスはペドレオン(フリューゲル)を野球の球を投げる要領で海面に叩きつけ、その場から跳躍。墜落したペドレオン(フリューゲル)の頭上を通過し、少し離れた地点に着地した。そして立ち上がると左手を胸に当てる。左手がまたもや青白く発光し、勢いよく降り下ろすと、青いオーラに包まれ、身体が赤に変わる。ネクサスの第二形態、ジュネッスである。ペドレオンはグロースとなってネクサスに向き直る。奴に目が有ったら、きっと怨嗟の視線を注いでいるところだろう。
ネクサス「シェアッ!フォオオオ…フッ、イェアッ!」
ネクサスは青い光弾を右手に込めると、空に高々と挙げ、そこから青白い光線を上空に発射する。光線は高度500m程で何かにぶつかったかのように一際輝き、次にはその点を中心に黄金色の幕のような光が波紋上に広がり、海面にまで達する。光のドームの外壁に向かってペドレオンが火球を発射するが、火球を吸収したかのようにびくともしない。光のドームの中にはネクサスとペドレオン、そして吹雪改がおり、彼女には大きなGの感覚の他、空間自体が揺れているような感覚を覚える。
吹雪改「うぐっ…。何…これ…。」
周りでは気泡らしきものが炭酸飲料水の如く大量に発生し上昇しているが、彼女にそれを気にかける余裕はなかった。吐き気と共に、彼女の意識はそのまま遠のいていった。
吹雪改「…ん。ここは…どこ?」
吹雪改が次に目を覚ましたとき、目の前には不可思議な光景が広がっていた。紫と青で構成された空に、地平線はなんとも不気味な赤紫色。そんな空の下には一面の大海…ではなく赤茶色の地面に覆われた峡谷が広がっていた。所々建造物のような地形の空洞から青白い光が放たれている。川に浮いていたのなら、彼女はこの地を探検できただろう。だが…。
吹雪改「な、何これ…?」
彼女の足元は靴下の高さまで土の中に埋まっており、更に両腕も赤茶色の壁に埋まっていて、一切の身動きができない。それでももがこうとする吹雪改の行動を制止させたのは、ペドレオンの鳴き声とネクサスの声だった。彼女は声のする方向に視線を向ける。そこにはペドレオンと格闘戦を繰り広げるネクサスの姿があった。時々触手に絡まれたり叩かれたりしながらも、ネクサスはキックやパンチ、タックルを駆使してペドレオンに着実にダメージを与えていく。その現場から少し離れていることもあって、吹雪改は自らの拘束を解くことを忘れ、すっかりその戦いに魅入っていた。戦況はネクサスに有利な方向に進んでいるようだった。また、吹雪改にはここでのペドレオンが先程までと比べると少し弱くなっている感じがした。
そんな中、ネクサスがタックルを仕掛けるべく突進していくと、ペドレオンが頭をもたげ、口部と見られる部位から赤い光が点滅し、次の瞬間ネクサスは衝撃波によって吹き飛ばされた。そこから戦況はネクサス不利に傾いていく。ペドレオンに何度も触手で投げ飛ばされ、立ち上がろうとするところに触手による連続叩きつけ。隙を見て立ち上がっても触手によって組み付かれ、ネクサスの背後に触手の叩きつけ。横に前転して体勢を建て直し、ネクサスが組み付きを行おうとした時、掴んだ触手の周りの小さい触手がネクサスの両腕に絡み付き、ネクサスに向けて電流を流し始めた。
ネクサス「グッ、ウワ…グワアアア!」
絡み付いている触手からは遠目でも分かる赤い稲光がネクサスに向けて走っている。苦しみながらもネクサスは触手を振りほどけないでいた。
吹雪改「な、何とかしないと…!でも、どうすれば…。」
彼女が途方にくれていると、一つの飛行物体が吹雪改の視界に入る。αだった。αも光のドームの中に巻き込まれていたため、この地に転移していたのだ。
吹雪改「…!そうだ!えーっと、αの中の妖精さん、聞こえますか?私は瑞鶴さんではありませんけど、聞こえていたら、今から言うことをやってください!」
まず吹雪改が命じたのは彼女の両腕を拘束している壁の攻撃だ。ビームやミサイルでは腕や装備まで傷つける危険があるため、機銃でやるようにとも付け加える。命令はきちんと伝わったらしく、αは彼女の左腕が埋まっている部分に機銃の連射を加える。思ったよりも壁の強度は脆かったようで、手首から肩まで1回通過するとボロボロになり、後は彼女自身の力で拘束していた上の土は粉々に砕けた。右も同様にし、吹雪改の両腕は漸く自由になった。
吹雪改「さて、次は援護射撃の準備っと。確か…。」
吹雪改は腰につけていたSADN支給のウエストポーチから予備弾薬を取り出す。先程は目の前の恐怖で予備弾薬の存在が一時的に頭から抜けていたのだ。予備弾薬を夕立砲にセットすると、携帯端末の画面に《装填中》の表示が出る。中々画面が変わらないのに内心イライラしながらも、吹雪改はαに次の命令を出す。
吹雪改「あの巨人…ウルトラマンが今ピンチになってるんです。私がビーストの注意を引き付けるべく、砲撃を行おうと思います。その際、一緒にビーストを撃ってください。」
そう言っている間に端末画面が《装填完了》の表示になり、吹雪改は砲口をペドレオンに向ける。αも同じようにペドレオンの方を向いた。ゴーグルの着弾支援機能により、様々な誤差が修正され、照準がペドレオンに合わされていく。そして遂にペドレオンに照準が合う。
吹雪改「…いっけえ!」
吹雪改は叫びながら引き金を引く。砲口から対ビースト弾が飛び出し、放物線を描いて、ペドレオンの頭部に着弾、爆発した。
ペドレオン「きゅおおおん!?ぐおおおん!?」
ペドレオンは突然の余所からの攻撃に驚き戸惑っている。吹雪改は引き続き砲撃を続け、αもビームを浴びせる。数々の攻撃でペドレオンは吹雪改達の存在に気づき、頭を向ける。その時、電流が一時的に弱まったことを感じたネクサスは、触手を引きちぎり、ペドレオンを蹴り飛ばし、大きく交代させた。次にネクサスは竜巻を生成してペドレオンの方に向ける。ペドレオンはその竜巻に巻き込まれて回転し、過ぎ去った後は地面に半分埋まり動けなくなった。
ネクサス「フッ!フォオオオ…フッ、ジュワ!」
巨人はすかさず青い電撃にも似たオーラを両腕に纏って高く挙げ、すぐに腕をL字型にして青白い光線を放つ。ジュネッスの必殺技;オーバーレイ・シュトロームだ。光線が直撃したペドレオンは暫し苦しんだ後、身体全体が青く発光し、青い粒子となって消滅していった。
吹雪改「よ、よかった…。」
ネクサスはそのまま黄金の光に包まれると、周りの風景も先程の光のドームに変わる。吹雪改はまたもや空間自体が歪むような強烈な不快感を覚えるが、すぐに光のドームは上部から晴れ、星一つない夜空と満月が顔を覗かせる。光のドームが完全に消えた後、周りには何もなかった。ペドレオンはもちろん、ネクサスの姿も。
瑞鶴改二甲『…き、…雪、…吹雪!聞こえる!?』
吹雪改「はい!よく聞こえます!…というか、大爆発してましたけど、大丈夫ですか!?」
瑞鶴改二甲『ええ。何とかダメコンが発動してね。足柄や私、βやγも修理は受けなきゃいけないけど。』
吹雪改「そ、そうでしたか。よかったあ~。」
瑞鶴改二甲『何がよかった、よ!あんたの方こそ何一つ応答がないから心配したわよ!』
吹雪改「す、すみません。私ビーストに体当たりされるところをウルトラマンに助けられて、光のドームの中にいて…。」
瑞鶴改二甲『光のドーム?ああ。遠目に見えたあれね。形成されてすぐに消失したんだけれど。」
吹雪改「え!?消失って。それじゃああの時私がいたのは…?」
時雨改二『まあまあ。詳しいことは基地に帰還してから報告してもらうから。誰も欠けることなくて良かったよ。』
暫くしてポイントDの地点に、先に帰還した川内改二を除くSADN全員が集結し、SADN幌筵基地に向けて帰航を始めた。分からないことが沢山ある中、吹雪改が確証をもって思えたのは、またもやウルトラマンに命を救われたことと、ウルトラマンが救ったものは本当はもっと大きなものだということだった。
日付はとうに替わり、時刻〇〇二〇。瑞鶴改二甲達が大爆発に巻き込まれた現場付近。青葉を旗艦とする黒服の艦娘達の部隊が現場へと向かう途中、二人の艦娘が行く手を遮る。
曙改「ちょっと。この先は近づかない方がいいわよ。」
青葉改「近づくなとは?」
曙改「言葉通りの意味よ。…潮!」
潮改「はい。この先で奇妙な化物が現れたんですよ。それに、未知の艦載機と船籍不明の艦娘も数人…。」
曙改「…というわけで危険だし、現場検証中だから引き返して。言うこときけないんだったら、千島列島警備隊の痛い目にあってもらうことになるわ。」
旗艦の青葉改は曙改達の言葉には反応せず、暫くしてこう言った。
青葉改「何も見なかった。」
曙改「は?」
青葉改「"貴女達は何も見なかった"それが現実ですよ。」
そう言って青葉改は自らの携帯端末の画面を曙改達に見せ、次の瞬間画面が激しく光った。
ー第陸話に続くー
漸く書き終わりました。
ちょっと補足をしておくと、ネクサスが作り出し、吹雪改が巻き込まれた空間が"メタ・フィールド"と呼ばれることになる戦闘用空間です。次回辺りで詳しく説明できればいいなと思います。
受験があるので、次回は三月以降になると思われます。
後、この後の話の展開を検討中なので、次回予告は行いません。
それでは皆さん、次回またお会いしましょう。