受験が終わり、漸く時間が出来ました。
僕自身先月に幌筵泊地着任一周年を迎え、念願の娘だった秋月を迎え、
新時代(?)に突入しつつあります。
さて挨拶はここまでにしましょう。
今回は重めの展開が含まれます。
特に"轟沈"描写に耐性の無い方はご注意ください。
それでは本編をどうぞ!
θ作戦から半月ほど過ぎたある日の二三〇〇。この時刻は通常の鎮守府であれば消灯時間を過ぎており、夜間哨戒員以外は人間も艦娘もスヤスヤと寝息を立てている。SADN幌筵基地では消灯時間こそないものの、作戦や緊急出撃以外は同じ状況である。そんな中、吹雪改は電気スタンドの灯に照らされながら、PCの画面に向き合っていた。彼女が閲覧しているのは海上強化自衛隊が発行している艦娘向けの情報誌、艦娘週報web版のバックナンバーである。彼女はある記事を探していた。
事の発端は数日前に遡る。白昼に吹雪改は瑞鶴改二甲と共に赤城改の尾行を行っていた。しかし択捉島沖まで来たところで赤城改を見失ってしまい、代わりに見つけたのは全長2mの石棺のような物体だった。瑞鶴改二甲が警戒してクロムチェスター三機による攻撃を仕掛けたが、傷一つつかない。不思議に思った吹雪改が触れたところ、彼女の体内に強力な電流が流れ込んで来た。身体の自由が利かなくなり、段々意識が薄くなってったのだが、その最中に誰かの記憶のような映像が彼女の脳内に流れ込んできた。赤城改の視点のものであることはすぐ分かったのだが、彼女にとって奇妙なことがあった。どの映像にも、自分ではない"吹雪改"の姿があったのだ。そして激戦の最中、赤城改に向かってくる"吹雪改"が、敵艦載機の集中爆撃を受けたところで映像は終わっていた。瑞鶴改二甲に起こされた時には物体は既に消えていた。瑞鶴改二甲が言うには、赤と白の飛行物体に変化したのち、空へと飛び立っていったそうだ。
その後も夢で何度かその映像が出るようになり、彼女は思い切って赤城改の過去を調べてみることにしたわけである。
吹雪改「あった…!」
彼女が見つけたのは2年ほど前の"幌筵、MI作戦完遂す!"という記事だった。彼女が真っ先に目を向けたのは戦死者の欄。そこに"艦娘ID38450001 吹雪改 70"とあったのだ。さらに記事の中にも"吹雪改が赤城改を死守し"や"吹雪改の勇姿は賞賛に値するものなり"という記述を見つけたのだが、彼女は違和感を覚えた。先日見た映像では、意図的に爆撃を受けているように見えなかったのだ。
翌日、吹雪改は幌筵泊地を訪れていた。赤城改と"吹雪改"の関係はどのようなものだったのか、そしてMI作戦の時、彼女達に何が起こったのかを知るために。まずは泊地庁舎の受付に行き、浅間元帥に話を繋いでもらえるように頼んだ。自分をある意味邪険に扱っていただけに彼女自身気分良くはなかったが、真実を知る為には止む無しと割り切った。だが…。
受付の女性隊員「申し訳ありませんが、元帥はお忙しいので…。」
吹雪改「そ、そんな…。赤城さんの話だけで結構なんですよ!何とかなりませんか?」
受付の女性隊員「そう言われましても…。」
⁇?「何かあったのかしら?」
受付の女性隊員「あ、加賀さん。この娘が赤城さんの件で元帥に会わせろと聞かなくて。」
加賀改「赤城さんの…こと?」
後ろからの声に驚いて吹雪改が振り向くと、そこには書類を抱える青い袴とサイドテールが特徴的な艦娘、加賀改の姿があった。同泊地ではかなりの有名人だが、遠征専門だった吹雪改にとっては殆ど縁のない娘だった。とは言え着任時や一度の大規模作戦での彼女の護衛と、二度は顔を合わせていたが。
吹雪改「あ、加賀さん…。お久しぶりです。」
加賀改「ええ。久しぶりね。…それより、貴女赤城さんを知ってるの?」
加賀改がこのようなことを言うのも無理はない。赤城改が二年前失踪を遂げて以来、赤城という名の艦は在籍してなかったのだ。
加賀改「…まあ、入って。」
加賀改によって、吹雪は秘書艦室に通された。秘書艦の加賀のものであると思われる古い飛行甲板や赤城改とのものだと思われる写真が目につく。吹雪改は促されるままに応接の黒いソファーに座り、程なくして加賀改が三冊の本を持って反対側のソファーに座る。二冊の本は二人の間のテーブル上に置かれ、表題は"アルバム(三冊目)"、"アルバム(四冊目)、"艦娘月報No.2"となっている。加賀改はアルバム(三冊目)の方を開いた。
吹雪改「うわあ…。すごい数の写真…。しかもどれもピントの調節が全部合ってて…。」
加賀改「赤城さんは写真撮りが趣味だったから…。元々は提督が彼女の資源の欲求を抑えようと思って一眼レフを与えたのが始まりだったんだけど…赤城さん、すっかりハマってしまって…。」
暫くして吹雪改がアルバムに一通り目を通し、加賀改に向き直る。加賀改は深呼吸の後、語り始めた。
加賀改「赤城さんはこの幌筵泊地では一際優秀な艦娘だった。私と合わさった一航戦コンビは泊地では当たるところ敵なしとも言われた。だから彼女が抜けると言った時は必死で引き止めたんだけれど…。」
吹雪改「赤城さんは、何故泊地を…。」
加賀改「…MI作戦。そこでの悲劇が彼女を苦しめたのよ。」
吹雪改「MI作戦で…一体何があったんですか?」
加賀改「その前に…初期の頃の赤城さんのことから話しておきましょうか。」
吹雪改「あ、はい。お願いします。」
加賀改「初期の頃の赤城さんは一言で言うと…熱血艦娘といえば良いのかしら。正義感もあって、提督や人々に認められたいって野心も人一倍あって…。深海棲艦の艦を自慢の艦載機で次々と撃破していったの。でも、人間社会の欲望の悍ましさにやがて彼女も疲れ果ててしまって…。そんな時彼女が出会ったのが…貴女ではないもう一人の吹雪さんだったの。」
吹雪改「……。」
加賀改「その様子だと既に知っていたみたいね。当時吹雪さんも半ば放置されていた存在だったから、お互いが拠り所になったんでしょう。二人はまるで本当の姉妹の様に過ごすようになった。正直私が嫉妬してしまうくらいにね。」
吹雪改「本当の姉妹…。」
本当の姉妹の様に接する艦娘は珍しい存在ではない。しかしそれは大概同型艦同士のものであり、史実的な関係も薄い上に艦種が違う娘達にそのような関係が出来ることは吹雪改には意外と思えることだった。
加賀改「そんな時、MI作戦が発動された。連合艦隊の一員として二人は中部海域を駆け回り、敵を撃破していった。その終盤に、あの悲劇が起こった…。」
加賀改は艦娘月報No.2を開いてテーブル上に置いた。彼女がページを捲っていくと、"幌筵、MI作戦完遂す!"の記事があった。"艦娘ID38450001 吹雪改 70"の所に震えたように引いてある青のマーカーが目についた。
加賀改「あの日、何が起こったのか…。記事ではかなり美化されているけど、本当は…。」
その後の加賀改の話を纏めると次のようになる。
MI諸島付近まで来た幌筵の機動部隊は、敵の待ち伏せによる集中爆撃に見舞われる。その結果、加賀を含む複数の空母娘の飛行甲板から火の手が上がり、艦載機の発着艦が出来るのは赤城改のみとなった。また、突然の不意打ちに味方は総崩れとなり、一緒にいた吹雪改と赤城改は離れ離れになってしまった。二人は敵の攻撃に気をつけながら、お互いを探して声を上げる。先に気づいたのは吹雪改だった。傷ついた空母娘の中にいる赤城改の姿を見つけると、一目散に駆け寄って来た。赤城改もすぐに吹雪改に気づき、一瞬安堵した。しかし、吹雪改の背後には赤城改に向けて発艦された敵のたこ焼き型艦載機が多数迫っていたのだ。吹雪改と赤城改のお互い伸ばした手の、指が触れ合うかどうかのタイミングで、たこ焼き型艦載機共の集中爆撃が吹雪改の背中の艤装に命中。艤装は大爆発を起こし、その爆風に赤城改の身体は大きく後退させられる。爆煙が晴れた後、吹雪改がいた場所で赤城改が見たものは、艤装の破片と彼女が装備していた12.7cm連装高角砲(後期型)のボロボロの砲身だった。砲身を拾い上げた赤城改は少しの沈黙の後、大号泣。その後鬼のような形相になり、艦載機を次々と発艦させた。他の空母娘の艦載機矢を奪ってまで発艦させ、その多数の艦載機の攻撃によりMI諸島の敵艦隊は壊滅したのであった。
吹雪改「…そんなことが…あったなんて…。」
加賀改「…赤城さんは、自分を責め続けたの。皮肉にも、それでMI作戦大成功となって、提督には勲章が送られ、赤城さんにも表彰状が送られた。そのことが、彼女を一層苦しめることになってしまった…。」
吹雪改「…それで、赤城さんは泊地を…?」
加賀改は静かに頷いた。
加賀改「一切を捨てて…私の前からも…。」
秘書艦室に1分程沈黙が続いた。
加賀改「…赤城さん、元気にしてたかしら?」
吹雪改「…え?」
加賀改「眠れないって、言ってたから…。行方をくらます前。何時も吹雪さんの夢で目が醒めてしまうって…。おまけに、その夢が勝手に成長し始めた…とか。」
吹雪改「夢が…成長?どういうことですか…?」
加賀改「ええ。熱帯雨林の中を只々進むだけ…。そして、夢を見るたび進む距離が少しずつ伸びて…。そして何回目かの夢の時…赤城さんは見たんだそうです。…遺跡を。」
吹雪改「遺跡…ですか…!?」
加賀改「ええ。見たことのない、奇妙な遺跡だったそうよ。」
吹雪改が泊地庁舎を出た時、夕日のオレンジ色で空が染め上げられていた。吹雪はウルトラマンネクサス、いや赤城改という艦娘の孤独と悲しみを少しだけ垣間見た。だが彼女の見た夢の意味に吹雪改が気づくのは、まだ先のことである。
ー第陸話(後編)に続くー
少し重めな話になってしまいましたね。
僕も吹雪嫁艦なのでこの描写はかなり抵抗があったんですが、
物語のネックになってくるのでどうしても…ね。
後編も出来るだけ早くあげようと思います。
次回は赤城改にとって初の巨人に変身&戦闘になります。
お楽しみに。