ゴッドイーター アンソロジーノベル~the memory of love~ 作:鷹師
ビーッ!ビーッ!ビーッ!
開けた大地に大音量のアラーム音が鳴り響く。
クアドリガの撃破に成功し帰還用のヘリコプターを待つ私たちに緊急通信が入ったようだ。
「緊急事態発生!緊急事態発生!周辺のゴッドイーターは直ちに帰還してください!繰り返します、周辺のゴッドイーターは直ちに帰還してください!」
通信の後ろからは慌てる職員の声、響くアラーム音。緊急事態という言葉の意味が十分すぎるほど伝わる様子だった。
「こちら遊撃部隊クルイロー。帰還ヘリの現在位置と状況の報告を求めます!」
「あ、アリサさん!帰還ヘリはあと五分もあれば到着できると思います。そちらで視認できる距離かと!」
通信器に耳を傾けながら空を見上げるとこちらに猛スピードで向かってくるヘリが確認できた。
「ヘリは確認できました、状況はどうなっているのです!?」
「少し前に巨大な偏食因子の反応をここロシア支部内で確認したのですが、確認に行った人は一人も戻らず……研究中の偏食フィールド発生装置の誤作動かと思われたのですが周囲のアラガミが防壁を破り、内部への多数侵入が確認され現在はその対応で追われています。オペレーター総出で事に当たっていますが確認の取れないことも多く皆さんに正確な状況をお伝えできないのが現状です。門兵との連絡も取れないので町にも被害が出ている可能性があります至急ご帰還ください!」
「了解です!ヘリも着陸態勢に入って……」
ヘリの音のなかに何かが飛んでくる音がする……
はっとヘリのほうを見るのとほぼ同じタイミングで爆音と衝撃が襲い掛かる。
今まさに私たちを乗せるために着陸しようとしていたヘリが炎上している……
そして周囲はいつの間にか大勢の人に囲まれている。その中にはRPG-7―ロシア製対戦車擲弾を持っている人もいる。犯人は明らかだ。
「穏やかな歓迎ではなさそうだねぇ……」
低い声で劉が呟くと、ヘリを打ち落としたであろうマスクの男がフッと鼻で笑った。
マントの下にのぞく見覚えのあるエンブレム……まさかこいつらは
「悪いがゴッドイーターを行かせるわけにはいかねぇんでな。ここでちょいと足止めを食ってもらうぜ。アンタたちには個人的な恨みもあるしな」
鋭く光る目には憎悪や怒りが込められている。やはりこいつらは……アラガミ神教徒!
ヘリを背にぐるっと囲まれ退路が確保できない、このままではロシア支部の救援は愚か自分たちの身も危ない。
「下手な動きはするなよ?ゴッドイーターってのはオラクル細胞の投与によって身体能力が常人のそれを遥かに上回るんだってなぁ?人の子の分際で神の領域に踏み入ろうとするたぁおこがましいにも程があんぞ?だが人の体に変わりはねぇんだ。こいつで十分ヤれんだろ?」
男は打ち終わったRPG-7を投げ捨て肩に担いでる銃に手を伸ばす。確かにこれだけの人数うに斉射されれば私たちも……
私の思考をさえぎるようにスッと一歩劉が前に出る。
「あんだ?聞こえなかったのかテメェ……?下がれ」
劉は男の言葉に耳を貸すことなく頭だけ振り向いてタカシを見た。
「タカシ、お前さんなら『飛べる』だろう?隊長とお譲ちゃんを連れていきな」
「あん?テメェが盾になって他を逃がそうってか?こいつは笑え……」
「早く行け!いくらお前でもこの状況は全員は無理だ!」
劉の眼差しが鋭くタカシを射抜く。タカシは下を向いた後、意を決したように劉を見返した。選択を迫られた有能な二人の部下のやり取りを隊長である私は命令も出来ずに唇をかむことしかできなかった……
「劉、ごめん……」
タカシの背中から大きな翼が生える。
教徒は最初は驚いたがよく訓練されているようでタカシに銃を構える。それに構わず私を抱えるとアラガミ化するタカシをはじめて見て驚いたまま固まるリズを脚に挟み飛び上がる。
直後に発砲音が聞こえるがそれをすり抜け劉がリーダー格の男の銃を神機で破壊する。
「また明日……アル」
周りの景色と同じように劉と男たちの姿は流れていった。