ゴッドイーター アンソロジーノベル~the memory of love~ 作:鷹師
私は極東支部に入隊後すぐにロシア支部に派遣となった新型神機使いの様子を見に行って欲しいとサカキ博士に言われてロシア支部に来ていた。大雪の中輸送ヘりに乗って来たからさすがに疲れたけれども、何とか無事ロシア支部に到着することができた。
ヘリから降りるとロシア支部の大きなゲートが開きだし、その中にはロシア支部の人たちが一列に並んで出迎えに来てくれていた。私の姿が見えると一斉に敬礼、そしてその中の一人が口を開いた。
「長い距離わざわざすまんな、元気そうで何よりだ」
列の中心にいた分厚いコートを着て、シャープカ(ロシア帽)をかぶった背の高い男。この人はロシア副支部長だ。
「そんな、お出迎えありがとうございます副支部長。そちらも元気そうですね」
「まだまだ倒れるわけにはいかんよ、ロシア支部のためにもな」
副支部長は30を越えても前線で戦い続けるベテランのゴッドイーターだ。主に現地での指揮を執るがその腕前も凄まじく、一人でサル型の中型アラガミ「コンゴウ」を仕留めた旧型のスナイパー使いだ。
「最近は彼のおかげで大分楽をさせてもらっているがな。紹介しよう、小早川タカシ君だ」
副支部長は言い終わると右手で隣にいた少年の頭に手を置いた。見た目は長い髪とメガネとロシア支部の簡素なコート、そして……小さい。身長は165センチくらいだろうか?
「小早川タカシですよろしくお願いします」
一歩前に出てペコリと頭を下げるタカシ君。結構緊張しているようで動きが硬い。
「アリサ・イリーニチナ・アミエーラです。アリサって呼んでくださいね」
こちらも自己紹介をしてみるが、彼は一瞬申し訳なさそうな顔をして目をそらしてしまう。
「こいつはこう見えて人見知りでな、しかし慣れると結構うるさいやつだぞ」
「そ、そんなこと思ってたんですか?」
こうしてみるとまるで親子のような二人のやり取りに思わず笑顔になってしまう。
「ではタカシ君、アリサ君を部屋に案内してやって…」
副支部長は話しながら一瞬、険しい顔で私の後ろを見た直後に叫んだ。
「全員下がれ!アリサ後ろだ!」
言われてとっさに門の中に飛び込みながら後ろを見る。さっきまで私がいた場所に突き刺さっているトゲのような物体、そしてその奥には鬼のような顔の恐竜を思わせる風貌をもった小型アラガミ「オウガテイル」がいた。こいつらは仲間で行動するはず、周囲を見渡し数を確認。合計5匹。
「非戦闘員は門を閉じろ!中には1匹もいれるな!タカシ、援護する行け!」
「了解!」
言うが早いかタカシ君は一番近いオウガテイル一匹に向かって走り出す。副支部長も援護のために門の外へ出たので私も神機を取り出し門の外へ。
「アリサは門が閉まるまで防衛を頼む」
「了解!」
神機を銃形態にして門の前に陣取る。中へは一匹も通さない!私が神機を構えた時、オウガテイルの悲鳴があがった。
とっさにその方向に目をやると、オウガテイル1匹の胴体に深々とタカシ君のショートブレードが突き刺さっているのが見えた。まさか私が門の外へ出るこの短時間で彼は1匹に接近し倒したというのだろうか、なんという速さだろう。
しかしそこに、左右からオウガテイルが1匹ずつ襲い掛かる。このままでは挟み撃ちになってしまう。そう思ったのも束の間、右の1匹が大きく後ろに吹っ飛んだ。副支部長の的確な援護射撃だが左の1匹には間に合わない。しかし彼は焦ることなく、既に仕留めたオウガテイルから素早く剣を引き抜きその場で跳躍、彼がいた場所に襲い掛かるオウガテイル。しかし彼はそこにはいない
「ここだああああああああああ!」
声とともに真下に剣を突き立てオウガテイルの頭部を刺し貫いた。その隙に、副支部長が先ほど吹っ飛ばしたオウガテイルに止めの銃弾をお見舞いする。残りのオウガテイルは3匹。
「各個撃破!門に向かってる奴はアリサ、左のはタカシ、右のは俺がやる!」
「「了解!」」
副支部長の指示を聞き、自分の敵に集中する。門に迫るオウガテイルの足を狙い第1射、まずは動きを止める。狙った部位に命中しオウガテイルはバランスを崩す。そこにすかさず第2射、3射と頭部を狙って弾丸を撃ち込む。苦しげな呻き声を上げるアラガミに向かって止めの一撃、神機を捕食モードへ変更。赤い剣の刀身が黒くなり二つに裂ける、その姿はまるで黒い怪物の口のようだがこれが神機の本来の姿、神機は「生き物」である。そして神機はアラガミを「喰らい」だす。こうしてオウガテイルを文字通り捕食し終わると同時に、
「二人ともご苦労だった、よくやってくれたな」
副支部長が神機を片手にこちらに近づいてきた。タカシ君も走ってくる。
「すごいですねタカシ君。まだゴッドイーターになって間もないのに」
「こいつは本当に成長が楽しみだ。最近はこいつのことをクゥズィニエーチクなんて呼ぶやつもいるくらいだからな」
クゥズィニエーチク……ロシア語でバッタという意味だ。確かにものすごい跳躍力だった。
「バッタといわれても嬉しくないですけどね、えーっと……」
照れ笑いをして彼は少し頭をかいた後口を開いた
「同い年みたいで……だし、呼び捨てでもいいよ?」
少し恥ずかしそうに、右手を差し出しながら彼はそう言った。
「はい、わかりました。よろしくお願いします」
私は彼の右手を握った。これがタカシ君、いえタカシとの出会いだった。