「やってきました北欧!」
「テンション高すぎですよ束さん。おぇ」
空港を出ると束が高らかに叫び、一方夏は滅竜魔導師の唯一の弱点である乗り物酔いで衰弱しきっていた
「大丈夫ですか夏様?」
「だいじょばない」
「まさか夏にこんな弱点があったにゃんて」
「驚きです」
今にも吐きそうな夏の背中を摩るグレイフィア。黒歌と白音は夏の意外な弱点に目を点にする
「・・・太陽が眩しい。暗い所に行きたい」
引きこもり体質の紫は吸血鬼のように直射日光を避けようと頑張るが効果が出ていない。何故夏達が北欧にいるかと言うと、家族も増えたことなので記念に旅行でもしようと言う事になり、グレイフィアが企画し、くじの結果、海外旅行に決定した。夏は当初、転移魔法で行くのかと思っていたが、折角の旅行だと言う事で飛行機に乗って行くと言われた。それを聞いた夏は断固反対したが、多数決に結果飛行機で決まり、魔王であるサーゼクスとお話ししてプライベートジェットを借りて北欧に行くこととなった
「こうなることが解ってたから飛行機に乗りたくなかったんだ」
「申し訳ありません夏様。まさか夏様がここまで乗り物に弱いとは知りませんでした」
「グレイフィアのせいじゃねぇよ。はっきりと言わなかった俺にも非がある。取りあえず、ホテルに行こうぜ」
「その夏様、大変申しにくいのですが・・・・ここからホテルまでかなり距離があり、徒歩での移動は無理なんです」
「・・・・観光は明日からだな」
「・・・はい」
グレイフィアの言葉を聞いた夏は数秒固まった後、項垂れながら答えた
「おぉおおお~~~」
タクシーに乗りホテルに付いた夏はグロッキーになっておりベッドで人とは思えない呻き声を出しながらぴくぴくと震えている
「夏様、私達は辺りを散歩してまいります。帰りに薬を買って来るので、部屋に居てくださいね」
「お、おう」
「ハッピー、夏の事頼んだにゃ」
「あいさー」
黒歌に声をかけられ、束が開発した『検問無効バッグ~~』から飛び出たハッピーは夏の頭に着地すると元気よく返事をした
「ねぇ夏~~」
「な、なんだハッピー?」
「暇だからどこかに行こうよ~」
グレイフィア達が散歩に出かけてから数分後、やることが無くぼーっとしていたハッピーが唐突にそう言った
「い、行こうって。お前、グレイフィア達に俺の監視と留守番頼まれただろうが」
「だってオイラそんなに時間が掛かるとは思ってなかったんだもん。それにず~~とバックの中にいたから動きたくてしかたないんだよ~」
そう言うとハッピーは翼を出して窓へと移動する
「ま、待てハッピー、勝手な行動するな」
動く程度まで回復した夏はハッピーを止めるため、追いかけ外に出るハッピーを捕まえようとしたが、ハッピーが外に出ようとした窓はベランダの無い普通の窓だった為
「何~~~~!?」
「夏~~!?」
必然的に夏は地上に落下していく。落ちた夏に驚き急いで救出に向かうハッピー
「はぁ、はぁ」
「休日の日に襲撃があるだなんてついていませんね」
夏達の泊まっているホテルの路地裏で、金髪ロングの少女と、栗色髪シュートの少女が、霧の中で3人の少年と対峙していた
「っは!ヴァルキリーも大したことないな!」
「ヘラクレス、彼女達はヴァルキリー候補だ」
「だが、ゲオルグの張った結界内、魔法攻撃に耐性のあるヘラクレスにここまでダメージを与えた事は称賛に値する」
少女達の事を見ていた少年は何かを思いついたのか、眼鏡をかけた少年にある提案をする
「ゲオルグ、君の魔法でこの二人を洗脳することは可能か?」
「時間をかければ可能だが、もしかして仲間にするのかい?」
「あぁ。彼女達は確かに英雄じゃないかもしれないが、英雄に届きうる逸材だ。仲間にしておいて損はない」
「成程ね。更に北欧魔術の研究も出来るから僕にとっては一石二鳥になるわけか。ヘラクレス、彼女達を拘束してくれ」
「へいへい。人使いが荒い奴等だぜ全く」
ヘラクレスと呼ばれた少年が少女達の拘束する為、一歩前に足を踏み出すと
「ん?何か聞こえねぇか?」
何かが聞こえたのかヘラクレスは足を止めて周りを見回す
「何をしているんだヘラクレス?」
「いや今なんか声が聞こえたような気がしてよ」
「声?馬鹿を言うなここ(結界)は外部と遮断されているんだよ?声何て聞こえるわけないじゃ・・・」
「どわぁあああああ!?」
「は?」
結界を張ってるゲオルグがヘラクレスの考えを否定しようとした時、夏が落ちてきた。夏はそのままヘラクレスと互いの頭を衝突させ、周囲に鈍い音が響いた
「おぉおおお~~」
「くそ、頭の固さに自信のある俺にダメージを与えるなんてどんだけ硬いんだ?」
互いに頭を抱え、地面を転がりまわる、夏とヘラクレス。そんな二人を余所に他の4人は別に事を考えていた『どうやって一般人が結界内に侵入出来たのか?何で空から降ってきたのか?』と考えていると
「夏――!!」
今度は人語を喋る翼を生やした青い猫がやってきた
「大丈夫?」
「何とか」
「所で夏、これってどんな状況なの?」
夏が無事だったことに一安心したハッピーは周りを見回して夏に尋ねた
「俺が知るか。ただまぁ一つ言える事は、何処の国にも集団暴力があるってことぐらいだろう」
ハッピーの問いに答えた夏はボロボロになっている二人の少女を見て、目の前の少年たちが敵だと判断した
「おいおい、あいつ俺達とやる気みたいだぜ」
「どうする曹操?」
「・・・一つ聞きたい。君はその子達の知り合いなのかい?」
曹操と呼ばれた少年は夏に質問をする
「今あったばかりの他人だ」
「なら何であかの他人である彼女達を助けようとする?もしかしたら全員グルなのかもしれないんだぞ?」
「俺の勘がそれは無いって言ってる。それと最初の質問だけど、誰かを助けるのに理由なんているのかよ」
「どうやら君は相当馬鹿な奴見たいだな。ヘラクレス、適当に相手をした後、気を失わせるんだ。ゲオルグは記憶消去の準備を」
曹操が指示を出すとヘラクレスが前に出る
「ハッピー、二人の傍で待ってろ」
「あい。・・・夏」
「ん?」
「負けないでね」
「あたぼーよ」
ハッピーに返事を返すと、夏も一歩前に出る
「サービスだ。最初の一発は避けねぇでやるよ。ほれ、殴ってこい」
自分の肉体によほど自信があるのかヘラクレスは余裕の表情で喋る
「じゃあ、遠慮なく。火竜の鉄拳!!」
夏はその言葉通り、炎を纏わせた拳でヘラクレスを殴り飛ばした。この一発が英雄の名を持つ人間対竜を滅する魔を習得した夏の戦いのゴング変わりになった