Doctor Who Who is this girl?   作:ストロマトライト

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ちょうど3話と4話の間にあたる話です。
なんと、かつてのコンパニオンのあの人が登場。


Extra story 時を駆ける箱の中で

「あれ……こっちだと思ったんだけどな」

高校での一大事件がひと段落し、ターディス内に作ってもらった司の部屋で一休みしようとした司だったが、曲がるべき角を一つ間違えたのが運のつき。かれこれ三十分は迷っていた。

側から見ればただのポリスボックス。しかし内部は想像を絶するほど広い。キッチン、バスルーム、サウナ、プールまで完備している究極の生活空間だが、こう迷路のようになっていては住みづらくて仕方がない。

「ここを曲がって、いや違う。それだと戻って来ちゃうしなぁ」

さきほどから色々な扉を開けてみたが、何の用途に使うのかも分からない部屋ばかりだ。

一つの部屋などは、大量のトルコ帽が置かれていたのだから。

そして再び、司は右と左に広がる分かれ道へとたどり着いた。

「全く、どっちに行けば正解なんだよ」

このままでは、ターディスの中で迷った結果餓死という目も当てられない結果になってしまう。宇宙規模の危機を三回もくぐり抜けたのに、そんな馬鹿な話はない。

ひとまず、司は右の道を選んだ。

その道をひたすら真っ直ぐに歩き続ける。

途中いくつかの扉が目についた。何の部屋かも分からないため、素通りしていく。

今度は本当にただただ直線の道だ。ターディス内の通路には、規則性なんてない。

「本当、一体どこまで行けばい……あれ?」

ふと、司は視界の隅に映った一つの扉に気づく。他の扉とは違い、狼を形どったようなネームプレートが掛かっていた。

プレートの中には、五文字の英語。

「Tyler……タイラーか?」

試しに、司はその扉のドアノブを回す。鍵はかかっていなかった。

中に入ると、ごく普通の部屋が広がっていた。ベッドに机。そして洋服箪笥。そこには生活感があった。

恐らく誰かが、ここに住んでいたのだ。

「これは……」

司は机の上に写真立てが置いてあるのに気づく。手に取ると、そこには二人の人物が写っていた。

一人は若い西洋人の男性。男の司から見ても顔立ちがいいことは一目で分かる。その隣には、金髪の女性が歯を見せて笑っていた。まるで写真を撮ったその時が、人生の春とでもいうように。

「ここにいたんだ」

後ろからした声に驚いて、司はもう少しのところで写真立てを落としそうになった。

そこにいたのは、他の誰でもなくドクターだ。

「どっ、ドクター!? いやこの、迷ってたらたまたまこの部屋に入っちゃって」

「だと思った。司の部屋に行ってもいなかったから、もしかして迷ったんじゃないかと思ってね。でもまさか、この部屋にいるとは」

ドクターも部屋に入ってくる。そして、司の隣にやって来た。

「ドクター、この人たちは?」

その写真を見るなり、ドクターは微笑した。

「懐かしいな。男の方は昔の僕。女性の方はその時の僕のコンパニオン」

「えっ、ドクターって……男だったの!?」

「前にも言っただろ? 僕たちタイムロードは、一定の時間が経つと『再生』して、その年齢、顔立ち、髪の色、時には性別まで変わるんだよ。僕はこの顔、結構気に入ってたんだ」

これが、かつてのドクター。司が知る前のドクター。

「じゃあ、この金髪の女の人と旅を?」

「そう。彼女はローズ・タイラー。僕がかつて旅した娘で、同時に僕が……」

そこで、ドクターが言い淀んだ。

その先を口にするのを、躊躇するように。だがドクターは、続けた。

「僕が、愛した人だ」

ドクターは懐かしそうな、悲しそうな目で写真の中の女性、ローズを見ている。

写真に写る男性姿のドクターも楽しそうだ。

和人と花梨と同じ。二人ともお互いに好意を持っていたのかもしれない。

「それで、このローズって人とは……」

「あまり、いい別れ方をしなかった。ある事件があって、彼女は僕たちが住む世界とは別の世界に住まなければならなくなったんだ。だから二度と、ローズには会えなくなった」

「ターディスでその世界に行くことは、出来ないのか」

司の問いに、ドクターは首を振る。

「むやみにその世界に行けば、空間に穴ができる。そのたびに世界が壊れていくんだ。そんなことはできないよ」

司は手にしていた写真立てを机に戻した。

このローズという女性も、司と同じように悩んだのだろうか。日常と非日常の間で。このスリルある旅を経験したあとで、普通の生活に戻れるのだろうかという不安に。

もしも彼女に会えるのなら、ぜひ聞いてみたいものだった。

 

 

「ドクター、もし良かったらもっと聞かせてよ。このローズって人のこと」

「いいよ。話してあげる」

ドクターはベッドに座った。司がその隣に来るようにと、彼女はベッドを片手で叩く。

司は指示された通り、その隣へ座った。

「ローズは、元々ロンドンのアパレルショップの店員だったんだ。それが、偶然マネキンのエイリアンが彼女の勤めていた店に襲撃してきてね……」

ドクターが楽しそうに語る。

彼女が『彼』だった頃、共に旅し、そして愛した女性のことを。

世界を超えた先にいる、二度と会えないその人のことを。




ストロマトライトです。
この話は、「ターディスには実は今までコンパニオンになった者全員の部屋が残っているのでは」という説を見て書きました。
ローズにするかエイミーにするか迷いましたが、やはり自分にとっても思い出のあるコンパニオンとしてローズを選びました。
また機会があればこのような短編を書こうと思います。
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