Doctor Who Who is this girl?   作:ストロマトライト

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二ヶ月ぶりの投稿になります。遅れて大変申し訳ありませんでした。
投稿を優先したので今回はちょっと短めです。


戦場の天使 Part3

恐怖が混じった時、人は時間をそれは長く感じるものである。

それはたとえ一瞬であっても例外ではない。その一瞬を過ぎ、司は今まさに瞼を上げる。

目の前には、司を捕らえんとして思い切り腕を伸ばし、目を見開いた嘆きの天使。だがあと一歩というところで二体の天使は彼に届いていない。

「……ギリギリ、セーフだね」

ドクターがほっと息をつく。彼女とユーリの方、入り口付近にいた天使も爪を立て牙を剥いているものの二人には触れていない。

天使を見ながら、司はゆっくりと離れていく。

三人が離れると天使たちは丁度、三体がそれぞれ互いを見つめる形で硬直した状態になっているのが分かる。

「よかった。前にやったことのあるやり方だったけど、うまくいったみたいだ」

「じゃあ、ドクターは最初からこれを狙って?」

尋ねる司に、彼女はいつもの勝ち誇った顔をする。

「そう。天使はお互いが見つめあっている時も動けないんだ。だから彼らは普段、自滅しないように自分たちの顔を手で覆ってるってわけ」

ソニックドライバーを向けながら、ドクターが石像と化した嘆きの天使へと近づく。

そして、天使にそっと触れた。

「お、おい……大丈夫かよ? そいつに触ったりして」

「クオンタム・ロックのかかった天使はただの石像と変わんないよ。ほら、ユーリもどう?」

天使と腕を組みながらドクターがユーリに勧めるが、彼は黙って首を振った。

本当に天使はただの石像になってしまったようだ。

「それにしても、何で天使が三体も? 来てたのは一体じゃないってこと?」

「いや、そうじゃないみたいだ」

ドクターがソニックドライバーを見ながら言う。

「三体が放つクオンタム・ロックの波長はほとんど同じ。ということは、どれか一体から『伝播』したってこと」

「つまり……?」

「天使には自分の周囲にある普通の石像に干渉して、天使にする力があるって聞いたことがある。実際に見たことはなかったけど、どうやらこのうち二体は元々嘆きの天使じゃなかったみたいだ」

「おい、それじゃ……」

この街にある石像は、どれも嘆きの天使になる可能性があるということ。

そして運の悪いことに、ここは第三帝国の首都、ベルリンだ。

「まずいぞ。ベルリンには気色悪い総統の像やら皇帝時代の像だってわんさかある。それが全部天使に変わったら、ドイツ人もロシア人も皆んな消されちまう!」

「ドクター、何とかしないと」

「でも方法がないんだ。顔合わせにする方法だって、天使はそう何回も引っかからない。しかも一体でも天使が残っていたら、またそこから別の像へ『伝播』してしまう。一度に全ての天使の動きを止めないと」

そもそも、現時点でどれ位の天使がこの街にいるかも分からない。もしかすればこの三体だけかもしれないし、最悪の場合千体を超えているかもしれない。

どう考えてもこの状況は嘆きの天使が有利だ。

「いや、絶対何か方法があるはずだ。今までだって何度か天使と戦ったんだろ? だったら今回もきっと……」

司は考える。自分たちが生き残るために。この星の存続のために。

見てる間は石像。目を離せば動く。

ならば大量の天使をどこかに集めて、誰かがそれを見続ける。否、そんなことは到底不可能だ。人間ならば瞬きしてしまうだろうし、第一誰がずっとそこで止まり続けるというのか。

「……いや、待てよ」

一つの考えが、司の脳裏をよぎる。

「ドクター、例えば、何かに写った天使の顔が天使を見続けても、天使を石像の状態に出来る?」

「もちろん。重要なのは、『天使が見られていると感じるかどうか』だからね」

「じゃあ……鏡なんかどう?」

鏡。仮に鏡に天使を写して、写った天使の顔が別の天使を見るような位置に鏡があれば。

そうすれば半永久的に天使の動きを止めることも可能である。

司の言葉を聞いて、ドクターも腕を組み彼の案について検討した。

「確かに僕も昔、天使に対して姿鏡を使って対処したことがある。でもその時相手は一体だった。何体もの天使にそのやり方は……」

「なら、全面が鏡の広い場所に天使を誘導するとか」

「そんな変な場所、そうそう簡単に見つからないって」

「俺は知ってる」

そう言ったのは、ユーリだった。

「何だって!?」

「どこなんだ!?」

突然のユーリの言葉に、瞬時に食いつく二人。

それを見て、彼は呆れたようにため息をついた。

「おいおい二人とも。まずは、この気持ち悪い天使から離れた所で話さねぇか?」

ユーリが互いを見つめ固まった天使を指差す。

確かにここは、話すにはあまり良いとは思えない場所だ。

 

天使のいる先ほどの肉屋を出て、三人は少し離れた別の建物に入る。

そこはどうやらバーだったようで、カウンターの向こうにある棚にはビール類が所狭しとならんでいた。まだカウンターに飲みかけのグラスが置いてあるところを見ると、ベルリンで戦闘が始まるかなり直前まで客がいたようだ。

「さて、こいつがベルリンの地図なわけだが」

店の真ん中にあるテーブルの一つに、ユーリが持っていた地図を広げる。

「それでどこなんだ、全面鏡の場所って?」

焦る司を、ユーリは手で静止した。

「落ち着けって。ここだ。ドイツ国会議事堂(ライヒスターク)

ユーリの指差した地点。地図の右の方に位置する場所だ。

「ここって国会議事堂じゃないか。こんな所に鏡なんかあるの?」

ドクターがユーリを訝しげに見る。

「議事堂の中に、『鏡の間』って部屋があるらしいんだ。総統がフランスの宮殿に模して作った部屋らしくてな、壁中に鏡が張り巡らされてる。噂では議事堂の地下にあって、かなりの広さがあるとか」

「じゃあ、ここになら天使を閉じ込めることが出来るかも」

「でもこの部屋が本当に議事堂の地下にあるって保証がない。あくまで噂でしょ?」

ドクターの態度は依然として懐疑的だ。

が、それも頷ける。仮にこれを信じて天使たちを議事堂に誘導した後でそんな部屋がないと分かれば、今度は三人が餌食となってしまう。

「だから俺としても一度確かめてから行きたいもんだが、あいにく議事堂では今ベルリンで最も激しい戦闘が展開してる。行って戻ってなんて悠長なことやってらんないぞ」

「それじゃ行くだけでも大変だな……」

議事堂までの道で最大の障害となるのは、どうやら天使ではなく展開しているドイツ軍とソ連軍のようだ。

「ウンター・デン・リンデンの道を通っていくのがここから一番近いが、それじゃ自殺行為だ。遠回りだが裏道を使って戦闘の多い場所を抜けつつ、議事堂へ行く」

「天使はどうやって引き付ける?」

「それが問題だ。ベルリン中に石像があるから、一箇所に固まってるはずもない」

「でも大規模な戦闘が起こっているなら、人も多いはずだ。それに釣られて嘆きの天使も集まってくるはずだよ」

これで、ひとまずの目標が設定された。

議事堂へ急ぎ、やってきた天使を引きつけて地下にあるという鏡の間に誘導する。

色々と問題はあると思われるが、今はこの方法しかない。

「さて、当面の行動は決まったね。あとは一つ気になることを解決すればいいだけ」

ドクターはソニックドライバーを宙へ放って取る。

そしてキャスケットをかぶり直すと、スッと立ち上がった。

「どうしたんだ、ドクター?」

「気になることって?」

司とユーリ、二人の問いにドクターは静かに応える。

「どうしてさっきから、近くで銃声や砲撃音が聞こえないんだろう」

気づかなかった。

ドクターの言う通り、先ほどからこの辺りは戦場だというのに馬鹿に静かだ。戦車どころか兵士の一人も見当たらない。思えば、肉屋でドイツ人の悲鳴を聞いて以来、騒音らしいものを全く聞いていなかった。

このバーの目の前は議事堂まで続くウンター・デン・リンデン通りに繋がる道だ。議事堂での戦闘が激化しているのなら、戦車や兵士が止め処なく走ってきていてもいいはずである。

「偶然……ってこともあるだろ」

「いや、ドクターの言う通りだ。この道を誰も通ってこないなんておかしい」

サブマシンガンを持って立ち上がるユーリ。

だがドクターは、それを一度静止させた。

「待って。三人で一気に出よう。念のために」

そして彼女は、司にも立つように促した。

「司、ユーリ。僕たちは今から外に出る。あの扉を開けたら、可能な限り辺りを見回すんだ。司は右、僕は真ん中、ユーリは左。天使はどこに隠れているか分からない。用心してかかろう」

「さっきみたいに扉を開けたすぐ先にいたら?」

司は一応聞いておいた。

「その場合はすぐ後ろに下がること。もちろん瞬きは……」

「厳禁、だろ? 分かってる」

三人が扉の前へと向かう。

ユーリは自分のサブマシンガンを、ドクターはソニックドライバーを構えて。

ドクターがドアノブに手をかけて、一思いに扉を開けた。

 

三人は急いで周囲を見回す。

自分が任された範囲に、羽を持ったあの石像がいないかどうか。だが、そんなことをする必要はなかった。

嘆きの天使はいなかった、という意味ではない。

「これは……物音がしないはずだよ」

三人を代表して、ドクターが呟いた。

視界の先。建物の物陰、捨てられた車の影、道という道。

至る所に天使の石像がいた。ある天使はその顔を覆い、またある天使は牙を剥いてその両手を伸ばしている。どうやら彼らがここを通る者を皆、餌として平らげていたようだ。

「どうすんだ、この状況?」

「思ってたより遥かに悪いよ。でも道はある。ほら」

ドクターは集まっている天使たちの間に隙間を見つけた。その先には、丁度ユーリが地図で指し示していた議事堂へ繋がる道が続いている。

「ここを抜けて議事堂へ向かおう。これだけの天使を一気に鏡の間に閉じ込められる絶好のチャンスだ」

「それまで目を開け続けてないといけないってことか……」

風が吹いて砂塵が舞う。その埃が、司の目に飛び込んできた。

「痛ッ……」

その時、司は両目を閉じて目を擦ってしまった。

それにドクターが気づいた時にはすでに遅し。右方にいた天使たちは一気に距離を詰めて司の目の前まで近づいていた。その手が彼に触れずに済んだのは、ソニックドライバーをドクターが咄嗟に天使たちへ向けたからだ。

何も見ていないようで全てを見据えるような石の大きな目が、司を見ているようだった。

「ごめんドクター、その……うっかりして目を……」

「いいから下がって! 早く!」

ドクターに言われるがまま、司は震える足をゆっくりと動かして後退する。

「ユーリ、左はちゃんと見てる!?」

「見てるが、俺の方も埃が舞って邪魔だ! 早いとここっから抜け出さないと」

ここへ来て、急に風が吹雪いてくる。

砂塵が三人の視界を遮ろうとした。戦闘のせいで小さな建物の破片がごろごろしているため、少しの風で視界が悪くなる。

「よし。僕が先に行こう。あの通りへ出たら、僕が天使を見ているから君たちも来るんだ」

集まった天使と天使の隙間。

そこを拭うように、そろそろとドクターは進んで行く。あと数ミリで天使の手が彼女の服に触れそうなところを上手く避け、なんとか天使の群れを抜けて通りへと走って行った。

「大丈夫だよ。 ユーリ、司、ほら」

ドクターに施されるがまま、まずは銃を向けながらユーリが、それに続いて司が天使の間を進む。

右側の天使達をユーリが、そして左側の天使達を司が注視する。正面からはドクターが見ているため、守りは硬い。

二分ほどで、二人も天使の間を見事に通り抜けた。

「よし。第一関門突破だね。あとは……」

「議事堂まで突っ切るぞ。ただ問題は、議事堂前に集結している赤軍とドイツ軍の戦闘のど真ん中をどうやって通るかだ」

「少し遠回りになるけど、裏から回ろう。正面よりは戦闘もマシなはずだから」

「で、天使をどうやってそこまで連れていく?」

司がドクターに聞く

そう。肝心なのはそれだ。今三人の前には大量の嘆きの天使。彼らを動かすためには、一時的に目を離さなければならない。

「とにかく走ろう。走りながら振り向くんだ。徐々に引きつけて、議事堂まで連れていく」

「どのタイミングで振り向く?」

「五秒……か六秒に一回。いや三秒……。とにかく追いつかれない程度に」

ドクターの指示は曖昧だったが仕方がない。彼女自身もこのエイリアンについて知らないことが多すぎる。

だが現状を打開するためには、司もユーリもドクターの案に従うことにした。三人はギリギリまで天使たちを見つめ続ける。

「僕が三つ数えたら走るんだ。行くよ……3、2、1…」

ドクターが1を言い終わるか終わらないかのうちにユーリと司が走り出す。

「ちょっと、早いって!!」

言いつつドクターも二人のすぐ後ろを走る。五秒ほど走り、後ろを振り向く。

天使たちは爪を立てた両手を前に出し、三人との距離を確実に詰めてきていた。

「よし。上手く追ってきてる」

 

 

燃え盛るベルリンの街。

崩れかけた建物の屋根に、一人の少女が立っていた。

「一体はぐれたのを探しに来ただけだったんだけど……予想以上に増えてるわ」

少女の後ろには石像が二体。

羽を持ち両手で顔を隠した天使の像。嘆きの天使だ。

だが天使は、少女を捕らえるどころか触ろうともしない。

「でもまあいいわ。面白い人が見つかったし。まさか『迫り来る嵐』にお目にかかれるなんて」

少女が眼下の道を見る。

そこでは宇宙一有名なタイムロードが、二人の地球人と共に天使から逃れようとしていた。

 




こんにちは、ストロマトライトです。
ここ最近忙しかったのもあって投稿がストップしていました。今まで読んでくださった皆様、大変申し訳なかったです。
天使編は次回でおそらく終了です。次のエピソードは既に考えてあります。これからも遅くはなるとは思いますが投稿していこうと思うので、どうか温かい目で見ていただけると幸いです。

ちなみにTwitterで近況・日常報告等もしていますので良ければご覧ください
                         →@Dontblink223

それでは、今回はこの辺で
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