痛快! 男達の幻想郷   作:豊之丞

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主人公は、またぎです。


妖怪なんて食っても美味くない

「ふぅ…、今日の収穫はこれだけか」

 

猟銃を肩に担ぎ、仕留めた獲物を引きずりながら呟く男。

 

男の名は、近藤祐助。

幻想郷の人里に住む人間である。

 

「まあ、これだけデカけりゃあ、そこそこ金にはなるだろう」

 

仕留めた獲物というのは、猪の事であった。 しかも、それなりに大物である。

 

「日が暮れる前に帰るか、せっかくの獲物を妖怪に横取りされちゃ、敵わんからな」

 

独り言を呟きながら歩く男。

 

鬱蒼として森を、来た道を戻る。

自分の足音と、鳥の鳴き声が時々する以外は、とても静かであった。

 

しかし、不意に足を止める。

 

「……噂をすればか……」

 

「ガルルルル……」

 

男の目の前に現れたのは、熊とも狼とも言えない、巨大な妖怪であった。

見た目は大きいが、まだ下級妖怪であり、本能でしか動かない妖怪であった。

 

「おい…、こいつは俺が仕留めた獲物だ、横取りは厳禁だぞ?」

 

男は警告するが、その妖怪は徐々に近付いてくる。

 

「それとも…、狙いは…俺か?」

 

「グォォォォ!!」

 

突然、妖怪が雄叫びを上げて突進してきた。

 

「やっぱりか…」

 

獲物を置いた男が、素早く避ける。

 

「ガァァァァ!」

 

執拗に襲い掛かる妖怪。

 

「どうした、遅いぞ?本気で来い!」

 

男は、正確にその攻撃を手慣れた様にかわす。

 

『ブォン!』

 

「おっと!?」

 

妖怪から繰り出される、素早い爪の攻撃をかわすも、僅かに服を切り裂かれた。

 

「よぅし、燃えて来たぜ!」

 

男は不敵に笑い、構え直す。

 

妖怪と少し距離を取ると、懐のポケットから札を取り出す。

 

「これを食らいな!」

 

数枚の札を妖怪目掛けて投げる。

 

『ズドーンッ!』

 

「ギャァォォォ!」

 

札が妖怪に命中した瞬間、爆発を起こし悲鳴をあげた。

 

「まだまだぁ!」

 

男が取り出したのは、収縮が出来る金属の棒。

外の世界で言えば、警戒棒である。

 

それを構えた瞬間、男は一気に妖怪との間合いを詰め攻撃を畳み掛ける。

 

「お前は、食っても不味そうだからな、食用にしようなんて端っから考えちゃいねぇぜ!」

 

爆発で仰け反っていた妖怪に、その一撃を加える。

 

「悪」

 

銅に一突き

 

「鬼」

 

腕に一撃

 

『バギィ!』

 

「ギャォォォ!」

 

妖怪の腕の骨が折れる音が響く。

 

「退」

 

両手で振りかぶり、棒で妖怪の足を払う。

 

「散!」

 

足を払われ倒れた妖怪の脳天を警戒棒が貫いた。

 

「ガォァァァ……!!」

 

血飛沫と同時に、妖怪は断末魔の叫びを上げ、動かなくなった。

 

「封印!」

 

動かなくなった妖怪に、数枚の札を貼り付けた。

 

「ふう…、一丁上がりっと…」

 

それを確認した男は、戦闘体勢を解いた。

 

「悪く思うなよ、こっちもそんな簡単には殺されたくないんでね。無闇に襲ったお前が悪いんだぜ…」

 

物言わぬ妖怪に、男はそう言った。

 

「さてと、余計な時間を食っちまった…、早く帰ろう」

 

男は、再び獲物を持ち、歩き出した。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

「おお、村長!お帰りなさい!」

 

「村長は止めろよ…」

 

人里の入り口で、里の若い人間にそう呼ばれ、男は不満そうに答えた。

 

「恥ずかしがらなくてもいいじゃん!貴方は村長みたいなもんなんですからさ」

 

「村長って役職は正確には無いんだかな…。それに、俺はそういう堅苦しい事は好きじゃ無いんだ」

 

「またまた遠慮して!」

 

「頼むから勘弁してくれ…」

 

若い男に弄られ、祐助はバツが悪そうであった。

 

「しゃーねぇな、ところで……今日は大物を採って来たんですね!」

 

「おう! 久しぶりの大物だ。 尤も、これだけだけどな」

 

「こんだけ大きけりゃ、十分っすよ!」

 

「そうかい?」

 

二人はそう雑談していたが、不意に祐助がその若い男に言う。

 

「そうだ…、さっき向こうの森で妖怪を仕留めたんだ。 自警団の連中に後始末をお願いしておいてくれ」

 

「えっ、妖怪を? 近藤さん1人で?」

 

「何だよ…、信じられないのか?」

 

「い、いえ、そういう意味では…、よくご無事で」

 

「そう見えるか? 実はな…」

 

そう言うと、切り裂かれた服を若者に見せた。

 

「服が…! 大丈夫ですか?」

 

「大丈夫だ問題ない、服だけだよ」

 

「マジすか…」

 

「とにかく、確かに伝えたからな、後は頼んだよ」

 

「分かりました!」

 

そう言うと、祐助は里へと消えて行った。

 

 

 

その後、祐助は仕留めた猪を精肉屋に売りに来ていた。

 

「…はいよ、これだけで良いかい?」

 

「どれどれ…、うん! 久しぶりに儲けさせて貰いました!」

 

肉屋の店主から渡された金をチェックして、祐助から笑みがこぼれた。

 

「今回は、なかなかデカかったからね、それだけの価値はあるよ」

 

「ありがとうおじさん、助かりますわ」

 

「また、次回も頼むよ」

 

「こっちこそ、毎度!」

 

店主に礼を言うと、祐助は店を出た。

 

「さぁて、今回は収入が多かったし、おやっさんとこに飲みに行くか…」

 

「おーい、祐助!」

 

「うん…?」

 

声のした方向を向くと、向こうから1人の女性が小走りで近付いてきた。

 

「慧音さんか、どうした?」

 

「お前が、妖怪に襲われたって聞いたから、急いで来たんだ」

 

「大袈裟だなぁ、見ての通り、俺はピンピンしてるよ。服は切り裂かれちまったけどな…」

 

祐助は笑いながら答えたが、慧音の方は少し怒っていた。

 

「馬鹿もん! 相手は下級とはいえ、歴とした妖怪なんだぞ? 甘くみるな!」

 

(あれ…、怒ってる…?)

 

慧音に叱責され、祐助は戸惑ってしまう。

 

「大丈夫だって、あの程度の妖怪、何でも無いよ」

 

「だか、しかしな…」

 

慧音が続けて話そうとすると、祐助は笑うのを止めて言う。

 

「あんただって、分かってるだろ? 俺の家系は代々『そういう』家系だって事を」

 

「それは…、そうだが…」

 

「慧音さんも、里の守護者だから心配してくるのは嬉しいが、俺はそんなにヤワじゃないよ」

 

「……っ」

 

「最も、最近は博麗の巫女やその他大勢の勢力にお株を持ってかれてるけどな、ハハハハ…」

 

祐助は、軽く笑いながら話していた。

 

「…そうだな、最近は他のヤツらが動いてくれるから、私達の出番が少なくなってはいるが…、だがな、お前の家系が代々そうであっても、お前は普通の人間なんだ、無理はしないでくれ」

 

慧音は、祐助の肩を掴みそう嘆願した。

 

「…分かったよ慧音さん、善処はするよ」

 

祐助は、慧音の腕を手で肩から離した。

 

「お願いだから、私達を悲しませないでくれ、あの時みたいに…」

 

「慧音さん、あの時の幻想郷とはもう状況が変わったんだよ。 もう、あんな事は繰り返さないだろうし、俺もあんなしくじりは二度と御免だからな」

 

祐助は少し俯いた。

それを見た慧音は、申し訳なさそうに頭を下げた。

 

「す、済まない…、ツラい事を思い出させてしまったようだな…、一番辛かったであろうはお前だと言うのに…」

 

(しまった…、慧音さんに無用な心配をさせてしまった)

 

「…気にするな、これもまた現実だ、現実を受け入れなければ、先には進めないよ」

 

(それに…、もう昔の話なんだ…。頼むから忘れさせてくれ…)

 

「…祐助?」

 

「…何でもない、聞いたと思うけど、俺がやった妖怪の後始末だけは頼みましたよ」

 

「ああ、分かった。 明日の朝一番で其処へ向かうよ」

 

「ありがとう慧音さん、俺は帰るよ」

 

そう言って、祐助は慧音に背を向けた。

 

その背中は何処か寂しそうであった。

 

「祐助……」

 

慧音は、彼にそれ以上声を掛ける事が出来なかった。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

「今日はアイツも誘うか…」

 

そう呟きながら、祐助はとある鍛冶屋の前へと来ていた。

 

「慶治、居るか?」

 

店の戸を開け、名前を呼ぶ。

 

「……祐さんか? どうしたんすか?」

 

「いきなりで済まんが、飲みに行かないか? 今日はガッツリ儲けたんでな」

 

「そうですか…、待ってて下さい、今嫁に話して来ますから」

 

そう言って、男は家の奥へと消えて行った。

 

慶治と呼ばれた男の名は、『酒井慶治』

里でも、1位、2位を競う腕の立つ鍛冶職人である。

 

祐助とは3つ年下で、幼い頃から遊んだり悪さをしたりした、幼なじみであり、後輩であり、悪友であった。

 

「…お待たせ、祐さん!」

 

「…で、千代ちゃんのお許しは出たかい?」

 

「簡単に出たよ、実はさ…」

 

―聞くとこによると、さっき嫁さんと喧嘩したらしい。それで、夜飯が出なかったとの事で―

 

「ふぅん…、何時まで経ってもアツアツだなぁw 俺に見せつけてんのかテメェは」

 

「違うってば! そうじゃないですよ」

 

「良いなぁ、仲良し夫婦は(棒」

 

「だーかーら!違うって!」

 

ジト目でからかう祐助、それに顔を真っ赤にして反論する慶治。

 

「はいはい、お熱いのは俺の居ない所でやってね( ̄ω ̄)」

 

「もう、止めてくれ…」

 

「それより慶治、飲みに行く前にコイツを見てくれ」

 

祐助は、自分の猟銃を慶治に渡した。

 

「…随分使い込んだね」

 

「コイツは、俺の商売道具だからな、ついつい酷使してしまってさ」

 

その猟銃を見ながら、慶治が言う。

 

「前回、保全をしたのが半年前でしたっけ?」

 

「半年か…、持たないなぁ…」

 

「祐さん、本業と副業でコイツを使い込んでるからねえ、俺がメンテナンスしても、直ぐにガタが来るんだよな」

 

「悪い、また修繕頼めるか?」

 

「構わないけど、前に仕事が溜まってるから、1、2週間程後にあるけど、良いですかい?」

 

「ああ、それで構わないよ」

 

「それから…、このスコープはどうします?」

 

慶治は、猟銃に付いていたスコープを外した。

 

「ああ、コイツは河童特製のもんだからな、この長筒との相性は抜群なんだ」

 

慶治からそれを受け取った祐助は、マジマジとそれを見ていた。

 

「しかしなぁ、これも随分と照準が合わなくなってきたんだ、そろそろにとりに見て貰わないといかんかな?」

 

「ついでだから、このタイミングで見せに行ったら良いんじゃないですか?」

 

「そうだな…、明日にでも妖怪の山に行って来るか」

 

「1人で行くんですか? 危ないよ…」

 

「だからといって、誰か鋤けてくれるのかい?」

 

「そ、それは…」

 

慶治は、顔を逸らし言葉を濁す。

 

「だらしないなあ、お前の家系だって代々…」

 

「べ、別に、ビビっちゃいねぇよ、ただ無用な騒動は起こしたく無いだけさ、嫁や慧音さんに怒られるからさ」

 

それを聞いて、祐助は軽く笑った。

 

「何でぇ、昔は悪さした仲じゃねえか。タコ妖怪なんざ蹴散らしちまえ!」

 

「俺だって、そんじょそこらの妖怪に負ける気はしないよ、たださ…」

 

「…分かってるよ、お前には家族もいるしな。 俺1人で行って来るよ」

 

「祐さん…、済まない」

 

慶治は、祐助に頭を下げた。

 

「いいさ、それより、早くおやっさんとこに行こう。ヒデの様子も見たいしさ」

 

「はいよ!」

 

身支度を済ませた慶治は、祐助と共に馴染みの居酒屋へと向かった。

 




オリキャラ紹介

名前:近藤祐助
性別:男
年:30代半ば
職業:猟師

人里に住む人間、猟師で生計を立てている、独身。
温厚(多少短気?)で面倒見が良く、里の人間からも慕われている。
多少悪戯好きで、よく人をからかったりもしている。
じっとしていられない性格で、暇さえあれば何処かへ出掛けている。
外の世界の物マニアで、収集しに無縁塚に行ったり、香霖堂へ買いに行ったりしている。

武術の使い手で、里の人間の中では一番強いとの噂。

主に、猟師として生計を立てているが、副業は実は…。


ネタバレになるんで、詳しいプロフィールは、そのうち追加します。
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