痛快! 男達の幻想郷   作:豊之丞

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彼の本当の思いは…


みんなの笑顔の為に

その日の朝の事であった。

 

「先生!」

 

「何だ、朝っぱらから騒がしい!」

 

ドタバタと廊下を走って来て、部屋に入る門人を叱責する桐次郎。

 

「も、申し訳ありません……しかし、若先生がお見えになってますので」

 

「何、祐助が?」

 

「はい、先生にお会いしたいと申しておりまして…」

 

「そ、そうか…」

 

「客間にお通ししておけば良いでしょうか?」

 

「そうしてくれ、儂も直ぐに行く」

 

「はい!」

 

桐次郎の返事を聞くと、門人は部屋を出た。

 

「こんな朝から何の用だ? ……まさか………な」

 

若干怪訝な表情をしながらも、桐次郎は自室を出た。

 

 

 

 

 

客間に着くと、既に祐助が座って待っていた。

 

「どうした? こんな朝っぱらから」

 

「悪いな元締、もう少し後にしようと思ったが、一度寝たら起きれなくなりそうで、すぐに来た」

 

そう言う祐助の表情は、疲労の色が濃く、眠そうであった。

 

「疲れたって表情をしてるな」

 

「本当に疲れてるんだよ…」

 

「昨晩は何をしてたんだ? 徹夜で段取りを組んでたとか…」

 

「…コイツを見な、説明の手間が省ける」

 

彼は、側に置いてあった風呂敷を差し出す。

それは、もう何十にも包まれていた。

 

「何だこれは? 何が入ってるんだ?」

 

「開けてみなよ……」

 

祐助に促されるままに、風呂敷を開ける。

 

一枚、また一枚と風呂敷を開けていくと、風呂敷が赤くなり始める。

 

そして

 

「………っ!!!」

 

中身が見えた瞬間、桐次郎は思わず後ろへ飛び跳ねてしまった。

 

その中身は、あの首領妖怪の生首であったのだ。

 

「よーく確認してくれ、ソイツで間違い無いんだろ?」

 

「あ…、ああ……待ってくれ……」

 

素っ気なく言う祐助、桐次郎の方は脂汗を掻いていた。

そして、桐次郎は改めて、その生首を確認する。

 

「……間違い無い、コイツだ」

 

「それを聞いて安心した、万が一間違いがあったら、目覚めが悪いからな」

 

「まさか、こんなに早く片を付けるとは思わなかったんでな…。 昨日の今日だぞ?」

 

「思い立ったが吉日って言うだろ?」

 

「1人でやったのか?」

 

「勿論」

 

「呆れた奴だ…、病み上がりだって自覚はあるのか?」

 

「わざわざ呼び出しておいて、この仕掛け依頼をしたのは誰だっけか?」

 

祐助の堂々とした返事に、桐次郎は呆れ顔であった。

 

「それよりも、その臭い生首……早く仕舞えよ」

 

「分かった分かった、全く……わざわざ首を持って来んでも、お前の仕事ぶりは信用してるんだぞ?」

 

「念の為さ」

 

妖怪の生首を風呂敷に包み、部屋の隅に置くと、戸棚から包み紙に入った物を取り出した。

 

「ほれっ、残りの半金だ」

 

「ちょっと失礼…………確かに、毎度!」

 

金を受け取った祐助は、その金を手提げ鞄に仕舞う。

 

「それから、これは骨折り賃だ」

 

「骨折り賃?」

 

桐次郎から封筒を受け取った祐助が、中身を確認する。

 

「……30円もくれるのか?」

 

「相手が相手だったからな、それで我慢してくれ」

 

「とんでもない、かなりありがたいぜ」

 

それを確認すると、また手提げ鞄へと金を仕舞った。

今だけで80円、外の世界で80万円を貰った事になる。

 

「さてと…、長居は無用だから帰るわ」

 

立ち上がろとする彼に、桐次郎が声を掛ける。

 

「もう帰るのか? 少しはゆっくりして行け」

 

「そうしたいんだがな…、早く帰って寝たいんだ。 2日程まともに寝てなくてさ」

 

「2日って…、何をしてたんだ?」

 

「色々さ」

 

そう言って立ち上がり、障子戸の方へ向かう。

 

「…風呂には入ったのか?」

 

「ああ、一応洗い流して、着替えもして来たが、何でだ?」

 

「臭うぞ…、血の臭いが…」

 

「………っ」

 

桐次郎の一言に祐助は何かを言い掛けたが、それを飲み込み、障子戸を開ける。

 

そして、桐次郎の方を向き、口にした。

 

「こんな稼業をしてりゃ、血生臭くもなるだろう」

 

「何時までも、こんな生活をしてたら、長生きは出来んぞ」

 

「今更言うかよ…、それに元締……親父が言う台詞じゃないだろ?」

 

自虐的に笑いながらも、祐助は続けた。

 

 

「長生きなんて、出来る気はしないな。 それに、こんな稼業をしてるんだ、遅かれ速かれ…」

 

 

「……っ?」

 

 

「俺達の行き着く先は………地獄さ…」

 

 

彼は、空を見上げそう言った。

 

 

「……儂等のやってる事は、幻想郷の人間の為だ、少しでも妖怪に怯えなくても良いように、彼等に安心して生活して貰いたい、それが儂等の目的でもあるんだ」

 

 

「そうだ、みんなの笑顔を守る為に、俺はこの仕事をするんだ。 今回の様な悲劇を繰り返さない為にもな…、地獄に行くのは俺1人で十分だ」

 

 

そう言って、彼は部屋を出て行った。

 

「祐助……許せ…」

 

誰も居なくなった部屋で、桐次郎は詫びの言葉を口にした。

 

「歴史は繰り返される……か」

 

 

 

 

「あらっ、若先生! もう帰るのかい?」

 

「あっ、おばさん、おはようございます。 用事は済んだんで今から帰るんですよ」

 

声を掛けて来たのは、道場で雑用をする近所の女性であった。

祐助とも、顔馴染みである。

 

「何だい…せっかく、お茶とお菓子を用意したのに」

 

「すみません、わざわざ……って、これは最近流行りの大福じゃないですか!」

 

「これ、なかなか美味しいのよ!」

 

「ちょっと頂きます」

 

その女性が持っていた皿の大福を1つ、口に頬張る。

 

「……旨い、噂通りの味ですね!」

 

「でしょ? 持って帰る?」

 

「ありがとうございます、幾つか頂いていきます」

 

手に幾つかの大福を持ち、笑顔で礼を言う。

 

「…それじゃ、俺は帰りますから」

 

「何時でも、遊びに来てよね!」

 

「はい!」

 

疲れた表情ながらも、足取り軽くその場を後にする。

彼女も、それを笑顔で見送っていた。

 

しかし、祐助の姿が見えなくなると、彼女の表情は一転して悲しげになる。

 

「また、やったのね……あんなにも血の臭いが……先生も罪なお人です、あんなに優しい若先生に何故、あれほどの残酷な事を…!」

 

彼女は俯きながら、桐次郎のいる部屋へと向かって行った。

 

 

 

 

 

道場を出た祐助は、今後の事を思案していた。

 

「このまま、手ぶらで帰るのも何だし、小傘に土産でも買って帰るか」

 

そう考え、町の方へと向かった。

 

「さっき食べた大福は旨かった、あれを買おう」

 

独り言を呟く道中で、知り合いと会う事になる。

 

「…おやっ、蛮寄さんじゃん、おはよう!」

 

「あら祐さん、おはよう」

 

人間の里に住む妖怪、赤蛮寄。

色々あり、祐助とは顔見知りである。

 

「…そうだ! 丁度良かった蛮寄さん、前に言ってた野菜だけど、出来てますよ」

 

「ええ!? ちょっと早すぎない?」

 

「そんな事は無い、ちゃんと収穫してあんたの分は残して置いてあるよ」

 

「流石は、風見幽香スペシャル…」

 

それを聞いて、蛮寄は苦笑いをしていた。

 

「取りに来なよ、切開の新鮮野菜が腐っちまうからよ」

 

「そうしたいんだけど、今日は用事があるのよ……明日でも良い?」

 

「構わんよ、午前中に来てくれ」

 

「分かったわ、ありがとう」

 

「何でも無いさ、それじゃあ、よろしく!」

 

そう言って、祐助は彼女の横を通り過ぎて行った。

 

「……っ!?」

 

しかし、彼女もそれに気が付いた。

 

「な、何で…血の臭いが…?」

 

穏やかに会話をしていた筈なのに、彼から僅かに臭う血の香り。

蛮寄は、驚きを隠せず、その場に立ち尽くした。

 

 

 

 

 

「えっと…、この店だな」

 

お目当ての店に辿り着き、目的の物を買う。

 

「すみません、今話題の大福を下さい」

 

「はいよ、幾つ欲しいですか?」

 

「では、10個頂きます」

 

「毎度ありがとうございます!」

 

大福の入った袋を受け取り勘定を済ませると、店の外へと出る。

 

「これで、小傘も喜んでくれるかな? さて、もう少し買い物回りをしてから帰るか」

 

彼は、市場の方へと足を向けた時だった。

 

「おはようございます、祐さん」

 

「うん…?」

 

背後から声を掛けられ振り向くと、そこには見知った女性の姿があった。

 

「おお、咲夜さんか。 おはようさん」

 

「こうして顔を見るのは、久しぶりですわ」

 

「そうだな、約3ヶ月振りかな?」

 

「そうなるわね」

 

「朝から買い出しかい?」

 

「ええ、必要な食材と調味料を買い求めに来ましたの」

 

彼女は既に幾つかの荷物を持っていた。

 

「君も大変だな…」

 

「いいえ、これも仕事ですから」

 

「そうか…」

 

(どうせ、あの我が儘な主の言い付けだろうな、俺は無理だな……しかし、この子のメイド服は相変わらず目立つよなぁ。里の人間は着物ばかりだからな…、スタイルの良いこの子には良く似合う。鈴仙さん程じゃないが、スカート丈が…)

 

「…どうかしたの?」

 

「…あっ、いや……何でも無い…」

 

「そう…?」

 

そうして少しの間、2人は立ち話をしていた。

 

「そう言えば……丁度良かったわ、お嬢様から伝言がありましたの」

 

「レミリアさんから?」

 

「『3ヶ月以上も私の前に顔を出さないとは何事だ、早く話し相手をしに来い』っとの事です」

 

「………っ」

 

それを聞いた祐助は、苦笑いしか出来なかった。

 

「…行ってやりたいんだかな…、知ってるとは思うが、俺は現在謹慎中の身なんでな、里から出る事を禁じられてるんだ」

 

「やっぱりだったのね…、噂では聞いていたけど」

 

「そう言う事だから、レミリアさんに伝えてくれ、謹慎が解けたら行ってやるから、もうしばらく待ってくれってさ」

 

「分かりました、お嬢様にはそう伝えておくわ」

 

「よろしくな、俺はそろそろ行くから」

 

「ええ、私も失礼します」

 

そう挨拶を交わし、お互いすれ違った時であった。

 

「祐さん…」

 

「…どうした?」

 

すれ違いざまに、咲夜が声を掛けた。

 

「臭いますわ…、血の臭いが…」

 

「………っ!?」

 

その一言に、思わず振り向いたが

 

彼女の姿は、既に無かった。

 

「時間、止めやがったな…」

 

彼女の能力を知ってる彼には、彼女が何をしたのか直ぐに分かった。

 

「早いとこ買い物済ませて帰ろう…」

 

そうして、祐助は足早に市場へと向かった。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

食料や家の消耗品の買い出しを終え、自宅に帰って来たのは、昼近くになっていた。

 

「ただいまぁ! 遅くなってゴメンな」

 

家に入ると、食材を台所に置き、居間へと向かう。

 

「小傘さん、お土産だぞ。 今里で話題の大福……って、どうした?」

 

祐助が目にしたのは、何処か怯えた表情で彼を見つめる小傘であった。

 

「し、師匠…」

 

「どうしたんだよ? 何かあったのか?」

 

「どうして…、そんなに血の臭いがするの…?」

 

「……っ!」

 

その言葉に、彼はハッとした。

 

(やっぱり、気付いていたのか…)

 

「師匠は、やっぱり私を……」

 

「違う!!」

 

小傘の言葉を遮り、祐助が大声で叫んだ。

 

「俺は守りたいんだ!」

 

「えっ…!?」

 

「君や、君の様な子達の笑顔を!」

 

「し、師匠…」

 

「みんなの笑顔を脅かす奴は、妖怪だろうと人間だろうと俺は許さない! だから、そいつらに鉄槌を下して来たんだ…」

 

「……っ!」

 

「小傘、君は俺の大切な弟子だ、君の事は俺が護ってやる」

 

「師匠…、そんなにも私の事を…」

 

「だから、何も怖がらなくてもいいよ。 さあ、おいで」

 

小傘を安心させる為、祐助は笑顔で手招きをした。

 

「し、師匠……うわぁぁぁぁぁん!!」

 

小傘は泣きながら祐助に飛びついてきた。

 

「小傘…」

 

「ありがとう…、ありがとう師匠……うぇぇぁぁぁぁん!」

 

泣きじゃくる小傘を、祐助は優しく抱き締めた。

それはまるで、本当の親子にも見えた。

 

 

 

 

 

そうだ…、俺は……

 

 

みんなの笑顔を守りたいんだ

 

 

人間だろうと妖怪だろうと関係無い

 

 

誰かが、悲しむ姿なんて見たくは無いもんな

 

 

そんな人達の為に、俺はこれからも…

 

 

その為なら、俺は…

 

 

悪魔にでもなる!

 




如何だったでしょうか?

今回はシリアス満載でしたが、今後もまだまだストーリーを盛り上げていきますよ!

本当は、幻想録を仕上げたいのですが、只今行き詰まってます…。

ですので、書ける方から書いていきます^^;
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