痛快! 男達の幻想郷   作:豊之丞

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仲間を呼んでの、どんちゃん騒ぎ!


祝いの宴

その夜、近藤祐助の家には、数人の仲間達が集まっていた。

 

集まったのは、木村平九郎、酒井慶治と妻の千代、そして酒井夫婦の二人の子供達である。

 

 

「――――てな訳で、今夜は盛り上がっていきませう!」

 

「祐さん、完全復活おめでとう!」

 

「「「おめでとうございます!」」」

 

「ありがとな、この1ヶ月長かったが、ようやく自由行動が出来るようになった。 これで、また狩りが出来るぜ!」

 

「祐さん、その猟銃なんだけど…、もう少し待って貰えます?」

 

「構わないよ、明日からしばらくの間は挨拶周りも控えてるからな、慌てなくてもいいさ」

 

「それなら、助かります」

 

「それから、これは俺だけの祝いじゃない、こっちにいる多々良小傘さんの、快気祝いも兼ねておりまーす」

 

「「小傘お姉ちゃん、おめでとう!」」

 

「みんな、ありがとう! 今日は私の芸達者な所も御披露目するからね、楽しんでいってよ!」

 

「それじゃ、今夜は盛り上がっていこう。 乾杯!」

 

「「「「乾杯!」」」」

 

 

そうして、宴が始まった。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

それからしばらく、大人達は酒を飲み、子供達は食事をしながらはしゃいでいた。

 

「今日は、わざわざ来てくれてありがとな、千代ちゃん」

 

「いいわよ、うちの人ばっかり楽しんでちゃ、面白く無いからさ。 それに、たまには祐さんとお喋りもしたくてね」

 

「そっか…。嬉しいねぇ、千代ちゃんみたいな綺麗な女にそう言って貰えるとさ!」

 

「ダメよ、酒の勢いでそんな事言っちゃ!」

 

「大丈夫、まだ酔ってねぇよ。 ほらよ」

 

「あっ、ありがとう」

 

祐助が千代に酌をしていと

 

 

「ほーらほら、これでどう?」

 

「すごーい、傘の上でこんなに物を操れるなんで凄いね!」

 

「ふふーん、まだまだ、こんなもんじゃ無いよ!」

 

「もっとやってー!」

 

「では、ご要望にお応えして、もっと回しまーす!」

 

「「わ――い!」」

 

小傘の芸に、二人の子供が歓喜していた。

 

 

「楽しそうだな」

 

「そうね、連れてきて良かったわ」

 

「小傘は子供をあやすのが得意なんだよな、ベビーシッターを名乗るだけの事はあるな」

 

「始めた頃は、相当悪名高かったんだけどね…」

 

「まぁ、妖怪だしな…」

 

微笑ましい光景を見ながら、二人は酒を酌み交わしていた。

 

「そう言えば……二人は、幾つになるんだっけ?」

 

「長男の磐次は五歳、長女の御夏は三歳よ」

 

「へぇ、そんなになるんか…、俺達も歳を取る訳だ」

 

「あらっ、そんな事は無いわ。 祐さんはまだまだ若いわよ」

 

「若いって言ってくれるのは嬉しいが、未だに独り身なんでね」

 

そう言って、祐助は苦笑いをしながら酒を飲んだ。

 

「また、きっといい人が見つかるわよ」

 

「そいつはどうだろうな? もう、この歳になると望みは薄いよ。 外の世界だと、晩婚化してるみたいだが、幻想郷じゃあ無理だろうなぁ…」

 

「そんな事は……」

 

「それに、またあんな悲しい思いはしたくないからな。 あんな思いをする位なら、独り身の方が気楽でいいよ」

 

「………っ」

 

若干重苦しい雰囲気が漂ってしまい、祐助が咄嗟に話題を変える。

 

「…おっと、すまんすまん。 今日は楽しい宴なんだ。 湿っぽい話は無しにして、なっ!」

 

祐助が、自分の杯を千代の前に出す。

 

「…そうね、ごめんなさい。今夜は楽しい宴会ですもんね!」

 

祐助の心情を察知した千代は、笑顔で酌をした。

 

慶「おい、平九郎!」

 

「「………っ?」」

 

祐助と千代の視線の先には、すっかり出来上がった慶治と平九郎の姿があった。

 

慶「お前、相変わらず生徒達に弄られてるんだってなぁ!? ちゃんと躾はしてんのか!?」

 

平「うるせーな! ただ躾すればいいってもんじゃねぇよ! 何が良くて何が悪いかをちゃんと説明出来なきゃならないんだ。 口で言うだけなら簡単よ!」

 

慶「そんなんだから、オメェはナメられるだ! たまには有無言わさずガツンと言わんかい!」

 

平「知った風な口聞くんじゃねぇ! テメェみないな鍛冶と筋肉バカに、教師の苦労が分かってたまるかぁ!」

 

慶「何だと、ゴラァ!! へっぽこ教師が粋がってんじゃねぇぞ!」

 

平「うるせぇ、この単細胞野郎! そのバカ面は昔と何も変わっちゃいないなぁ! テメェの様なむさ苦しい奴に、教師というスマートな職業は勤まらねえよ!」

 

慶「何をホザきやがる!? 生徒のケツにキスしてる教師の何処がスマートなんだ? 笑わせるんじゃねぇ、ボケが!」

 

平「誰がケツにキスするって? それはテメェの事だろうが! 嫁さんの尻に敷かれてるテメェに言われたかねぇ!」

 

慶「んだと、ゴラァ!」

 

平「やんのかぁ! 舐めんじゃねぇぞ!」

 

 

千「ねえ二人共、そろそろ止めなさいよ…」

 

慶「うるせぇ! 引っ込んでろ!」

 

平「これは、俺達の勝負なんだ! 手出し無用!」

 

千「あっちゃぁぁ…」

 

祐「はぁ、しょうがない…」

 

溜め息をついた祐助が立ち上がり、二人の元へ行く。

 

慶「表出ろや!」

 

平「上等……」

 

本格的に喧嘩を始めようとする二人の肩を、祐助が掴む。

 

 

祐「二人共、止めにしようか?」

 

顔は笑顔であったが、ドス黒いオーラを放っていた。

 

慶「あっ…あの……祐さん…?」

 

平「祐さん! 元はと言えばコイツが喧嘩を売ってきたんだよ!」

 

慶「何言ってやがる!? テメェのその弱腰な性格に忠告と渇を入れてやったんだよ。 それなのに、テメェは反抗してきやがって!」

 

祐「まあまあ、もう落ち着きなって…」

 

平「黙れ! そんな事必要もねぇし、頼んでもねぇよ!」

 

慶「こいつぅ! ぶち殺してぇ!」

 

平「やってみろ、クソ野郎が!」

 

慶「ああっ!?」

 

祐「チッ…」

 

喧嘩が収まらない二人に、我慢の限界が来る。

 

 

「二人共……」

 

 

「「………っ?」」

 

 

「さっきから、うるせぇんじゃ、アホンダラァァァァァ!!!」

 

「「ひぃぃぃ!?」」

 

余りにもバカバカしい口喧嘩が続き、遂に祐助がキレた。

 

「子供達が見てる前で、ガキレベルの喧嘩してんじゃねぇ! お互いの仕事にケチ付けて楽しいのか!? バカバカしいにも程がある!!」

 

「いや、ケチだなんて…」

 

「俺は忠告しただけで…」

 

「黙れ! あれの何処が忠告だ!? 誰が見たって、いちゃもんだろうが!!」

 

「いや……あの……」

 

「祐さん……まぁ、落ち着いて……俺達も、頭冷やすから…」

 

「そうそう、俺達も悪かったからさ……」

 

「いいや、勘弁ならん! 久々にお前等にヤキ入れてやる!」

 

「「か、勘弁して下さーい!」」

 

それまでの態度を翻し、二人は手を付いて謝る。

 

しかし、大声を出したせいで、余計な事が起こる。

 

「うぅぅ…、おじちゃん、怖いよ…」

 

「し、師匠……そんなに、怒らないで…」

 

その様子を見ていた小傘と子供達が、涙目で怯えていた。

 

「し、しまった…つい……」

 

それを見た祐助が、申し訳無さそうに頭を掻いた。

 

「ごめんな…、つい大声を上げしてしまって、君達に怒ってる訳じゃないから安心していいよ」

 

「…本当?」

 

不安そうに訊ねる長女の頭を優しく撫でながら、笑みを浮かべた。

 

「本当だよ、だか安心して、みんなで遊んでな」

 

「「「はーい!」」」

 

それを聞いて安心した3人は、再び遊び出した。

 

「千代ちゃん、悪いが3人の事を頼む。 ちと外へ行って来る」

 

「ええ、分かったわ」

 

「ふぅ…、やっぱり祐さんは子供の扱いが上手いなぁ」

 

「寺子屋の教師になるべきですよ!」

 

「おーい、話を反らすなー?」

 

「「えっ…!?」」

 

「さぁ、表出ようか」

 

「ひぃぇぇぇ!?」

 

「どうか、ご勘弁を!」

 

「いいから出な」

 

「「は、はい…」」

 

祐助の迫力に圧され、慶治と平九郎は外へと出た。

 

 

 

 

 

 

 

祐助の後に着いて、外に出た慶治と平九郎。

その雰囲気に、すっかり酔いが醒めていた。

 

「慶治、平九郎…」

 

「はい…」

 

「何でしょうか…?」

 

「仲がいいのは結構だが、あんな大人気ない喧嘩は止めてくれよ」

 

「「すんません…」」

 

「酒が入ってたからと言って、子供達の前であれはマズいよな?」

 

「仰る通りです…」

 

「言い訳の余地がありません…」

 

「慶治、平九郎の頼りない教師ぶりに文句を付けたくなるのは分かるが、平九郎だって真面目にやってるんだ。 其処んとこは分かってやれ」

 

「は、はい…」

 

「(結局、祐さんもそう見てたのね…)」

 

「生徒達に弄られてはいるが、平九郎の授業は面白いって評判だぞ。 特に実地での授業は面白いし楽しく勉強出来るって、よく耳にするよ」

 

「ゆ、祐さん…」

 

「だからさ、平九郎もよ、自信を持ってやりなよ。 それで生徒達が付いてくるなら、お前の教え方は間違っちゃいないんだからさ」

 

「は、はい…」

 

「慶治も、里一番の鍛冶職人なんだ。 俺はお前の作る道具には絶対的な信頼を寄せてる」

 

「あっ…!」

 

「大雑把な所はあるが、俺はお前の事を只の筋肉バカだなんて思ってはいない。 お前の鍛冶技術には目を見張るものがある、誰にでも真似出来るもんじゃ無い」

 

「ゆ、祐さん…」

 

「俺達は、幼い頃からの仲間であり、先輩後輩の間柄で、親友じゃないか!」

 

「「祐さん…」」

 

「俺はお前達と長く付き合って来たから、お前達の良い所も悪い所も熟知しているつもりだ。だからよ、二人がいがみ合うのを見ていると、俺は悲しいよ…」

 

その時の彼は、とても悲しそうにしていた。

それを見た二人は、祐助に頭を下げた。

 

「祐さん、すみませんでした!」

 

「酔った勢いとはいえ、やり過ぎました!」

 

「だから、そんな悲しい顔しないで下さい…」

 

「そんな顔されたら、俺達まで悲しくなりますから…」

 

二人は必死で祐助を宥めていた。

そんな思いが通じたのか、祐助の表情がまた少しずつ明るくなってきた。

 

「分かってくれれば良いんだ。 二人は俺にとって、かけがえのない後輩であり、親友だ。 昔、凶行をしていた時も、お前達は俺の味方をしてくれた。 俺はお前達に恩義がある、それを返さなきゃならないからな!」

 

「そんな、恩義だなんて…」

 

「俺達は、ずっと祐さんの背中を追って此処まで来たんです。 祐さんが居なかったら、今の俺達は居なかったと思います」

 

「そうですよ、俺達には祐さんは無くてはならない絶大な存在なんです。 だから、俺は一生祐さんに付いて行きますよ!」

 

「俺もですよ! 祐さんを超えるまでは、食い付いて離れません!」

 

「……バァカ!」

 

祐助は、笑いながら二人の頭を小突いた。

 

「お前達には、まだまだ負けないよ。 まあ、歳食っちまって全盛は過ぎたがな」

 

「いやいや、昔の祐さんより今の祐さんの方が強いですよ」

 

「むしろ、今の祐さんの技術は洗練されていて、隙が無いです」

 

「そうか? 俺の身体もまだ錆び付いちゃいねえのかな?」

 

「もちろんです!」

 

「煽てるのが、上手いなぁ…」

 

「「ハハハ……」」

 

夜風に当たりながら、3人は談笑していた。

そこには、当初の重苦しい雰囲気は全く無かった。

 

「さて、家に入る前に一服しようかね…」

 

そう呟くと、祐助は煙管を出し、葉を積め出す。

 

「俺が点けます」

 

「おっ、スマン」

 

慶治がマッチで火を点けると、祐助の持つ煙管の先を火に近付けた。

 

「ふぅ…、やっぱり煙草はいいなぁ」

 

煙草の煙を吐き出すと、実に幸せそうな表情をしていた。

 

「…ほら、慶治も吸え」

 

「俺は、もう止めましたから…」

 

「良いから、吸えよ」

 

「わ…、分かりました」

 

祐助から煙管を渡され、慶治も煙草を吸った。

 

「……あぁ、久しぶりの煙草はうめぇ」

 

「だろ?」

 

「でも、もう良いです。 これ以上吸ったら止めれなくなりそうなんで(笑)」

 

「律儀なもんだな、平九郎も吸え」

 

「いや、俺は煙草は吸えないから…」

 

「そっか…、そういえば、お前は昔から煙草はやらなかったよな」

 

「すみません…」

 

「謝る事は無い、煙草なんて身体に良い事なんて無いからな」

 

そんな事を良いながらも、祐助はプカプカと煙草を吸っていた。

 

「祐さん、身体に悪いって自分で良いながら、吸いまくってるじゃないですか…」

 

「しゃーないじゃん、俺……ニコチン中毒だもん♪」

 

「「はぁぁぁ……」」

 

そんな様子を見て、二人は若干呆れていた。

 

「まぁ、この話はこれで終わりっと」

 

((話を反らしたな…))

 

二人がそんな事を内心思っていたが、あえて口には出さなかった。

 

パンッ、パンッ、っと煙管の中に溜まった灰を落とし煙管入れへと仕舞う。

 

「よし、改めて飲み直そうぜ!」

 

「「はい!」」

 

そうして、3人は家の中へと入って行った。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

夜も更けた頃、大人4人は酒を飲みながら談笑していたが、子供と小傘は、はしゃぎ過ぎたのか、寝息を立てていた。

 

「すっかり、寝ちまったなぁ…」

 

「そうね、大分夜も遅くなったわ」

 

「お開きにするか」

 

「ですね、片付け手伝いますよ」

 

「ありがとな、それじゃあこれらを台所に運んでくれ」

 

「了解ですよ」

 

「洗い物は、私がするわ」

 

「ありがとよ千代ちゃん、俺は小傘の寝床を準備するから、やっておいてくれないか?」

 

「任せて下さい!」

 

そうして、慶治と平九郎と千代は分担して片付けを始め、祐助は布団を引き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宴会の片付けが終わり、酒井夫婦は眠っている子供をお振り、平九郎は簡単な補助をしていた。

 

「それじゃあ祐さん、俺達は帰りますから」

 

「ああ、道中気を付けてな」

 

「また、宴会する時は呼んで下さいな」

 

「おう、またやる時は是非とも来てくれよ!」

 

「それじゃあ、お休みなさい」

 

「ああ、お休み」

 

帰路に就く3人を、祐助は玄関先で見送った。

 

 

 

 

帰り道、千代は二人に気になっていた事を聞いてみた。

 

「ねえ、あんた」

 

「…何だ?」

 

「さっきさ、外で祐さんと何を話してたの?」

 

「何って…、お説教だよ」

 

「嘘、だって中に入って来た時は、あんなに楽しそうにしてたじゃない?」

 

「それは、気のせいさ」

 

「そんな筈無いわ! ねぇ平ちゃん、本当は何の話をしてたの?」

 

「そうだねえ…、説教ついでに、男の友情の話をしてたのさ」

 

「何それ…」

 

「嘘はついてないよ」

 

「むぅぅぅ…」

 

「千代、コイツの言ってる事は本当さ。ついでに祐さんの懐の深さを改めて思い知らされたんだよ」

 

「懐の…深さ…?」

 

「あの人は、過去にあれだけの悲しい出来事に遭い、そして、血にまみれた事だってあったのに、今はそんな事は全く感じさせない温厚な人になったよ」

 

「俺は、あの人には心底敬意を払っているよ」

 

「俺も、ああなれるんかなぁ…」

 

「そうだなぁ…」

 

二人は何処か遠い目をして、夜空を見上げていた。

 

「男の友情、っか………何だか、羨ましいなぁ…」

 

二人の様子を見ていた千代が、ボソッとそう呟いた。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

「ふぅ、さっぱりした!」

 

3人を送った後、風呂に入り、1日の疲れを癒やした祐助。

 

冷たいお茶を一気飲みし、そのまま布団へと潜り込んだ。

 

「さて、今日も続きを読もうかね…」

 

彼が手にしたのは、鈴奈庵で入手した、ロー○ンメ○デンの初期の単行本である。

 

最初は何気なく読み始めたのだが、今ではその独特の世界観に、すっかりハマってしまったのである。

 

「おお…、やっぱり翠○石は可愛いな! このツンデレ具合が良いな! 何だか霊夢みたいで、なかなかリアルだ…」

 

独り言を呟きながら、読書に耽っていた。

 

 

 

 

それから、半時程経った頃であった。

 

 

「……よし、今日は此処までしておくか。 寝よう」

 

電気行灯に手を伸ばそうとした時であった。

 

 

『スゥゥゥ…』

 

 

「……っ?」

 

襖の開く音が聞こえ、振り向いて見ると

 

「師匠…」

 

枕を持った小傘が、立っていた。

 

「どうした小傘? 目が覚めちまったのか?」

 

「師匠…、お願いがあるの…」

 

「お願い?」

 

「あの……その……一緒に…、寝てもいい?」

 

「俺とか!?」

 

その申し出に、祐助は若干戸惑ってしまう。

 

「お願い…、今日で最後だから……最後くらい一緒に寝たいの……ダメ…?」

 

うるうるした目つきで、祐助を見つめる小傘。

 

(ち、畜生……相変わらず、それはセコいなぁ…)

 

案の定、彼は断る事が出来なかった。

 

「はぁ…、分かったよ。 添い寝するだけなら…ほら、入りな」

 

溜め息をつきながらも、彼は手招きした。

 

「わーい! ありがとう!」

 

それを見た小傘は、打って変わって元気良く布団の中へ入って来た。

 

「師匠の布団の中、暖かいね!」

 

「入ってから時間が経ってるからな」

 

添い寝する二人は、布団の中で会話していた。

 

「ねぇ、師匠」

 

「何だい?」

 

「今日は、本当にありがとう。 とっても楽しかったよ!」

 

「喜んで貰えたなら、大いに結構!」

 

「みんな、優しくて良い人間だったね!」

 

「彼奴等は、信頼出来る仲間だからな。 間違い無い連中だよ」

 

「へぇ…、そんな信頼出来る仲間が居るって、羨ましいなぁ…」

 

「そういう君にだって、命蓮寺の仲間が居るじゃないか」

 

「そうなのかなぁ…? みんなは私の事、どう思っているのかは分からないから…」

 

「そんな心配はしなくても良いんじゃないかな? 彼処の妖怪達は悪いヤツらじゃないと思う。 一時期は苦楽を共にしたんだろ? 大丈夫さ、特に聖白蓮なら君を仲間だと認めてくれるさ」

 

「だと…いいけど……でも、私は、あの時は偶々居合わせただけで、星輦船の異変には関係無かったから」

 

「ああ…、そうだったな……すっかり失念してた…」

 

「それでも、命蓮寺のみんなには、お世話になってるのは確かだけどね…」

 

「…もしかして、明日の事で悩んでいるのか?」

 

「うん…、一週間以上も突然居なくなったから、怒ってるかぁって……ちょっと、怖いんだ…」

 

「そうか…、そうだよな…」

 

それを聞いた祐助が少し考え込むと、思い付いたように口を開いた。

 

「…よし、明日は俺も一緒に命蓮寺に付いて行ってやろう」

 

「えっ、本当に!?」

 

「ああ、俺からも今回の経緯を説明しよう。 話の筋を通せば、先方も分かってくれるだろう」

 

「師匠…、私の為に…其処までしてくれるの…?」

 

「なぁに、可愛い弟子の為なら、何も問題無いさ」

 

「う、嬉しい…」

 

小傘は嬉しさからか、また目を潤ませる。

 

「師匠、だ――いすき――!!」

 

「うおっ!?」

 

勢いよく、祐助に抱き付いて来たのだ。

 

「こらこら…、嬉しいのは分かるが、はしゃぎ過ぎだ」

 

「エヘヘへ…、ゴメンね! でもね、本当に嬉しかったんだよ! 私ね、師匠に会えて、本当に良かったと思ってるのよ!」

 

「そっか…」

 

祐助もまた、小傘を優しく抱きしめた。

彼女も、とても幸せそうな顔で、彼にずっと抱き付いていた。

 

 

「寒くはないか?」

 

「大丈夫、とっても暖かいよ」

 

「良かった。 さぁ、もうお休み、明日は朝食を食べたら送ってあげるからな」

 

「うん! それじゃあ、お休みなさい!」

 

「お休み」

 

 

祐助が行灯の電源を切り、部屋は暗闇に包まれた。

 

だが、それからしばらくの間、二人の間では、まだ会話が続いていた。

 

その会話は、二人だけしか聞こえていない…。

 

二人が完全に眠ったのは、それからまだしばらく後の事であった。

 

 

 

 

 

小傘……

 

 

君は大事な弟子だ

 

 

それは変わらない

 

 

だが……

 

 

やっぱり、君と俺とでは…

 

 

住む世界が違う……

 

 

生きれる時間も違い過ぎる

 

 

それが、妖怪と人間なんだ……

 

 

どうしたって、変える事が出来ない運命……

 

 

ずっとは、側には居てあげられない…

 

 

ごめんな……小傘……

 




さて、如何だったでしょうか?

今回から「花果子念報~」同様、裏テクを使いまして、一話に対する文字数を大幅に増やしました。
これまでは、携帯投稿による文字数制限によって、細かい描写はカットしていましたが、今後は心置きなく掘り下げた描写が書けます!

最後のシーンですが、主人公と小傘は、添い寝しただけです。
ただ、添い寝しただけです。

大切な事なので、2回言いましたw
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