2016年も宜しくお願いしますm(_ _)m
今年一発目は、この小説からです。
「よい、よいっと!」
長い石段を、鼻歌混じりに上がって行く。
昔は、この石段をよく登り博麗神社へ遊びに行ったものだ。
その頃から、この石段は全く変わっちゃいない。
今は、時々しか利用しなくなったが、この石段を上がる度に昔の事を思い出す。
「……ふぅ、到着!」
長い石段を登り切ると、見慣れた鳥居と境内が見えた。
「うーん、やはり誰も居ないか…」
予想通りというべきか、妖怪の一匹すら居ない。
「まあ、いっか。 折角来たんだから、参拝しますかね」
財布から賽銭を漁りながら、本堂へと向かう。
本堂の方は、何時もの事ながら小綺麗にされている。
そこら辺の掃除は、しっかりやっているようだ。
「さて、どうしようか…」
ただ、賽銭を放り投げて霊夢を呼ぶだけじゃ面白くない。
よし、それなら……。
ちょいと意地の悪い事をしてやるか。
普通の人間なら怪我は必至だが、霊夢なら大丈夫だろう。
「…この位置からなら、賽銭箱に届きそうかな?」
ダッシュで母屋に行ける距離に立ち、賽銭箱に向けて構える。
「さぁ、出て来いよ、霊夢!」
カウントダウン!
5…
4……
3………
2…………
1……………
「それっ!」
賽銭箱に向けて投げた賽銭が、綺麗な放物線を描いて一直線に入る。
『チャリーン!』
どうすれば、あんなに良い音を奏でながら賽銭が入るのか。
賽銭箱に何か細工でもしてあるのかと、勘ぐってしまう。
「さあ、来い来い!」
ざわ…ざわ…ざわ…ざわ…
『ダッダッダッダッダッ!!』
キタ―――(゜∀゜)―――!!!!
さっと玄関前に移動し、霊夢を待ち構える。
「誰っ!? 素敵な賽銭箱にお賽銭を……」
「オラァァァァ!!」
「……っ!?」
勢いよく玄関から飛び出してきた霊夢の顔面目掛け、拳を繰り出す。
「フッ! ハァァ!」
俺の拳をギリギリでかわし、肘うちを繰り出して来る。
「ヤァ!」
その肘をチョップで弾き、そのまま腹部に拳が入る。
「ぐっ!」
かわし切れずに、少しダメージを受ける。
一応、少しだけ加減はしておいたつもりだが。
「いやぁぁぁっ!」
踏ん張りを効かせ、霊夢の右脚が俺に繰り出される。
「フッ!」
何となく来る予感がしたから、仰け反りながら蹴り上げを放つ。
「うわっ!?」
蹴りのモーション中だった霊夢は、避けきれずに脚を掬われて倒れる。
「セイヤァァ!」
その隙を逃さず、体制を一気に立て直し、追い討ち攻撃を繰り出しながら飛び込み。
「ハァァァ!」
霊夢は、またもギリギリでかわすが、
「甘い!」
「……っ!? きやぁぁ!?」
飛び込むフリをして、霊夢との間合いを一瞬で詰め、巫女服を掴み、背負い投げを決める。
流石の霊夢も、一瞬悲鳴を上げた。
「くっ…、えいっ!」
だが、流石は霊夢。
俺の背負い投げの途中で体勢を直し、上手く着地し、
「うぁぁぁぁっ!」
「うぉぉぉぉ!!」
俺の顔面目掛け本気の拳を繰り出してきた。
俺もまた、霊夢目掛けパンチを炸裂させようとした。
お互いの拳が交差し、互いの顔数センチの所まで迫った時。
『ピタッ』
どちらからと無く、動きが止まった。
「「…………っ」」
それから数秒程、動かないまま睨み合う。
先に口を開いたのは、俺の方だった。
「……へへっ、流石は霊夢だ、ソツがないな。 普通の人間なら、確実に被弾してるんだがなぁ」
「…こういう風に仕込んだのは、何処の誰だったかしら?」
「フッ、それを言われると何も言えないな」
「ふふふ……」
俺が笑みを浮かべると、ようやく霊夢も笑ってくれた。
だが、彼女は不満そうに言った。
「でも、酷いわよ! 出て来た所をいきなり奇襲するなんて!」
「悪かった悪かった…、だがな、弾幕ごっこばかりに現を抜かして、喧嘩のやり方を忘れてるんじゃないかって思ってな」
「……で、どうだった?」
「まだ詰めが甘いが、あれなら何の心配も無さそうだ。 言われた事はちゃんとやってるみたいだしな」
「修行とか努力は嫌いだけど、教えられた事は、ちゃんと守ってるわよ」
「それは結構、教えた甲斐があったってもんだ」
「フフフフ、お久しぶりね……『お父さん』」
「ああ、久しぶりだな、霊夢」
「さあ入って、お茶出すから」
「はいよ」
霊夢に導かれ、俺は母屋へと入った。
博麗霊夢、今代の博麗の巫女。
そして、スペルカードルールを制定した張本人。
異変が起これば、真っ先に飛び出し異変解決に動く。
幻想郷の平和は、彼女が守っているて言っても過言では無い。
そして…、
彼女は、俺の娘でもある。
……言葉が足りなかったな。
実際には、霊夢とは血の繋がりは無い
実の親子では無く、義理の親子だ。
昔、霊夢の母親である先代の博麗の巫女が死んだ時、まだ幼かった霊夢を俺が引き取った。
簡単に言えば、俺は彼女の育ての親である。
幼少の霊夢を男で一つで育て、それなりに愛情を注いできたつもりだ。
時には武術の稽古もつけてやった、博麗の巫女としてのたくましさも備えなければならなかったから…。
そして、博麗の巫女として独り立ちしてしばらくの間は、裏方でサポートしてやった事もあった。
その甲斐あってかは分からないが、周囲からは誰にでも優しくも厳しくも無い、親しい友人である魔理沙が相手でさえ、滅多に本音や素顔を出そうとはしないクールなイメージがある。
妖怪退治は無慈悲で、一部の妖怪からは鬼巫女とも呼ばれ恐れられている。
しかし、超クールに見える彼女だが、俺の前では彼女は年頃の女の子らしい素顔を見せてくれる。
作り笑いで無く、心の底から笑ってくれたり、愚痴を聞かされたり、悩み事があれば相談しに来たりも来る。
俺にだけ見せてくれる本当の素顔、
それだけで俺は親として嬉しい。
…尤も、最近は霖之助さんにお株を取られ気味なんだけどな。
まだ俺は、霊夢の親を名乗る事は出来るかな?
「……何を考えてたの?」
「…何でもない、いい天気だなぁって、のんびりしてたのさ」
「そう…、ほらっ」
「おっ、ありがとよ」
縁側に座っていた俺の横に湯飲みを置き、そのまま横に座ってお茶を飲む霊夢。
どことなく淡白な所もあるが、それもまた「霊夢」なのだ。
「…そうそう、ちゃんとお土産も持ってきたぞ」
「本当?」
「今、人里で人気のお菓子だ。 以前欲しがってたよな? 食いなよ」
「ああ! これ、食べたかったのよね! ありがとう!やっぱりお父さんは私の事を分かってるわ♪」
「ケッ、良く言うぜ…」
霊夢はお菓子を食べ始め、俺は煙管を取り出し葉を詰めた。
「そういえば……お父さん、怪我は大丈夫なの?」
「大丈夫じゃなかったら博麗神社まで来ないし、あんな激しい動きは出来ないだろ? 十分に養生と謹慎はしてたよ」
「あんまり変な事しないでよ! 心配したんだから…!」
一応、怒ってるみたいだな…。
「その割には、一度も見舞いには来なかったな?」
煙草に火を付け、苦笑いをしながら突っ込んでやった。
「そ、それは……仕方無かったのよ…、異変の解決で忙しかったから…」
「異変? あのオカルトボールの一件は解決済みじゃ無かったのか?」
「違うわ、それとはまた別の異変が起こったのよ」
「別の異変か…、それは知らなかった」
「だから行けなかったのよ。 本当は行こうとしたんだからね?」
「本当かよぉ?」
「本当だって!」
「まぁ、そういう事にしといてやるよ、ハッハッハッ…」
「もう…!」
むくれる霊夢も可愛いもんだ。
しかし、俺が養生してる間に異変があったとはな…。
ふうっと、煙を吐き出しながらそんな事を考える。
「…ところで、その異変の話、聞かせてくれないか?」
「ええっ!? 話すの?」
「いいじゃないか、時間はあるんだし、菓子でも食いながら土産話と思って話してくれよ」
「あんなの土産話でも何でも無いわ、ろくでもない出来事だったんだから!」
「まあまあ、そう言わずに」
「……分かったわよ」
渋る霊夢を何とか説得して、ようやく異変の全容を聞く事が出来た。
―――――――――――――――――――
それから1時間程、霊夢から先の異変の事を聞いていた。
地上の一部が月の民に侵攻されていた事。
その原因は、純狐という女の復讐で月の都を侵略する騒動だったという事を。
月か……
本当、彼処が関わる一件はロクな事が無いな。
まぁ、以前の場合だと、こっちから仕掛けに行ったんだから、返り討ちに遭っても仕方は無かったんだかな。
しかし、そんな奴を相手に異変を解決してしまったんだ。
改めて、霊夢って凄いよな。
他にも、魔理沙や早苗も動いていたらしいな。
それに、鈴仙さんも動いていたとは…。
そういえば、一時期里で見掛けない時があったが、そのせいだったのか、納得…。
「――――今ので、大体全部話したわ」
「なるほどね…」
ぶっちゃけ、最後の方は霊夢の愚痴り大会になっていた気もするのだが。
「もう、月の奴らとは関わりたく無いわ!」
「今回の異変は、なかなかに滅茶苦茶な一件だったみたいだな」
「こっちはいい迷惑よ! あいつ等の都合で幻想郷に手を出すなっての!」
「全くだ…」
パンッ! パンッ! っと、煙管の灰を落とし煙管を仕舞う。
「しかし、やっぱり霊夢は大したもんだ、何だかんだ言いながらもバッチリ異変を解決したんだ。 尊敬するぜ」
「止めてよ…、私は博麗の巫女として当然の事をしたまでよ」
「その当然の事が出来るってのが、やっぱり凄い事なんだよ、流石だ」
「そんな当然の事が出来るのは、私の力もそうだけど、根本はお父さんに鍛えてもらったおかげでもあるんだから…」
「そんな事は無い、お前は博麗の者として天性の才能に恵まれている。 俺はその才能を引き出す為の手助けをしただけだ」
「そんな事は…」
「そうさ、現にお前に教えてやった武術は、普通の人間なら1ヶ月程度では習得出来ないものなのに、お前はあっという間だったからな、流石は博麗の血筋だと驚いたものだ」
「でも、私が博麗の巫女になりたてだった頃は、何かとお父さんに頼りっぱなしだったし…」
「そんな時だってあるさ、特に博麗の巫女なんて大役なんだからな、それも仕方なかったんだよ」
ふと、昔の事を思い出しながら、茶を飲み干す。
「でもな、スペルカードルールが出来てからの異変は、お前や魔理沙の力だけで解決して来たんだ、俺は助けてない」
「………っ」
「それはな、俺が手助けしなくたって、お前はちゃんと確実に解決してくれるし、俺はお前の事を心から信頼している」
「あっ……」
「今更言うのも何だが、霊夢は誰もが認める立派な博麗の巫女だ、もっと自信持ちな」
「お父さん…」
「お前は俺の自慢の娘だ、例え血は繋がってなくてもな!」
俺は安心させてやろうと、霊夢の手を取った。
少しは落ち着いた、そう思いたいのだが…。
「お父さんの手、温かい…」
「そうか?」
「うん……」
そう言って、霊夢は両手で俺の手を摩っていた。
その表情は、何処か憂いを秘めているようにも見える。
霊夢の手、何故だか冷たかった。
こんなに良い陽気だっていうのに。
「……それより霊夢、お前今朝鏡は見たか?」
「へっ…?」
「寝癖が酷いぞ」
そう、今まで言わなかったが、こいつの今の頭の状態は酷いものだ。
その状態を、手鏡で見せてやった。
「えっ…、嘘……こんなに?」
「はぁ…、ちゃんと身なりは整えろって何時も言ってるだろ?」
「ち、違うわよ! さっきお父さんとやり合ったから、その時に…」
「それは違うな、ちゃんと俺は見てたんだぞ。 さっき玄関から出て来たお前の姿を」
「うぐっ…」
「全く…、少しは鏡くらい見ろってんだ」
「そんなの、一々見てないわよ! 別に誰かに会いに行くわけじゃないし…」
「それがダメなんだ! そういう所を疎かにすると生活リズムが崩れるんだからよ、お前は昔からそういう所はズボラなんだから、自分で女子力を低めてるようなもんなんだぞ?」
「ぐぬぬぬぬ……」
「はぁ、仕方ない……しばらくの間、ジッとしてな」
鞄の中から、携帯用の櫛を出した。
準備が良いよな、俺って(笑)
「リボン取るぞ」
「うん…」
霊夢の特長である赤い大きなリボンを外す。
そうすれば、長い黒髪が全容を現す。
ゆっくりと静かに、髪に櫛をいれた。
「ちょっと癖があるが綺麗な髪だな、霊夢は美人さんなんだから、もっと容姿にも気を遣いなよ」
「そ、そうかな?」
「ああ、それに歳を追うごとにお前は母さんに似てきてるよ」
「お母さんに?」
「そう、髪もそうだが、顔立ちなんかも母さんにそっくりだ。 瓜二つと言ってもいい位だ」
「そう言われても、私あんまりお母さんの記憶が無いのよね…」
「お前もまだ幼少の頃だったからなぁ、家の押し入れを探せば、写真があったかもしれないが…」
「ねえ、お父さんってお母さんとは長い付き合いだったんでしょ?」
「ああ、いいライバル関係でもあった。 彼女とは子供の頃から切磋琢磨しあった仲だ。 当時の俺と先代と慶治と平九郎は、なかなかの有名人だったよ」
「へぇ……」
「それ故に、アイツの最後の姿は………」
「えっ……?」
「……この話は止めよう、思い出す事自体が辛いから……」
「………っ」
つい、あの時の事を思い出してしまい、黙り込んでしまった。
あの時の…彼女の無惨な姿が、脳裏に焼き付いて離れない…。
霊夢には余計な心配は掛けさすまいと思っていたのに、バカだよな、俺って。
しばらくの間、沈黙が続いた。
「……あっかとばい かなきんばい
あっかとばーい かなきんばい
オランダさんから もろたと
バーイバイ……」
重苦しい空気の中、霊夢の髪を解かしながら、無意識のうちに口ずさんでいた。
「…昔、よく歌ってわね、その歌」
「年甲斐も無く、童歌が好きなんだ。 何というか歌いやすいっていうか…」
「分かるわ、それ」
「童歌は昔から伝わる歌だからな、幻想郷と外の世界とが自由に行き来出来てた頃に伝わって来た歌は、今でも受け継がれている」
「そうね…」
霊夢には、どれだけの童歌を聞かせた事か、彼女も嫌になる程聞いた筈だが、童歌に関しては嫌な顔もせずに聞いてくれる。
「お父さんの歌う童歌、私は好きよ」
「ありがとな、霊夢」
「……よし、髪は解かしたし、リボンを付けるかね」
また、元のように、霊夢の髪にリボンを通す。
昔は、これも俺がよくやってやったっけな、懐かしい。
「…よし、バッチリだ! これで、霊夢の女子力は倍増したぞ!」
「あ、ありがとう……」
何故か恥ずかしそうにする霊夢。
他人には滅多に見せない表情に、我が娘ながら萌えた////
「さて、ここで俺からも霊夢に依頼する事がある」
「依頼?」
「博麗札のストックが少なくなってきたんだ、また量産しておいてくれ」
「ええ〜、また量産するの!? めんどくさいわよ…」
「博麗札が無いと、俺も仕事にならないんでね……ほら、これは依頼金だ」
そう言って、金の入った封筒を渡してやる。
「依頼金? (ガサガサ…)…………嘘!? 5円(5万円)も!?」
「それだけじゃ、不満か?」
「とんでもないわ! お父さんって最高よ!」
「ならいいんだが…、それから、特殊札も2、3枚作ってくれ」
「ええ〜!? アレも作るの? 冗談抜きで、アレは作るのにかなりの労力が要るんだから…」
「スマン…でも、アレも必要不可欠なアイテムなんだ。 家にはまだ数十枚ストックはあるが、それだけじゃ、あっという間に無くなっちまうからさ」
「どうしよっかなぁ……」
「…しゃーねーな………ほら、もっと課金してやるよ」
財布から、更に5円を出し霊夢に渡してやる。
「毎度あり! 喜んで量産するわ♪」
「コ、コイツ……」
俺からせびる為に、演技しやがったな…。
でも、札が無いと妖怪退治は難しくなるから、やむを得ない。
父親は娘に甘いとは言うが、俺も例外では無かったみたいだ(苦笑)
「金は渡したんだから、なるべく早く作ってくれよ」
「分かったわ、一週間ほど時間をちょうだい」
「了解だ」
「…それにしてもお父さん、随分と景気が良いのね?」
「お前と違って、ガッツリ稼いでるんでね( ̄∀ ̄)」
「……何かムカつく…!」
しばらくの間、霊夢とそうした談笑をしていた。
娘とゆっくり話が出来るってのはいいね
気持ちだけは、若返るような気がする。
「……さて、そろそろお暇しようかね?」
「もう行っちゃうの?」
何処か寂しそうに訊ねる霊夢。
そんな顔するなよ、余計に後ろ髪引かれるだろ…。
「もう行くって、二時間以上はゆっくり雑談しただろ? まだ行くとこがあるんだよ」
「そう……」
「まあ、そういう事だから行くな」
「うん…、また来なさいよ」
「分かったよ、霊夢の方も博麗札の量産頼むぜ」
「出来たら、家まで持って行くわ」
「よろしくな!」
立ち上がり、鞄を担ぎ、再び石段の方へと向く。
「ちなみに、次は何処へ行くの?」
「紅魔館の予定だが」
「紅魔館!? また何で?」
「お呼ばれしてるんだよ、あの我が儘吸血鬼にな」
「あんたって、本当に物好きなのね…」
「行かなきゃ、後で何言われるか分かったもんじゃないからな」
「フンッ…」
何故かそっぽを向く霊夢。
紅魔館に恨みでもあるんかよ?
「行くからな、霊夢」
「勝手に行けばいいでしょ!」
…ああ、やっぱりそういう事か。
素直じゃないな、フフフ…。
まぁ、あれが霊夢らしくもあるんだが。
「…そうだ!」
「まだ、何かあるの?」
「純狐って言ったっけな? 今回の異変の首謀者は」
「それがどうしたのよ?」
「こんな物騒な異変を起こした事は、褒められたもんじゃないが、ただな……」
「ただ……?」
「俺には、その女の気持ちが、分かるような気もするんだ…」
「えっ…?」
「………いや、何でもない……俺の独り言だ、気にしないでくれ、ハッハッハッ……」
思わず本音を言いそうになったが、グッと飲み込み石段を降りた。
境内で立ち尽くしている霊夢の方を、敢えて振り向かなかった。
その純狐という女に、色々と感じるものがあったのは確かだ。
どうしてか、彼女の事が胸の奥底で引っ掛かっていたのだ。
「夫に息子を殺された」その言葉が、余計にそれを助長させた。
霊夢は勘の鋭いヤツだ、きっと何かを感じたかもしれないが、その事には触れないでおこう。
きっと本人に会えれば、その理由が分かるだろう。
それよりも、次は紅魔館だ。
レミリア・スカーレットのお守りをしなければならないと想うと、頭が痛くなる。
それだけならまだしも、きっと妹も絡んで来るだろうしなぁ…。
それ以前に、すんなりとは行けないような気がする。
何せ、彼処に行くまでに、幾つもの「障害」があるから…。
…愚痴っててもしゃーない
その障害を一つずつクリアして、目的地に行きますか!
独り言をブツブツ呟きながら、俺は鬱蒼として森の中を進んだ。
方向は、確実に霧の湖へと向かっていた。
「あっ、此処まで来たのに、あの三妖精に挨拶するの忘れてた・・・・。 まあ、いっか!」
―――――――――――――――――――
彼の姿が見えなくなった神社の境内で、霊夢が1人呟いた。
「お父さん…、どうしてそんなに……悲しい顔、するの…?」
彼女もまた、悲しそうな表情で、石段の先を見つめていた。
「私にだけは、隠し事なんてしないでよ…」
その声は、誰にも聞こえては居ない…。
主人公と霊夢の関係は、独自設定、独自解釈って事で…。
それから、色々と伏線も増やしました。
これからの展開は、色々な出来事が予想されると思います。
こういうのって、執筆している側も楽しいですね!
次回もお楽しみに。