痛快! 男達の幻想郷   作:豊之丞

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霧の湖まで来た祐助。

ここでも、色々ありました。


会話だけでは済まなかった

「無花果、人参、山椒に、椎茸、牛蒡に……」

 

数え歌を口ずさみながら、森を進む俺氏。

 

博麗神社から紅魔館までは、最短の道を歩いても二時間は掛かる。

 

まあ、慌てる訳でもないから、のんびりと散策しながら歩いている。

 

まだ野良妖怪とは出会してはいない

今日は本当に、タイミングがよろしいみたいで。

 

ただし、弾幕ごっこしている所を目撃している。

 

最初は、神社から程無い所でドンパチしていた。

 

やっていたのは、てゐとミスティアだった。

何であの2人が、弾幕展開しているのか理由が分からなかったが、敢えて関わらない事にした。

 

まあ、妖怪同士、色々あるんだろ。

 

少し経ってから悲鳴が聞こえたが、どちらの悲鳴かは知らん。

 

それから魔法の森の開けた所で、名も知らぬ妖精達によるドンパチ。

妖精って何時も元気だよな、へこたれてる所を見た試しが無い。

 

何にしろ、こういった所で弾幕ごっこが見れるってのは、平和な証拠でもある。

 

 

 

 

 

……そうこうしてるうちに、霧の湖が見えてきた。

此処まで来れば、紅魔館は目と鼻の先だ。

 

「…よし、ちょっと休憩しよう」

 

湖の畔にある、手頃な大きさの岩に腰掛ける。

少しばかり足が痛くなるのは、年を取った証拠か。

昔は、これより歩いたってへこたれてる事すら無かったのになぁ。

 

「煙草吸いてぇ…」

 

早速、煙管に手を出し葉を詰め始める。

 

「スパッ、スパッ………ふぅ…」

 

煙草に火を付けて一服、最高に幸せな瞬間である。

 

天気は快晴、鳥の囀る声しか聞こえない。

 

実に、長閑である。

 

「…………っ」

 

昼寝がしたくなるが、そういう訳にもいかない。

休憩をしながら、考え事をする。

 

「チルノをどうしよっか…」

 

やはり霧の湖と来れば、あのバカ妖精との勝負は避けられないだろう。

 

誰構わず勝負を挑み、返り討ちに遭うの繰り返し。

少しは強くなればまだしも、ほとんど進化していない件。

 

俺なんて、何回ピチュッた事か、両手の指だけでは足りない。

 

それでも挑んで来るんだから、勇敢というか学習能力が無いというか…。

 

「はぁ、めんどくせ……」

 

煙草を吸いながら、溜め息を漏らした。

 

「何ていうか、まともな奴と会話がしたいも……」

 

「(バシャ!)じゃん!!」

 

「うおわぁぁぁぁ!!?」

 

突然、水の中から何者かが姿を現し、驚いた拍子に岩から転げ落ちてしまった。

 

…ダッセー俺……。

 

「あっはははは…! やったぁ♪ 大成功!」

 

「わ、わかさぎ姫!?………クソ、まんまとやられた…」

 

水面から出て来たのは湖に住む人魚、わかさぎ姫である。

 

「フフフ、ごめんなさいね。 でも、こんなにも見事に成功するなんて思ってなかったから♪」

 

「くぅぅ…、俺の負けだよ…」

 

悔しかったが、周囲警戒を完全に怠った俺のミスだ。

 

「ふふっ、お久しぶり、祐さん」

 

「ああ、久しぶりだね、姫」

 

一応、この人魚とも顔見知りである。

ただ、彼女とは人魚という性格上、なかなか会えないのだが。

 

「そんな所に居ないで、こっちまで上がって来なよ」

 

「ええ」

 

再び岩に腰を下ろし煙管を拾っている間に、姫は俺の横に器用に飛び移った。

 

「よっと…!」

 

「器用なもんだ」

 

「私には足が無いから、こうするのが一番簡単なのよ」

 

「なるほどね」

 

俺はまた煙草を吸っていたが、彼女はニコニコと笑顔を振りまいていた。

 

「こうやって、二人きりでお話するのは久しぶりね」

 

「そうだな、なかなかこっちの方に来る事が無いからなぁ…」

 

「私はこんな姿だから湖からは出られないの、出来るだけ祐さんの方から来て欲しいわ! 毎日退屈なのよ?」

 

「スマンスマン、そう怒るなよ」

 

パンッ、パンッ!っと煙管の灰を落とし煙管入れへと仕舞う。

 

「そうだ、あんたにも土産をやるよ」

 

「えっ? お土産?」

 

鞄の中から、ガサガサと例の如く、お菓子の入った箱を取り出した。

 

「今、人里で一番人気のお菓子だ、姫も食べてみなよ」

 

「うわっ…、こんなにいいの?」

 

「もちろん、ただし、あんたの口に合うかは分からないがな」

 

「それじゃあ、一つ味見をしてみるわ」

 

「どうぞ」

 

箱を開けた姫が、お菓子を一つ頬張る。

 

「………っ」

 

「…どうだ? そんなに甘すぎもせず、絶妙な味付けだと思うのだが」

 

「……うんっ」

 

「うんっ?」

 

「美味しいわ、とっても好みの味よ!」

 

「そうか、ならいいんだが」

 

「これ、全部貰っても?」

 

「いいとも、好きなだけ食いな」

 

彼女は嬉しそうに、お菓子を食していた。

人魚も、普通にお菓子とか食えるんだな。

 

「お茶飲むか?」

 

「あるの?」

 

「ああ、熱々のお茶を淹れてやるよ」

 

「熱々…?」

 

わかさぎ姫が不思議そうな顔をしている。

それが、当たり前だろうな。

 

俺は、鞄の中から水筒を取り出し、蓋をコップ代わりにお茶を汲む。

 

「はい、どうぞ」

 

「うわっ、本当に熱そう……いただきます」

 

ゆっくりとコップを口へ運ぶ。

 

「……あつっ! 本当に熱々だわ!」

 

「気を付けな、火傷するから、ゆっくり飲みな」

 

「え、ええ………でも、どうしてなの?」

 

「それはな、この水筒が魔法瓶っていう特殊な構造になってるからだ」

 

「魔法瓶?」

 

「ああ、詳しい仕組みは俺にもよく分からないんだが、外の世界の発明品でな、暑い飲み物をいれて時間が経っても、淹れた時と同じ温度を保てるっていう優れものなんだ」

 

「へぇぇ、外の世界の物って凄いのねぇ…」

 

「最も、河童に頼めば同じような物を作製してくれるがな」

 

「祐さんって、本当に顔が広いのね…、そこら辺に知り合いがいるじゃない」

 

「なぁに、伊達にこの稼業を長くやっちゃいないんだぜ」

 

「ふーん…」

 

こうして、俺とわかさぎ姫との会話は、しばらくの間続いた。

 

人里での出来事や、ここ最近の流行り、異変の事なんかを話してやった。

ついでに、俺が怪我した話もしておいた(苦笑)

 

彼女は、興味津々で尚且つ楽しそうに聞いていた。

 

 

「……まぁ、色々とあった訳よ」

 

「へぇぇ…、色々な出来事があったのね、ちっとも知らなかったわ…」

 

「湖にいるだけじゃ、分からない事も多いよな」

 

「いいなぁ、私も自由に歩き回って楽しんでみたいわ…」

 

「気持ちは分かるが、その下半身ではなぁ…」

 

「そうよねぇ…」

 

「………そうだ! いい事思い付いた、今度遊びに行こうぜ!」

 

「えっ!? 遊びに? どうやって?」

 

「何てこと無い、簡単な事よ!」

 

「簡単な事?」

 

「それは、その時のお楽しみって事にしておくよ」

 

「………っ?」

 

わかさぎ姫は、またも不思議そうな顔をしていたが、そうなるわな。

 

実に単純明解な方法だが、わかさぎ姫を湖から連れ出す良い方法を思い付いた。

こいつは、ある意味楽しみだな。

 

「…ところで、今日は影狼ちゃんは来ないのか?」

 

「影狼? 今日は来てないけど、影狼がどうかしたの?」

 

「いやさ、この土産を結構買い込んで来たから、お裾分けしようかなって思ったんだが、居ないなら仕方ない」

 

「何なら、私が預かるわよ?」

 

「いや、こいつはそうはいかないんだ。 生物だから時間が経つとよろしくない、アイツにはまた別の機会に何かしてやるよ」

 

「そ、そう……」

 

「心配しなさんな、アイツを仲間外れにするなんて事は絶対にしないからさ」

 

「………! それならいいんだけど!」

 

一瞬落ち込んだように見えたが、直ぐに明るい表情に戻ったな。

 

俺は、仲間外れなんて絶対しない質なんだ。

そういうのは、俺自身が一番大嫌いな事だから。

 

「友達想いなんだな、姫は」

 

「それは…、当然よ!」

 

「そんな友達を持って、幸せ者だな、影狼ちゃんは」

 

「祐さんも、影狼の事が好き?」

 

「もちろんだ、彼女は憎めない性格だよな、話をしていても楽しいよ」

 

「でしょ? 影狼って一緒に居るだけで楽しいのよ! 話のネタも多いし、綺麗な石を拾って持って来てくれたりしてくれてね……」

 

影狼ちゃんの話になると、生き生きとしているな、姫は。

本当に仲良しなんだな、あの2人は。

 

俺も、慶治と平九郎の事を大切にしなきゃならないな。

もちろん、他の仲間達の事も。

 

「…ところで、あんた達はまだあの活動はしているのか?」

 

「あの活動?」

 

「ほら、アレだよ、何て言ったっけなぁ? えっと………うーん…………何とかネットワーク…?」

 

「ああ、草の根妖怪ネットワークね?」

 

「そうそう、それだ! その草の根妖怪ネットワークはまだやってるのか? 全然噂を聞かないが」

 

「失礼ね! ちゃんと活動してるわよ! ……一応だけど……」

 

「因みに、メンバーは増えた?」

 

「い、いいえ…」

 

「…てことは、あんたと影狼ちゃんと蛮奇さんだけか」

 

「は、はい……」

 

「……なぁ、あれから2年近く経ってるだろ? 何も進展が無いように思うのは俺だけか?」

 

「し、仕方ないじゃない! そう簡単には集まらないわよ!?」

 

「そうかな? 俺だったら手当たり次第声を掛けてみるがな」

 

「例えば誰に?」

 

「そうやねぇ…、あんまり強い妖怪はまず引き込めないだろうから、あんた達と同等位の妖怪を引き込めればいいかな」

 

「誰か、そんな妖怪が居るの?」

 

「居るじゃないか、鳥頭ミスチーとか、リグル厨とか、ダークミアとかさ」

 

「…誰それ?」

 

「まぁ…今のは冗談だが、ミスティア・ローレライやリグル・ナイトバグやルーミアなら、上手く言いくるめて入れられるんじゃないか? 他にも九十九姉妹や雷鼓さんとか、命蓮寺にいる一部の妖怪とか、上手く引き込めるんじゃないのか?」

 

「うーん…、みんな名前は知ってるけど、面識は無いのよね…」

 

「そんな事言ってちゃ仲間は増えないよ、最初の一歩を踏み出さなきゃな!」

 

「それはそうだけど…」

 

「何なら、俺から声を掛けておいてやろうか? そいつら全員、知り合いだからな」

 

「本当に?」

 

「ああ、だだし、なかなか会えないし、話した所で入ってくれるかは分からないぞ?」

 

「その場合は…、仕方ないわね…」

 

「まぁ、どいつもこいつもパープリン揃いだから、適当に言いくるめれば何とかなりそうだがな!」

 

「そ、そう……」

 

実際、昨日言った事すら忘れるバカタレ共である。

ミスチーとリグルさんは、一度頭を殴ってやったら、尚更悪化した経緯があったが(笑)

 

「とりあえず、一度始めた事だ、気長にやってみなよ」

 

「祐さん…、ありがとう!」

 

俺に向けられる彼女の笑顔が眩しい…。

 

「…そうだ、あんたにって思って買っておいた髪飾りがあるんだ」

 

「えっ、私に髪飾りを?」

 

「ああ、半年前に買っておいて、そのまま放置プレイだった」

 

「は、半年前って……呆れた!」

 

本当に呆れているのか、ジト目で見つめている姫。

 

「本当に忘れてたんだよ…、渡そうと思って、この鞄に入れっぱなしだったのをすっかり失念していたんだ」

 

「まぁ…! 祐さんにとって私はその程度の存在なの!?」

 

「悪かったって……」

 

そう謝ってはおいたが、彼女も妖怪。

俺にとっては、それ以上でもそれ以下でもない。

 

本人には言わないでおくが。

 

「えっと…、どこ行ったぁ…………あ、あったあった!」

 

これを見つけた時、わかさぎ姫には良く似合うと、直感的に感じたのだ。

 

何だかんだ言って、妖怪と言えども、仲間と認めたら色々と世話を焼いてしまう。

 

俺の悪い癖でもあるな。

 

「…これなの?」

 

「ああ、綺麗な髪飾りだろ? これを発見した瞬間、あんたに似合うだろうって思った訳よ」

 

本音としては、微妙に魚っぽい形をしてたのがツボだったりして…、わかさぎ姫のイメージにピッタリなんだよな。

 

「わあ、嬉しい! これを私に?」

 

「うん、あげるよ」

 

その髪飾りを彼女に渡すと、とっても嬉しそうに隈無く見ていた。

 

「綺麗ねぇ……こんなに素敵な形の髪飾り、初めて見たわ!」

 

「なんせ、人里の職人が仕上げた逸品だからな、完成度は高いよ」

 

「へぇ…、とにかく、ありがとう、祐さん!」

 

「礼なんていいよ、俺達だって友達だろ?」

 

「ふふふ…、祐さんにそう言って貰えるなんて、何だか光栄だわ」

 

「よせよせ、俺はそんな大層な人間じゃないよ」

 

そうして、俺とわかさぎ姫との談笑は続いた。

彼女との会話は、何故か楽しい。

 

 

「……あっ、みーつけた!」

 

 

「「………っ!?」」

 

元気な声が聞こえ、その方向を見ると、

 

「やっほー、わかさぎ姫! それに、祐さんも居たんだぁ!」

 

「よう! 久しぶりだな、チルノさん」

 

「こんにちは、チルノ」

 

「ねぇねぇ、せっかく会ったんだから遊ぼうよ」

 

「今会ったばかりなのに、せっかちだなぁ」

 

「それじゃあ祐さん! あたいと勝負だー!」

 

「はぁ、やっぱりか……そう来ると思ったよ…」

 

予想通りの展開に、頭を抱える。

 

「チルノちゃん! いきなり勝負を仕掛けるのは失礼だよ!」

 

そこへ、また聞き覚えのある声が聞こえた。

 

「あら、大ちゃんも一緒だったのね」

 

「こんにちは、わかさぎさん。 それから、祐助さんもお久しぶりです」

 

「やあ、こっちこそ久しぶりだね、トリル」

 

チルノと仲良し大妖精が、チルノを宥めに入った。

 

「一方的に進めちゃダメだよ? 一応、相手の事も考えなきゃ…」

 

「いいの! 祐さんには何時も負けてるから、今日こそ負かしてやるんだから!」

 

「お前に出来る訳無いだろ…」

 

「えっ? 何か言った?」

 

「いや、何も」

 

ここで、あーだこーだ言うと面倒だから、黙ってよっと。

 

「ところでわかさぎ姫、何を持ってるの?」

 

「ああ、これね。 祐さんから貰った髪飾りなのよ」

 

「へぇぇ……」

 

「とっても綺麗な細工ですね!」

 

「うふふ、これは私の宝物なんだから!」

 

「ねぇ、ちょっとだけ、あたいに貸して!」

 

「ええっ!? これを?」

 

「いいじゃん! ちょっとだけ!」

 

「あっ、ちょっと!?」

 

その髪飾りに興味津々なチルノは、半ば強引に姫から取り上げてしまった。

 

「おいチルノ、それ壊れ物だから、扱いには注意しろよ」

 

「大丈夫よ! あたいに扱えないものなんて無いんだから!」

 

「信用出来ねぇよ…」

 

俺の心配を余所に、髪飾りを振り回して遊ぶチルノ。

 

「チルノ! あんまり乱暴に扱わないでよ!」

 

「チルノちゃん! あんまり振り回すと、壊れちゃうよ!」

 

「大丈夫だって!」

 

「ああ、見てられん…」

 

髪飾りを振り回して、何が楽しいのだろうか?

全く、危なっかしいぜ。

 

「チルノ、そろそろいい加減にしないとマジで……」

 

「えいっ!」

 

「へっ…!?」

 

チルノが髪飾りを放り投げ、

 

「やぁぁっ!」

 

『カチッ カチッ…!』

 

何と氷らせてしまった。

 

「氷らせてみたよ、もっと綺麗に見えるでしょ?」

 

「え〜!?」

 

「チルノちゃん、そんなの必要ないよ」

 

「こんなの何でも無いよ! よっと…」

 

氷った髪飾りを取ろうとした時だった。

 

 

パリーンッ!

 

 

「へっ…?」

 

「「あっ!」」

 

「なっ…!?」

 

何と、その髪飾りは粉々に砕け散ってしまったのだ。

俺は、これを一番恐れていたんだ…。

 

「壊れちゃった…」

 

「あぁぁぁぁ!? 祐さんから貰った髪飾りがぁぁぁぁ! 私の大切な宝物がぁぁぁぁ!!」

 

「そんな、大袈裟だぞ…?」

 

「チルノちゃん! わかさぎさんの大事な物を壊しておいて、そんな言い方は無いでしょ!?」

 

「で、でも……あたい、ワザとやった訳じゃないし…」

 

泣き出すわかさぎ姫、怒る大妖精。

そして、あくまでも開き直るチルノ。

 

「酷い……貰ったばかりなのに……そんなの…あんまりよ……うぁぁぁ……ぇぇぁぁぁ……」

 

泣き崩れるわかさぎ姫。

 

「そんなに泣かなくたって、いいじゃん…」

 

さして悪びれる様子が無いチルノ。

 

 

それを見た俺は、一気に頭に血が上った。

自身の中で『プッツン!』と音がするのが聞こえたような気がした。

 

「おいチルノ…、テメェ何て事してくれたんだ…」

 

「えっ、祐さん…?」

 

「気安く呼ぶんじゃねぇぞ、クソ妖精が…!」

 

「えっ……えぇぇ…!?」

 

「せっかく俺が姫に送った物を、一瞬で破壊したな。 あれほど気を付けろと言ったのに、貴様ってヤツは…」

 

「あ…あの……祐さん……落ち着いて……(ガタガタ)」

 

「しかも、謝るどころか開き直るとは…、見下げ果てたカス妖精だな」

 

「あ、あたい…、謝ったつもりだけど…」

 

「今日という今日は勘弁ならん! 落とし前付けてもらうぞ」

 

「は、はへぇ……」

 

「今日を貴様の命日にしてやる、何か言い残す事はあるか?」

 

「い、いや……ぁぁぁぁ……」

 

「何だって? おい……おぃぃぃっ!!!」

 

「うわぁぁぁぁ!」

 

 

 

 

―わかさぎ姫視点―

 

「ゆ、祐さん…!?」

 

完全に怒り浸透の祐さんは、恐ろしい程に殺気立ち、戦闘モードに入っていた。

そして、チルノは完全に恐怖で固まっている状態だった。

 

「さて、覚悟しろ…」

 

「いやぁぁぁぁ!!」

 

チルノが氷の塊を飛ばし攻撃するが、彼はそれをかわし前へと進む。

 

「相も変わらず、貴様の攻撃は単純明解だな。 そんなものを俺に当てられるとでも思っているのか?」

 

「く、来るなぁぁぁぁ!!」

 

何を血迷ったのか、チルノがスペルカードを取り出した。

 

しかし、私は見てしまった…。

 

「凍符『マイナス………」

 

「おせーんじゃ、ゴラァァァァ!!」

 

一瞬で間合いを詰めた祐さんの蹴りが、チルノに炸裂。

 

「うがぁぁぁぁっ!?」

 

吹き飛ばされたチルノは、大木に叩き付けられ倒れ込む。

彼は、凄まじい早さで追っかけてきて、

 

「ウラァァァ!」

 

「うげぇぇぁぁ!?」

 

倒れたチルノの首を掴み上げ、そのまま投げ飛ばす。

 

「かはぁぁぁ!?」

 

再び地面に叩き付けられたチルノが、口から血を吐く。

 

「ハァァ!」

 

「アガァァァ!」

 

立ち上がろうとした彼女の腹部に左ストレートが入り、顔面に膝蹴りが入る、その反動で浮かんだ体を左回し蹴りで掬うように蹴り上げ、またも大木に叩き付ける。

 

「うがぁぁぁ…」

 

チルノは、また力無く倒れてしまった。

 

私は、それを見て震えが止まらなかった。

 

あれは、本当に人間なの?

圧倒的な力で妖精をねじ伏せている光景は、本気で恐怖を感じたわ。

 

普通の人間なら、チルノに勝つのは難しいだろうに、彼は全く彼女を寄せ付ける事無く、フルボッコにしていた。

 

あれが祐さんの、もう一つの顔……。

 

「おい、まだ終わっちゃいないぞ…」

 

「ゴゴゴゴ…ゴメンナサイ! ……あたいが悪かったよ! 許して下さい!」

 

血だらけの彼女が、本気で許しを乞うていた。

あんなチルノ、私は見た事が無い。

 

「さっき言ったよな? 今日は貴様の命日なんだ、これから本物の地獄の苦しみを与えてやる」

 

「ゴメンナサイ! ゴメンナサーイ!! 助けてよぉぉ!」

 

だが、彼は無慈悲に彼女の髪を掴み、強引に顔を上げる。

 

「これまで、貴様がやってきた罪を一つずつ数えろ、それが数え終わった時には貴様は地獄にいるからな」

 

「あぁぁぁぁぁ!!」

 

 

拙いわ! このままじゃ本当にチルノが…!

 

「あわわわわわ……チルノちゃんが…、どうしよう…」

 

恐怖の余り、オドオドして動けないでいる大ちゃん。

 

「大ちゃん、彼を止めましょう!」

 

「止めるって、どうやって…」

 

「止めなきゃ、チルノが…!」

 

 

 

私は咄嗟に彼の元へと飛び出したが、既に攻撃のモーションに入っていた。

 

 

「さぁ、10秒間、神に祈れ」

 

 

「いやぁぁぁぁ…!」

 

 

「待って祐さん! もういいわ! もう十分だから!」

 

 

「祐助さん! お願いです、チルノちゃんを許してあげて下さい! 私からも謝ります! だから……だから、チルノちゃんを…」

 

 

「5……4……3……2……1……」

 

 

「………っ!?」

 

 

「…時間切れだ」

 

 

「祐助さん!!」

 

 

「祐さん!!」

 

 

「ハァァァァァ!!」

 

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

チルノ目掛け、彼の手刀が繰り出された。

 

 

もう終わった!

 

 

本気でそう思った。

 

 

「………っ」

 

 

「ひぇぇぇぇぇ………(パタッ」

 

 

だが、彼の手刀はチルノを捉える事無く、後ろの木を貫いていた。

極上の恐怖を味わった彼女は、そのまま失神して倒れた。

 

 

「ゆ、祐さん…?」

 

「…全く、馬鹿野郎が…!」

 

「祐助さん! チルノちゃんは!?」

 

「大丈夫だよトリル、ピチュッては居ないから」

 

「よ、良かった………って、チルノちゃん!?」

 

大ちゃんが一直線で、チルノに駆け寄った。

 

 

彼は元の場所戻り、頭を冷やすかのように水筒のお茶を飲んでいた。

 

「グッ…グッ……はぁ……すまない、迷惑掛けてしまったな…」

 

「祐さん…」

 

「でも、さっきのチルノの態度は許せなかったんだ、久しぶりにキレちまったよ…」

 

「貴方はそんなにしてまで…、私はそれだけで嬉しかったわ…!」

 

「だけど、それでチルノを半殺しにしてしまったんだ、誉められた事じゃない」

 

それだけ言うと、彼はチルノの元へと向かった。

 

「チルノ…チルノ、大丈夫か? 今手当てしてやるからな」

 

「うわぁぁぁ…!」

 

意識を取り戻していたチルノは、彼の姿を見るなり怯えていた。

 

「さっきはすまなかった、もうしないから安心しな」

 

ハンカチを取り出し、血を拭き取ってあげている光景は、何時も祐さんに戻ったって感じね。

 

「…大丈夫だ、しばらく時間を置けば、その怪我は治るよ!」

 

「あ…あぁぁぁ…」

 

「君が悪いんだぞ? 姫の大切なものを壊してしまったんだから、後でちゃんと謝りなよ?」

 

「う、うん…」

 

「トリル、後は頼むわ」

 

「は、はい!」

 

大ちゃんに後を任せ、祐さんは私の元へと来た。

 

「ごめんな姫、俺がついていながら、あんたの髪飾りを壊させてしまった。 はぁ……」

 

彼は上を向き目を閉じた。

 

「…気にしないで、貴方は何も悪くないわ」

 

「何て言うか、凄いやるせない気持ちで一杯だ…」

 

「祐さん…」

 

「…もう行くわ、次の目的もあるんでね」

 

「え、ええ…」

 

彼は荷物が入った鞄を担ぎ上げ、歩き出した。

 

「…祐さん!」

 

「うんっ?」

 

「また、遊びに来てね!」

 

「もちろんだ、必ず行くよ。 次は違う場所へ行くんだからな!」

 

「ええ、楽しみにしてるわ」

 

「それじゃ、ご機嫌よう」

 

そうして、彼は湖を出立しょうとしたが、妖精達の前で足を止めた。

 

「うぅぅぅ…、大ちゃん、怖かったよぉ…」

 

「当たり前でしょ! あんな事したら、祐助さんだって怒っちゃうよ!」

 

ベソをかくチルノを、大ちゃんが絶賛説教中だったが、そこへ祐さんが声を掛ける。

 

「二人とも」

 

「「はぇぇぇっ!?」」

 

「そんなに驚く事無いだろ…、お菓子をあげるよ」

 

「えっ…、一箱も良いんですか?」

 

「ああ、遠慮せずに食べな、チルノ分も、はい」

 

「あ、あたいにも? いいの?」

 

「もちろんだとも!」

 

「あ…、ありがとう…」

 

「よしよし…」

 

祐さんは、チルノの頭を優しく撫で、乱れていたリボンも直していた。

 

「俺は行くからな、チルノ! 次はちゃんと弾幕ごっこで勝負しような!」

 

「あぁぁぁ…、うんっ!」

 

チルノの表情に笑顔が戻る。

 

何ていうか、祐さんって妖怪や妖精の扱いが上手いわね。

妖怪達に顔が利くってのも、納得だわ。

 

本当に、不思議な魅力がある人間ね…。

 

そうして、私は彼の姿が見えなくなるまで、森の方を見つめていました。

 

 

ー再び近藤祐助視点ー

 

許せなかったとはいえ、やりすぎてしまったな。

俺としたことが、妖精相手に大人気ない・・・。

 

一応、反省はしている。

 

わかさぎ姫には、また新しい小間物でも買ってやるか。

選ぶ時間だけは、十分にあるからな。

 

チルノの方も、何か考えておくか・・・。

 

さて、気を取り直して、今度こそ紅魔館へ向かいますか!

 

既に、あの特徴的な時計台を視界に捉えていた。

 

 

「本当の地獄は、これからだったりして・・・」




わかさぎ姫との会話シーンは、色々と構想がありましたが、現状で落ち着きました。

また、チルノがフルボッコにされましたが、また懲りずに喧嘩を売ってくる予定ですw

ある程度、主人公に対する恐怖心は植えられたと思いますが…。

この作品が、一番ネタが思いつきます^^;
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