紅魔館に向けて、せっせと足を運んでいる途中であります。
「今度は、ちゃんと落ち着いていかないとな…」
さっきはついブチキレて、チルノをボコってしまったが、今度はそうならないようにしないと。
最も 、そんな平然と物を壊す事を仕出かすヤツは居ないとは思うが。
歩く事数十分……
ようやく、紅魔館の門が 見えてきた。
「はぁ………よし!」
深呼吸をしてから、入り口へと向かう。
相変わらず真っ赤な建物だ、目に悪い…。
そして、門の目前で立ち止まると、やはり見慣れた光景があった。
「zzzz…………」
「……………っ」
美鈴さん…、やっぱりなんだな…。
まあねぇ、年中門の前で突っ立ってるだけじゃ退屈だろうし、今日みたいに良い天気じゃ、居眠りもしてしまうってものだろう。
現に、俺もさっきは睡魔に襲われそうになったし。
でも…、仕事は仕事だろ?
しゃーない、起こしますか。
「美鈴さん…メイちゃん…?」
「…………っ」
起きねー。
「メイちゃん、仕事はどうした? 起きなよ」
「………っ」
何処までが本気で寝てて、何処までが警戒をしているのか、俺にも分からん。
以前、無視して入ろうとしたら、手痛い一発を食らった事があってな
それ以来、素通りはしないようにしている。
「仕方ない、咲夜さんに代わってお仕置きしてあげるわ…」
博麗札を彼女の足元に散りばめて、俺自身は札とカメラを持ちスタンバイ。
「さぁ メイちゃん、面白いリアクションを見せてくれよな!」
霊夢に仕掛けた悪戯より、悪質かもしれない(笑)
「せ――の……」
「あぁ、咲夜さん、お久しぶりでーす!!」
「へっ…!? 咲夜さん!?」
その一言で一瞬にして目を覚ます美鈴さん。
「掛かったな!」
「えっ……ぎぇぇぇぇっ!?」
チュドーン!
動揺した美鈴さんが思わず博麗札を踏んだ瞬間、爆発を起こす。
その連鎖反応で次々と爆発を起こす。
『チュドーンッ! チュドーンッ!』
「うぎゃぁぁぁぁぁぁ!!?」
爆発音と悲鳴が、交互に聞こえる。
俺は、連写モードでシャッターを切る!
…まだ、爆発してる……。
「な、何なのコレ……おぎゅぇぇぇ!?」
こりゃ、断末魔の叫びだな。
早くもボロボロのメイちゃん、
霊夢でも此処まではしないだろうな。
「そろそろだな…」
カメラ片手に腕時計で時間を確認。
「……それっ!」
「うえっ…!?」
爆発が終わった隙に、彼女の背中に拘束術式の札をベッタリ貼り付けてやった。
「おはようメイちゃん、最高の起こし方だったろ?」
「ゆ、祐さん!? 貴方の仕業だったんですか!?」
「大正解、おさぼり門番にヤキを入れてやったんだ」
「ひ、酷いですよ! 居眠りしてただけで連続爆破するなんて、普通死にますよ!?」
「心配するな、お前さんはそんな柔な身体じゃないだろ?」
「そりゃ………」
「だがな、今は違う」
「えっ……ぐはっ!?」
ちょっとの隙に、彼女の腹部に三割程度の力のパンチを入れてやった。
だけど、メイちゃん悶絶。
「痛かった?」
「当たり前です! 痛くない訳が………って、あれ!?」
「…気がついたか? 俺は大して力は込めてないぞ?」
「な、何で? 気が操れない…? ていうか、力が入らなくて怠い……」
「さっきの爆発の直後に、君に拘束術式を掛けておいた。今の君は、人間並みの力も出せないよ」
「ええ〜!?」
「てことはだ、今なら思う存分に君をど突き回せるって訳だ(ニヤニヤ」
「そんな!? それはご勘弁を!」
「前から、君には一度本格的にヤキを入れたいと思っていたんだ、この機会にやってやる! さあ、其処に直りなさい」
「ひぃぃぃぃ! 祐さん、貴方は鬼ですか!? 悪魔ですかぁ!?」
「鬼も悪魔も個別にいるじゃん、俺は人間だ」
「い、いや、そうじゃなくて…」
「やかましいんじゃぁぁぁ!」
「ひぃぇぇぇぇぇ!?」
顔面目掛けてパンチを繰り出す!
………振りをした( ̄∀ ̄)
「あわわわわわ………」
「……なに本気にしてるんだよ、バーカ!」
「祐さんがやったら、シャレにならないですよ…」
緊張が解けたのか、涙目の彼女はへたり込んでしまった。
いやぁ、悪戯が過ぎたかな?
「美鈴、少しは身に染みたかしら?」
「さ、咲夜さん!?」
振り向くと、其処には身形の整ったメイド長が立っていた。
時間を止められるって、地味にプレッシャー掛かるんだよなぁ。
「オッス、咲夜さん!」
「こんにちは、祐さん。 それにしても、悪戯が過ぎますわ」
「いやぁ、スマン。 でも、退屈してるだろうメイちゃんに、刺激を与えてやったのさ」
「そんな刺激は要りません!」
「そうね、私が手を下す手間が省けたわね」
「そんな! 咲夜さんまで!?」
「美鈴、彼にやられたいか、私にやられたいか、どっちがいい?」
「ひぇぇぇぇ……」
「まあまあ咲夜さん、それ位にしておきな」
この女は、それ以上の事をやりかねん、ストップを掛けておかないと。
「祐さんがそう言うなら…」
「メイちゃん、立ちなよ」
へこたれている美鈴さんに手を差し伸べる。
「あ…ありがとうございます…」
しかし、拘束術式のせいで怠そうにしている。
仕方ない、解いてやるか。
「メイちゃん、少しの間、ジッとしてな」
「えっ、何をするんですか?」
「いいから!」
「は、はい…」
彼女の額に手を当てて解除術式を唱える。
「―――――っ!」
ドンッ!
「痛っ!?」
鈍い衝撃音と共に、彼女に貼られた札が剥がれ落ち、燃えて灰になった。
「もう大丈夫だ、いつも通りになったぞ」
「いつも通りって………あっ! 力が入る! ついでに、気が練れる!」
「拘束術式一つで、妖怪はどうにでもなるもんだな」
「勘弁して下さいよ…」
「でも、良かったわね美鈴。彼が本気だったら、今頃は五体満足な身体じゃなかったかもよ?」
「怖い事をサラッと言わないで下さい!」
「本当よ? 私だって、祐さんにはボコボコにされた口なんだから」
「あれは、君が調子に乗り過ぎてたからだろ…」
「お嬢様の命令でしたからね♪」
「………っ」
この女の考えが読み切れん。
「それで 祐助様、今日は何のご用で?」
「ああ、レミリアさんが呼んでるって言ってただろ? だから、こうして土産を持参して参上したのよ」
「やはりそうでしたか、お嬢様はお部屋でお待ちです」
「…どうやら、来る事は分かっていたみたいだな」
「ええ、それでは、お部屋まで案内しますわ」
「よろしく頼むよ」
メイド長の後について館へと向かおとするが、足を止めた。
「咲夜さん、ちょっと待ってくれ」
「何か…?」
「メイちゃん!」
「は、はい! 何ですか?」
そうそう、思い出した。 彼女にも土産を渡さないとな。
「君に土産だ、役目の合間にでも食いなよ」
「これって…、お菓子じゃないですか! いいんですか、こんなに?」
「もちろんだ、君用に買ってきたんだからな。 良いだろ? 咲夜さん」
「ええ、祐さんの差し入れだから、今回は許すわ」
「ありがとうございます! 祐さんはやっぱり天使です!」
「さっきは鬼だとか悪魔とか言ってなかったっけ?」
「そんな事言いましたっけ? 気のせいですよ…」
「嘘付け、どっかの鳥頭みたいにさっき言った事も忘れたとかホザくんじゃないだろうな、このバカタレが!」
「そ、そんな怒らなくたって…」
「咲夜さん、行こうか」
「はい」
何か言いたげなメイちゃんを後目に、館へと入った。
「祐さんって、難しいなぁ…」
――――――――――――――――――
館内の廊下を、咲夜さんに案内されていた。
時々、妖精メイドとすれ違う以外は静かなものである。
しかしだ―――――
「きゃー!祐助さーん!」
とか
「祐さん、お話ししようよ!」
とか
「来てくれたのね! 後で部屋に来てね♪」
とか
「ねえねえ、一緒に遊びましょうよ♪」
などと、何故か妖精メイドからは人気のある俺氏。
もちろん、本気で相手にするつもりは無い、妖精だから。
しかし、俺は何か特別な事でもしたんだろうか?
特に覚えは無いんだが……。
強いて言えば、以前妖精メイド達が大きなミスをして、レミリアお嬢やメイド長がガミガミ言っていたのを、偶々居合わせた俺が宥めて、後始末を手伝ってやった位か。
あの時は、丸一日掛かってしまい偉く疲れたものだ。
妖精メイド達にも声掛けとかして、何とか上手く纏めたが…。
咲夜さんが1人で仕事をする意味が分かるような気がした。
「随分と、アイツらから人気があるのね」
「そうか? 特別な事をした覚えは無いが…」
「…貴方って、以外と無自覚でフラグを立てる人なの?」
「フラグ? 何の事だか…」
「呆れるわね………でも、その面倒見の良さが彼女達に信頼されている要因かもしれないわね」
「妖精メイドに気に入られてもなぁ、何にもメリットにはならないよ」
「それは言えてるわ」
「ハハハハ……」
咲夜さんとの談笑は、しばらく続いた。
「そうそう、君にも渡しておくよ、これを」
「えっ? これって…さっき美鈴にも渡したもの?」
「君も知っているだろ? 今人里で一番人気の粒餡最中だ。 メイちゃんだけじゃない、君の分も確保してあるんだから」
「まあ、嬉しいわ、後で食べさせて貰いますわ」
「ああ! …………ってあれ?」
今渡した筈の、お菓子の箱がもう無くなっていた。
「一つだけ味見をしましたが、確かにあの最中は美味しかったわ、後でゆっくり楽しませて貰います」
「もう食べたのか? 残りは?」
「部屋に置いてきたわ」
「そうか…」
わざわざ、時間止めなくたっていいじゃん…。
彼女は、能力に頼り過ぎでは無かろうか?
時々、そんな心配をしてしまう。
「着きましたわ」
「何時も思うが、玄関から此処まで、地味に長いよな…」
レミリアさんがいる客間へと到着。
久しぶりの対面になるな。
『コンッ、コンッ』
「お嬢様、近藤祐助様をお連れしました」
「入れ」
ノックをして呼び掛けると、中から聞き慣れた子供っぽい声が聞こえるも、違和感を感じた。
「…なぁ、咲夜さん」
「どうかしたの?」
「彼女、もしかして機嫌が悪いのか?」
「もしかしてではなく、本当に機嫌が悪いのよ」
「また何で?」
「この時間は、何時もならお休みになってる時間だからね。 それから祐さん、貴方自身にも原因があるわ」
「俺にって………はぁ、面倒くせー…」
「とにかく、入るわよ」
「君は平気なのか?」
「よくある事ですわ」
「よくあるって…、強いんだな……」
この女の心臓はかなりデカいんだな。
普通ならビビって当たり前なのに、そんな仕草すらない。
主の事を、よく分かってますな。
「やっと来たな」
戸を開け客間が見えると、少し奥の方にある手すり付きの椅子に、頬杖をして、脚を組み、ゆったりと座っている、何時もの服装をしたレミリア・スカーレットの姿があった。
ああして座ってはいるが、何処までが本気なのか、イマイチ分からない。
少々乱暴な口調だが、これもまた、よくある事なのだ。
「久しぶりだな、レミリアさん」
「随分と待たせやがって…、お前は自分の立場が分かっているのか?」
「立場? 何の事だかな?」
「コイツ…! 咲夜、貴女は外しなさい」
「はい」
レミリアお嬢の命で、咲夜さんは一瞬で居なくなってしまった。
今、部屋には俺とレミリアさんの二人だけ。
「そんなに苛立つ事無いだろ? 色々あったんだよ」
もちろん、こんな言い訳が通じるとは思っていない。
「そんな言い訳は聞きたくない、お前は以前こう言ったな? 『今度、美味しいお菓子を持参して来るからな、ひと月後のお楽しみだ』と、そう言ったな?」
「…確かにそう言った」
「なのに何だ、3ヶ月以上も音沙汰無しで、先日咲夜に会っていなかったら、まだ放置していたつもりか?」
「いや、そうじゃないんだよ、本当に怪我してて行けなかったんだって。 回復したからこうやって来たんだろ?」
「フンッ! 何を言うかと思えば、そんな下らない言い訳ばかりしやがって…、少し痛い目に遭わないとダメか?」
「だから、話を聞けって…」
「黙れ! 私を怒らせるようなヤツはどうなるか、その身体に教えてやる!」
「……ほうぉ、やってもいいが、貴様の命の保証は無いぞ……」
お互いの殺気、妖気と霊気がぶつかるかのように空気を震わせる。
一触即発、まさにその雰囲気。
部屋中の置物がガタガタと音を立て、第三者がいれば即座に逃げ出してしまう位のものが、部屋を覆う。
やっぱり、レミリア・スカーレットは凄いな。
そんな睨み合いの状態が数分続くが、お互いに動かない。
………当然である。
「……もういいだろ? あんたにその気が無い事は、最初から分かってるんだから」
「…フッ、やっぱり貴方に偽りを貫くのは無理ね……」
そう呟いた彼女から殺気が消え、見た目相応の少女らしい雰囲気になっていた。
「久しぶりに会っていきなりこれだなんて、よっぽど暇だったんだな」
「でも、怒っているのは本当よ? 3ヶ月以上も放置だなんてさ!」
「悪かったよ、お詫びとして、前言っていた物を余分に買ってきたんだから」
「フフフ………さあ、こっちに座ってよ、祐助」
「それじゃ、遠慮なく」
レミリアさんが指差した椅子へと座る。
丁度、対角線上の形の場所である。
「へえ、これが今噂のお菓子なの?」
「そう、人里で一番人気の粒餡最中だ、なかなかの美味だぞ?」
「さっそく、戴くとするかねぇ」
「どうぞ、紅茶を淹れてやろう」
「お願いね」
彼女が、一口食べている間に、俺がカップに紅茶を淹れる。
何で紅茶が淹れれるかって?
咲夜さんに仕込まれたからさ。
「…なかなかイケるわね」
「だろ? 人気があるのには理由があるんだよ」
「ふーん…」
食べ終わると、彼女が紅茶を飲む。
何て言うか、貴族だけあってか、紅茶の飲み方一つも優雅に見える、流石である。
「やっぱりそうしている方が、あんたらしくていいよ。 乱暴な素振りや口調は似合わないぜ」
「どちらも私は私よ? 相手によって態度が違うのも、紅魔館の主として当然の事」
「俺にもか?」
「貴方は試しただけよ、やっぱり貴方はただの人間じゃないわ」
「よく言われる」
「フッフフフ……」
静かに笑うレミリアさん。
彼女との会話は、何となく気を使ってしまうな。
「今日は泊まって行くんでしょ?」
「端からそのつもりだ、今夜はあんたの相手をしなきゃダメなんだろ?」
「分かってるならいいのよ、今夜は寝かさないわよ?」
「ははは、そいつは楽しみだ…」
今夜は、長い夜になりそうだ。
「ねぇ…」
「どうした?」
「もう少し、こっちに来て…」
「あ、ああ…」
そういう要望だから、椅子ごとレミリアさんの横へつける。
「見せて……」
「…………っ?」
彼女は、静かに俺の顔に触れ、ゆっくり撫でていた。
「レミリア…さん?」
「…心配…したのよ……」
「えっ…?」
「貴方が怪我をしたと聞いた時、びっくりしたんだら…」
「あっ………」
「お見舞いにも行きたかったけど………私の立場上、そう簡単じゃないのよ、人里に行くのも…」
「俺に用事があると伝えれば、簡単に通してくれるぞ?」
「その認識が甘いのよ、あいつらは貴方が弱っているのを狙って殺しに来たなんて思うわ」
「そんな事は無い、俺とあんたが比較的仲がいい事は、里の人達は知っている」
「で、でも……」
「それに、あんたは吸血鬼らしく残酷な所はあるが、嘘のつける性格で無い事は俺は良く分かってる」
「ゆ、祐助……」
「馴れ馴れしいかもしれないが、俺はあんたの事を信頼のおける友人だと思っている」
「えっ……!?」
「過去に異変を起こした張本人でも、俺は今のあんたしか見ていない。 あんたは俺に良くしてくれた事もあったよな? だから、俺に出来る事であれば協力も惜しまないぞ?」
「………っ!」
「なぁ、レミィ……」
俺の顔に触れていた彼女の手を取り、両手で握ってやった。
「うぅぅぅぅ……」
彼女は顔を赤らめて俯いてしまう。
うん、可愛いな
カリスマオーラ全開の彼女も魅力的だが、こういう少女らしい素顔の方が俺は好みだ。
「…おや、帽子のリボンが解けかかっているぞ?」
「へっ…?」
「どうやらお気付きじゃないみたいだから、結びなおしてやるよ、貸してみな」
そう言って、彼女から帽子を取り、リボンを直してやる。
何というか、こういうのを見ると、無性に放っておけない質みたいだ。
何でも良いから、直さなきゃ気が済まないというか…。
お節介な性格だよな(苦笑)
せっかくだから、結び方に一工夫してと…。
「……よし、出来たっと。 動くなよ」
「…………っ」
ジッとしている彼女の頭に、帽子を被せてやる。
「……あれ………角度が悪いな……………いや、こうじゃないな…………」
「………(ジトッ」
「………違うなぁ…………ダメだな…………これじゃ、気に食わん…!」
「……あんたって、以外に細かい性格してるのね…」
「やっぱりさ、身形はちゃんと整えなきゃダメだろ? 誰が相手でも、それだけは譲れない」
「そ、そう……」
時間にしてみれば、2、3分程であったが、彼女にすれば長く感じたかもしれない。
「……これで、いいかな?」
「やっとか…」
「レミィは綺麗な顔立ちだから、帽子一つでも雰囲気が変わってくるからな、美しさとカリスマを備えてこそ、レミリア・スカーレットの真骨頂だと思うな」
「何よ…、随分と褒めてくれるのね」
「お世辞じゃないよ」
「………っ」
フッと笑ったかと思ったら、また俯いてしまうレミリアさん。
「ねえ、祐助…」
「どうした?」
「こっち……」
彼女が手を差し出すから、俺が手を出すと、
「……うわっ!?」
突然、俺の手を取り懐へと身体を乗り出して来たのだ。
「はぁ、眠くなってきちゃったわぁ……」
「そっか…、何時もなら寝てる時間だったんだよな?」
「そうよ、貴方が来るのを待って、無理に起きてたのよ?」
「そんな無理せんでも、今夜幾らでも相手になったのに…」
「嫌よ、私にとっては……その………」
「えっ、何てか? 聞こえなかった」
「……な、何でも無いわよ、バカ!」
「はっ…?」
言いたい事があれば、はっきり言えばいいのに、誰かさんに似てるな。
「私の事をレミィと呼ぶのを許しているのは、パチェと貴方だけよ、分かってる?」
「ああ、光栄な事だな、君とそういう間柄になれたってのは、里の人間では俺が初めてじゃないか?」
「そうよ、だから光栄に思いなさいよ」
「分かったって! 少しばかり恩着せがましいぞ…」
「当たり前だろ? 私は誇り高きスカーレット家の当主なんだぞ?」
「俺に寄りかかった状態でそう言われても、説得力がな…」
「う〜…」
フッ、そういうセリフはさっきの脚を組んで座っている状態の方が似合ってるのに、タイミングを逃したな(笑)
「祐助…」
「何だい?」
「しばらく、こうさせてよ…」
「まあ…、それは構わないが」
「………っ」
彼女は目を閉じ、程なくして寝息を立て始めた。
俺の胸に寄りかかっただけで寝れるなんて、器用なもんだ。
転げ落ちないように、軽く抱き締めてはいるが、背中の翼が邪魔だったりする。
レミリアさんとは、まだ数年の付き合いだが、此処まで気を許してくれる関係になるとはな…。
初めて出会った頃は、どうしたものかと随分と手こずったものだ。
紅霧異変の少し後だったな、慶治と平九郎の三人で、挨拶するという名目で紅魔館に乗り込んだのは。
本当に挨拶するだけが、腕比べと称してバトルになってしまい、
仕舞いには、俺とレミィとの闘いはガチの殺し合いにまで発展していた。
今考えてみれば、実に無茶苦茶であったな(苦笑)
そんな事があってか、お互いの実力を認め合ったおかげか、その後の紅魔館の住人との関係は良好である。
「はぁ、煙草吸いたいなぁ…、今吸ったら怒るかなあ?」
そろそろニコチンが切れそうで、煙草が吸いたい衝動に駆られ始めた時であった。
『コンッ、コンッ』
「どうぞ」
『ガチャ…』
「…あらっ、お休みになってしまいましたか」
扉が開くと、咲夜さんが替えのティーポットを持って入って来た。
「申し訳ありません、貴方に負担を掛けてしまったようで…」
「気にするな、これが初めてじゃないだろ?」
「しかし、祐さんはお客様だから、それは…」
「大丈夫だって、でも、このままじゃよろしく無いよな」
寄りかかっているレミィをそっと起こし、お姫さま抱っこしてやる。
軽々と持ち上がるんだけど、身体は大丈夫なのか…?
「大丈夫なの?」
「俺は大丈夫だが、レミィは大丈夫なのか? やけに軽いんだが…」
「お嬢様はそんなものですわ、私でも軽く抱っこ出来るから」
「そーなのかー」
「………っ」
スベった感が半端ない…orz
「……まぁ、ともかく、部屋まで送って寝かせておくよ」
「1人で大丈夫?」
「そこも心配ご無用、勝手知ったる他人の家だ。君は仕事に戻ってくれればいい」
「そう…」
「それじゃ、失礼するよ」
寝ているレミリアさんを連れ、客間を出ようとすると、後ろから声を掛けられる。
「ねえ、祐さん」
「うん…?」
「後で……時間ある…?」
「予定は無いけど?」
「良かったら……私と………その……」
「あっ、何だって? よく聞こえなかったんだが?」
「あ……あの………別に………」
「はっきり言えよ…」
「………っ」
何かを言いかけたのだが、俺が素っ気ない返事をしたら、寂しそうに俯いてしまった。
少しばかり、意地悪が過ぎたかな。
「君の時間が空くのは、夕方の前だっけな?」
「えっ…?」
「その時間になったら、君の部屋に伺うよ。 ゆっくり世間話でもしようや」
「あ……ええ!」
それを聞いた咲夜さんは、寂しそうな表情から一転、とても明るい表情で答えた。
全く、素直じゃないな…。
難しい年頃なんだな、霊夢や魔理沙にも同じ事が言える。
「えっと…、此処だったよな」
館内を歩くこと5分、ようやくレミリアさんの部屋に到着。
咲夜さんよ、術解いてくれないかな?
無駄に広すぎて、訳が分からなくなるわ。
扉を開けると、豪華な装飾が成された内装が見える。
一つ、掻っ払いたい位だ。
「よいしょっと…」
彼女を、ベッドに寝かせる。
寝間着にさせた方がいいのだが、後が怖いから靴だけ脱がせてやる。
「帽子は取ってと…」
掛け布団を掛けてやって終了です。
何事も無かったかのように眠り続けるレミリアさん。
「寝顔は可愛いもんだ、とても500年以上生きているなんて思えない」
彼女に限った話では無いが、幻想郷の人型妖怪、特に女は、何奴も美女揃いだ。
鈴仙さんもそうだし、紫さんや藍さんもだ。
他にも、雛さんも秋姉妹もそうだし、はたてさんもなかなか。
聖さんや神子さんも良かったし、天子も美形だったな。
鬼なら、萃香さんや勇儀さんもそうだよな?
言い出したらキリが無い。
普通に考えれば、おかしいよな、このシチュエーションは。
それとも、俺の知り合いの妖怪が、美女揃いなだけなのか?
「まあ、深く考える必要も無いか…」
そう、これは偶々なんだ。
共通してるのは、過去に異変や騒動を起こして、霊夢に粛正されたヤツらって事か。
中には、巻き添えを食らった可哀想な妖怪もいたが。
その事で、霊夢と魔理沙に説教してやった事も数知れず。
「フッ…、俺も物好きだよな…」
何故か自虐的な笑いが出た。
今のこんな状況、あの頃の自分には想像が付かなかっただろうな。
「レミリアさん…」
眠っているレミリアさんに、無意識のうちに歌を歌っていた。
「通りゃんせー 通りゃんせー
こーこはどーこの細道じゃー
天神さまの細道じゃー
ちーっと通して下しゃんせ
ご用のないもの通しゃせぬ
この子の七つのお祝いに
お札を納めにまいります
行きはよいよい 帰りはこわい
こわいながらも通りゃんせー 通りゃんせー……」
……ダメだ、自分で歌っておきながら、まただ……
あの時の悪夢が、脳裏に……
この感じ……嫌だ…!
思い出すな!
気が滅入るだけだ…。
耐えきれなくなり、俺は駆け足で部屋を出た。
外の空気を吸おう、落ち着こう。
今は、楽しい事だけを、考えよう…。
「祐助……」
「どうして貴方は………その歌を歌う時の貴方は…………」
「そんなに、悲しい顔を……するの……?」
彼が出て行った部屋で、1人呟くレミリア。
その声は、誰にも届いていない。
彼女は、布団を握り締め、悲しみの表情で、その方向を見つめていた。
続く・・・。
この主人公って、フラグ体質なんだと思う。
無意識ってのが、質が悪いかもしれないw
ご都合主義な展開になっているのは、否定しない^^;
でも、執筆している側は楽しいっすw