妖メ「……それでね、そのトラブルを美鈴さんに見て貰ったら、同じミスしちゃってさー…」
妖メ「あれは凄い有り様だったよねー」
妖メ「メイド長には大目玉だったし、散々だったわよ…」
妖メ「任せた相手が悪かったのかなぁ…?」
妖メ「ホフゴブリンの方が使えるなんて、失礼しちゃうわ!」
祐「ふーん…、みんな苦労してるんだなぁ」
あれから俺は、気分転換に外へ出て、玄関付近で煙管を吹かしていた。
適当な所で吸うと、咲夜さんが怒るから、場所はちゃんとわきまえている。
そうしていると、俺の姿を見た妖精メイドが寄って来て、雑談が始まった。
最初は1人2人だったのが、気が付けば、10人近くに囲まれていた(汗)
みんな妖精らしく容姿は可愛らしいのだが、会話の内容は以外というか、結構腹黒い。
普通の雑談が、何時の間にか愚痴り大会に暴露大会、悪口連発になっていた(滝汗)
何でも、メイド長やお嬢様のせいにするなよ。
自分達が仕事が出来てないから、怒られるんだろ。
そう突っ込んでやったが、あー言えばこう言うで、埒があかない。
やっぱり、妖精なんだな…。
そんな話を、煙管を吹かしながら黙って聞いていたが、いい加減ウンザリしてきた。
でも、こんな時でなきゃ、こんな話は出来ないんだろうな。
…ええ、最後まで聞いてやりましたよ、俺ってお人好しだから(苦笑)
祐「…まあ、君達の言い分も分かるが、何故メイド長が怒るのかも考えなきゃダメだよ」
妖メ「何でだろう…」
妖メ「ちゃんとやってるつもりなんだけど…」
妖メ「私、分かんなーい」
祐「真面目に考えろよ…」
咲夜さんの苦労がよく分かるわ。
妖メ「でも、祐さんは私達の味方だよね!」
妖メ「そうよね! 前の時は私達の為に一肌脱いでくれたもんね!」
妖メ「だから、祐助さん大好き!」
祐「はぁ、都合のいいヤツらめ、そういう事は覚えてるんだな…」
そんな口車に乗せられる自分も、どうかとは思うが。
…気が付けば、30分以上は妖精メイド達と話をしていた。
そろそろ、次の所へ行こうかね。
煙管の灰を落とし、煙管入れへと仕舞う。
祐「さあ、お喋りは終わり。 お開きにしようか」
妖メ「ええー、もう終わり?」
妖メ「もっとお話しようよ!」
妖メ「祐さんとのお話楽しいから、もっとしたーい!」
祐「出来れば、ずっと談笑してたいところだが、一応君達は仕事中だろ?」
全員「うっ…」
祐「何時までも、こんな所で油を売ってると、メイド長にピチュられるぞ?」
妖メ「それは、嫌です…」
祐「だろ? また相手になってやるから、仕事に戻った戻った!」
妖メ「はあ、仕方ないわ…」
妖メ「でも、また話し相手になってね!」
祐「ああ、またな」
妖メ「約束だからね!」
全員「じゃあね、祐さん!」
俺に手を振りながら、妖精メイド達は館へと入って行った。
さっき、ピチュるってキーワードで、彼女達の表情が変わったが、どうやら思い当たる事があったらしいな。
咲夜さん、こえーわ(棒)
…少しは、気分転換になったかな?
「さてと、俺も行くか」
玄関の扉を閉め、次の目的地へと向かう。
紅魔館に来たからには、やっぱり大図書館には行っておかなきゃな。
――――――――――――――――――
「着ーいた」
この大図書館までの距離も、地味に遠い。
もう少し、館の設計考えろよ…。
大図書館の入り口は、大きな扉になっているが、思いの外軽く開くのだ。
きっと、体の弱いパチュリー専用設計になっているに違いない。
「そんじゃ、お邪魔しますっと…」
ゆっくりと扉を開くと、既に陳列された本棚が天高く聳えていた。
「ひんやりしてる…」
外の陽気とは裏腹に、この場所は冷たい空気で覆われている。
ちなみに、夏場は避暑地として活用したりもしている俺氏。
だって、此処って真夏でも涼しいんだもん(^ω^)
逆に、冬場はかなり厳しい環境に化する。
そんな下らない事を考えながら、図書館の中を歩く。
コツッ、コツッと、靴音がよく響く。
「さて、そろそろ彼女のお出ましかな?」
此処に来ると、何時もハイテンションで歓迎してくる悪魔がいる。
「祐さ―――ん!!」
噂をすれば、来やがった!
「捕まえた!」
「うおっ!?」
俺が振り向ことした時には、後から抱きついてきた。
「待ってたのよ! 今日来るか、明日来るかって、指折り数えて疲れたんだから!」
「そうか、それは悪かったな」
「ううん、こうして祐さんの顔が見れたから、私は嬉しいわ!」
「ああ、俺も君の綺麗な顔が見れて嬉しいよ、リトル」
彼女は小悪魔、パチュリーさんの使い魔で図書館の司書である。
皆からは「こあ」という愛称で呼ばれているが、俺はリトルと呼んでいる。
深い意味は無い、多分…。
「それより、ちょっと抱き付き過ぎだ、胸が当たってるって…」
「フフフッ、私の身体って魅力的でしょ? プロポーションには自信があるんだから!」
「ま、まぁ、確かに魅力的ではあるが…」
「でしょ? だから、私と付き合ってよ! そしたら、毎日好きなだけ抱きつけるわよ?」
何を言い出すんだ、この悪魔は。
しかも、その台詞は聞き飽きたし。
「何回言わせるんだよ、俺は人間だ、悪魔と乳繰り合う趣味は無いんだ」
「そんなあ! 私は悪魔だけど、同時に女よ? 私に女の魅力が無いって言うの?」
「いや、そうじゃないが…、それとこれとは別問題だし…」
あーもう、面倒くせー。
「悪魔だって恋するの、私は貴方に恋してるの…」
「あっそう…」
「あっ、待ってよぉ!」
何かバカバカしい…
さっさと行こ……
「ねぇ〜、待ってったらぁ!」
「おい、あんまり抱き付くなよ…」
懲りもせず、俺の腕に抱きついてくる嫌らしい悪魔。
悪い気はしないが、人外って時点でいけない。
いずれ、成敗しなきゃならないのか?
「パチュリー様、祐助さんが来ましたよ」
「あらっ、随時久しぶりね………って、貴方達……」
久しぶりに会ったってのに、パチュリーさんにジト目で睨まれた。
そりゃそうだ…
小悪魔は、俺にベタベタと体を引っ付けてきており、まるで恋仲……
………違う! それは違うぞ!?
「何ですかパチュリー様? 仲のいい2人を見て嫉妬してます?」
「そ、そんな訳無いでしょ!」
「またまたぁ…」
「おい、リトル! 誤解を招くような事を言うな!」
「本当の事でしょ? 私と祐さんは仲良しだって事は!」
「それは、あくまでも友人としてだ、決して君が考えているような…」
「またまた祐さんったら、恥ずかしがらなくたって…」
「だーかーら! 違―――う!!」
この勘違い悪魔を何とかしなければ…。
しかし、相手は色気の攻撃だけで俺にけしかけている。
暴力で対抗する訳にもいかない。
「小悪魔、いい加減にしなさい! 祐助が困ってるでしょ!?」
「困ってなんかいませんよ! ねえ祐さん♪」
「えっと………実は言うと…」
「えっ? 何か言ったかしら?」
「うえっ…、何でもない…」
否定しようとしたら、恐ろしい程の威圧的な笑みを浮かべて俺を見つめていた。
正に悪魔と言うべきものであり、これが彼女本来の姿なんだろう。
はぁ…、否定するのは止めて、話題を逸らそう。
「なあ…、リトル」
「なぁに?」
「この前読んでた本の続きが読みたい、持って来てくれないか?」
「もちろんです! 喜んでお持ちします!」
いとも簡単に、言われるがままに本を取りに飛び上がって行った。
それを見届けた俺、力が抜ける思いであった。
「とりあえず、助かった…」
「貴方も苦労するわね…」
「何故こうなったのか、俺にも分からん…」
「あの子の性癖も困ったものね…」
「全くだ…」
パチュリーさんの目の前で気まずかったが、とりあえず普通に接した。
「まあ、それはともかく、久しぶりだね、パチュリーさん」
「ええ、お久しぶりね、祐助」
「しかし…、魔法の研究も良いが、偶には外に出なよ、今日は快晴だぜ?」
「そうみたいね……けど、今は大事なところなのよ、そうもしてられないわ」
「それは研究熱心な事で…、此処座らせて貰うよ」
「ええ、どうぞ」
パチュリーさんの正面にある椅子に座り、山積みにされた魔導書を手に取りに、パラパラと目を通してみる。
……やはりというか、全然読めない。
実を言うと、以前に小鈴ちゃんに英語を教えて貰い、多少は読み書きが出来るのだが、この魔導書は英語では無いみたいで、全く解読が出来ない。
まあ、俺みたいな只の人間には、出来ない方がいいのかもしれない。
「…さっきから魔導書ばかり読んでるけど、分かるの?」
「読めてるように見えるか?」
「いいえ」
「やっぱり、俺みたいな凡人には、この内容を理解する事は出来ないみたいだ」
「大丈夫よ、貴方が本気で魔術を学ぶ気があれば、すぐに開花するわ。 魔理沙だって出来たんだから」
「遠慮しとくよ、魔法使いも結構苦労しそうだからな、君やアリスを見ていると、本当にそう思ってしまう」
「苦労するなんて事は無いわ、体は弱くなるかもしれないけど…」
「それは困る、健康な体は一生の宝物だぞ? 健康は疎かにしてはなりませんよ」
「平気よ、その為の魔法でしょ?」
「そういう割には、君の身体は相変わらず、ひ弱なままに見えるんだが?」
「失礼ね! ちゃんとその為の研究はしてるわ!」
「本当に?」
「本当よ! 現に今その実験をしようとしていたのよ」
「……えっ!?」
「知っての通り、私は喘息持ちだけど、それを改善し尚且つ肉体強化を図る魔法があるの。 その実験に成功すれば魔法だけでなく、貴方みたいに格闘技も出来るようになるわ」
「何? 格闘技だ? ……プッ!」
それを聞いた瞬間、笑いを堪える事が出来なくなった。
「な、何よ? 私おかしい事でも言った?」
「ハッハッハッハッ…! おかしいも何も…、君に格闘技なんて似合わねえよ!」
「むきゅ〜!」
「だってさぁ、『緋想天』の時だって、みんな弾幕と体術を駆使していたのに、君は大した体術も使わず魔法で凌いでいたじゃん? それが、今頃になって肉体強化に格闘技だって? マッチョな体で飛び蹴りを繰り出す君を想像出来ないんだが? 違和感あり過ぎてマジで似合わん。ていうか、今更遅過ぎはしませんか、パチェ?」
「くぅぅぅぅ…、好き勝手言ってくれるわねぇ…!」
「君は、今まで通り精霊魔法を使った弾幕戦法が、お似合いだよ」
「そういう訳にもいかないわ! それだけじゃ、何も進歩が無いじゃない! 魔法使いは新しいものをどんどん取り入れて行かなきゃ、それでお終いなのよ!」
「それで、肉体強化な訳?」
「これは、その一環よ!」
そう言うと、彼女は一つのフラスコ瓶を目の前に置いた。
中には、何やら怪しい色をした液体が入っている…。
「何だそれ…?」
「私が作ったマジックポーションよ、これを飲めば肉体強化が出来て妖力や霊力も強化出来る優れものよ」
「へえ………あ、あのさ………嫌な予感しか、しないんだが……」
「大丈夫だ、問題ない」
「えぇぇぇ……」
知らねえぞ、マジで。
「試しに、貴方飲んでみる?」
「遠慮しとく、そんなモノを飲まなくても、普段から鍛えてるから不足は無いし、魔法に依存はしたくない」
「その鍛えた体を更に強化出来るのよ? そしたら、貴方は無敵になるかもしれないわよ?」
「うわぁ……如何にも胡散臭せえ……」
はっきり言って、俺は魔法の類を信じていない。
どちらかというと、呪術的なものをずっと使って来たから、肌に合わないのだ。
「何よ胡散臭いって! いいわ、其処まで言うなら私が飲んでやるわ!」
「おいおい、無理すんなよ…」
「無理なんてしてないわ! 自分の作ったものには自信があるわ! 今からそれを証明してあげる!」
「いやさあ…、そんなに熱くならんでも…」
「私は冷静よ! よく見てなさい!」
普段は物静かな、あのパチュリーさんが、これほど熱くなっているのは珍しいかもしれない。
「そう言えばさ…君は以前、魔法薬の調合は苦手だなんて、言ってなかったっけ?」
「確かに得意では無いけど、出来ないとは言ってないわ」
「そんな事を言われたら、尚更不安要素しか無いんだが…」
「後で覚えてなさいよ…」
彼女は俺を睨みながらそう言って、フラスコ瓶の蓋を開ける。
……開けた瞬間から、凄い匂いがするんですけど?
「まさか…、それ全部飲む訳?」
「全部飲まなきゃ、効果は出ないのよ」
「……しつこいようだが、本当に大丈夫なのか? 見た目からしてヤバそうだから、止めた方が良いと思うんだけど…」
「クドいわ! 実行あるのみよ! この実験が終わったら、成果を見る為に勝負して貰うわよ!」
「えぇぇぇ!?」
成功を前提にしている時点で、どうかと思うが。
「さあ、行くわよ!」
「…………っ」
「せいっ!(グビッ、グビッ!」
「あっ……」
マジで飲んじゃった…。
「………ぐっ…ゲホッ、ゲホッ…!」
「…それ、味はどうなんだ?」
「美味しい訳無いでしょ! このリアクションが美味しそうに見える!?」
「そんなに怒るなよ…」
人が心配してるのに、酷い物言いだよな。
「………うぅぅ……」
「効果が出るには、少し時間が掛かるのかい?」
「いいえ…、そんなに時間は掛からない…はず………」
「………?」
「………っ」
「………パチェさん?」
「………ぐぇぇぇ……」
「あの…ノーレッジさん、大丈夫かい? 何だか顔色が優れないように見えるんですが?」
「うぉぉぉ……」
「お、おい…、大丈夫かよ…」
明らかに、彼女に異変が起きている。
「パチェ…?」
「ぶふほぉぉぉ!!(ドテッ」
「ひぃぃぃぃ!?」
何かに耐えれなくなったかのように、パチェは激しく嘔吐し卒倒してしまった。
「あの……パチュリーさん…? パチェ…?」
「…………」
「お…、おい! パチェ! どうしたんだよ? しっかりしろ!おい!」
「…………」
倒れたパチェを抱き起こし声を掛けるが、反応が無い。
「パチェ!パチェェェェ!! 起きろ! 目を開けろ! 本当にどうしちまったんだよ!? おい!おいったら!!」
「…………」
「あぁぁぁぁ……だから言わんこっちゃない! どうしよう…これはヤバい、ヤバ過ぎるぞ!?」
みるみるうちに顔色が青くなり、生命反応が薄れていく彼女を見て、流石の俺も動揺してしまう。
「あ、あぁぁはぁぁ………パチェ、死ぬなよ……自分の作ったマジックポーションで三途の川を渡るなんて、笑えねえだろ……どどどどどなんしよ……」
何とか落ち着こうとしても、目の前の状況にあたふたするばかり。
俺、何て情けないんだ…。
「落ち着け…こんな時は……そうだ! リ――ト――ル――――!!!」
「は―――い!! 今行きま―す! 少々お待ち下さ――い!!」
そうだよ、こんな時こそ使い魔に何とかして貰おう。
大声で呼んでから少し間が開いて、小悪魔が本を抱えて降りて来た。
「お待たせしました祐さん! これで私達水入らずで……」
「それどころじゃないんだリトル! パチェが…」
「へっ? パチュリー様が………って、えぇぇぇぇ!?」
その状況を把握したリトルの表情が、青ざめる。
「パチュリー様! 一体どうなされたのですか!?」
俺の代わりに彼女を揺さぶるが、パチェの反応は全く無い。
「祐さん! パチュリー様はどうしちゃったんですか!?」
「えっとな…、肉体強化のマジックポーションを飲んだら、吐き出して卒倒してしまったんだ…」
「えぇっ!? あれを飲んだの?」
「あ、ああ、そうなんだ…、一応止めたんだがな……」
「もう! あれは失敗したかも知れないから、作り直さなきゃって自分で言ってたのに!」
「な、何? 失敗!?」
「そうなのよ、あれを作る工程で、調合する材料を間違えたみたいで…、私は見てなかったからハッキリとは分からないけど、失敗かもしれないからって、使わずに保留にしてたんです」
「それじゃ、何でそんなものを飲んだんだよ?」
「恐らくだけど、何かの手違いで…」
「何かの手違いって、モロ自分のミスじゃねぇか…」
「…とにかく、このままじゃいけないわ! 私は治療の用意をしますので、祐さんはパチュリー様を部屋に運んで下さい!」
「よし、分かった!」
一刻を争う事態に、リトルの言う通りに彼女を部屋に運んだ。
パチェも軽いな、大丈夫なのかよ…。
――――――――――――――――――
それからしばらくの間、リトルはパチュリーさん治療に躍起になっており、俺は彼女の手伝いをしながら部屋の片隅で静かに見守っていた。
解毒薬と魔法を使い、彼女の様態を安定させているのだと思う。
少しだけ、顔色が良くなってきているように見える。
ざっと、1時間以上は掛かっているだろう。
「…………ふぅ、どうにか落ち着きました…」
「そうか…、いやぁ、大変だったな…」
「もう! パチュリー様もせっかち過ぎるわ! ムキになって失敗作の薬を飲んじゃうなんて…」
「全く、一時はどうなるかと、冷や汗掻いたぜ…」
「もう大丈夫だとは思うけど、しばらくは安静が必要ね」
「そうか、そういう事なら少しは安心したよ、それじゃ……」
頑張った彼女に、紅茶を淹れてやろう。
ささやかな労いって事でな。
「リトル、ご苦労さん。 紅茶を淹れてやったよ、座って飲みな」
「えっ? 祐さんが、私に……?」
「何だよ、俺が紅茶を淹れちゃ、おかしいのか?」
「………はっ!? そんな事無い! 嬉しい! 本当に嬉しいわぁ!!」
一瞬恍惚な顔をしていたが、直ぐに正気に戻った彼女は満面の笑みでティーカップを受け取り、椅子に腰掛けると、静かに飲み始めた。
「美味しい…、祐さんの淹れた紅茶、とっても美味しいわ…!」
「大袈裟な…、俺は淹れただけだ、茶葉のブレンドは咲夜さんの仕様だよ」
「いいえ、祐さんの淹れ方には愛情がこもってます! こんな紅茶が飲めて私、嬉しくて涙出そうです…」
「お前ってヤツは…」
ニコニコしながら目に涙を溜めるリトルを見て、複雑な気分になる。
べた褒めしてくれるのは嬉しいが、それはやっぱり勘違いから来ているものなんだろうな。
「…一旦、俺は出るからな、煙草が吸いたくなった」
「えぇぇぇ!? 行っちゃうの〜!?」
「此処は禁煙なんだろ?」
「当然です! パチュリー様は喘息持ちなんですよ!?」
「それじゃ、尚更外に出なきゃならないよな」
「うぅぅぅぅ……」
さっきまでの笑顔とは対照的に、今度はとても寂しそうに俯き目を赤くしている。
何で、そうやって後ろ髪を引くようなリアクションをするんだよ。
ワザとやってないか、コイツ?
「そんな顔するなよ、今日は泊まっていくつもりなんだから、後で相手になってやるよ」
「ほ…、本当なの?」
「もちろん。但し、友人して付き合うだけで、決して君が考えているような事は………」
「嬉しいぃぃ! 祐さ――ん」
「うぉっ!? おい、最後まで話を聞けって…」
「ううん、聞かなくたって分かってるぅ♡」
俺に抱き付き頬擦りする破廉恥な悪魔。
此処まで来ると、もはや勘違いとかの問題では無い。
はっきり言って、変態である。
「…もういい! それ位にして、パチュリーさんの看病に戻ってくれ」
「は――い!」
ようやく俺から離れてくれた悪魔。
クソッ…、良い香りだけ漂わせやがって…。
邪念を振り払い、急いで部屋を出ようとすると、またリトルが声を掛けてくる。
「パチュリー様が回復したら、また来てね! 待ってるわ♪」
「………………知らねっ」
相手にしたくないから、ボソッと捨て台詞を吐いて扉を閉めてやった。
やっと解放された俺は、館の長い廊下を歩いていた。
「もう疲れたよ……」
数少ない窓から外を見ると、お天道様はまだ高い位置にある。
まだ夜にもなってないのに、この疲労感…。
冗談じゃねーよ!
ここの住人は、俺を殺すつもりなのか?
だったら行くなよっと突っ込まれそうだが、俺のお人好しは死なんと直らないらしい(苦笑)
なるようになるか…。
「とにかく、早いとこ一服したい…」
足早に廊下を進む…
ひたすら長い廊下を歩く…
妖精メイドとも、ホフゴブリンともすれ違いもせず、館内はとても静かだ。
まさに、今は自分だけの空間。
鼻歌でも歌いたくなる気分を何とか抑え、玄関へと向かう。
そして、出口までもう少しという所、廊下の曲がり角を曲がった時であった。
「やっと一服出来る………………っ!!?」
視界に入って来た光景に、俺は驚愕し絶望した。
「あっ………」
「嘘だろ………」
何故だ……
何で、このタイミングでなんだよ!
「祐……助………?」
目の前に居たのは
「フ…フ……フランドール……」
最凶の我が儘吸血鬼の妹だった。
どうしてだ? 今、寝てる時間じゃないのかよ!?
ウロウロしてないで、布団に入ってくたばってろよ!
「祐助だぁぁぁぁぁ!!」
「ま、まさか……」
悪夢の光景が脳裏を過ぎる。
「祐助! 会いたかったよぉぉぉぉ!!」
「うわぁぁぁぁ!?」
やっぱり、来やがった!
ここで、トドメ刺されるのか?
「ち、チクショー!」
もういい、どうにでもなりやがれ!
「ゆ―すけ――!」
「それに対抗するには…」
突進して来るフランを抑えるには、結界しか無い。
「フランドール専用、多重防御結界!!」
即座に、懐から博麗札を出し、その霊力を利用した結界を発動する。
一応、説明をさせて貰います。
これは俺が使える最大の防御結界だ。
こいつを編み出すには、結構な苦労を要した。
その甲斐あって、今では霊夢でも簡単には破れないご立派な仕様に仕上がっている。
こんなものを作るハメになったきっかけ、原因は…、
もちろん、目の前の吸血鬼である。
「わ―――い! ヒャッハ―――!!」
『バキーンッ』
頼むぜ、抑えてくれ!
『バリーンッ!』
うわっ、厳しいなぁ…。
「トイェェェェイ!」
『バカーンッ!』
おいおい、マジか!?
『ドゴーンッ!』
何事も無いかの如く、結界を破りながら突進して来る悪魔の妹。
冗談キツいぜ…。
「祐助、抱っこぉぉぉ!!」
『バコーンッ!』
何だよ! 全然スピード落ちねー!
『ドカーン!』
「わ―――い!」
「そんな…、こんなに固い結界を破壊して来るって、お前何なんだよぉ!?」
「抱っこしてぇぇぇぇ!」
「やべぇ! 来ちまう!?」
何故だ? 何時もならもっと抑えられる筈なのに、今日に限って全然効いてない?
残された結界はあと数枚。
奴の勢いは、まだまだ衰えていない。
このままでは、間違い無く死亡フラグだ。
「祐助ぇぇ! 遊ぼ―――!!」
「それ、遊びじゃねぇ! 殺人だぁ!」
どうするよ俺!
こうしてる間にも、奴は迫ってきている。
ピンチだ! 最大の大ピンチだ!!
此処からの反撃は、かなり難しい。
間合いを取ってかわすのが精一杯だ。
何とか、動きさえ封じ込めれば…。
間合いを取る…?
動きを封じ込める…?
その瞬間、ある考えが俺の脳内で閃いた
「………フッ!」
どうしよう! 今日最大の大ピンチだぁぁ!!
……………ってか!
「フランちゃん……」
『ズドーンッ!』
「祐助ぇ! 祐さ――ん!」
もう、フランドールは目の前までに迫っている。
「舐めたら、えかんぜよ…!」
やっちゃえ、オッサン!!
続く……
やっちゃえ、オッサン!
忘れがちですが、主人公は30代半ばの設定ですが、自分の中では20代中頃の若々しい風貌のイメージです。
ついでに、鍛えているのでそこそこ厳ついです。
しかし、「酒井慶治」の 方がムキムキですw