痛快! 男達の幻想郷   作:豊之丞

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輝針城キャラとの交流です。


付喪神に嫌われているのか?

『ズンズン…………ドガドガドガドガッ!』

 

 

誘われるように、騒がしい音が聞こえる方向に向かってみる。

 

しかし、近付くにつれ、何やら違和感が。

 

 

『ベンベン………バラン……』

 

 

うん…? 他にも音聞こえる…?

 

一応警戒しながら、ゆっくりと近付く。

そして、ようやくその音源の場所に辿り着いた。

 

弁「ちょっと雷鼓さん! 飛ばし過ぎだって言っただろ!?」

 

雷「えぇぇ!? さっきよりペースは落としたわよ?」

 

弁「それでも、全然ついて行けないんだよ!」

 

八「本当に、頼むわよ…」

 

……相変わらずやってるなぁ。

 

 

アイツらを見てると何時も思うが、あの組み合わせでは無理がある。

雷鼓さんの和太鼓(ドラム)、弁々さんの琵琶、八橋さんの琴、ジャンルが違う楽器で合わそうという方が無理だと思うが。

 

雷「とにかく、もう一回やりましょうよ」

 

弁「…分かったわ、今度はお願いよ、雷鼓さん」

 

八「また同じ事になりそうね…」

 

別に無理して合わせる必要無いじゃん。

 

そう思いながらも、演奏の様子を見てようと少し近づこうとしたが、

 

 

『バキッ』

 

 

「ヤバッ…!」

 

落ちていた木の枝を踏んでしまい、盛大な音がした。

当然、それを見逃す奴らでは無い。

 

雷「……っ!? 誰!そこに居るのは!?」

 

弁「隠れてないで出てこい!」

 

八「痛い目に遭いたいのかしら?」

 

一斉に、俺の方へと敵意が向けられる。

これ以上、隠れていても無駄だな。

 

「…まあまあ落ち着きなよ、俺だよ」

 

雷「な、何だ、祐さんか…」

 

弁「驚かさないでよ!」

 

八「…それで、何か用なの?」

 

 

「スマンスマン、そんなつもりは無かったんだが、森を歩いていたら君達の楽器の音が聞こえたんで来てみたら、お取り込み中だったようで声を掛けづらかったんだ」

 

雷「別に遠慮なんてしなくて良いわよ、祐さんなら歓迎よ!」

 

弁「私も別に構わないけどさ…」

 

八「私はちょっと……」

 

三人のリアクションは、それぞれに違い、なかなかに面白い。

 

 

因みに、この三人との出会いは、あの鬼人正邪が起こした異変のしばらく後だ。

見た目と性格が合わないと思っていたら、付喪神として生れたてで、精神だけが成長し過ぎいるのが原因であった。

 

霊夢に聞いていた話では、ちょいと凶暴だったらしいが、俺が対面した時にはそうでも無かった。

恐らく小槌の魔力が抜けた影響だと思われる。

 

しかし、そこからが一筋縄ではいかなかった。

 

雷鼓さんは比較的サバサバした性格で、仲良くなるまでにはそれほど時間は掛からなかった。

 

しかし、九十九姉妹はくせ者で、なかなかそうはいかなかった。

何分、姉妹揃って性格がキツい。

 

姉の弁々さんはまだ良い、

何度かぶつかったが、今では随分馴染んできた。

しかし、妹の八橋さんはいけない、

未だに毛嫌いされている節がある。

 

雷「…どうしたの?」

 

「何でもない、今日はちょっと疲れてるんだ」

 

弁「疲れてる? まだ昼前だよ? 一体何してたんだよ?」

 

八「どうせロクな事してないんでしょ? あんたの事だから」

 

「それは酷い物言いだな八橋さんよ、訳を聞いたら君達はビックリするだろうな」

 

弁「まーたかよ、その手には乗らないわよ!」

 

「ふーん…、それじゃあよ、君達も紅魔館の事は知ってるよな?」

 

雷「そりゃ知ってるわ、あそこのメイドとは闘ったんだから…………って、えぇっ!? あの吸血鬼が住んでるっていう赤い館の事?」

 

「そうだ、俺はその紅魔館に一泊して吸血鬼の相手をしていたって言ったらどうする?」

 

弁「ちょっと……マジで言ってるの?」

 

「マジさ、嫌になるほど付き合わされたぜ」

 

八「ていうか、嘘じゃないでしょうね? そんな証拠があるの?」

 

「見せてやろうか?」

 

シャツのボタンを外し首元を見せてやった。

パチェに回復魔法を掛けては貰ったが、傷跡はまだはっきり残っている。

 

「首筋左右2ヶ所に咬み傷があるだろ? それは昨晩、吸血鬼姉妹にガブッとやられたんだ」

 

雷「うわっ、本当だ……」

 

弁「なかなかにエグいわねぇ…」

 

八「よく死ななかったわね?」

 

「死にかけたが、後の処置がよくてな、何とかなったのさ」

 

その後の、『情事』については黙ってよう、突っ込み所満載だからな。

 

八「そのまま死ねば良かったのに」

 

「お、おい……」

 

さらっと酷い事言うなあ、コイツは。

 

弁「ちょっと八橋、それは言い過ぎだよ!」

 

八「別に良いじゃない、私は困らないわ」

 

弁「そりゃそうだけど…」

 

「ハハハ…、こりゃ相当に嫌われてるな」

 

弁「祐さん、あんまり気にしないでね、八橋はこういう性格だから」

 

八「……フンッ!」

 

やっぱり、八橋さんとは相性が悪いみたいだな。

 

「どうだ? 今度は君達も紅魔館に来ないか? 紹介してやるぞ」

 

「「「断る」」」

 

見事なまでの即答だな

ちょいと挑発してやるか。

 

「何だよ、ビビってるのか?」

 

雷「えっと…、ちょっと怖いかも…」

 

弁「別にビビってなんか……でも……」

 

「どうした?」

 

弁「紅魔館って、吸血鬼以外にも魔法使いや悪魔、時間を操るメイドがいるんじゃ、流石に多勢に無勢なんじゃないかってね…」

 

「心配するな、君が束になったところで到底勝てんから」

 

弁「な、なんだとぉぉぉぉ!!?」

 

八「姉さんを愚弄するなら、私も許さないわよ!」

 

おやおや、ムキになってるよ。

本当の事を言っただけなのに。

 

 

「そんなに言うなら、勝負してみればいいじゃん? それで白黒はっきりするんだからさ」

 

弁「うっ……それは………」

 

八「やっぱり何でも無いわ…」

 

「何だよ、二人揃って腰砕けだな。 最も、俺に勝てなきゃ、アイツらにも勝てないだろうけどな」

 

弁「そんな事は無いぞ! 次こそあんたに勝ってやる!」

 

八「あれが本気だったなんて思わない事ね! 人間の分際相手にいきなり本気出す訳無いでしょ!?」

 

「へぇ……そうなんだ……」

 

今の物言いには、イラッとした。

少しだけ殺気を二人に向けてみる。

 

 

弁「うわっ………えっと……」

 

 

ほんの僅かな殺気なのに、急に弁々さんの顔色が変わる。

 

「あれは本気じゃなかったんだよな? もう一回やってみるか?」

 

八「えっと……その……やってやるわよ…!」

 

そうは言っているが、八橋さんの腰が完全に引けているのが、はっきり分かった。

 

雷「二人とも止めなさいよ、どう足掻いたって祐さんには勝てないわよ」

 

八「で、でも……」

 

「俺は構わないよ、コイツらの気が済むまで幾らでも相手になるが、でも…」

 

弁「……でも?」

 

「あんまり調子に乗るようだったら、命の保証はしないぞ?」

 

 

「「……………っ!」」

 

二人の顔が青ざめる。

 

 

この九十九姉妹とは、初めて対面した時にバトルになっている。

まるで、処かの誰かみたいに、人の話も聞かずに攻撃してきやがってな。

 

最初は手加減してやるつもりだったが、余りにも執拗に狙ってきやがるから、つい本気になってしまい、最終的には弱音も吐けない位にぶちのめしてやった。

その様子を見ていた雷鼓さんは、腰を抜かしていた。

 

『わっほーい! 悔しいけど、博麗の巫女より強いかも!?』

 

あの時の八橋さんの一言は、今でも印象に強く残っている。

 

 

「ほらっ、来なよ………お望み通りシバいてやるから」

弁「あ…あの………さっきの発言……撤回します……」

 

八「わ、私も………ごめんなさい……」

 

せっかく俺が道具を構えてやる気を出してやったのに、やる前から戦意喪失ですか。

誰だったけな? 他にもこんなヤツが居たな。

 

「はぁ…、君達には付喪神としての意地は無いのか? ボコボコにされても立ち向かって来る位の度胸はよ?」

 

弁「いや…だって……無理だし……」

 

八「あの時だって、本気で道具に戻されるかと思った訳だし……」

 

「情けねえ…、少しは鬼人正邪を見習えよ、アイツはどんなに打ちのめされたって不死身の如く這い上がって来るんだぞ? 実際にヤツは君達を含め、回避不可能な弾幕を繰り出して来る奴らをアイテムを駆使して振り切ったんだ、その手腕と根性だけは評価出来る」

 

弁「でも、アイツがやった事はロクでも無い事だったんだぞ?」

 

八「そうよ、小槌のお陰で私達はこうして生れたけど、同時に多大な迷惑を掛けてるんだから!」

 

「もちろんそれは分かってる、評価はしても別に許した訳では無い。 特にアイツは人を利用するだけしておいて、状況が悪化すると平然と自分だけ逃げる卑怯者だ、その一番の被害者は針ちゃん………いや、針妙丸だろう。それを針妙丸から聞いた時は、やり場の無い怒りを覚えた」

 

雷「へ、へぇ………」

 

「だから、俺はアイツを見付けたら只では済まさん、殺しはしないが、半殺しにして二度と五体満足な身体で生きていけない様にしてやる…」

 

「「「…………っ」」」

 

静かに怒気を含めながら語ったら、三人は誰も口を聞いて来ようとはしなかった。

 

ちょっと、空気が悪くなったかな?

 

「……おっと、君達だって被害者だったんだよな、君達が悪い訳でも無いのにこんな暗い話して済まなかったな、つい熱が入っちまった」

 

雷「まぁ……気にしないで……」

 

「ありがとよ」

 

此処は食い物で誤魔化しますか。

 

「お詫びと言っちゃ何だが、お菓子を持って来てるんだ、今 人里で一番人気の最中に落雁もある、食べなよ」

 

鞄からお菓子の入った箱を取り出し、実物を見せてやる。

それを見て、雷鼓さんが真っ先に食い付いて来る。

 

雷「ウッソ!? 今話題の最中があるの?」

 

「知ってるのか?」

 

雷「ええ、前にこっそり人里に行った時に、人間達が美味しそうに食べてるのを見て……自分は食べれないのが口惜しかったわ!」

 

「何だ、それなら俺んとこに来れば買ってやったのに」

 

雷「そこまで考えなかったわよ!」

 

アホかコイツ。

 

「…まぁ、とにかく食べなよ、弁々さんに八橋さんも食べようや」

 

弁「やりぃ! 実は私も食べたかったのよねぇ!」

 

八「ちょっと姉さん! 本当に食べるの?」

 

弁「何で? こんなに美味しそうなもの、見逃す手は無いじゃない?」

 

八「だって…、毒とか入ってたらどうするの?」

 

「そんな事するか! この馬鹿たれが!」

 

八「分かんないじゃない、人間なんて信用出来ないし!」

 

「あっそ、勝手にしろ。 それじゃ、俺達だけで食べようか」

 

雷「そうね、遠慮なく戴くわ」

 

弁「要らないなら、八橋の分は私が戴くね!」

 

八「ちょっと……何よ……」

 

何か言いたそうな八橋さんを後目に、俺達は菓子を食した。

 

 

雷「うむっ………うわっ、この最中、最高に美味しいじゃん!」

 

弁「ホントよね! そこまで甘ったるく無いし、絶妙な味加減が何とも言えないね!」

 

「そんなに美味いか、まだまだあるからもっと食え」

 

弁「遠慮なく戴きぃ!」

 

八「あっ………あぁぁぁ…………」

 

雷鼓さんと弁々さんが旨そうに食っているのを、少しはなれた場所から八橋さんが見ている。

 

 

涎を垂らしながら。

 

 

雷「この落雁も良いわね、この歯応えが何とも言えないね」

 

弁「こんな美味しい物を食べないなんて、勿体無くてバチが当たっちゃうわ!」

 

八「う…うぅぅぅぅぅ……!」

 

 

何か一匹唸ってるように聞こえるが、気にしない方向で。

 

弁「まだある?」

 

「あるぞ、ちょっと待ちな」

 

鞄から残りのお菓子を取り出す。

よし、これで全部消化する事が出来たな。

 

「これで終わりだ、味わって食べなよ」

 

雷「はーい! 」

 

弁「残さず食べるわよ!」

 

 

八「―――――――っ!!」

 

 

 

 

 

 

 

八「ちょっと、待ちなさいよぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

八橋のさんの絶叫が木霊する。

いよいよ我慢の限界に来たか。

 

「どうしたんだ?」

 

八「……………食べたい」

 

「えっ? 何だって? もう一回言って」

 

八「私も……それ……食べたい……」

 

雷「八橋、何って言ってるの? 本当に聞こえないわよ?」

 

八「だから……!」

 

いよいよ涙目になってきた八橋さん。

さあ、どうなる?

 

八「私も食べたぁぁぁぁぁい!!!!」

 

「やっと聞こえたよ、最初からそう言えば良いんだ」

 

八「言ってたじゃないのよ!?」

 

「全然聞こえなかった」

 

八「きぃぃぃぃぃ!」

 

弁「八橋、あんたも素直じゃないねぇ」

 

八「姉さんまで何よ!」

 

吹っ切れたかのように、八橋さんがダッシュで駆け寄り、お菓子の箱を奪い取った。

 

「おいおい…」

 

八「むぐむぐ……何よこれ! 美味しいじゃないのよ! あんた達だけ楽しむなんてズルいわ!」

 

「食べなかったのは自分だろうに、何言ってるんだよ」

 

八「うるさーい!」

 

「全く…」

 

雷「面白い子ねぇ、八橋ったら」

 

弁「見てる分には、面白いよねぇ!」

 

ガツガツ食べる八橋さんの様子を、楽しそうに見る二人であった。

 

やはり、妖怪の類いは食い意地を張る傾向にあるらしい。

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

その後は、四人で他愛の無い雑談をしていた。

話の内容は、最近の事がほとんどであったが、やはりこの面子だと音楽の話題が多い。

 

雷「――――それで、先日の真夜中のライブ合戦は熱くなったのよ!」

 

弁「向こうもムキになって演奏してたから、私の琵琶演奏にも熱くなっちゃってさぁ…」

 

八「プリズムリバーの楽団には負けないんだから!」

 

「そうか、あの真夜中の騒音は、やはり君達の仕業だったんだな」

 

八「騒音って何よ! 演奏って言ってちょうだい!」

 

「遠くから聞いていても、合って無かったように思えたんだが?」

 

弁「私達のせいじゃないわよ、雷鼓さんが突っ走り過ぎなんだよ!」

 

雷「何でも私のせいにしないでよ! あんた達が鈍いだけでしょうに!」

 

弁「鈍いとは何だ!? 私と八橋の演奏は甲乙付け難い位完璧だったのよ、あんたが先走るからバラついてしまうんだよ!」

 

 

八「そうよ! 大体ね、雷鼓さんは合わせる気なんて全く無いんでしょ!?」

 

雷「そんな冷めたビートじゃ、プリズムリバーには勝てないわ! あんた達は甘いのよ!」

 

弁「コイツ! 言わせておけばぁぁぁ!!」

 

「はぁ…、何でコイツらってこう熱くなるんだろうねぇ…」

 

八「あんたも黙ってないで、何とか言いなさいよ!」

 

「何とかって………俺は音楽の事、特に演奏に関しては全くの素人だ、口出し出来る立場に無い」

 

雷「でも、素人でもアドバイス位は出来るでしょ? 私達では分からない事もあるんだし」

 

「そうだなぁ……、強いて言えば君達は自分の楽器の役割を見直した方が良いかもしれない」

 

弁「役割? どういう事?」

 

「思い出してみな、ルナサはバイオリンで鬱の音を演奏し、影響を受け過ぎると鬱になる、メルランはトランペットで躁の音を演奏し、聞く者の気持ちを高揚させ、リリカは鍵盤楽器、キーボードって言うんだっけな? それで、幻想の音を演奏して、鬱と躁の音を聞きやすくしているらしい。 俺も詳しい事は分からんが、これが上手いこと出来ていてな、ソロで聞くととんでもない音だが、3姉妹での演奏だと、なかなかに素晴らしいんだ。 そういう意味では、見事にそれぞれの役割を果たしていると言って良いんじゃないかな?」

 

雷「なるほど…、そこまで深く考えた事は無かったわ」

 

「まあ、その領域に達するには、相当の時間が掛かるだろうがな」

 

弁「それはそれで、どうなんだろう?」

 

「幸い、君達には時間だけはたんまりとある。 何事も慌てない事だな」

 

八「あんたの話、何だか難しいわね…」

 

「自分で言うのも何だが、俺も良く分からん。他に説明のしようが無いしな」

 

八「それで良いの?」

 

「いいんじゃないかなぁ」

 

八「……………っ」

 

こんなオチで締めたら、何かジト目で見られてるし。

俺には、笑いのセンスが無いのかな(涙)

 

「……さて、話はこれで終わり、帰ろうかな」

 

雷「あらっ、帰っちゃうの?」

 

 

「今帰れば、いい時間に人里に着けるからな、あんまり遅くなると野良妖怪が怖いぜ」

 

弁「よく言うわよ、あんたの実力なら近寄る事も出来ないでしょ?」

 

「かもな!」

 

俺は立ち上り、すっかり軽くなった鞄を担ぐ。

 

「もう行くな、たまにはそっちからも遊びに来いよ」

 

八「人間の里になんか行きたくないわよ、みんな冷ややかな目で見るんだし」

 

「俺の名前を出せば、誰も文句は言わんよ」

 

弁「それでよく里に住んでられるね? 妖怪の味方をするのか?だなんて比喩されない?」

 

「確かにそういう風に言って来る奴もいる。だが、今の所は問題は無い、何かと里ではそれなりに貢献しているからな、多少妖怪を庇護しようとも、誰も文句を言う奴は居ないな」

 

雷「それは、祐さんには人望があるからじゃない?」

 

「そうかな? 過去には色々残酷非道な事もやったから、人望があるとは思わないのだが」

 

弁「非道って、何をしたんだよ?」

 

「聞きたい?」

 

雷「うーん…、私は遠慮しとくわ…」

 

弁「やっぱり止めとく…」

 

八「私は興味無いわ」

 

「それでいい、気分の良い話じゃないからな」

 

『……………っ』

 

知らぬが仏って、よく言うだろ?

 

そして、里の方向を向き、歩き出そうとした時であった。

 

雷「待って、祐さん!」

 

「うん?」

 

雷「そういえば、言い忘れてた事があったわ」

 

「何だ? 言い忘れてた事って?」

 

雷「噂で聞いた話だから、何処まで本当かは分からないけど、地底からならず者の妖怪が出て来てるらしいわ」

 

「地底の妖怪?」

 

何故だ? この前俺が片付けた筈なのだが…。

 

雷「その妖怪達の狙いは、人間の里なんだとかって聞いたわ」

 

「何だと……?」

 

弁「それなら私も聞いた事があるよ、人間の里って何かと妖怪同士の支配争いがあるって聞いてるからねえ、大凡その妖怪達もそれに乗っかるつもりじゃないかな? 何が楽しいのかは分からないけどさ」

 

「そうか…」

 

俺も、その話は以前に姫海棠はたてさんから聞いており、大雑把ではあるが把握はしている。

 

人間の里を巡る妖怪同士の権力争い。

表面上は仲が良さそうな妖怪同士も、水面下では醜い争いを繰り広げている。

それが、人間の生活にさして影響が無いにしろ、そんな脅威がこうも隣り合わせだと、人間にとってはたまったもんじゃないな。

 

この争いが表沙汰にならないのは、博麗の巫女が動き出す事を恐れているのだろう。

どの勢力にとっても、博麗の巫女は最大の脅威なのだ。

 

流石は霊夢、やるな(フッ

 

それに、余り勝手な事をすれば、あの八雲紫だって黙ってはいないだろう。

 

人間の里を支配するってのは、思いの外ハードルが高い。

 

「…何にしても、そんな話を聞いた以上、放ってはおけないな。とんだ命知らずが舞い込んで来たもんだ」

 

雷「気を付けてよ祐さん、地底の妖怪は荒くれ者が多いって聞くから」

 

「知ってるよ、旧都には二度ほど行ってるから、彼処の妖怪の怖さはよーく分かってる」

 

弁「それでも、やっぱりやるの?」

 

「俺も里に住む者として、そういう脅威は排除しなければならない、それが俺の務めでもあるからな」

 

八「よく分かんないけど、あんたも大変ね…」

 

「何だ八橋さん、心配してくれるのか?」

 

八「そ、そんな訳無いでしょ!? 変な事言わないでよ!勘違いするなバカ!」

 

「勘違いでも嬉しかったんだけどな」

 

八「もう…、調子狂うわね…」

 

「しかし、こうも地底の妖怪の狼藉があると、勇儀さんの面目丸潰れだな」

 

雷「勇儀?」

 

「星熊勇儀、実質旧都を支配している鬼だ」

 

弁「お、鬼!?」

 

「まあ、これには色々あったんだよ、俺は彼女にはちっとは顔が利くから、その妖怪の事を聞けば教えてはくれるだろうが、旧都に行くには時間が掛かり過ぎる、今の話を聞く限り悠長にもしてられないからな」

 

弁「(何でこの人間は、こんなに顔が広いんだろう?)」

 

「何にしても、情報ありがとよ。 里に戻ったら早速聞き込みをしてみるよ」

 

雷「何事も無ければ良いけど……本当に気を付けてよ…」

 

「ありがとな雷鼓さん、君達も気を付けなよ、彼処の奴等は見境無く喧嘩を吹っ掛けて来るからな」

 

弁「その時はその時さ、売られた喧嘩は買ってやるよ!」

 

八「私達の怖さを見せ付けてやるわ!」

 

「頼もしいな! ……………そうだ、俺からも一つ言い忘れてた事がある」

 

雷「何かしら?」

 

「草の根妖怪ネットワークを宜しくだぜ」

 

雷「草の根妖怪ネットワークって、あのわかさぎ姫って人魚がやってるっていうあれ?」

 

「その通り、俺は訳あってそこの広報をしているんだ。 君達も入りなよ、きっと楽しいぞ?」

 

弁「楽しいって、何をしてるの?」

 

「分からん」

 

「「「ぶふほぉ!? 」」」

 

三人とも、ずっこけそうになる。

 

八「分からんって…、ちょっと無責任過ぎはしない?」

 

「俺が仕切ってる訳じゃないからな、活動内容はわかさぎ姫か今泉影狼に聞いて貰えれば助かる」

 

雷「うーん……今の話を聞く限りじゃ、微妙かも…」

 

弁「ちょっと考えちゃうわね…」

 

「そう言うなよ、かつての異変の時は一緒に暴れた仲だろ?」

 

八「別に一緒には暴れては無いわよ、小槌の影響で同時期に暴れてただけであって、直接の面識は無いわ」

 

「まあ、強制はしないよ。 入るか入らないかは君達次第だ、彼女達は悪い妖怪では無いから、入ったって大丈夫だとは思うぞ?」

 

雷「そうねえ……」

 

「今すぐに返事はしなくていい、気が変わったら俺か当人達に言ってくれ」

 

雷「分かったわ」

 

弁「活動次第かしらねえ…」

 

八「名前からして、何だか期待出来ないんだけど…」

 

「……話は以上だ。 御機嫌よう、お三方」

 

弁「おう、気を付けて帰りなよ!」

 

雷「バイバーイ!」

 

八「……………っ」

 

八橋さんだけは、無言で手を振っていた。

何を思って何を考えているんだろうねえ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっと見えて来た……」

 

 

それから歩く事半刻程、遠くに人里の門が見えた。

 

たった一晩空けただけなのに、まるで1ヶ月ぶりに帰ってきたかの様な感覚である。

それだけ、昨日は長い長ーい1日だった訳である。

 

 

「もう一息だ…」

 

 

そう言い聞かせ、再び歩みを進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つ、着いた………」

 

 

ようやく門の前まで到着した。

 

まだ、夕暮れ前という事もあり、扉は開け放たれていた。

 

「さて、一旦家に帰ったら、もうひと仕事しなきゃな」

 

夜飯の買い物もそうだが、さっき雷鼓さんに聞いたあの一件の事がどうも気になる。

 

「……よし、行くか」

 

少しの間、立ち止まっていたが、里の中へ入ろうとする。

 

 

すると…………

 

 

?「…………あっ! 祐さーん! お帰りぃぃぃぃ!!」

 

「えっ…?」

 

聞き覚えのある声がした方向を不意に向く。

 

満面の笑みを浮かべた『彼女』が迫って来ていた。

 

 

また、なんてタイミングの悪い…。

 

今日中に聞き込みが出来るか不安になってきた。

 

 

 

 

 

続く……。




作中の雷鼓の一言がきっかけで、近々物語が動きます。
少しネタバレですが、次回はオリ妖怪が登場します。

すっかり失踪常習者に成り下がりましたw
次の投稿はいつだろうねえ。
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