そして、1人の妖怪の少女と出会う。
人間の里を出て、妖怪の山へと向かう男。
道中、魔法の森を通らなければならないのだが、何故か彼は平然と歩いていた。
何故なら…
「へへっ、やっぱりこの防毒マスクってのは便利だな。 普通じゃ耐えられない瘴気を完全に遮断してくれてる」
(髑髏みたいな見た目が、たまにキズだが…)
防毒マスクのおかげで平気だったからである。
(おっ! あれは…)
道中、上空で魔法の森に住んでいる人形遣いと、白黒の魔法遣いが、弾幕ごっこを繰り広げていのを見掛ける。
(恐らく、またアイツが余計な事をしたんだろう、気にしない気にしない)
歩みを止めずに、その場を通過。
里から歩く事一時程で、山の麓へと到着。
「こいつは、もう良いだろう」
魔法の森を抜けているの確認して、マスクを外す。
「さぁて、此処からはちょいと山登りだな」
そう呟きながら、山を登り始める。
しかし、登り始めて10分程、不意に声を掛けられる。
「其処の人間、待ちなさい」
「おっ…?」
聞き覚えのある声に、祐助は足を止めた。
「椛さんか…、俺だよ」
「あっ、貴方でしたか…」
椛と呼ばれた女性は、祐助の事を確認すると、その場へと降り立った。
「御役目御苦労! って言いたい所だが、此処はまだ天狗のテリトリーじゃないぞ?」
「ええ、分かってます。 とりあえず、これは警告です。 そして、我々の領域へ入ったら攻撃します」
椛は、はっきりとそう言った。
「心配するな、天狗の領域に不用意に侵入するほどバカじゃないよ。 全く、相変わらず天狗は堅苦しいなぁ」
「申し訳ない、だが、これも役目なもので…」
「分かってるさ、それが天狗の社会だって事もな。 しかし、こうも睨みを利かされるとな…、守矢へ参拝客が来ない訳だ」
「守矢神社への参道はちゃんとありますが…、分かりにくいかもしれないです」
「誰のせいだよ」
「うっ…、私に言われても…」
(おっ、椛さんが口籠もってる、可愛いとこあるじゃん)
それを見た祐助の顔が少しだけニヤける。
「…ところで、今日は何の用で山へ?」
「今日は、河城にとりに用事があって来たんだ」
「にとりにですか?」
「丁度良かった、椛さん呼んで来てくれないか? 山を登る手間が省ける」
「…分かりました、そこで待っていて下さい。 不用意に我々の領域に入ったら…」
「入らねえから、さっさと行け」
「ムッ…!」
椛は少々不機嫌そうな顔で飛び去って行った。
「天狗は何で、あんなに排他的なんだろうねえ…」
そう呟くと、近くにあった岩に腰をかけ、煙管で煙草を吸い始めた。
待つこと、数十分。
(……待たせるなあ……)
黙って煙管を吹かす祐助。
『パンッ! パンッ!』
煙草を吸い終え、煙管内の灰を落とす。
煙管入れに煙管を閉まった時であった。
『ガサガサガサ…!』
突如、背後で物音がした。
「……っ!」
祐助は、咄嗟に博麗札を構える。
「そんなに身構える事無いだろ? 私だよ」
「…遅いぞ、にとりさん」
にとりを確認すると、祐助は札を閉まった。
「椛に聞いたけど、私に用だって村長?」
「……村長って…、誰がそんな事言ってた?」
「えっ? みんな言ってるけど?」
それを聞くと、祐助は深く溜め息をついた。
「…とにかく、俺は村長じゃないし、そんな役職は無いから、その呼び方は止めてくれ」
「へっ? でも、あんた村長…」
『ガシッ!』
にとりがそう言いかけた瞬間、祐助は胸ぐらを掴み睨み付けた。
「止めろって言ってんだろ…」
「ごごご…、ごめんなさい……もう言いません…」
にとりは、言いかけていた言葉を飲み込み、詫びを口にした。
それを聞いた祐助は、掴んでいた手を離した。
「全く…、今日あんたに会いに来た理由はこれだ」
そう言うと、鞄からスコープを取り出した。
「これは…、私が作ったスコープじゃないか」
「ああ、500メートル離れた妖怪の頭に置いたミカンを撃ち落とすだけの精度があるって豪語してたよな? だが、最近は200メートル先の標的を外す位に照準の精度が下がって来たんだ」
「何だって!? どれどれ…」
祐助の言った事に驚き、にとりは早速その原因を調べ始めた。
「ああ…、なるほど、これはダメだ」
「何が原因だ?」
「スコープのピントがズレてるんだ、これでは目標までに弾丸の軌道がズレるだろうな。 それから、スコープの台座も曲がってるよ、 これでは正確な照準は合わないな」
「そうか……まぁ、何となく予測はしていたが」
「良く此処まで使い込んだな」
「あんたの作ったコレは、俺の商売道具とはすこぶる相性がいいんだ。 使い込んでるのは間違いない」
「でもさ、これってまだ半年も経ってないだろ?」
「俺は激しい使い方をするんでね、これが無いと狩りの成功率がグッと下がってしまうんだよ」
「へえ、やっぱり私の作った物は間違い無いって訳だね!」
「まぁ、それは否定しないが…。 それ、直してくれないか」
「それは構わないけど、コイツは精度が命だからね、少々時間が掛かるぞ?」
「全然構わないが…、報酬は胡瓜100本でどうだ?」
「えっ!? 100本も!?」
それを聞いた瞬間、にとりの目つきが変わり、涎を垂らしていた。
(汚ねぇな…)
「前金代わりだ、まずは50本だ」
祐助は鞄から、胡瓜50本を出して、にとりに渡した。
「おおお! しかもデカいなぁ!」
「結構重かったわ…、残り50本は修理が終わったら、物々交換でいいな?」
「それでいいよ、村……」
「あぁぁ!!?」
「あ……いや………その……、祐さん……」
祐助に思いっ切り睨まれ、冷や汗が止まらないにとり。
「それじゃ、よろしくな!」
彼は鞄を担ぎ、元来た道を戻って行った。
「出来たら、里まで来てくれ」
「ああ、分かった」
それだけを伝え、山を下り始めた。
「いやぁ、ラッキー♪ 椛さんのおかげで、用事が早く終わったぜ。 ついでだから、香霖堂へ行こう!」
鼻歌混じりに、香霖堂へと向かった。
―――――――――――――――――――
「そろそろ見えて来る頃だが…」
そう呟きながら、歩いていると
(あれって…)
開けた原っぱの中で、本を読む1人の少女らしき姿が見えた。
「…おい」
「ひぇぇぇぇ!? いきなり何よ!?私は妖怪だけど本を読んでただけよ? 何もしてないんだから! 止めてぇぇぇぇ!!」
「待て待て待て! 俺は何もしてないし、無抵抗な妖怪を退治するほど無慈悲じゃないぞ!?」
慌てふためく妖怪を相手に、祐助は必死で宥めた。
それからしばらく、ようやく落ち着いた彼女に祐助が話を聞いていた。
「…それでね、私は本を読んでただけなのに、あの鬼巫女は私を不意打ちで退治して、本3冊とも奪ったのよ! 悔しくて悔しくて……ひっく…」
「そ、そっか…(霊夢のヤツ…)」
その妖怪の話を聞いた祐助は、流石に同情していた。
「でも…、相手は博麗の巫女だから、取り返す事も出来なくて…」
「まあ、そうだよな…」
(ぱっと見、力の強そうな妖怪じゃなさそうだよな)
「あの本、大好きだったのに…」
「何処にあるんだその本は?博麗の巫女が持ってるのか?」
「それは…、香霖堂って店で売り物にされてるらしいの」
「何、香霖堂!?確かなのか?」
「うん…、多分間違いない」
「…よし、俺が買い戻してやるよ」
「…えっ!?」
「丁度、今から香霖堂へ行く所だったんだ。 君の話を聞いていたら、余りにも可哀想に感じたからな」
「本当!? うぅ…、ありがとう……」
妖怪は、しくしく泣き出した。
(全く霊夢のヤツ…、まあ、そういう所は俺の影響を受けたのかもしれん…)
「但し、売れていたら諦めろよ。 奪われてから何年も経ってるなら、売れてる可能性もあるからな」
「それは…、分かってる…」
妖怪は静かに頷いた。
「よし、それじゃ行こう!」
「う、うん!」
「そう言えば、君の名前は?」
「私は…、朱鷺子って言うの」
「朱鷺子か、俺は近藤祐助ってんだ、よろしくな」
「はい!よろしく!」
そう言って、二人は握手をした。
そして、しばらく二人は雑談をしながら香霖堂を目指していた。
「ああ、やっと見えてきた。 歩くと時間が掛かりやがる…」
「空を飛べば良いじゃない?」
「それが出来たら苦労しねぇよ…」
「やっぱり、貴方って普通の人間なのね♪」
「悪かったな、普通で…」
楽しそうに話す朱鷺子、祐助は少々ムッとした表情をしていた。
そして、香霖堂まであと50mの距離の所で、祐助は足を止めた。
「……どうしたの?」
「…仕事だ」
「えっ? 仕事!?」
先ほど違い、祐助の目は鋭いものになっており、それを見た朱鷺子も、ただならぬ予感を感じた。
「出て来いよ…」
その言葉に反応したのか、数体の妖怪が唸り声を上げて出て来た。
「……5体か、厄介だな」
「うわっ…、ヤバくない?」
「朱鷺子、闘えるか?」
「ええっと…、出来ない事は無いけど…、戦闘は苦手かも…」
「そうか、一体でも倒してくれると手間が省けるんだが、無理はするな」
「ええ? 貴方まさか…」
「ああ、やれるだけやってみるさ」
「無茶よ! 相手がいくら下級妖怪だったとしても、普通の人間じゃ太刀打ち出来ないわよ!」
「そんな事は無い、人間その気になれば、不可能を可能に出来るもんなんだぜ?」
「何を言ってるの? 貴方気が触れたの!?」
この状況でも、祐助の口元は笑っており、朱鷺子はおかしいのではないかと疑っていた。
「そうかもしれんな…、職業柄、感覚が麻痺しているかもしれない」
「職業柄…?」
「そう言えば、君にはまだ言ってなかったな。俺の職業は猟師なんだが、その実は……」
「ガァァァァ!」
突然、一体の妖怪が襲ってきた。
「ひぃぃぃぃ!?」
「下がってな!」
妖怪の一振りが、二人の居た場所を切り裂く。
だが、その場に二人の姿は無かった。
その妖怪の横へと飛ぶように回避したのだ。
「朱鷺子、お前弾幕は撃てるか?」
「う、うん…、少し位なら…」
「それで十分だ、何時でも撃てるように待機していてくれ」
「貴方はどうするの?」
「俺か? 俺は……」
朱鷺子の前に出た祐助は、鞄から長い針を取り出し構える。
「グァァァァ!!」
「コイツを葬る」
突進してきた妖怪が、再び祐助を切り裂こうとする。
「そんな程度…」
それを、左前転しながらかわし
「後ろが、がら空きだ!」
数枚の博麗札を投げつける。
『ドォーン!』
札が妖怪に触れた瞬間、爆発を起こした。
「ガァァァァ!?」
思いの外、強力な爆発に妖怪が怯む。
「動きが止まってるぞ?」
祐助が妖怪の背中を取り、
「オラァァ!!」
「ウガァァァ!?」
ありったけの力を込め、後ろから妖怪の首を掴み上げた。
「トドメをさしてやる」
持っていた針を構える。
「いい子で……」
妖怪の首の後ろ『延髄』目掛け
『グサッ!』
針が突き刺された
「――――!!?」
妖怪は、声にならない悲鳴を上げ、その場へと倒れた。
「地獄に行きな…」
二度と起き上がる事の無いその妖怪に、祐助はそう言い放った。
「えっ…、えぇぇぇ!?」
それを見た朱鷺子は、驚きの声を上げた。
「これでも、綺麗な殺り方だったんだぜ? これから、本格的に血生臭くなるぞ」
「あ…あ……、貴方は…、一体…?」
朱鷺子は、震えながら祐助に尋ねた。
「猟師っていうのは、俺の表の顔だ」
「お、表の顔!?」
「俺の裏の顔は……、いや、俺の本来の職業は…」
「………っ」
「博麗の巫女と御同業、妖怪退治なのさ」
「な…、なんですってぇぇぇぇぇ!!!?」
朱鷺子の叫び声は、幻想郷中に木霊するかの様な超絶叫であった。
主人公が、段々とチートっぽくなってきてる様な…。
なりすぎないように気を付けますが、何とも言えない…。
あと、分かる人は分かるでしょうが、『藤枝梅安』他、時代劇ネタが多数入っております^^;