痛快! 男達の幻想郷   作:豊之丞

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皆さん、こんちは!
失踪したと思ってたでしょ?
しぶとく戻って来ましたw

その久しぶりの最新話は、シリアス全開です・・・。

それでは、どうぞ!



命の約束 2

「俺が今あるのも、彼女のお陰と言っても過言では無い」

 

「そんな話、初めて聞いたわ…」

 

「そうだろうな、これは余り他人には話してはいない事だ」

 

鈴仙さんは少し戸惑っていた、無理も無い。

そして、今度は輝夜さんが訊ねてくる。

 

「祐さん、彼女が母親代わりって言ったけど、貴方の本当の母親は……」

 

「…………殺された」

 

『……………っ!?』

 

その一言に、全員が驚きの顔に変わる。

 

「これも、あまり他人には話しては無いんだが…、俺の実の母親は妖怪に殺されたんだ」

 

「また何で……?」

 

「お袋は、農作業の為に人里の近くの畑に行ったらしい。 その時に野良妖怪と出会してしまい、餌食になっちまったんだ」

 

「…………!」

 

「運が悪かったとしか言いようがないよな、畑仕事をしてて妖怪に襲われるなんて…」

 

「……それから、どうなったの?」

 

「親父と博麗の巫女が、すぐに見付け出して殺したらしい」

 

「そ、そう……」

 

「俺がまだ二つの時の出来事だった、だから俺は自分の母親の顔を全く覚えちゃいない。 実家には何枚か写真が残っていて、これが母親なんだと確認は出来るが、自分の記憶の中には母親の顔も、彼女と過ごした日々も何も思い出せないんだ」

 

「祐さん……」

 

「そんな時、水智江さんは母親代わりに俺の面倒を見てくれた人なんだ」

 

「彼女が?」

 

「ああ、昔はよくうちの道場に来ては、身の回りの世話をしてくれたんだ。 それこそ、掃除、洗濯、備品の調達、俺達の食事の用意、門弟達の世話まで多岐に渡って仕事をこなしてくれた。 幼い頃からそれを見てきたから、おばさんは本当の母親みたいに感じていたんだよ」

 

「そうだったのね…」

 

「俺は彼女の身辺に関してはあまり知らなかったが、娘さんがいたらしい。 そして、26年前に妖怪達に殺されたんだ、祝言を挙げる筈だった旦那さん共々に…」

 

「そ、そんな………!」

 

鈴仙の表情が曇る。

 

「おばさんは、その仇討ちの為にその妖怪達に一人で立ち向かったんだが………やっぱり力の差は歴然としていた、返り討ちにされ、あのような無惨な事に……」

 

俺は、無意識のうちに拳を握り締めていた。

その拳からは、少し血が滲んでいた。

 

「……そうだったのね、そんな事があったのね」

 

状況を理解した永琳さんが、静かに呟いた。

 

「祐助、手から血が出てるわ」

 

「あっ…、すまない……」

 

永琳さんから差し出された手拭いを受け取り、血を拭った。

 

「今考えてみれば、26年前あの時、色々とせわしなかったり、おばさんの様子も変だったように思ったが、ガキの俺には何も分からなかったんだ、誰も教えてもくれなかったしな」

 

「そうだったの……」

 

こんな話をすれば、やっぱり場の雰囲気が重苦しくなっていた。

そんな中で、鈴仙さんが口を開く。

 

「やったヤツは分かってるの?」

 

「ああ、おばさんの話では、黒蛇の世多一という妖怪らしい。

知ってるか?」

 

「私は、知らないわ…」

 

「私も……」

 

「永遠亭は長い間、術でこちら側とは繋がりが無かったから…、26年前といえば、まだ術を解く前だから、何も分からないわね……」

 

輝夜さんも鈴仙さんも何処と無く目を逸らし、永琳さんは静かに茶を啜った。

 

「……それだよな、聞く方が間違ってたよな」

 

苦笑いしか出来なかった。

 

「これから、どうするの?」

 

「知れた事……」

 

輝夜さんの一言に、外を向いたまま答える。

 

「娘さんやその旦那になる筈だった人、そして…おばさんにまで手に掛けたんだ、生かしちゃおけねぇ……!」

 

怒気を含んだ俺の言葉に、誰もが息を飲んだ。

 

「……少し、一人にさせてくれ。色々考えたいんだ……」

 

それだけを伝え、自分一人縁側へ行った。

誰も止める者は居なかった。

 

 

 

 

 

「ねぇ、永琳……」

 

「分かってるわ輝夜、大ごとになりそうね…」

 

祐助を見送った輝夜達の間で、そんなやり取りがされていた。

 

「彼、相当参ってると思う、あの雰囲気は尋常じゃなかったわ。母親も同然の人間がああなってしまっては仕方は無いだろうけど、あんなに悲しみと怒りを含んだ彼を、私は初めて見たわ…」

 

「そうね、知られたくなかったとはいえ、私たちは彼の事を知らなすぎたかもしれない…」

 

「お師匠様、私たちはどうすれば……」

 

「何もしなくていいわ」

 

「えっ……!?」

 

「例え、彼にとっては重大な問題であっても、私たちには関わりの無い事、下手に介入なんてしない方がいいのよ」

 

「し、しかし……」

 

「余計な事はしちゃダメよ」

 

「うっ……」

 

永琳の威圧的な一言に、鈴仙は言葉が出なかった。

 

「でもね…、ウドンゲ」

 

「………?」

 

「仮にだけど、彼はもしかすると…………その時は構わないわ」

 

「えっ、それって……」

 

「何度も言わせないで」

 

「は……はいっ!」

 

永琳のその意図を理解した鈴仙の表情は、少しだけ明るくなった。

 

「とりあえず、夕食の支度をして頂戴、もちろん……祐助と患者の分も追加でね」

 

「分かりました!」

 

返事と同時に鈴仙は台所へと向かって行った。

 

「………貴女も素直じゃないわね、最初からそう言えば良いのに」

 

「勘違いしないで、これは私たちには関係の無い事だから何もしない。けど、患者に関わる事ならば話は別。彼女に何かあるなら、私も黙ってはいないわ」

 

「そう……やっぱり素直じゃないわね、永琳は」

 

「…………っ」

 

輝夜がクスクスと笑っているが、永琳の方は特に表情を変える事は無かった。

 

「私、ちょっと祐さんの様子を見てくるわ」

 

「ええ、私も患者の様子を確認したいし……」

 

輝夜が立ち上がりその場を後にするのを確認すると、永琳もまた患者のいる部屋へと向かった。

 

 

 

 

 

 

「……………っ」

 

俺は日が暮れた空を見上げ茫然としていた。

 

そして、ずっと考えていた。

 

ガキの頃、よく世話を掛けてしまった。

ワルガキだった俺は、彼女によく叱られたものだった。

 

ぶたれた事だって多々あった。

 

そして、親身になって俺の手助けをしてくれた。

 

勉強、稽古、そして一人で生きていく為のいろはを。

 

家事、炊事、掃除、編み物、人付き合い…。

 

まるで本当の母親のように……

いや、それ以上に…………

 

あの当時の事が走馬灯のように、脳裏を過った。

 

そして、同時に過った二文字。

 

 

『後悔』

 

 

おばさんの軽い身体を背負った瞬間から、ずっと……ずっと………

 

 

「祐さん…」

 

「……………っ!」

 

ふと、後ろから姫に声を掛けられ、はっと我に帰った。

 

「大丈夫……?」

 

「ああ、すまない……考え事に耽ってしまった」

 

「そう………隣、いいかしら?」

 

「構わないよ」

 

そう訊ねた輝夜さんは、俺の隣に腰掛けた。

 

「輝夜さん……」

 

「何?」

 

「これから喋る事は俺の一人言だ、聞こうと聞くまいとあんたの勝手だ」

 

「…………一応、聞いておくわ」

 

「……………っ」

 

輝夜さんが、じっと俺の方を見つめていた。

 

「ガキの頃の俺は大したワルガキでな、命知らずな事も平然とやっていた。弱小妖怪の退治くらいなら寺子屋に通ってた頃からやってた。道場の稽古じゃあ同じ世代の奴ら等、足元にも及ばない位に強かった。だからさ、よく度胸試しとか称して妖怪退治をしたんだよ、みんなで。今考えれば、よくそんな無謀な事が出来たものだと我ながら関心する。でも、誰も俺に逆らう奴は居なかった、逆らえなかったんだ。稽古では誰も俺には勝てなかったから。 そんな時、退治にしくじった慶治が怪我をしてしまってな、その事でこっぴどく怒られてな、親父にもぶん殴られて散々だった。でも、おばさんに怒られたのが一番怖かった。『どうして他人を巻き込むの?死ぬんなら貴方一人で死になさい!』とな。おばさんの剣幕に俺は震えが止まらなかったよ。 何より、何故か彼女にぶたれた痛みは親父に殴られた以上に感じたんだ。そして、こう言ったんだ。『貴方は妖怪を退治するという事を理解しているの? 例え人間より頑丈とはいえ妖怪だって痛みを感じるのよ?貴方は相手に与える痛みを考えた事はあるの?とっても辛い事なのよ。妖怪退治の意味と本質を知らなければ、貴方は一人前の妖怪退治人にはなれないわ』てさ。ガキの俺には全く理解出来なかった。だから、その後も無謀な妖怪退治を繰り返した、まだ博麗の巫女を継ぐ前の先代や慶治と平九郎とな、時には危ない橋も渡ったもんだ。その度におばさんに怒られてな、ぶたれた回数だって両手の指だけでは足りない。それを俺は鬱陶しいなんて思った事だって多々あった。しかしな、歳を重ねるにつれ、おばさんの真意ってものが分かってきた。あの時、おばさんが俺に伝えたかったのはそういう事だったのかってさ。結局俺は未熟者だったんだ。昔な、一時期ではあったが俺と酒井慶治、木村平九郎、そして、先代の博麗の巫女の四人で、『人間の四天王』なんて呼ばれた頃があってな、有頂天になったんだ。だが、それが災いして、大切な人を失い、悲しみ、絶望、怒り、殺戮、虚無感、色んな出来事を体験してようやく、おばさんの伝えたかった事に気付いたんだ。まぁあの時点で既に遅すぎたんだけどな。なのに、今また大切な存在を無くそうとしている。歴史は繰り返されるとはよく言ったものだよ、本当にバカだよな……」

 

「………………っ」

 

「あの人は、俺にとっては母親も同然なんだ、生きるため術を手取り足取り教えてくれた恩人なんだ。俺……いや、近藤の家や道場は彼女のおかげで成り立っていたようなものだ、縁の下の力持ちだよ。そんな立派な人がどうして……」

 

「…………………っ」

 

俺の一人言を、彼女はただ黙って聞いていた。

 

「はぁ…………何やってるんだろうな俺は………笑ってやってくれよ」

 

「いいえ、笑えないわ……」

 

自虐的に笑う俺に、彼女はそう言った。

 

「私はね、昔育ててくれたおじいさんとおばあさんには今でも感謝してる。でも、後悔している」

 

「後悔?」

 

「月からの使者が来た時、私はロクなお礼も言えずに二人の前から去った。でも、月には帰らずに永琳が使者達を殺した。そして、術を使って月の民から逃げた。 その先は貴方にも以前話したわよね?」

 

「………ああ」

 

「その時、いっそのことおじいさんとおばあさんも一緒に連れて暮らそうなんて思った事もあったわ、育ててくれた二人への恩返しだと思ってね……でも、それは私たちの事情が許さなかった………」

 

「……………っ」

 

「風の便りに、おじいさんが今際の際に『輝夜姫にもう一度会いたい』と繰り返していたという事、そして、おじいさんが死んでおばあさんもすぐに後を追うように死んでしまった事を。 それを知った時、私は涙が枯れるまで泣いたわ」

 

「そうか………あんたもさぞ辛かっただろう………」

 

彼女は今にも泣きそうな顔で語った。

 

輝夜さん、俺が知らなかっただけで、色んな辛い出来事があったんだな、それをこれからも永遠に繰り返すと考えたら、余計に胸が痛んだ。

 

「ぐす………だからね、貴方の事が少し羨ましくて…」

 

「羨ましい?」

 

「確かに、あの人間はあんな事になってしまってとても残念だけど……でも、貴方は彼女の最期を見届ける事が出来る、手を握って涙を流す事だって出来る、私はそれが出来なかった…」

 

「…………っ!」

 

「だから…、これ以上後悔しないように、貴方のやるべき事をやりなさい、彼女に残された時間は短くても、出来る事はある筈よ」

 

「輝夜……さん………」

 

こんな形で彼女に励まされるとは思いもしなかった。

 

「ありがとう………うっ………何でだろうな………励ましてくれたのに………涙が…止まらねえよ………」

 

「祐さん……」

 

「………くそったれが!」

 

抑えようにも、色んな感情が沸き上がり、涙を堪える事が出来ない。

 

そんな時…、

 

(ギュッ)

 

「………えっ?」

 

輝夜さんが、俺の手を握り締めてきたのだ。

 

「祐さん……いいのよ、泣きたい時は泣いたって……付き合ってあげる」

 

「…………!」

 

彼女の握り締め手は力強かった。

でも、優しかった。

 

「うう…………あぁぁぁぁぁ………!」

 

抑えていたものを吐き出すように、声を上げて泣いた。

恥ずかしいとか、そういう感情は無く、ただひたすら泣いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………ぐすっ………はぁ………」

 

「祐さん、大丈夫…?」

 

僅か数分だったが、ありったけ泣いたせいか、少しだけ気持ちが落ち着いた。

 

「す、すまない………みっともない所を見せてしまって……」

 

「構わないわ、男だからって泣いちゃいけないなんて、そっちの方がおかしいわ」

 

「…………ありがとな」

 

握り締めていた彼女の手を、ゆっくりと離した。

 

「そういえば…、鈴仙さんは?」

 

「鈴仙は、今夕食の準備をしてるわ、貴方の分も用意してるわよ」

 

「そうか…、ならば少し手伝いに……」

 

「待って」

 

立ち上がろうとした俺の腕を、輝夜さんが掴んだ。

 

「夕食の準備は、他の因幡達も手伝ってるから、わざわざ行かなくても大丈夫よ」

 

「で、でも……」

 

「ねえ……」

 

すると、彼女は俺の腕に寄り掛かってきたのだ。

 

「か、輝夜……?」

 

「夕食が出来るまでまだ時間が掛かるみたいだし………もうしばらく、こうしてましょうよ?」

 

「あ、あぁ……」

 

「もう少しだけ、お話しましょ? いいでしょ?」

 

「……分かったよ、今度は俺が付き合うよ」

 

「フフッ、よろしい」

 

彼女の微笑む顔を見て、俺もいつの間にか笑顔を取り戻していた。

 

しかし、これから自分のやるべき事を考えると、笑ってもいられない。

残された時間は少ない、何としてでもおばさんの為に……。

 

 

でも今は…、彼女のお喋りに付き合ってやろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………………っ」

 

 

その様子を遠くから見ている者がいた。

 

「あの様子なら、大丈夫そうね」

 

そう呟くと、彼女は再び患者の居る部屋へと消えていった。




次回は、いつ投稿できるでしょうか?

失踪する可能性は非常に高いw

気長にお待ち下さい。
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