しかし、その途中で予想外の出来事に出会す…。
注意!
暴力描写、胸糞描写が含まれます。
閲覧の際には、注意して下さい。
「さぁて、今日はランニングをするかな」
今日の祐助の姿は、所謂ジャージ姿である
怪我の方も大分良くなり、鈍った身体に渇を入れるべく、里の中をランニングする事にした
「フンッ! シュッ! シュッ!」
何時ものように、シャドーボクシングで準備運動をこなす
「…よしと、水筒と博麗札は持って行こうかね」
里の中とはいえ、妖怪が襲って来ないとも限らない
最低限の装備だけは、準備する
「…よっしゃ! それじゃ、行きますか!」
そうして、ランニングを開始する
彼の走るルートは、人里の外周を沿うように回るルートで、境界ギリギリを縫うように走るのだ
普通に歩けば2時間以上は掛かるのだが、普段の彼はそれを1時間以内で走破する
しかし、今はまだ病み上がりなので、1時間弱を目指して一定のペースで走る
「ハァッ、ハァッ、ハァッ…」
息を切らせながら走り続ける祐助
(いやぁ、マジで鈍ってる……、こんな早い段階で息切れとか有り得ねぇ)
少しペースを落とすも、何とか走り続けた
ようやく里を一周し、腕時計で時間を確認する
「はぁ…はぁ…はぁ……ざっと…、1時間10分か…、おっせーなぁ…」
時間を確認した彼の表情が曇る
「はあ…、しばらく休んでたツケが回って来たか…、くそったれが…!」
近くにあった石を思いっ切り蹴っ飛ばす
「まあ仕方ないか………よし、少し休憩したら、もう一度アタックしてみるか」
そう呟くと、祐助は近にあった岩に腰を掛けた
「グッ…グッ…グッ……ぷはぁ!
一汗掻いたあとの冷たい茶は最高だな!」
水筒のお茶を一気飲みし、心地よい疲労感に浸っていた
「フッ フッ フッ…」
再びランニングを再開する祐助
今度は時間を気にせず一定のペースで走っていた
しかし、里の外れの命連寺の墓地の近くを通りがかった時、異変に気が付く
「――――っ」
(………っ?今寺の方から声が聞こえたような…)
微かに声が聞こえたように感じた祐助は、立ち止まり耳を澄ます
「………っ!」
「…た………て………や……て……!!」
「……せ!………やる……!!」
微かに聞こえた声は、怒声と悲鳴が混じり合っているように聞こえる
(何だ…? まさか……里の人が妖怪に襲われてる…!?)
そう思った祐助は、居ても立ってもいられず、声のした方向へと駆け出した
しかし、其処で見たのは、彼が考えていた事とは真逆の事態が起こっていた
そこは、命連寺から程近い墓地付近の茂みであった
「オラァ! オラァ! オラァ!」
「ぎゃぁぁぁ!止めてぇぇぇ!!」
「やかましい! 雑魚妖怪の分際で俺達を脅かそうなんざ、100年早いんだよ!」
「思い知らせてやる! オラァ!」
「二度と舐めた真似出来ないように痛ぶってやるから、感謝しやがれ!」
「「「「オラッ! オラッ! オラッ! オラァッ!!」」」」
其処では里の若い男4人が、1人の妖怪に殴る蹴るの暴行を加えていた
「ぎゃぁぁぁ! ごめんなさーい! もうやらないから、許して下さい!!」
「うるせえ! 黙れクソがぁ!」
男が、妖怪の顔を思いっ切り殴りつけた
「ぐはぁ!?痛ぁ――い!!」
「オラァ! 逃げんなぁ!」
バギッ! ドガッ! バギッ!
4人は、執拗に暴力を振るう
「やめてぇ! やめてぇぇぇ!! 痛いよぉぉぉぉ!!」
妖怪は泣きじゃくりながら嘆願するが、男達は全く聞こうとはしない
「驚かした相手が俺達だった事を、後悔させてやる!」
「何時もは人間が妖怪に殺されてるんだからな、今日は妖怪が人間に殺される番だぁ!」
「私驚かしただけだよ? それ以上は何もしてないよ!?」
「じゃかぁしい! 妖怪に情けは無用だ!」
「早く死ね! オラァ! オラァ!」
「ウリャァ! ゴラァ!」
バギッ! バギッ! ゴギッ!
「いゃぁぁぁぁ!! 誰か助けてぇぇぇぇ!!」
「泣こうが喚こうが、誰もテメェなんかを助けに来るヤツはいねぇんだよ!」
「諦めて、さっさっとくたばれ!」
「「「「オラァ!オラァ!オラァ!!」」」」
「うわぁぁぁぁぁん!! 痛いよぉぉぉぉ!!」
泣き叫ぶ妖怪を気にかける事無く、男達は暴行を続けた
それは、集団リンチそのものであった
「きゃぁぁぁ!?」
「もう動けなくしてやる!」
男が、妖怪の脚を思いっ切り蹴り飛ばす
『ボキッ!』
「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
鈍い音と同時に、妖怪が絶叫した
「骨が折れやがったか、ざまぁねぇなぁ!」
「ああ、いい音したな! もう一本いっとくか?」
「次は腕の骨やるか?五体満足でいられない身体にしてやる!」
「やめてよぉぉぉぉ!! もう痛いのは嫌だよぉぉぉぉぉ!!」
「後悔しても遅い、お前は此処でくたばるんだ!」
「うわぁぁぁぁ!! 嫌だ! 嫌だぁぁぁぁぁ!!!」
全身痣だらけになり、至る所から流血している妖怪
「さてと、そろそろ仕上げといくか?」
「そうだな、流石に疲れてきた」
「さっさと、トドメ刺すか!」
「へっへっへっ……」
男達が不気味に笑い出す
「ごめんなさーい! もうやらないから!ひっく……絶対にやらないからぁぁ! ひっく…ひっく……もう許してぇぇぇ!!」
妖怪は、まともに動かせない身体を必死で起こし、許しを乞う
「うるせえ! これまで死んでいった人らの恨み、ここで晴らしてやる!」
「私はそんな事してないよ!? 何で私がこんな目に遭わなきゃならないの!?」
「妖怪はみんな同じだ! うざうざ言ってねえで、早くあの世に行けぇ!」
ひとりの男が、近くにあった石を持ち上げる
「これで終わりだ、ぶっ殺してやる!!」
「いやぁぁぁ!! 助けてぇぇぇぇ!! 死にたくないよぉぉぉぉぉ!!!」
妖怪の頭上目掛けて、石を振り落とそうとした瞬間であった
ガシッ!
「なっ? ……イテテテェ!?」
何者かに左手首を掴まれ関節を決められてしまい、男は石を落とし痛みで顔を歪めた
「いい加減にしろ、このクソ共 が…!」
「「「……っ!?」」」
他の男達が、声のした方向を見ると、そこには祐助の姿があった
彼は、鬼の様な形相で男達を睨み付けていた
「大の大人の男4人が、寄ってたかって無抵抗な妖怪を痛ぶるとは…、お前等恥ずかしくはないのか?」
「うるせー! おっさんは引っ込んでろ!」
「そいつはなぁ、俺達を驚かそうとしていきなり現れやがったんだ」
「そうしたら見ろ! 買ったばかりの草履の鼻緒が切れちまったんだ!」
「…それだけの為に、こんなに痛めつけたって言うのか?」
「そうだ! 妖怪は人間の敵だ! テメェは妖怪のカタを持つつもりかぁ!?」
「そんなつもりは無い、確かに妖怪は人間の敵だ。 だがな…」
「だったら引っ込んでろ!」
「いくら、それが原因で新品の草履の鼻緒が切れたからって、此処までする必要があるのか?人間の品格も随分と地に堕ちたもんだな」
「うるせえ! さっさと離し……イデェェェェ!!」
祐助は抵抗しよとした男の腕を捻り、背中に押し当て固め技を決める
「お前等、自分より弱い相手を痛ぶって楽しいか?」
「やかましい! そいつを離しやがれぇぇぇ!!」
1人の男が、祐助目掛けて殴りかかって来る
「フンッ…」
祐助は、殴りかかって来た男の腕を左手で掴む
「なっ…!?」
だが、掴んだのは一瞬
すぐに、その腕を払うと
ガシッ!
「うがぁぁっ!?」
男の首を掴んだのだ
「言っておくがな、こちとら妖怪を相手にする事を前提に鍛えてるんだ。 テメェらみたいな普通の人間になんざ負ける気すらしないが?」
「う…嘘だ…、そんなハッタリが…」
「ほうぉ…」
祐助の眼光が更に鋭くなる
「オラァァァ!!!」
「がぁぁぁぁっ!?」
祐助が叫ぶと、右手で男を抑えた状態で、その男を左腕だけで持ち上げてしまった
「「ひ、ひぃぃぃぃ!?」」
それを見た2人の男は、度肝を抜かれ尻餅をついた
「ハッタリじゃねえぞ…、その気になれば、今すぐに貴様の首をへし折る事だって出来るぞ」
「が……あがぁぁぁ……」
持ち上げられた男は、懸命に何かを喋ろうとするが、喉を封じられ喋る事が出来ない
「おい……」
「「ひぃぃ?」」
「どうするんだ? 仲間見殺しにするのか?」
祐助は、2人の男を睨みながら聞いた
「か、勘弁してくれぇぇ!」
「頼む、許してくれぇ!」
2人は、手をついて祐助に詫びを入れた
「バカ共が…!」
それを聞いた祐助は、2人の男を解放した
「がはっ! ゲホッ…ゲホッ…!」
「イテテテテ……」
「だ、大丈夫か?」
2人の元へ男達が駆け寄る
「いくら妖怪が相手でも、貴様達がやった事は弱い者イジメに等しい! 自分より格下の相手を痛ぶるなんざ、屑がやることだ!」
怒りを露わにする祐助は、更に続ける
「今回は、慧音さんには黙っててやる。もし話せば、貴様達には制裁が科せられるだろうからな」
「そ、それだけは勘弁を…」
「特にお前だ! 大店の笹子屋さんのドラ息子! こんな事が表沙汰になってみろ、笹子屋さんの暖簾に傷が付くんだぞ!?」
「な、何故俺の事を!?」
「おい…、まさかお前は俺の顔を見忘れたのか?」
「えっ………あっ! 貴方は!?」
「お、おい…誰なんだよ?」
「この人は…、近藤祐助さんだ!」
「何!? あの凄腕の妖怪退治人って噂の…」
「その通り、俺が近藤祐助だ」
「ひぇぇぇ!? 申し訳ありませーん!」
4人は、祐助の前で土下座して謝った
「全く…、自分より弱い相手にはリンチして、格上の相手には土下座ときたか…最低だな、まるで天狗だ」
祐助が彼らを見る目は、非常に冷たいものであった
「今回は見逃してやる。だがな、今度同じ事をしているのを見たら、次は俺が貴様達をぶっ潰す! 分かったか!?」
「「「「は、はい…」」」」
「ふざけるな!大声出せぇ!!」
「ひぇぇぇぇ!!」
祐助の一喝で、4人は一目散に逃げ出した
「…ったく、どうしよもないバカ共が…」
呆れた表情で、その様子を見ていると、横から啜り泣く声が聞こえた
「ぐす…ぐす……ひっく…」
「酷くやられたな…。 君、大丈夫か?」
祐助は、血だらけの妖怪に手を差し伸べるが
「い…いやあ……!」
怯えながら後退りをした
(よほど怖かったんだろな…)
妖怪の心中を察した彼は、優しく笑みを浮かべながら静かに諭した
「大丈夫だ、何もしないよ。俺は君の味方だ」
「み、味方…?」
「そうだよ、もう大丈夫だから、おいで」
「あ…、痛いっ!」
「どうした?」
「あ、脚が…」
祐助が妖怪に駆け寄り、怪我をした所を触る
「これ…、折れてるじゃないか!? アイツ等がやったのか?」
「う、うん…」
「…クソがぁ!」
想像以上の仕打ちに、怒りを抑えられなかった
「ひぃぃ!?」
「ああ…、済まない。 君に怒った訳じゃないんだ」
「ほ…、本当…?」
「本当だ、約束する」
「う…うぇぇぇぇん…、怖かったよぉ…痛かったよぉ…」
「可哀相に…、よしよし…」
泣き出す妖怪を祐助は抱き寄せ、背中を軽く叩いてやった
「…とにかく、怪我の手当てをしないとな。寺子屋まで行こう」
「寺子屋…?」
「ああ、其処に行けば道具も揃ってるからな。 抱っこしてやるよ」
「うん……あっ、傘…」
「傘?」
妖怪が指差した方を見ると、唐傘お化けを思わせる傘があった
(なるほど、あれで驚かせたのか…)
何となく納得する祐助
「ほらよ」
傘を妖怪に渡すと一気に抱き上げた
「い、痛いよ…」
「ゴメンな…だけど、少しだけ辛抱しな」
妖怪を気にかけながら、ゆっくりと歩き出した
「君、名前は?」
「私は小傘…多々良小傘っていうの」
「小傘さんか、俺は近藤祐助だ、よろしくな」
「うん…、よろしく…!」
小傘は安心したのか、祐助の胸に顔を埋めてしまった
妖怪を抱っこして里へ向かう主人公は、とても妖怪退治を生業にしている人間には見えないですね…。
小傘ゴメンね、かなり痛い描写になってしまった。
簡単にやられる事は無いんだろうけど、そんなに強くは無いからなぁ…。