黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

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第10Q~不屈のシューター~

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

 

「キターッ! 生嶋のスリー!」

 

「今日6本中6本決めてるぞ!?」

 

「外れる気配がない! まるでキセキの世代の緑間だ!」

 

第2Qに入り、本日6本目となる3Pシュートが決まる。

 

 

星南  22

城ケ崎 31

 

 

第2Q、5分経過…。

 

試合は城ケ崎ペースで進んでいる。

 

 

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

 

会場内にブザーが鳴り響く。

 

星南がタイムアウトを取る。星南ベンチで監督の龍川が仁王立ちで腕を胸の前で組みながら選手達を待つ。

 

「くそっ! くそっ!」

 

森崎がベンチに座ると、両手を強く握り込みながら悔しさを露わにする。

 

「あなただけの責任ではありませんよ。事実、第2Qに入ってからは確実に5番のアウトサイドからの失点は減っています」

 

「…けど、結局1本も止めれてねぇ!」

 

「…」

 

第2Qに入り、森崎は生嶋に対し、よりタイトにマークを行っている。その結果、生嶋のシュート回数自体を減らすことには成功した。だが、生嶋を止めることは未だ出来ていない。

 

「森崎だけの責任じゃない。俺も、肝心なインサイドでやられまくってる。俺がもっとインサイドを抑えていれば…」

 

田仲が頭からかけたタオルを握りしめ、悔しそうに歯を食い縛る。

 

「森崎君も生嶋を相手によくやってるし、田仲君も城ケ崎相手にたった1人でインサイドを抑えている。…それに比べて、僕はこの試合何も役に立ってない…」

 

駒込が悲しそうな表情で2人に言葉を掛ける。

 

『…』

 

星南ベンチ内が沈黙に包まれる。

 

「男がゴチャゴチャと泣き言をぬかすなっ!」

 

『ッ!?』

 

その沈黙を監督の龍川が破る。その怒声に選手達は身体をビクつかせる。

 

「まぁ、ここまではワシの予想の範囲内じゃ。点差は9点。まだまだどうにでもなる」

 

選手達は龍川の言葉に耳を傾ける。

 

「相手の4番は神城がほぼ封殺しとる。後は5番じゃが…マークを変える。森崎に変わって綾瀬、お前が5番に付け。5番の動きはおおよそ掴んだやろ?」

 

「はい」

 

綾瀬はニコリとしながら返事をする。龍川もそれに大いに満足する。

 

「ならええ。ここからは5番に綾瀬を付け、神城はそのまま4番をマークじゃ。田仲、森崎、駒込はインサイドを死守せい」

 

『はい!』

 

龍川は状況の打開の為にトライアングルツーを布く。

 

「散々練習でやってきたことや。しっかりこなしてみぃ」

 

『はい!』

 

「それと、神城ぉっ!!!」

 

「は、はい!」

 

「ボールを持ったらお前も積極的に点獲りに行け。ワシが許す」

 

「っしゃあ! そうこなくちゃ!」

 

空はニヤリと笑みを浮かべながら喜びを露わにする。

 

「他のもんも、練習どおり、教えたとおりにやれ。そうすれば勝てる」

 

「「「はい!!!」」」

 

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

 

ここでタイムアウト終了のブザーが鳴る。

 

「言う事はそれだけじゃ。行ってこい、ガキ共ぉっ!!!」

 

『はい(おう)!!!』

 

星南の選手たちはコートへと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

タイムアウトが終わり、試合が再会される。

 

先程までは城ケ崎ペースで進んでいた試合。タイムアウト終了後、試合は動き始める…。

 

「くっ!」

 

小牧から生嶋にボールが渡る。すかさず大地がディフェンスに入る。

 

「(…隙がない! これじゃ、シュートはおろか、抜くことも…!)」

 

マークが大地に変わった途端、生嶋の得点が止まる。大地のディフェンスの前に、生嶋は手をこまねいていた。

 

 

 

――ダムッ!!!

 

 

 

生嶋はドライブで綾瀬の横を抜こうとする。だが、大地は瞬時に対応し、道を塞ぐ。

 

「想定済みだ。本命は――」

 

生嶋はそこからターンアラウンドで反転し、3Pの体勢に入る。生嶋の得意パターンの1つである。

 

 

 

――バチィィッ!!!

 

 

 

「そのパターンはさっき見ましたよ」

 

大地はそれにも対応し、ブロックショットが炸裂する。こぼれたボールをすぐさま大地が拾う。

 

「大地ーーっ!!!」

 

既に前に走っていた空がパスを要求する。

 

「っ! まずい、戻れ! ディフェンスだ!」

 

慌てて城ケ崎が自陣コートへと戻る。だが、もともとの動きだしに加え、空のダッシュ力に城ケ崎は追いつけない。

 

大地が先頭を走る空に向け、力強いワンハンドパスを出す。

 

「っしゃあ!」

 

ボールを受け取りペイントエリアまでボールを進めると、そこから大きく跳躍し…。

 

「らぁ!!!」

 

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

 

ワンハンドダンクを炸裂させる。

 

「ダンクキタァ!!!」

 

「あの身長でマジやべぇ!!!」

 

空のダンクに観客も大きく沸く。

 

 

星南  26

城ケ崎 31

 

 

2度にわたって攻撃を失敗し、ターンオーバーからの得点によって点差を詰める星南。

 

「落ち着こう! まだ点差はある。立て直すぞ!」

 

小牧が声を張り上げ、立て直しを図ろうと試みる。

 

城ケ崎のオフェンス、小牧がボールを所持し、空がディフェンスの付く。

 

「ちぃ!」

 

空のディフェンスを突破できない苛立ちから思わず舌打ちをする小牧。完全に得意のドライブが封じられる。

 

そこに、生嶋が大地のマークを振り切ってパスを貰おうと動き出す。間髪入れず、大地がそれを追いかけるが…。

 

 

 

――ガシィィッ!!!

 

 

 

「っ!?」

 

8番、花田のスクリーンに大地が捕まる。

 

「ド阿呆ッ! しっかり声かけんかい!!!」

 

龍川から怒声が星南ベンチから響く。そこにすかさず小牧からパスが渡る。ミドルレンジでパスを受けると、生嶋は星南のヘルプが来る前にすぐさまシュート体勢に入る。

 

 

 

――チッ…。

 

 

 

「えっ?」

 

その放たれたボールに真後ろから現れた指先が触れる。ブロックに現れたのは…。

 

「あっぶねぇ…」

 

小牧のマークを外し、ヘルプに来た空。

 

「(まさか…、その位置から追いついて…)」

 

空は生嶋にパスが渡るまでは小牧のマーク…、3Pラインの外にいた。生嶋はパスを受けると同時にシュート体勢に入ったため、空とは距離があった。生嶋はシュートの瞬間は空のことは意識の外だった。

 

だが、空はパスがされるのとほぼ同時に小牧のマークを外して動きだし、生嶋のシュートブロックに向かい、指先のみだが、ボールに触れることに成功した。

 

「リバウンド!」

 

ボールに触れた空はシュートが外れるのを確信し、叫ぶ。

 

 

 

――ガン!!!

 

 

 

ボールは空の目論見どおり、外れる。リバウンド争いを制したのは田仲。星南のゴール下には田仲、森崎、駒込の3人がいたのに対し、城ケ崎は末広しかいなかったため、悠々とリバウンドボールを田仲がもぎ取った。

 

田仲は空にパスをする。

 

「よっしゃ! もう1本、行くぞ!」

 

再び、星南ボールに。空から再び攻撃が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

第2Q終了のブザーが鳴る。

 

 

星南  37

城ケ崎 39

 

星南が点差僅かワンゴール差までに詰め寄った。

 

空と大地が得点を重ね、それ以外がフォローにまわる。星南のいつもの形で試合を推し進める。

 

一方、城ケ崎も最大の得点源である生嶋を封じられたものの、花田、末広が星南のミスマッチを突き、得点を重ねる。

 

第2Q終わり、戦況は互角。だが、勝敗を分ける要因となるものがここから少しずつ表れていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

「ハァ…ハァ…」

 

肩で大きく呼吸をする生嶋。その表情に余裕はなく、顔色もよくない。

 

 

星南  55

城ケ崎 54

 

 

第4Qに入り、開始1分で星南が逆転に成功する。

 

更に勢いが増す星南。だが、城ケ崎の旗色は悪い。時間、点差を考えてもまだまだ挽回の余地はいくらでもある。だが…。

 

「ぜぇ…ぜぇ…」

 

城ケ崎の絶対的エースである生嶋はもう限界…いや、限界を超えている。その原因は、大地のマークを振り切ろうと動き回ったことによるものと、星南がトランジションゲームに持ち込み、走り合いとなったことにより、体力が大幅に削られたからだ。

 

今ではすっかり動きにキレがなくなり、立っているのも辛そうな面持ちだ。

 

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

 

森崎の3Pが決まる。この日、ようやく当たりが出る。

 

 

星南  58

城ケ崎 54

 

「点差が開いてきたぞ!」

 

「ここでのスリーは痛い!」

 

観客にも戦況が星南に傾いてきたことが伝わる。

 

生嶋はもうろくにディフェンスもできない。城ケ崎ベンチはエースが退くのは痛手だが致し方なしと判断し、生嶋の交代要員を呼び、メンバーチェンジを告げようとした。だが…。

 

「…(スッ)」

 

生嶋はそれを手で制し、交代を拒否する。

 

「まだ…やれます。…だから…」

 

困惑する城ケ崎の監督。そして降した判断は……、生嶋の続行。

 

「いいんですか? もう、生嶋は――」

 

城ケ崎ベンチの選手が異を唱えるが、監督は、生嶋の目を見て判断を降した。

 

 

 

――本人が大丈夫と言うなら…、まだ目が生きてる内はエースの意見を尊重すると…。

 

 

 

城ケ崎ボール。生嶋へとパスが渡る。

 

「…」

 

トリプルスレッドの体勢に入る生嶋。

 

「(もう、彼は限界を超えています。ドリブル突破はおろか、シュートも難しい。ましてやスリーなどは無理なはず…)」

 

大地はパスにのみ警戒を強める。それ以外なら後出しでも反応できるだけのスピードと瞬発力があるからだ。

 

 

 

――スッ…。

 

 

 

「っ!」

 

生嶋が3Pシュートの体勢に入る。大地は1番ないと思っていた3Pの体勢に入ったことにより、一瞬驚くもすぐさまブロックに跳ぶ。

 

ボールを放つ前に生嶋のシュートコースを塞ぐ大地。他のマークも外れていないため、パスの切り替えも難しい。

 

ブロックが成功する…。誰もがそう思ったが…。

 

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

 

「なっ…!」

 

そのシュートは綺麗にリングを潜った。そのことに誰もが驚いたが、それ以上に…。

 

「なんだ今の!?」

 

「すげぇ体勢から撃ってたぞ!?」

 

今の3P。ブロックは確実かと思われたが、生嶋はボールを手から放つ瞬間、上半身を左方に傾け、ブロックを避けるようにしてシュートを放っていた。

 

当然の如く、バスケのシュートは距離が離れれば離れる程成功率は下がる。確実にシュートを決めるためには綺麗なフォームとりリリースタイミングとリズムが求められる。

 

今のシュートはリズムは崩れており、フォームもブロックをかわすために上半身を傾けて打ったため、バラバラもいいところ。…それでも、ボールはリングに掠ることなく潜った。

 

「ぜぇ…ぜぇ…」

 

生嶋は両膝に手を付きながら息を切らしており、すぐさま両手を放してディフェンスへと戻っていった。

 

「あんなシュート、そうそう入る訳ない。気にすんなよ」

 

田仲が大地の腰を叩きながら励ます。

 

「(…本当にそうならばいいのですが…)」

 

大地は不安を感じながらオフェンスに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「1本!」

 

空が人差し指を立て、ゲームメイクを始める。城ケ崎は星南のエースである大地に花田と前田のダブルチームでマークする。

 

「…」

 

空はゆっくりボールを進めていく。

 

 

 

――ダッ…!

 

 

 

大地が一瞬の隙を付いてダブルチームを振り切る。

 

 

 

――ピッ!!!

 

 

 

そこにすかさず空のパスが飛ぶ。

 

『!?』

 

コートにいる者のほとんどが目を見開いた。空は大地にではなく、森崎にパスをしたからだ。完全に虚を突かれた城ケ崎。森崎は完全フリー……と思われたが…。

 

「っ!?」

 

生嶋だけは森崎のマークに付いていた。

 

「ぜぇ…ぜぇ…」

 

もはや息は絶え絶えで、一見して立っているのがやっと。ならば、と生嶋を抜き去ろうとドライブの体勢に入る森崎。

 

「っ!?」

 

その瞬間、森崎の背筋に冷たいものが走る。限界を超えている生嶋。だが、その瞳は鬼気迫るものがあり、執念にも似た何かがあった。その瞳が森崎の動きを止めさせた。

 

「森崎! 何やってんだ!」

 

田仲の言葉にハッとし、正気に戻った森崎だが、その僅かな硬直の内にヘルプに来た花田と前田に囲まれる。

 

「くっ!」

 

何とかボールは渡すまいとキープし続ける森崎だが…。

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

「オーバータイム!」

 

24秒が過ぎ、オーバータイムを取られる。

 

 

※オフェンス側は24秒以内にシュートを打たなければならない。

 

 

「よーし! ナイスガッツだ、生嶋!」

 

城ケ崎ベンチから歓声が上がるが、当の本人は…。

 

「ぜぇ…ぜぇ…」

 

反応をせず、ただただ荒い呼吸を繰り返すだけであった。

 

「どうした?」

 

空が心配そうに声を掛ける。

 

「いや、悪い。あの時、行ってたら取られそうな気がして…」

 

森崎は声を震わせながら言う。

 

「…ま、気持ちは分からんでもないけど、打っていなかきゃ始まらねぇ。取られたら俺達が拾ってやるから、ガンガン行けよ」

 

腰をパシッと叩きながらディフェンスへと戻っていった。

 

 

 

――ダム…ダム…。

 

 

 

小牧がドリブルをしながら星南リングへと近づいていく。

 

 

 

――ダム!!!

 

 

 

小牧が一気に加速し、ドライブで空の横を抜けようとする。

 

「甘ぇーよ!」

 

空はそれに対応し、阻もうと付いていこうとする。

 

 

 

――ドン!!!

 

 

 

「うっ…」

 

だが、真後ろにいた花田のスクリーンによってそれは防がれる。

 

「ちぃ!」

 

たまらず大地がヘルプに向かったが、それを見越したかのように小牧はパスをする。ボールの先は左サイド、3Pラインの外側にいる生嶋。

 

「俺が…!」

 

森崎がディフェンスに向かう。

 

生嶋は、ボールを受け取ると、ゆっくりボールを上げ、3Pを放つ。森崎のブロックより紙一重に早く、ボールはリングに向かっていく。

 

「(もう5番は限界。あんな状態で入るわけ…)」

 

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

 

だが、ボールはリングに掠ることなく再び潜る。

 

「うおぉぉぉーーーっ! 5番止まんねえ!」

 

そのシュートに観客が沸く。

 

「ディ…フェンス…」

 

生嶋はボールがリングを潜るのを見送ると、ゆっくりディフェンスに戻っていった。

 

『…』

 

その様子を唖然として見送る星南メンバー。

 

 

星南  58

城ケ崎 60

 

生嶋のスリーで再び城ケ崎がリード。第4Q残り5分。激闘は終わらない…。

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

 

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