投稿します!
リアルで体調を崩し、間隔が空きました…(;^ω^)
それではどうぞ!
第3Q、残り6分2秒。
花月 45
陽泉 61
紫原のダンクが炸裂。同時にブロックに向かった空にアクシデントが起こった。
「空、空っ!」
倒れたまま動かない空に大地が傍に寄る。
「動かさないで! 頭を強く打った可能性がある。担架を、早く!!!」
悲痛の表情で縋るように声を掛ける大地の肩に手をかけて審判は静止し、担架を要請した。
「竜崎! すぐに準備をしろ。急げ!」
「は、はい!!!」
上杉に指示を出すと、竜崎は返事と同時にジャージを脱ぎ、準備を始めた。
駆け足でやってきた救護の人員がそっと空を担架に乗せ、コートの外へと運ばれていった。
「姫川、一緒に医務室へ行って神城を見ていてやれ」
「は、はい!」
そう指示が出されると、姫川は担架で運ばれていった空を追っていった。
「…っ」
運ばれていく空を茫然と見つめる大地。
「―せ、綾瀬!」
「っ!?」
茫然とする大地に天野が声を掛ける。その声に大地は正気に戻る。
「状況は最悪やが、俺らでどうにか立て直さんとあかん。行くで、気合い入れ直し」
「え、えぇ…」
何とか声を絞り出して返事をする大地。
「ボール回しは竜崎、任せるで。お前はシックスマンであると同時に空坊のバックアップのポイントガードでもあるんや。帝光中で培った経験を生かす時やで」
「はい! 任せて下さい!」
コートにやってきた竜崎に発破をかける。
「全員声出せや! こないな修羅場は去年も切り抜けてきたやろ! もういっぺん潜り抜けるでぇっ!」
『おう!!!』
次に選手達に発破をかけ、選手達がこれに応える。
「お前達もや!」
今度は花月ベンチの選手達を指差す。
「なに湿気た面しとんねん!? 葬式かい! 黙ってボーっと座っとらんでやれる事あるやろ! 声出して応援せんかい!」
「っ!? そうだな、全員、声を出せ! 花月!!! ファイ!!!」
『おー!!!』
発破をかけられたベンチメンバーは菅野が号令をかけると続いて声を出した。
「竜崎!」
スローワーとなった天野が竜崎にパスを出す。
「取り返すで! 全員、動けなくなるまで走るで!」
『おう!!!』
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
ボールをフロントコートまで運ぶ竜崎。
「っ!?」
ボールを持った竜崎に永野がプレッシャーをかける。
「…くっ!」
ガンガンプレッシャーをかけてボールを奪いに来る永野。
「(すごいプレッシャーだ! くそっ! ボールをキープするだけで精一杯だ!)」
永野のディフェンスに竜崎は必死にボールを奪われないようにキープする。
「(キャプテンはこんな人を相手にしながらゲームメイクをしていたのか…!)」
空の凄さを改めて痛感する竜崎。
――ポン…。
永野の伸ばした手がボールを捉える。
「ちっ!」
すぐさま反応し、竜崎はボールを抑える。
「危なかった…」
ボールを抑えて一安心する竜崎。
「(ゲームに入り切れてねえから浮足立ってるな。それなら相手すんのは容易い!)」
竜崎の様子を見てそう判断する永野。
「(…ダメだ、今の俺じゃこの人相手にいつまでもボールをキープしてられない。ここは――)綾瀬先輩!」
ここで竜崎は大地にパスを出す。
「…」
「っ! ダイ!」
「…えっ?」
――バチン!
生嶋の声で顔を上げる大地。そこで初めてボールが来た事に気付き、手を出すがボールをファンブルしてしまう。
「綾瀬がファンブルだと!?」
らしくないイージーミスにベンチの松永も思わず声が出る。
「モラウヨ」
ファンブルしたボールをすぐさまアンリが抑え、速攻に走った。
「っ! あかん、カウンターや! 戻れ!」
慌てて天野が声を出し、ディフェンスに戻る花月の選手達。
「…くっ!」
どうにかスリーポイントラインの目前で大地がアンリに追い付き、回り込む。
「…ドウシタ? 集中出来テナイヨ」
――ダムッ!!!
一気に加速したアンリが大地の横を高速で駆け抜け、抜き去る。
――バキャァァァッ!!!
そのままボールを持って飛び、ボールをリングに叩きつけた。
「コノママダト負ケチャウヨ? モット集中シナヨ」
そう告げ、そのまま大地の横を通り過ぎるアンリ。
「……っ」
大地は下を向いたままただ拳をきつく握っていた。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
ボールを運んだ竜崎は早々に大地にボールを渡した。
「(すぐに取り返さなければ!)」
――ダムッ!!!
大地が中へと切り込む。
「行カセナイヨ!」
アンリは大地の横を並走しながら追いかける。中へと切り込んだ大地はそのままボールを持ってリングに向かって跳躍した。
『まだ振り切れてないぞ!?』
「はぁ? 舐めてんの?」
――バチィィィィッ!!!
ダンクに向かった大地だったが、ヘルプにやってきた紫原によってブロックされた。
「綾瀬、無理をするな! 強引過ぎるぞ!」
無謀な選択にベンチの松永から声が出る。
「っとと、無謀やで! もっと大事に行かな」
ルーズボールを抑えた天野が大地に注意を促す。
「…っ、すいません」
晴れない表情で大地は謝罪をした。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
「終わったな」
観客席の誠凛の池永が座席の背もたれに体重を預け、後頭部で両手を組みながら呟いた。
「っ!? まだ分からないだろ。時間はまだまだある」
そんな池永の言葉に苛立った表情で返す田仲。
「だが実際、花月のキーマンであり、精神的支柱の神城が抜けた穴はかなり大きい。その穴を竜崎に埋められるとは思えないな」
池永に同調するように新海が状況を分析した。
「リバウンドは取れない。紫原を越えられない上に止めらない。ここから花月に逆転の目があるとは俺も思えねえ」
同じように火神もそう分析していた。
「…正直、私ではここから花月が逆転出来る策は思い浮かばないわ。全てにおいて花月が不利なのは明白だから」
「そんな…」
監督のリコまでもがそう口にし、表情が曇る田仲。
「…けどまだ花月には綾瀬がいる。あいつならどうにか――」
「――残念だが無理だな」
田仲の希望を再び火神が一刀両断する。
「あいつは完全に試合に集中出来てねえ。明らかに動揺してやがる。そして何より――」
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
「ゾーンに入れない?」
桃井が聞き返すように言う。
「ああ。綾瀬はゾーンには入れねえ」
隣の席の青峰が答える。
「けど、綾瀬君って、才能なら神城君と同じくらいあるはずだよね?」
「そうだな。才能だけなら神城と同等だ。肝心なのはもう1つの方だ」
もう1つ、それはゾーンに入る為の条件である『バスケに全てをかけている事』である。
「去年の夏にも、冬に戦った時にも感じたが、あいつはどうも…上手く言えねえが、バスケに対して執着というか、熱を感じねえ」
「? どういう事?」
「だから上手く言えねえって言っただろうが」
その言葉が理解出来ず、聞き返す桃井に対し、ぶっきらぼうに返した。
「どのみち、今のあいつは雑念だらけでとてもじゃねえが試合に集中出来てねえ。ゾーン以前の問題だ。…このままなら、試合はもう覆らねえ」
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
各々の者が予想したとおり、花月は空の離脱によって更なる苦境に立たされた。
点が取れず、リバウンドが取れず、失点も防げない。そして何より…。
「…っ」
大地の不調により、更なる悪循環を繰り返していた。
第3Q、残り4分59秒
花月 45
陽泉 65
点差は20点にまで開いていた。
――バチィィィィッ!!!
「あっ!?」
大地が放ったジャンプシュートをアンリが叩き落とした。
「アウトオブバウンズ、緑(花月)」
ボールはサイドラインを割った。
『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』
『チャージドタイムアウト、花月!』
ここで、上杉が申請したタイムアウトがコールされ、選手達がベンチへと戻っていった。
「…ハァッ!」
大きな溜め息と共に天野がベンチに腰掛けた。
「すいません、俺がしっかりゲームメイク出来ないばかりに…!」
申し訳なそうに竜崎が謝罪する。
「…いや、自分が役割を果たせていないせいです」
続けて責任を感じた室井が自分を責めた。
「やめぇ、2人共よーやっとる。自分を責めんのは後や。今はこの状況を何とかせんと」
責任を感じる2人を遮るように天野が口を挟んだ。
「…」
大地はタオルを頭からかぶり、俯いていた。
「…それにしても、くーがいなくなるなんて…」
『…』
ポツリと生嶋が言うと、花月の選手達が静まり返る。
「…くそっ! ツイてないぜ。よりにもよってあんな事故が起こるなんて――」
「…違います」
先程の事故を嘆く菅野の言葉を遮るように大地が口を挟んだ。
「あれは事故ではありません。空は私を庇ったんです。だから…」
そこで大地は口を閉じた。
紫原のダンクをブロックに行った大地。危険性を瞬時に察知した空は瞬時に大地を庇う為に同様にブロックに行き、大地を庇うように動いた。
本来なら担架で運ばれるのは自分だった。…いや、自分でなければならなかった。自分であるべきだった。その想いが大地を蝕んでいた。
「神城はお前の知ってのとおりバスケ馬鹿だ。そして勝利に対して貪欲でもある。あの状況、自分が欠けたら負ける判断したならあいつはそこで動かなかっただろう。だが、あいつはお前を庇った。その意味が分かるな?」
「…」
諭すように上杉が大地に語り掛ける。
「神城が目を覚ました時、何も出来ずに負けましたと報告するのか?」
「…」
「神城の期待に応えられるのはお前しかいない」
「…」
ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』
ここで、タイムアウト終了のコールが鳴る。
「ちっ、もう時間か。お前達、失点を防げないならそれ以上に点を取るしかない。空いたらとにかく打っていけ」
『はい!!!』
花月の選手達は返事と同時に立ち上がり、コートへと向かっていく。
「…」
未だ表情が晴れない大地。
「っ!?」
そんな大地を後ろから上杉が腕を回し、引き寄せた。
「去年の敗北を思い出せ。そこに答えはある」
それだけ伝え、上杉はベンチへと戻っていった。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
花月ボールから試合は再開される。
「…」
ボールは天野から竜崎に渡される。
「(…リバウンドが取れない以上、1本の取りこぼしが命取りになる。確実に決めて行かないと…!)」
目の前の永野にボールを奪われないよう気を配りながら慎重にゲームメイクを始める竜崎。だが…。
「…くっ」
マークを外そうと動き回る生嶋だが、陽泉は生嶋の外を最警戒している為、なかなかフリーになれない。
「…っ」
ローポストで背中に紫原を張り付かせながら立つ室井。パスを出せない事もないが、身体能力こそキセキの世代と比類する室井だが、まだバスケを始めて4ヶ月足らずの素人。パワーで競えてはいても紫原と勝負が出来るわけもなく、ここも駄目。
「…」
未だ表情が晴れず、調子が測れない大地。
「…くそっ」
自ら行こうにも中が堅い為、切り込めない。
相変わらず鉄壁を誇る陽泉ディフェンスを前にシュートチャンスを作れず、焦りが生まれる竜崎。
「……しゃーないのう」
見かねた天野がハイポストの位置から駆け出し、スリーポイントラインの外側まで走る。
「こっちや!」
そこでボールを要求。
「天野先輩!」
攻め手が定まらない竜崎はとりあえず天野に一旦ボールを渡した。
「(この人はオフェンスではポストプレーやスクリーンでアシストするのが役割なはず。そんなところでボールを受けて何をするつもりだ?)」
これまで天野の背中でマークしていた渡辺の頭の中で疑問が生じた。
「(何が狙いにしろ、この人に外も切り込めるドライブ技術もない。この距離を保とう)」
外に展開した天野に対し、渡辺は距離を詰めず、ゾーンが崩れないように努めた。
「…ええんか? そない距離空けて」
「…えっ?」
突如、シュート態勢に入った天野。意表を突かれた渡辺は一瞬呆気に取られ、すぐにチェックに向かうも間に合わなかった。
「味方を生かすプレーが楽しゅーて今でこそロールプレーヤーしとるけど、中学時代はこう呼ばれとったんや」
――ザシュッ!!!
「西の緑間ってのう」
「なっ!?」
リングに触れる事なく潜り抜けたボールを見て渡辺が驚愕した。
「木下先輩」
「ああ。かなりキレイなフォームだった。生粋のシューターと思わせるレベルだ」
陽泉のシューターである木下が思わず絶賛した。
「ナイッシュー、天野先輩」
「おおきに」
「驚きました。まさか先輩がシューターだったなんて…」
先程の会話が聞こえていた竜崎。
「阿呆、あんなんハッタリに決まっとるやろ」
賛辞の言葉を贈ろうとした竜崎の言葉を遮るように半笑いで言った。
「ええっ!? でも、シュートフォームめちゃめちゃ良かったじゃないですか!?」
「声がデカいねん! …まあ、中学時代はフォームだけはレイ・アレン並とか言われとったな」
「ちなみに成功率は?」
「3割や」
「……結構普通ですね」
飛び出るカミングアウトに竜崎は呆れ気味に言った。
「けどまあ、こないな状況や。ハッタリの1つ2つかまして通さんとどうにもならん。お前もボール持ったら積極的にシュート打っとき」
「っ!? ですけど――」
反論しようとした竜崎の言葉を制する天野。
「リバウンドが取れへんから慎重に行かなあかんお前の考えも分かる。けどなあ、陽泉のディフェンスは固い。いつ来るか分からんチャンスを待っとったら点は取れても追い付けん。リスク犯してでも点取らな逆転なんか夢のまた夢や」
「…」
「監督も空いたら打て言うとったやろ? 外した後の事は考えんでええ。どうせリバウンド取れへんのやからこうなったら開き直りや。自信持って打っていき。中学時代に比べたらそないプレッシャーかからんやろ?」
「っ! はい!」
この言葉を聞いた竜崎は頭の中を切り替え、返事をしたのだった。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
陽泉のオフェンス…。
――ダムッ!!!
フロントコートまでボールを運んだ永野がインサイドへカットイン。
「っ! 行かせねえ!」
ドライブのタイミングを読み切った竜崎はピタリと並走し、抜かせない。
「(…ちっ、動きが良くなった。地に足が着いてきたか。まだ1年とは言え、さすが、帝光中を率いていただけの事はある)」
アクシデントにより急遽試合に出場した事もあり、浮足立っていたが、気持ちの切り替えが終わり、ようやく本来の実力が発揮出来るようになった竜崎。
切り込むのを諦め、下がって1度距離を取る永野。
「こっちだ!」
木下がスリーポイントラインの外側でボールを要求。永野は木下にパスを出す。
「打たせない!」
そんな木下に生嶋が距離を詰め、ディフェンスに向かう。
――ピッ!
木下は生嶋にカットされないよう飛びながら中へとボールを入れた。
『来た!!!』
ボールを紫原に渡る。
「いか…せない…!」
室井は腰を落とし、渾身の力を込めて紫原の押し込みに備える。
「いい加減、お前にも飽きてきたわ」
――ダムッ!!!
高速のフロントターンで室井の横を抜けていく。
――バキャァァァァッ!!!
そのままワンハンドダンクを叩き込んだ。
「…くそっ!」
止める事はおろか相手にもならない自分自身に憤る室井。
「1本! 取り返しましょう!」
ボールを運ぶ竜崎が声を張り上げ、ゲームメイクを始める。
――ピッ!!!
フロントコートに辿り着くと、ハイポストに立つ天野にパスを出した。同時にパスを出した天野の下へ走り、直接ボールを受け取りに向かう。
「止める!」
ボールを受け取るであろう竜崎のカットインに備える渡辺。竜崎は天野の持つボールを受け……とらず、そのままUターンするように反転する。天野は持っていたボールをアウトサイドの生嶋に渡し、生嶋はスリーポイントラインの外側までUターンした竜崎にパスを出した。
「(空いた!)」
意表を突いたUターンにより、僅かにノーマークとなった竜崎はボールを受け取るのと同時にシュート態勢に入り、スリーを放った。
「なに!?」
迷う事なくスリーを放った竜崎を見て永野が驚く。
――ザシュッ!!!
ボールはリングを潜り抜けた。
「(外れたらリバウンドは取れない。ターンオーバーになれば失点は免れないこの状況でこいつ…!)」
決め損なえば点差は開き、逆転への道は遠退く。勝利を目指すなら少しでも点差を縮める為に慎重に時間をかけて攻めるべきこの状況で竜崎の迷いのないスリー。
「帝光中の時は今よりプレッシャーがかかった状況で試合してたんだ。この程度のピンチでビビったりはしない!」
負ければ卒業後の進路が閉ざされる。そんな環境で試合をしてきた経験のある竜崎にとって、今の状況は物怖じする状況ではなかった。
「ええぞ竜崎!」
「うす!」
駆け寄った天野と竜崎はハイタッチを交わした。
陽泉オフェンス。永野がボールを運ぶ。
「(何処で攻めるか…)」
ボールをキープしながら攻め手を考える。
「(…紫原ばかりにオフェンスが偏るのは良くねえな。ウチには強力なスコアラーはもう1人いる)――アンリ!」
右寄りのスリーポイントラインの外側に立つアンリにパスを出す。
「ドンドン行クヨ!」
――ダムッ!!!
宣言と共にアンリが一気に加速。ドライブで仕掛ける。
「…っ!」
目の前で立つ大地。今度は遅れずにアンリに付いていく。
――キュキュッ!!!
アンリ、急停止する。ドライブの勢いを止め、そのまま後方に飛びながらシュート態勢に入る。
「…くっ!」
慌てて大地を距離を詰め、ブロックに向かう。
だが、ブロックは間に合わず、ボールはリングに向かう。
――ガン!!!
「ウッ!」
しかし、ボールはリングに嫌われてしまう。
「…ちっ」
ボールは紫原の高さと腕の長さをもってしても届かない場所に跳ね、紫原の口から舌打ちが飛び出る。
「もうけ。まだツキには見放されておらんようやのう」
リバウンドボールを抑えた天野は失点を防げた事とボールを保持出来た為、ほくそ笑む。
「もう1本、取りますよ!」
天野からパスを受けた竜崎が声を出してチームを鼓舞しながらボールを運ぶ。
「…っ!」
フロントコートまでボールを運ぶと、竜崎に対して永野が激しいプレッシャーをかけてきた。
「ちぃ! あくまでも外を防ぐつもりかい!」
思わず天野がぼやく。
ここに来て陽泉がこれまで以上に前へプレッシャーをかけてきた。先程の2本のスリーを警戒しての対応だ。
「5番(生嶋)以外のスリーが何度も決まるとは思わねえが、徹底的に潰させてもらうぜ」
したり顔で宣言する永野。
万が一中へ抜かれても中には紫原がいる。紫原への絶対的の信頼あっての選択である。
「くそっ!」
何とか永野のプレッシャーを掻い潜りながら生嶋にパスを出す。
――バチィン!!!
そのボールはパスコースに割り込んだアンリの伸ばした手に当たる。
『アウトオブバウンズ、緑(花月)ボール!』
ボールはサイドラインを割った。
「惜シイ!」
ボールはカットしたものの、ラインを割ってしまった為、悔しがるアンリ。
「(プレッシャーがきつくなってきた。俺はそこまで外は得意じゃない。今のままだと…)」
「(何とかスリー2本決めた。やが、陽泉相手にいつまでも外一辺倒やと限界が来る。もっと攻撃の幅を広げる為にも中から点が取れなジリ貧や…!)」
中から点を取りたい。だが、紫原がいるツーポイントエリアから得点出来たのは空と空を起点からのパスからのみ。だが、その空はコートにいない。
「…っ」
唯一、花月内で中から点を奪える可能性のある大地は未だ乱調から立ち直っていない。
「もう諦めたら?」
その時、紫原がそんな言葉をかけた。
「さっきから悪足掻きしてるけどさー、いい加減無駄なの理解してるでしょ?」
「何やと」
紫原の言葉を聞いた天野が険しい表情で振り返る。
「諦めないならそっちの口だけの身の程知らずのように捻り潰すから。どうなっても知らないからねー」
淡々とした口調で言い放ち、踵を返す紫原。
「っ! お前!」
口だけの身の程知らず。それは空の事を指している。故意ではないにしろ、怪我をさせた張本人である紫原の言葉に天野は声を荒げる。
「口だけ身の程知らず。…それは空の事ですか?」
その時、天野とは違う方向から声が届いた。
「そうだけど? デカい口叩いといてちょっと本気出しただけでいなくなったんだからホントの事――っ!?」
声が聞こえた方向に振り返る紫原。だが、振り返った紫原はある異変を感じ取って途中で言葉を止めた。
「っ!?」
近くにいた天野も異変を感じ取っていた。
紫原に声をかけたのは大地。だが、特徴的だったのはその表情だ。大地の表情は怒りや憎しみでもなければ悲しみの表情でもない、無表情。言わば能面のようであった。
「分かりました。それ以上は結構です」
言葉の途中ではあったが、紫原の真意を理解した大地は踵を返してその場を後にした。
「…な、なぁ」
大地の異変に未だ戸惑いを抱いている天野が恐る恐る大地に話しかける。
「ボールを下さい」
「?」
「外の警戒が強くなって来ました。中から点が取れなければ陽泉ディフェンスは崩せません。ですので――」
大地は天野に振り返り…。
「私が中から点を取ります」
変わらず無表情のまま、大地は静かにそう告げたのだった…。
※ ※ ※
空のアクシデントによる退場によって窮地に陥った花月。
外から積極的に決めて何とか食らいつくも限界が来て手詰まりとなった。
そこに紫原の言葉と、それを聞いた大地に異変。
試合は、更なる局面へと突入する……。
続く
ここ2週間は、体調を崩す→休日寝込んで療養→だいぶ持ち直して仕事→ぶり返す。という感じでなかなか執筆の時間が取れず、さらに年末の忙しさもあって間隔が空きました。正直、年内までにこの試合だけでも終わらせたいけど、無理かもなぁorz
感想、アドバイスお待ちしております。
それではまた!