黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

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投稿します!

試合後の選手達の話です。

それではどうぞ!



第111Q~ライバル達と監督~

 

 

 

試合終了。

 

 

花月 100

陽泉  99

 

 

大地がミドルシュートをブザービーターで決め、逆転。長い激闘は花月が制した。

 

「いよっしゃぁぁぁっ!!!」

 

天野が両手を天に突き上げ、大声で喜びを露にする。

 

「うおぉぉぉぉぉっ!!!」

 

拳を握り、喜びを表現するかのように咆哮する松永。

 

「ハハハッ、勝った…!」

 

笑みを浮かべながら勝利の喜びを噛みしめる生嶋。

 

「きゃあー! 勝ったよ姫ちゃん!」

 

「…うん! 良かった…!」

 

姫川を抱きしめながら喜ぶ相川と涙を流しながら笑顔を浮かべる姫川。

 

「勝った! 勝ったんだよ俺達!」

 

「ああ!」

 

ベンチの竜崎が室井の肩に腕を回しながら喜び、返事をしながら笑顔で室井も喜びを露にした。

 

「っしゃぁぁぁぁぁっ!!! 勝ったぁぁぁぁっ!!!」

 

「菅野先輩、痛いです…!」

 

大声で叫びながら帆足の頭を腕で締め上げる菅野と菅野の腕をタップしながらも笑顔で喜ぶ帆足。

 

「…」

 

「…くそっ!」

 

悲痛の表情で両目を閉じながら天を仰ぐ永野と負けた悔しさをコートを蹴ってぶつける木下。

 

「あぁ…! あぁ…!」

 

「ウワァァァァッ!!!」

 

溢れる涙を腕で拭いながら涙を流す渡辺とコートに膝を付きながら号泣するアンリ。

 

「……勝った」

 

決勝点を決めた大地。未だ勝利した実感が湧かないのか茫然としている。

 

「……っ! 空!」

 

ここで空の事を思い出した大地は空が倒れた陽泉ベンチに視線を向ける。するとそこには既に上杉の姿があった。

 

「神城!」

 

普段は凛とした表情の上杉が珍しく声を荒げ、空の下に駆け付けた。

 

「上杉さん。気を失っているだけです。脳震盪を起こした身体で無理をした事が原因でしょう。早く医者の下へ運ぶべきです」

 

「そうか。…担架を!」

 

上杉が呼ぶと、担架を持ったスタッフが2名駆け付け、慎重に空を担架に乗せ、搬送を始めた。

 

『凄かったぞ!』

 

『ナイスガッツだ!』

 

『早くまたお前のプレーを見せてくれよ!』

 

運ばれる空に対し、観客は惜しみない拍手と声援を贈った。

 

「…ふぅ、やれやれ、神城空。忌々しい奴だ」

 

「ん?」

 

「気を失ったというのに満足そうな笑いながら拳を握って…。まるで勝つのが分かっていたみたいではないですか」

 

溜息を吐きながら自嘲気味に言う荒木。

 

「…そういう奴だ。あいつは」

 

空に視線を向けながら上杉は返した。

 

「…またあなたに届かなかった。私達の負けです」

 

「少しこちらに運が向いていたというだけだ」

 

「去年と今日の借りは冬に全て返します」

 

そう言って荒木は右手を差し出した。

 

「また試合出来る日が来る事を楽しみにしている」

 

その手を握り、2人は握手を交わした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「…」

 

自身のベンチへと戻る上杉の背中を見つめる荒木。

 

「神城空…、彼を見ていると上杉さん、あなたを思い出す。彼は現役時代のあなたそっくりだ。…良くも悪くも…」

 

上杉の背中に哀愁漂う表情で呟く荒木だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「100対99で花月高校の勝ち!」

 

『ありがとうございました!』

 

センターサークル内に集まった両校の選手達が礼をした。

 

「このまま勝ち続けろよ」

 

「当然。優勝したるわ」

 

永野と天野が握手を交わす。

 

「やっぱり、君は強いね」

 

「お前も強かった。また戦おう」

 

松永と渡辺が握手を交わす。

 

「悔しいが負けだ。だが、シューターとしては俺の方が上だからな」

 

「僕の方が上だよ。…とてもいい経験が出来ました。またお願いします」

 

生嶋と木下が握手を交わした。

 

「ウォォォォォン! 次ワ負ケナイカラナ!」

 

「こちらこそ、次も負けません」

 

大地とアンリが握手を交わした。

 

両校の選手同士が健闘を称え合い、握手を交わしていく。

 

「?」

 

その時、大地は紫原の姿がない事に気付いた。姿を探すと、紫原は最後の礼を交わしたの同時にベンチに戻っていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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ベンチへ音を鳴らしながら紫原が腰掛けた。

 

「…っ」

 

タオルを頭から被った紫原。膝の上で両拳をきつく握り締めているが、その拳はブルブルと震えていた。

 

「……紫原」

 

そんな紫原に荒木が声を掛ける。

 

「……最後までもった。最後まで戦えた。…何でだよ!? …何で…!」

 

負けた事が納得出来ない紫原。堪えるものを抑えながら叫ぶ。

 

「……花月の方が強かった。それだけだ」

 

そんな紫原に淡々と告げる荒木。

 

「…っ!」

 

その言葉に納得出来なかった紫原は荒木を睨み付ける。

 

「負けたお前のせいではない。負けたのは全て私の責任だ」

 

「っ!?」

 

「良く頑張った。次は勝とう」

 

睨み付ける紫原を優しく諭すように荒木は声を掛けた。

 

「…っ、ちくしょう…、ちくしょう…!」

 

悔しさを噛みしめながら紫原は涙を流したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「…まさか、勝っちまうとはな」

 

観客席の一角、誠凛の朝日奈が驚きの表情で呟く。

 

「…よし! スゲーよあいつら!」

 

空と大地の元チームメイトである田仲は自分の事のように喜んでいた。

 

「…花月とはつい最近合宿で共に過ごした仲だが、相手が陽泉じゃ勝ち目はないと思ってた。正直、どこまでやれるか、その程度の期待だった。…まさか、勝っちまうとはな」

 

あの陽泉を倒してしまった事に驚きを隠せず、思わず苦笑する火神。

 

「ようするに、ラッキーな方が勝ち上がったって事だろ? これで俺達の優勝がぐっと近付いたぜ」

 

鼻で笑いながら池永が言った。

 

「っ! お前…!」

 

「試合終わったし、トイレ行ってくるわ」

 

水を差すような言葉に田仲が口を挟もうとするも、池永はその場を後にしていった。

 

「ほっとけ」

 

「火神さん?」

 

釈然としない田仲の肩に火神が手を置きながら制止した。

 

「本気で言ってたなら説教の1つでもくれてやるつもりだが、そうでもないみたいだしな」

 

「えっ?」

 

「彼の目は驕りでも油断でもなく、真剣そのものでした。多分、池永君も花月の勝利を望んでいたのでしょう」

 

黒子が火神の言葉に補足するように池永のフォローを入れた。

 

「お前もあいつと同じ気持ちなんだろ? 新海」

 

「……俺は相手が誰であれ、自分の出来る事を全力で尽くすだけです」

 

突如、火神に振られたが、淡々と返す新海。その目は池永と同じく真剣そのもので、心なしか、笑みが浮かんでいた。

 

「さあみんな! 今日は私達も試合があるのよ。そろそろ準備を始めるわよ!」

 

『はい!!!』

 

リコの号令を出すと、誠凛の選手達は席から立ち上がり、試合の準備に向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「…陽泉が負けたか」

 

同じく観客席に座る洛山の選手達。まさかの結果に言葉を失っていた。

 

「…試合は終わった。これから試合前の最終ミーティングだ。皆、行くぞ」

 

赤司が静かに告げると、洛山の選手達は一斉に立ち上がり、移動を始めた。

 

「赤司も参加するのか? 監督が今日の試合、赤司の出場予定はないから他に気になる試合があるならこのまま残っていても良いって…」

 

「その予定だったが、今日の試合、俺も試合の頭から出してもらうよう監督に志願するつもりだ」

 

気を遣った四条が赤司に提案するが、赤司は首を横に振った。

 

「どういう風の吹き回しだ?」

 

「やはりインターハイの緒戦だけに、何が起こるか分からないからね。調子と会場の感触を確かめる意味も含めて試合に出た方がいいと判断したまでだよ」

 

意図を尋ねる四条に赤司は淡々と答えた。

 

「(…今言った事は嘘じゃないんだろうが、本当の所、今の試合にあてられたってのが理由か)」

 

先の試合の結果を受けて、感化されたのが大本の理由だろうと推理した四条。その根拠は、赤司の目に熱いものをみたからであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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場所は変わって控室。海常の選手達が試合に向けて準備をしていた。試合を偵察していた者からの報告を受けて、選手達を言葉を驚きを隠せなかった。

 

「まさか花月があの陽泉を…」

 

結果を聞いても信じる事が出来ない末広。

 

「俺としては嬉しい限りだけどな。全中の借りを返したいからな」

 

小牧は花月の勝利を素直に喜んでいた。

 

「いやー驚いたッスよ。紫原っちに勝っちゃうんスから」

 

陽泉が圧倒的優勢と見ていた黄瀬はこの結果に驚いていた。

 

「あの2人は昔から信じられん奇跡を起こす奴らじゃ。ワシはやってくれると思っとった!」

 

豪快に笑いながら勝利を喜ぶ三枝。

 

「紫原っちに去年の借りを返したかったッスけど、仕方ないッスね」

 

同じキセキの世代を冠し、昨年の冬に敗れた陽泉と試合を熱望していた黄瀬は少し残念そうに笑った。

 

「(あの紫原っちのいる陽泉に勝った今、花月は俺達と同等…いや、それ以上ッスね。お互い勝ち上がってぶつかったなら、その時は全てを出し切る事になりそうッスね)」

 

ここで黄瀬は自身の座るベンチの横に置いてあるインターハイのトーナメント表に視線を移す。

 

「(ぶつかるのは準々決勝。…けどその1つ前。そこでもう1人借りを返さなきゃならない人がいるッス)」

 

トーナメント表の一角を見ていた黄瀬は胸の内に闘志を燃やしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「いやーまさかあの陽泉に花月が勝っちまうとはなー」

 

試合の準備を進めていた秀徳選手達。偵察班からの報せを聞いて選手達は驚いていた。

 

「去年とメンバー入れ替えがないとはいえ、今年の陽泉はもしかすればここ数年で最強かもしれないのに…」

 

同じく準備をしていた木村も思わず手が止まっていた。

 

『…』

 

他の選手達も一同に言葉を失っていた。

 

「…仮にも俺達に勝ったチームだ。簡単に負けられては困るのだよ」

 

静まり返る控室。その時、淡々と爪の手入れをしていた緑間が静寂を打ち破るように言葉を発した。

 

「狼狽える必要はない。何処が勝とうと関係ない。俺達は今日まで人事を尽くしてきた。故に、俺達は負けん」

 

最後の爪の手入れが終わった緑間は爪とぎを置き立ち上がった。

 

「例え奴等がこの先勝ち上がれたとしても、戦うのは当分先だ。それよりも、今は目の前の相手に集中する時だ。余計な事に気を回すな」

 

未だ動揺しているチームメイトに檄を飛ばした。

 

「ま、真ちゃんの言う通りだな。次の試合も勝って俺達も続こうぜ」

 

軽い口調で高尾が続いた。

 

「(…昨年の敗北は、自分の未熟さと共に新たな可能性を見つける事が出来た。その礼は雪辱を果たすと共に返す。その為にも俺は負けん。花月、お前達も必ず勝ち上がって来い!)」

 

真剣な目付きで緑間は心中で思ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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・・・・

 

 

「…目の前で見てたのにホント信じられねえわ」

 

観客席に座る福山が茫然とコートを見つめながら呟く。

 

「去年戦った時より遙かに強くなっていました。正直、ここまでとは…」

 

昨年の冬に勝利している桐皇。花月はその時とほとんど同じメンバー。だが、花月は新たな新戦力を得てさらに強くなっていた。その事を目の前で痛感した桜井。

 

「…勝ち上がったらもう1度アレとやらんかもしれんと考えると憂鬱やわ。あいつらの相手めっちゃしんどいねん」

 

思わず昨年の激闘を思い出してげんなりする今吉。

 

「…でもまあ、まだやるとしても先の話だ。今は目の前の試合に集中しねえとな! よしお前ら! そろそろ準備を始めるぞ!」

 

『はい!!!』

 

主将の福山の言葉に選手達が応えた。

 

「……ところで、青峰の奴は何処に行った」

 

「青峰さんなら試合が終わってすぐに何処かに……すいません!」

 

青峰がいない事に気付いた福山の表情が険しくなる。謝りながら桜井が説明した。

 

「…相変わらず集団行動が出来ねえ奴だ。まあいい、放っておいて行くぞ」

 

「ええのですか?」

 

「あいつの性格はいい加減理解してるよ。まだ時間はあるし、試合前にはちゃんと来るだろうからそれまで放っとけ」

 

「キャプテンがそう言うんやったらそうしますわ」

 

諦め顔の福山。今吉は特にものを言う事無く従ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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・・・・

 

 

「…」

 

観客席の通路を1人歩く青峰。その表情は不敵な笑みを浮かべていた。

 

「(…まさか、あの紫原に勝っちまうとはな)」

 

青峰の当初の予想では陽泉勝利で花月はある程度食らいついていくの精一杯だろうと言う程度だった。しかし、花月はその予想を裏切った。

 

「(想定外だったのはあの綾瀬がゾーンに入った事だ。正直、あいつには無理だと思ってた)」

 

才能はあってもバスケへの熱が薄かった大地。ゾーンの扉を開ける条件を満たせてなかった為、開けなかった。しかし、空の負傷退場を目の当たりにして熱を取り戻し、結果、扉を開いた。

 

「(…ハハッ! 次はもっと楽しめるってわけだ。最高じゃねえか!)」

 

今から再戦を待ち遠しく感じる青峰。

 

「(…ま、それは後だ。その前に黄瀬を倒さねえとな)」

 

思い出すのは花月の前に待ち受ける強敵の対戦。3回戦でぶつかるであろう自身と同じキセキの世代、黄瀬涼太と彼が海常高校。ここに勝たなくては花月との再戦は実現しない。

 

「(海常には黄瀬の他に気になる奴が1人。そいつも俺と何処までやれるか――)…あん?」

 

その時、青峰の視線に1人の男が映る。

 

「…」

 

手すりにもたれかかりながらコートに視線を送る1人の青年。

 

「試合に出てねえからどうしたもんかと思ったけど、あいつも結構やるじゃん」

 

ニヤニヤと笑みを浮かべながら独り言を呟く青年。

 

「大ちゃん!」

 

そこへ、青峰を呼ぶ声が聞こえてきた。

 

「もう! いつも勝手にいなくならないでって言ってるでしょ!」

 

不機嫌な表情でやってきた桃井が諫めるように青峰に言う。

 

「るせーな。試合までに戻るってるんだから別に構わねえだろ」

 

そんな桃井に対してげんなりしながら青峰は返した。

 

「ところでよ、あいつ何処の誰か分かるか?」

 

先程いた青年を指差しながら尋ねる青峰。

 

「? どの人?」

 

「あいつだよ。そこに……ちっ」

 

青年がいた方へ視線を向けるとそこには青年の姿がなく、舌打ちをする。

 

「いや、もういいわ」

 

興味をなくした青峰はその場を歩き出した。

 

「ちょっと大ちゃん! もうすぐ試合が始まるんだよ!?」

 

「分かってるよ。だから準備に行くんじゃねえか。デケー声出すな」

 

耳を小指ほじりながら青峰は桐皇の控室に向かった。

 

「(…かなりやる感じがしたんだがな、まあいい、期待どおりなら嫌でも名が挙がるだろうし、そうでなければその程度って事だ)」

 

青峰は試合の準備に向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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・・・・

 

 

「脳震盪を起こした身体で無理をし過ぎたのが原因です。明日は絶対安静にさせて下さい。自覚症状と検査に異常がなければ早ければ明後日の試合には出場出来ると思いますので」

 

「ありがとうございます。それではよろしくお願いします」

 

医者の診断を受けた上杉は頭を下げ、医務室を後にした。

 

「…ふぅ」

 

医務室を出た上杉は軽く溜息を吐いた。

 

空の診断結果は明日1日は絶対安静。経過次第では明後日以降ならば試合出場可能という診断だった。特に大きな異常は確認出来ず、比較的軽い症状と言える診断であり、上杉は軽く安堵した。

 

「よう」

 

そこへ、1人の男がやってきて上杉に声を掛けた。

 

「…トラか」

 

やってきたのは上杉の旧知の仲であり、現誠凛の臨時の監督である相田景虎であった。

 

「まずは試合の勝利、おめでとうと言わせてもらうぜ」

 

先程の試合の勝利を労う景虎。

 

「それはわざわざすまないな。……それだけではないんだろう? お前がそんな事を言う為にわざわざここまで来るとは思えないからな」

 

「ご名答。本題はこっちだ。……ゴウ、今日の試合、何故神城を試合に出した」

 

「…」

 

普段の不敵な笑みから一変、真剣な表情で景虎は上杉に尋ねた。

 

「観客席から見てても一目瞭然だった。どう考えても神城は試合に出していい状態ではなかった。傍で見ていたお前にそれが分からねえはずはねえ。…何故だ?」

 

「勝つ為だ」

 

景虎の問いに対し、上杉は短くそう答えた。

 

「…確かに、監督の仕事は試合に勝たせる事だ。…だがな、それ以上に選手を守るのが監督の仕事であり努めだろうが。お前、選手を壊す気か?」

 

上杉の傍まで歩み寄った景虎は語気を荒げながら尋ねた。

 

「選手は時として冷静な判断が出来ない。ましてや高校生ならなおの事だ。そんな時に判断を下すのが監督の仕事だろ! 例え負ける事になっても――」

 

「捨てろと言うのか? 選手達が試合を諦めてない中、監督が最初に試合を捨てろと言うのか?」

 

「…っ!」

 

はっきりとした口調と真剣な眼差しで言い放つ上杉。

 

「お前が1番理解してるだろ!?」

 

遂に怒りが爆発した景虎が上杉に胸倉を掴み上げた。

 

「下手をすれば2度とバスケが出来なくなったかもしれねえ! もしここでそうなってたなら、神城は絶対後悔する。それをお前自身が理解してやれなくてどうすんだよ!」

 

「…」

 

景虎の激しい怒りを上杉は無言で受け止める。ハッとした景虎は手を放した。

 

「…悪い、今のは言い過ぎた。だがな、選手を最後に守れるのはお前なんだ。かつて、俺達の中でもっとも才能があり、NBA入りまで決まっていたのに、あの日、無理を推して試合に出たばっかりに勝利と引き換えにお前は現役を引退せざるを得なかった」

 

「…」

 

「プレイスタイルは違うが、神城はお前の現役時代にそっくりだ、どんな障害も強大な敵も、勝つ為なら例えその場で燃え尽きる事になっても戦い抜くあの姿はお前に瓜二つだ。…だがな、今のお前は選手じゃねえ、監督なんだ。そして神城はお前じゃねえ。それを忘れるな」

 

「…」

 

「言いたい事はそれだけだ」

 

そう告げて、景虎は踵を返してその場を歩き出した。

 

「…トラ」

 

上杉が呼び止めると、景虎は足を止めた。

 

「お前の言葉は肝に銘じる。助言感謝する」

 

「…」

 

「…後、俺は後悔していない。あの時俺は全てを出し切った。例え時間が戻っても俺は同じ事をするだろう」

 

「…そうか」

 

寂しそうな表情で返すと、景虎はその場を後にしていった。

 

「…まだインターハイは始まったばかりだ。ここからが正念場だ」

 

気合いを入れなおした上杉は選手達の待つ控室へと向かって行った。

 

 

――花月、緒戦突破…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





長い長い試合が終わり、次の試合に進むのですが、基本、花月以外の試合はほぼダイジェスト風に進むと思います。上手く書けないのと書いたらとんでもない話数になると思うので…(;^ω^)

次話は続く2回戦の話になると思います。…さて、ネタを集めねば…(>_<)

感想アドバイスお待ちしております。

それではまた!
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