黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

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投稿します!

毎度恒例の試合前のアレです…(^-^)

それではどうぞ!



第119Q~準々決勝前夜~

 

 

 

インターハイ4日目、3回戦を終え、花月高校の選手達及び監督とマネージャーが旅館へと帰ってきた。

 

「ハグハグ……おー、お疲れさん」

 

バスから降り、旅館の入口へと向かうと、入り口横に備え付けてある木製の和風の長椅子でかき氷を食べていた空が出迎えた。

 

『…』

 

その姿を見て言葉を失う。

 

「このドアホが…。人が激闘繰り広げとる時になに呑気にカキ氷食っとんねん!」

 

思わず天野が突っ込みを入れる。

 

「まあまあ、これでもさっきまで寝てたんスよ? 時計見たらそろそろ帰ってくる時間だったから腹ごなしを兼ねて出迎えに…」

 

「…くー、いくら良くなったからって昨日倒れて運ばれたんだから大人しく寝てようよ」

 

呆れながら生嶋が空に言う。

 

「生嶋さんの言う通りですよ。それ食べ終わったら部屋に戻って下さいね」

 

「分かった分かった。……っと、そういや大地、ついさっき、『あいつ』が尋ねてきたぜ」

 

「あいつ?」

 

「ほら、あのバカ」

 

「……あー、彼ですか」

 

誰の事か見当の付いた大地。

 

「そーそー、たまたまインターハイの試合を見に来てたらしくてな。ついでに俺の様子見に来た」

 

「そういえば彼とは久しく会っていませんでしたね。……まさかとは思いますが」

 

「心配いらねーよ。勝負挑まれたけど断った。あまりにもせがんで来たから拳骨で黙らせたけど」

 

「それなら良いのですが…」

 

『?』

 

空と大地が何やら2人だけにしか分からない会話しており、他の者達は頭に『?』を浮かべていた。

 

「いた! こんな所で何やってるの!?」

 

旅館の中から空の姿を探していたと思われる姫川が空を見つけ、肩をいきり立たせながら近づいてきた。

 

「今日は1日安静にしろって言われてたでしょ! 早く部屋に戻りなさい!」

 

「イタタ! 分かった、分かったって! 戻るから!」

 

耳を引っ張られた空は涙目になりながら姫川に訴えた。姫川に引っ張られて歩き出した空だったが、立ち止まると皆の方へ振り返り…。

 

「そうだそうだ。肝心な事を聞き忘れた。試合には勝ったか?」

 

こう尋ねた。

 

すると天野は親指を立て、生嶋はピースサインを出し、松永は拳を握り差し出した。その他の者も各々笑顔でポーズを取った。

 

「明日は準々決勝ですよ」

 

大地も笑顔で拳を空に向けた。

 

「…ハハッ! 当然の結果――痛い痛い痛い!!!」

 

「早く部屋に戻るわよ!」

 

「分かった! 分かったから! 自分の足で歩けるからこれ以上引っ張らないで!」

 

耳を引っ張られながら連れていかれた空なのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

それぞれがあてがわれた部屋に戻り、着替えを済ませ、旅館自慢の温泉で汗と疲れを落とし、その後夕食を済ませると、旅館の一室、プレーヤー機器が備え付けてある部屋に選手達が集まった。

 

「これより明日の対戦相手である、海常高校のスカウティングを始める」

 

『はい!!!』

 

部屋の前に立った上杉が告げると、均等に並んだ椅子に腰掛けた選手達が大声で返事をした。

 

「だがその前に…、神城、お前が何故ここにいる」

 

座席の先頭で座っていた空に上杉がジト目で尋ねた。

 

「良いじゃないです。別に激しい運動する訳でもないし。そもそも俺だって明日は試合に出るんですから参加させて下さいよー」

 

抗議するかのように唇を尖らせながら懇願する空。

 

「明日の試合にお前を出すとは決まっていないぞ」

 

「そりゃないですよ!? 今日だって我慢したんですから明日の試合は絶対出ますからね!」

 

「騒ぐな。試合に出すかどうかは医者の許可が出たらだ。……まあいい。終わったら部屋で大人しくしてろよ? …コホン! では改めて、始めるぞ。…頼む」

 

「はい」

 

咳ばらいをしながら促すと、姫川がデッキを操作して1枚のDVDをセットした。

 

『おぉぉぉぉぉーーーーっ!!!』

 

そこに映し出されたのは先程行われた海常対桐皇の試合映像だった。

 

「海常とは初対戦となる。各選手の特徴をしっかり頭に入れろ」

 

『…』

 

花月の選手達は試合映像に注目する。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

8番の背番号を付けた選手が目の前の相手である今吉を抜き去った。

 

「8番、小牧拓馬。ポジションは1番(PG)。生嶋君と同じ城ヶ崎中学出身。スピードとキレのあるドライブ技術とアウトサイドシュートが武器の選手です」

 

姫川が自身のデータが記載されたノートを片手にプロフィールを述べていく。

 

「…っ、速いですね。映像からでも分かります。この人、陽泉の永野さんより速いですよ」

 

映像でドライブを見た竜崎が正直な感想を言う。

 

「桐皇と戦った事のあるお前らなら分かると思うが、桐皇はオフェンス重視のチームであるが、マネージャーの桃井のデータによる先読みがある。今吉はそのデータがあっても尚抜かれた。それだけこの選手のドライブ技術は高いという事だ」

 

補足で上杉が続く。

 

「マッキーはミニバスからの付き合いだけど、1年生の時から試合出てたから実力は折り紙付きだよ」

 

かつてのチームメイトである生嶋が小牧の事を語った。

 

「城ヶ崎言うたら中学じゃ全国区の名門や。そこで1年から試合に出てた言うんやからそらやるわな」

 

天野がボソリと言った。

 

「外もあるから迂闊に距離は空けられん。明日の試合この選手をマークするのは…」

 

「俺ですね。当然、明日は完封してやりますよ」

 

不敵な笑みを浮かべる空。

 

「竜崎、お前も相手をする事があるかもしれん。イメージを固めておけ」

 

「はい!」

 

「いや、明日は俺が試合に出ますって」

 

返事をする竜崎に空が文句を言うように突っ込みを入れた。

 

 

――バス!!!

 

 

10番の選手が背中にいるディフェンスを避けるようにフックシュートを決めた。

 

「10番、末広一也。ポジションは4番(PF)。派手なプレーではなく、堅実なプレーでチームに貢献する技巧派の選手です」

 

「…ええ選手や。周りが派手な奴ばかりやからあまり目立たんが、脇役に徹して立派にチームに貢献しとる。こういう選手がおるとチームが引き立つんや」

 

映像を見た天野が末広を称賛する。

 

「だが、決して地味なだけの選手ではない。身体能力も高い。自ら仕掛けて戦局を打開するだけの力も持っている。脇役だけでなく、時に主役にもなれる選手だ」

 

「…確か、彼は中学時代はセンターをやってましたよね?」

 

「うん。3年の時はね。2年の時まではパワーフォワードだったから問題なくこのポジションをこなせるはずだよ」

 

大地の質問に生嶋が答えた。

 

「こいつの相手は天野に任せる」

 

「了解や。年季の違いを見せたるわ!」

 

拳をパチンと鳴らしながら天野が不敵な笑みを浮かべながら返事をした。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

左45度のアウトサイドから5番の選手がスリーを決めた。

 

「5番、氏原晴喜。ポジションは2番(SG)。アウトサイドシュートを得意とする選手です」

 

「ツーハンドシューターか。珍しいのう」

 

氏原は一般的なワンハンドではなく、両手でボールをリリースしていた。

 

「…ツーハンドの選手は今まで相手した事がないからタイミング取るのに苦労しそうだ」

 

映像を見た生嶋が神妙な表情で感想を述べた。

 

「女子バスケでは当たり前に見られるツーハンドのリリースだが、女子バスケのスリー成功率は馬鹿に出来ん。しかも、両手でリリースする分手の負担が両手に均等に分散されるから試合後半でも確率が落ちにくい」

 

上杉がツーハンドの利点を挙げていく。

 

「マークするのはイクや。止めてもらわんと困るで」

 

「任せて下さいよ。スリーでは僕は負けないよ」

 

薄っすらと笑みを浮かべながら生嶋は答えたのだった。

 

 

――バシィィィィッ!!!

 

 

12番の選手が桐皇の福山のダンクをブロックした。

 

「12番、三枝海。ポジションは5番(C)。高い身体能力に加え、抜群のテクニックも有する選手であり、3番(SF)から5番(C)までこなせる選手です」

 

「海兄か…」

 

映像の三枝を見て空がボソリと名前を呟く。

 

三枝はオフェンスでは持ち前の身体能力を駆使してゴール下から得点を量産。時にリングから離れた場所からも仕掛けていた。ディフェンスでは福山や同ポジションの國枝のローポストからの攻撃をことごとくはね返していた。

 

「…っ、これはかなりの選手だぜ。身体能力が尋常じゃねえ。こいつならあの紫原相手でも1人で対等にやり合えるじゃねえか?」

 

思わず菅野が冷や汗を掻きながら感想を言葉にした。

 

「さすがに身体能力なら紫原の方が上やろ。…やけどこいつ、身体の使い方が抜群に上手いわ。紫原もセンス任せにやっとった当初に比べてだいぶ無駄がなくなっとたけどまだ拙い部分もあった。けど、こいつの身体の使い方は俺から見て満点に近いで。たけさん級や」

 

天野が知る最高のインサイドプレーヤーである堀田を引き合いに出して三枝を評価する。

 

「純粋なセンスと身体能力なら紫原に勝てる者は少なくとも今の高校生にはいないだろう。圧倒的な質を誇る紫原に対してこの選手は質では紫原に譲っても紫原以上に手広くこなせる器用さとテクニックを持っている。この選手はある意味紫原を相手にするより手強い」

 

同じく上杉も三枝を高く評価した。

 

紫原よりもプレーの幅が広く、こなせるものが多い三枝。身体能力にしても紫原程ではないにしろ、並の選手を遙かに凌駕する。同じ止められないなら引き出しの多い三枝の方が厄介であると上杉は解説した。

 

「…マツ。こいつの相手はお前さんがする事になる予定やが、どうや?」

 

「…」

 

横に座る松永に尋ねる天野。尋ねられるも無言で映像を見つめる松永。

 

同じポジションである松永。選手のタイプも似通う部分もある選手同士でもある。

 

「マツには悪いがのう、正直、マツとのマッチアップは分が悪いで。試合は流れやシチュエーション次第で格上でもどうにかやり合える事もあるやろ。けどなぁ、相手が自分の上位互換やと力の差をひっくり返すのは難儀やで」

 

天野が懸念を示した。

 

特性が同じで自分より優れた選手。長所と短所が似通う者同士のマッチアップは結果が定まりやすい。

 

「俺が海常の監督ならここを狙う。突破口には違いないからな」

 

「…っ」

 

上杉も同様の見解を示し、松永は表情を曇らせた。

 

「だったら、思い切って室井をぶつけるってのはどうだ? あの紫原相手でも善戦したパワーを持ってんだ。もしかすれば――」

 

「残念ですけど、それはむしろ逆効果だと思いますよ」

 

菅野の提案を空が却下した。

 

「確かに室井なら海兄のパワーに充分対抗出来るでしょうけど、テクニックに差があり過ぎる。室井には悪いが、パワー勝負を避けられてテクニックでいなされるのが目に見えてます」

 

「私も空の意見に同感です。己の力に絶対の自信とプライドを持っていた紫原さんはムキになってある程度は室井さんの土俵で戦ってくれましたが、海さんは自身のプライドより試合の勝つ事を優先出来る方です。敗北の目が出来る勝負は仕掛けてこないかと」

 

空の意見に大地も賛同する意見を取った。

 

「せやったら無難にゾーンディフェンスで対策するのが1番なんちゃうん? 2-3ゾーンで前2人を空坊と綾瀬を置けばゾーンディフェンスの弱点もカバー出来るしのう」

 

次善策として天野が提案したのはゾーンディフェンスだ。人数をかけて中を全員でカバー出来る為、三枝対策はもちろん、中へのカットイン対策にもなる。前に空と大地を置けば2人のスピードと運動量で弱点である外からのスリーにも対処出来る。

 

「…これしかないか。それじゃあ、明日の試合はゾーンディフェンスで――」

 

「待て」

 

菅野が意見を纏めようとした時、上杉が待ったをかけた。

 

「松永。お前はどうしたい?」

 

下を向いて歯を食いしばっている松永に上杉がそう尋ねた。

 

「試合前に出来るのは予測までだ。バスケはデータや数値だけで勝敗を決められる程簡単ではない。ゾーンディフェンスは悪い言い方をすれば逃げの対策に過ぎない。お前がやれると言うなら俺はお前の意志を尊重する。どうする?」

 

「…」

 

そう尋ねられ、松永は僅かな間考えを巡らせ、そして…。

 

「やります。やらせてください」

 

顔を上げ、真剣な表情でそう答えた。

 

「…分かった。スタートはこれまでどおりマンツーマンで行く」

 

確固たる意志を松永から感じ取った上杉はそう結論付けた。

 

「うちのインサイドの要は松永だ。相手が海兄だろうと関係ねえ。やってやれ」

 

「フッ、言われるまでもない」

 

不敵な笑みで発破をかける空。松永は薄く笑みを浮かべながら答えた。

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

ここで、映像は4番の背番号を付けた選手が豪快にボールをリングに叩きつけた。

 

「4番。黄瀬涼太。ポジションは3番(SF)。今年の海常高校の主将であり、言わずと知れたキセキの世代の一角…」

 

「今更説明されるまでもないわ。言われでもよー理解しとるわ」

 

説明途中ではあったが、天野が姫川を遮るように口を挟んだ。

 

『…』

 

黄瀬のプレーを選手達は無言でも見つめている。…正確には言葉を発する事が出来ない。

 

「…何と言うか、やっぱりキセキの世代はいつ見ても言葉を失うね」

 

ようやく生嶋がそう感想を漏らした。

 

「キセキの世代の中でも黄瀬涼太は1番付け入る隙がない。何でも出来て何にでも対応出来る。…まさにオールラウンダー。ある種、バスケ選手の理想形だ」

 

続けて松永がそう解説をした。

 

「黄瀬の代名詞とも言えるコピー。これが厄介だ。目の前で見せた自分の得意技をそれ以上のスピード、パワー、キレで再現してくる。灰崎の強奪も大概だが、このコピーも厄介だ。得意技とはすなわちこれまでの練習で積み上げてきた自身の1番の武器だ。それを目の前で自分以上の動きで再現されればメンタルに負うダメージは大きい」

 

これまで自分が苦労して築き上げてきたものを即座に目の前でそれ以上のものを築き上げられ事の精神的なダメージは大きい。

 

「そして、黄瀬の何より厄介なのはこれだ」

 

 

――バス!!!

 

 

下から無造作に投げられたボールがバックボードに当たりながらリングを潜り抜けた。

 

「パーフェクトコピー…」

 

空がポツリと呟いた。

 

その後もシュート態勢に入った相手選手との距離を一瞬で詰め、ブロックしたり、センターラインよりかなり後ろから高弾道のシュートを放ち、リングに掠る事無く決めたり、切り返しで目の前の選手にアンクルブレイクを起こさせたりと黄瀬のプレーは続いた。

 

「キセキの世代のプレーを完璧に再現した黄瀬最大の模倣。…正確には完全に同じではないが、それでも本家と比べても遜色ない程の再現度だ」

 

『…』

 

「これがある限り、例え試合終盤で多少の点差を付けたとしても容易に点差をひっくり返される。海常を降すには、使われても尚逆転出来ない程に点差を付けるか、このパーフェクトコピーを攻略するか…」

 

2つの選択肢が出されたが、前者はほぼ不可能に近い。黄瀬と三枝と言うトップレベルの選手がいる上に他の選手も全国レベルの選手だからだ。今年の海常相手に点差を付ける等不可能に近い。ならば、黄瀬のパーフェクトコピーを攻略するしかない。

 

「…大地。責任重大だぜ」

 

明日の試合、黄瀬のマークを担う事になる大地に空が声を掛けた。

 

「率直に言えば、黄瀬さんは今日の相手である灰崎さんより上の相手です。正直、その灰崎さんでもまともに相手するのに時間も苦労もありましたから、明日はさらに苦労させられますね」

 

これまで黄瀬のプレーを無言で見つめていた大地が口を開いた。

 

「ですが、止めて見せます。黄瀬さんを…、それこそ、パーフェクトコピーも…」

 

意志のこもった目で大地がそう答えた。

 

「うむ。黄瀬の相手を出来るのは綾瀬、お前だけだ。任せるぞ」

 

「はい。任せて下さい」

 

上杉の言葉に大地はそう返事をした。

 

「ま、俺だってやれるけど、今回は大地に譲るぜ」

 

負けじと空がそう口を挟んだ。

 

「…よし、各選手の分析が終わった所で、ここからは細かな戦術の説明を始める」

 

静かに上杉が選手達にそう告げたのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

時を同じくして、海常高校の選手達も明日の試合の対策会議をしていた。

 

「これが明日の相手である花月高校だ」

 

試合映像を流し終えると、武内は映像を止めた。

 

「…っ、あの灰崎がいる鳳舞相手に危なげなく完勝か」

 

今日行われた花月対鳳舞の試合を見た氏原。2年前、灰崎を擁する福田総合との試合を知る氏原は結果を見て思わず顔が引き攣る。

 

その試合も黄瀬の負傷と言うアクシデントもあったが、結果はギリギリと言えるものだった。今年の鳳舞はその福田総合と総合力では同等かそれ以上の戦力であり、そんな鳳舞を相手に完勝した花月に驚きを隠せなかった。

 

「去年と主力の入れ替わりがないのが大きな強みですね。それぞれがレベルアップをしていた、さらに戦術の幅が増えてます」

 

インターハイ出場校の中で唯一昨年の戦力の入れ替わりがない花月。それがアドバンテージとなると末広が分析する。

 

「問題はこの綾瀬だ。正直、去年とはまるで別人だ。ガンガン切り込んで仕掛けるスラッシャータイプかと思ったが、これを見る限り、生粋のシューターと呼んでも差し支えない選手だ」

 

昨年のインターハイ、ウィンターカップではスピードを生かしたドライブが持ち味だった大地だったが、今日の試合はスリーを打つ回数も多い上、成功率もかなり高い。それも、灰崎がマッチアップの相手であるのにも関わらずだ。

 

「うーむ。ワシからすると珍しい光景ではないんだがのう。昔はそれこそ外を主体にしておったから、この姿の方がしっくりするのう」

 

顎に摩りながら三枝が言う。かつて、共にバスケをした事がある大地を知る三枝にとって違和感のない姿であったのだ。

 

「他の選手のレベルも高い。ディフェンスとリバウンドのスペシャリストの天野に、外の生嶋と中の松永。あの上杉に育てられただけの事はある」

 

大地以外の選手も高く評価する武内。

 

「…そしてこれに神城が加わるかもしれない」

 

ポツリと小牧が呟いた。

 

今日の試合に空は出場していない。チームの主将であり、精神的支柱である空を欠いてこの結果なのだ。

 

「…うむ。神城が加われば試合のテンポが上がり、攻守共に戦力が倍増する。あの陽泉から100点奪う程なのだからな」

 

全国屈指のディフェンス力を誇る陽泉から100点も奪った花月。陽泉がここまで失点を喫したのは過去を振り返っても記憶にない事である。

 

「明日の試合には出てくんのかな…」

 

「間違いなく出てくるのう。例え止められようとあいつはそれこそ死ぬ事になってもあいつは出てくる。そういう男じゃ」

 

誰かが漏らした疑問に三枝が断言する。

 

「小牧。もし試合に出てきたら相手をするのはお前だ。任せたぞ」

 

「任せて下さい! 俺はあいつに勝つ為に今日まで練習してきたんです。絶対に勝ちます」

 

中学時代に煮え湯を飲まされた星南中。そして空。小牧の闘志は誰よりも燃えてきた。

 

「明日の相手は強敵だ。各自、分かっているとは思うが、油断等言語道断だ。死に物狂いで試合に臨め」

 

『はい!!!』

 

武内の言葉に選手達は大声で応えた。

 

「…」

 

再び流れた映像を無言で見つめている黄瀬。映像では大地が灰崎はかわして得点を決めた。

 

明日の試合、自身がマッチアップする事になるであろう大地。過去にも黄瀬は花月の試合をその目で見た事はあるし、昨年は共に数日間合宿で過ごした事もあった。

 

「(正直、あの時はまだ中学生っぽさが残ってたッスけど…)」

 

このインターハイで大きく化け始めた大地。今日の試合で自分の力を完全に把握し、灰崎を圧倒した。

 

「(綾瀬大地。…そして神城空。この2人を擁する花月は強い。もしかしたら、今日まで勝ち残った何処の高校よりも…。けど、負けないッス。その為に俺は主将になったんスから)」

 

花月を強敵と認めた黄瀬。密かに明日の試合への闘志を燃やしたのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

こうして激闘を勝ち抜いた花月と海常の夜が終わった。

 

それぞれが明日の試合に向けて研究をし、明日の試合に備えて眠りに付いた。

 

そして夜が明け、激闘の準々決勝の舞台の幕が上がるのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





試合には欠かせない対戦相手のスカウティング。あまりやり過ぎるとくどいのか…orz

次話から試合(おそらく)になるかと思いますが、中身がなかなか固まらない…(;^ω^)

さてと、どうしようか…。

感想アドバイスお待ちしております。

それではまた!
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