黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

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投稿します!

遂に試合まで漕ぎつけました…(^-^)

それではどうぞ!



第120Q~挨拶~

 

 

 

「…」

 

「……ふむ」

 

3回戦を終えた次の日の朝、空が監督の上杉と共に会場近くの診療所で検査を受けていた。2回戦…花月にとっては初戦である陽泉にて、空は紫原をブロックに向かった際に転倒、頭を強く打って脳震盪を起こし、途中退場し、その後ラスト2分で再度試合に出場し、再度倒れた為、続く3回戦は欠場となった。

 

医者からは1日の絶対安静を命じられ、その翌日の検査結果次第で準々決勝の試合の参加が決められる。

 

「…っ」

 

検査結果が記載されたカルテを無言で読み込む医者。椅子に座りながら結果を待つ空。

 

「……おめでとうございます。結果は良好です」

 

カルテを読み終えた医者から笑顔でそう告げられた。

 

「脳波に特に異常は見られませんし、事前に行った簡易検査でも問題は見られませんでした。後遺症等も心配もありません。今日の試合、存分に出場して下さい」

 

「いよっしゃぁぁぁぁっ!!!」

 

医者からの試合参加のお墨付きを貰い、空はその場で立ち上がり、両拳を突き上げながら喜びを露にした。

 

「ここは病院だぞ。静かにしろ」

 

「あいた!」

 

迷惑を省みずに大声ではしゃぐ空を上杉が拳骨を落として諫めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

インターハイの試合が行われている試合会場。今日もここで始まる試合を求めて観客達が無数に来場している。

 

「…」

 

会場の前に青峰が1人で立っていた。

 

2回戦で負傷退場し、翌日の試合で桐皇は黄瀬を擁する海常に負けてしまった。現在、青峰は激しい運動を禁じられており、暇を持て余しているので会場に足を運んでいた。

 

「ちょっと大ちゃん! 1人で勝手に出歩かないでって言ってるでしょ!?」

 

そこへ、遅れて後ろから桃井が現れた。青峰のお目付け役を桐皇の監督である原澤に頼まれており、一緒に行動している。

 

「うるせーよ」

 

そんな桃井を小指で耳の穴をほじりながら鬱陶し気にあしらう青峰。

 

「今日はきーちゃんのいる海常と花月との試合だね。どっちが勝つかな?」

 

「さあな」

 

桃井に予想を聞かれると、青峰はぶっきらぼうに答えた。

 

「(てっきりきーちゃんが勝つって言うかと思ったけど、…それだけ花月を認めてるのね)」

 

心中で青峰の返事に驚く桃井。

 

「あれー? 青峰っちと桃っちじゃないッスかー!」

 

声を掛けられ2人は振り返ると、そこにはジャージ姿の黄瀬がいた。

 

「きーちゃん!」

 

「…ちっ、なんでお前がここにいんだよ」

 

笑顔で名前を呼び返す桃井。対して青峰は嫌そうな顔で舌打ちをした。

 

「いや青峰っち、その反応はないッスよ! ていうか、これから試合やるんスからいるのは当たり前じゃないッスか!」

 

反応の悪い青峰に黄瀬が口を尖らせて抗議した。

 

「相変わらずうるせー奴だな。…まだインターハイが終わってもいねーのに勝った奴が負けた奴の前にのこのこ顔出すんじゃねーよ」

 

勝者が敗者にかける言葉はない。これは青峰が常に心掛けている事でもある。

 

「別に勝ったと思ってないッスよ。青峰っち抜きの試合っスから。本当の決着は冬に付けるッスよ」

 

「たりめーだ。冬に勝つのは俺だ」

 

昨日の試合後に交わせなかった言葉を黄瀬と青峰が交わしていく。

 

「…っと、それじゃそろそろ行くッス。そんじゃまた!」

 

「頑張ってね、きーちゃん!」

 

時計で時刻を確認した黄瀬は手を振って黄瀬は2人の前を後にする。

 

「……黄瀬」

 

「?」

 

2人の前を去ろうとする黄瀬を青峰が呼び止めると、黄瀬はその声で振り返った。

 

「つえーぞ、花月は」

 

「…分かってるッスよ」

 

そう返すと、黄瀬は改めてその場を後にしていった。

 

「……お前の思っている以上にな」

 

「?」

 

去っていった黄瀬に届かない声量で青峰が呟いた。ちょうどその瞬間に吹いた一陣の風によって隣に桃井にもその声が届く事はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

会場入りした花月の選手達と監督とマネージャー。

 

『…』

 

選手達は控室で粛々と試合に向けて準備を進めていた。

 

「…っ、…っ!」

 

会場入りするまでははしゃぐ姿を見せていた空も今では入念に柔軟運動をして身体を解していた。

 

「もうすぐ第2Qが終わる。コートへ向かうぞ」

 

控室の扉を開けてやってきた上杉が選手達に告げた。

 

「来たか。…よっと」

 

試合前の練習時間がやってきた事を告げられると、空は反動を付けて立ち上がる。

 

「っしゃぁっ!!! 行くぞぉっ!!!」

 

『おう!!!』

 

控室全体に響き渡る程の声量で空が言い放つと、それに負けない声量で選手達が応えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

『おぉぉぉぉぉーーーーっ!!!』

 

コート入りすると、コート上では第1試合が行われていた。

 

「…っと、向こうも来たみたいだな」

 

花月の選手達がやってきた入り口とは反対側から海常の選手達がコート入りした。

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

ここで第2Q終了のブザーが鳴った。

 

「よし! 行くぞ!」

 

空の号令をきっかけに花月の選手達がコートへと足を踏み入れた。

 

「それじゃ、行くッスよ!」

 

同時に黄瀬の号令で海常の選手達がコート入りをした。

 

 

――バス!!! …バス!!!

 

 

パスを出して走り、ボールを受け取ってレイアップ。花月の選手達は粛々と身体を温めていた。

 

『おぉっ!』

 

その時、観客が歓声を上げた。

 

『?』

 

思わず花月の選手達が全員、対面の海常の選手達がいる方に視線が向いた。その時、三枝がリターンパスを貰い、ローポスト付近でボールを右手で掴んでリングに向かってジャンプ。その時に反時計回りに1回転し…。

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

そこからボールをリングに叩きつけた。

 

『スゲー! 360度ダンクだ!』

 

高校生の試合ではまず見られない大技に観客が驚く。

 

「ハッハッハッ! 向こう(スペイン)もええが、日本もええ観客じゃ! やりがいがあるのう!」

 

会場を盛り上げると共に観客を味方付ける為にやったのだが、その効果に満足する三枝。

 

「ほれ。お前らも何か見せんかい」

 

拾ったボールを相手コートに放り投げる。

 

「…っと」

 

放ったボールの先に空がおり、ボールを掴む。

 

「しゃーねーなぁ。大地、1つ派手なやつ頼むぜ」

 

悪態を吐くもニヤリと笑みを浮かべた空は後ろ向きボールを投げる。

 

「やれやれ、仕方ありませんね」

 

溜息を吐きながら大地がボールに向かってダッシュした。

 

「…っ!!!」

 

ボールを掴んだ大地はそのままステップを踏んでボールを右手掴んでリングに向かってジャンプ。

 

 

――スッ…。

 

 

直後、空中でボールをぐるりと回し…。

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

その後、リングに叩きつけた。

 

『こっちもスゲー! ウィンドミルのダンクだ!』

 

お返しとばかりの大地のダンクに再度観客が沸きあがった。

 

「おー! 大地の奴、魅せてくれるのう! ハッハッハッ!」

 

これを見て三枝が満足そうに笑い声を上げた。

 

「へぇー」

 

同じく今のダンクを見ていた黄瀬が感心しながら頷いた。

 

『3分前!』

 

審判が第3Q開始の残り時間をコールした。

 

「よし! 下がるぞ! 急げ!」

 

「急いで片付けるッスよ!」

 

両チームの主将が指示を出し、速やかにコートから両チームが引き上げていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

控室に戻ってきた花月の選手達。迫る試合に向けてそれぞれ備えていく。

 

「神城。調子の方はどうだ?」

 

「問題なし。感覚取り戻す為にアップもきつめにしておいたんで、試合開始からエンジン全開で行けますよ」

 

体調を尋ねられた空は上杉に不敵な笑みを浮かべながら返した。

 

『…』

 

試合時間が刻一刻と近付いていくと、選手達の口数は少なくなっていった。

 

既にキセキを擁する選手が所属する相手と対戦するのは初めてではないのだが、それでも試合前の緊張感は何度経験しても慣れるものではなく、強敵を目の前に選手達の緊張感は高まっていく。

 

「時間だ。皆、準備は出来ているな?」

 

時計を確認した上杉が選手達に告げた。

 

「今更言うまでもないだろうが、あえて言わせてもらう。自分達は挑戦者だと言う事を忘れるな。受け身になるな。常に前を見て攻め立てろ」

 

『はい!!!』

 

「ミスを恐れるな。空いたら迷わず打て。慎重になり過ぎて機を見失うな。全員、常に得点を意識しろ」

 

『はい!!!』

 

「よし、行くぞ!」

 

「花月ーファイ!!!」

 

『オー!!!』

 

上杉の後に空が号令をかけ、選手達が続いて応えると、控室を出てコートへと向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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・・・・・・・

・・・・

 

 

再びコートのあるフロアにやってくると、コートでは残り時間僅かながら激闘を繰り広げていた。

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

そして試合終了のブザーが鳴り、試合が終わった。一方は勝利を噛みしめながら、一方は悔しさに塗れながらベンチを速やかに引き上げていった。

 

『来たー! 昨年に続き、今年もキセキの撃破を成し遂げた、進撃の暴凶星改め、不屈の旋風、花月高校!』

 

『神城復活で遂にフルメンバーの本気の姿が見れるぞ!』

 

昨年の冬に秀徳、今大会で陽泉を撃破した花月高校。その注目度はもはやキセキを擁するチームと同等であり、大歓声が彼らを出迎えた。

 

『キセキの世代、黄瀬を擁する海常だ!』

 

『強力な新戦力と全国レベルの生え抜きの選手を擁する攻守に渡って高水準かつ隙のない今大会の優勝候補の一角、青の精鋭、海常高校!』

 

言わずと知れたキセキの世代、黄瀬が主将を務める海常高校。昨年は黄瀬のワンマンチームと揶揄されたが、スペインからやってきた三枝海に加え、昨年の敗北をバネに他の選手も全国の舞台で戦うに相応しい実力を身に着け、今大会前は低評価だったが、今では優勝候補とまで称されている。

 

「久しぶりだな、ゲン」

 

「お前とこうして戦える日が来るとはな」

 

両チームの監督である上杉と武内が互いのベンチの中間の所で挨拶を交わす。

 

「それにしても、何だその身体は? 現役を退いたからと言って弛み過ぎだぞ」

 

「大きなお世話だ。…今日勝つのはワシの教え子達だ」

 

「ぬかせ。勝ちは譲らんぞ」

 

2人は固く握手を交わし、それぞれのベンチに下がっていった。

 

「スタメンに変更はない。神城、生嶋、綾瀬、天野、松永で行く。ベンチにいる者達もいつでも試合に出れる心構えをしておけよ」

 

ベンチに座ってそれぞれ試合に備える選手達。上杉が選手達の前に立って指示を出していく。

 

「作戦も昨夜のミーティングで話した通りだ。試合でのゲームの組み立ては神城に一任する。任せたぞ」

 

「うす!」

 

「よし! 行って来い!」

 

「っしゃぁっ!!! 行くぞ!!!」

 

花月のスタメンに選ばれた5人はコート中央へと向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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・・・・・・・

・・・・

 

 

「これより、花月高校対海常高校の試合を始めます! 礼!」

 

『よろしくお願いします!!!』

 

 

花月高校スターティングメンバー

 

 

4番PG:神城空  180㎝

 

5番SG:生嶋奏  182㎝

 

6番SF:綾瀬大地 185㎝

 

7番PF:天野幸次 193㎝

 

8番 C:松永透  196㎝

 

 

海常高校スターティングメンバー

 

 

4番SF:黄瀬涼太 193㎝

 

5番SG:氏原晴喜 182㎝

 

8番PG:小牧拓馬 178㎝

 

10番PF:末広一也 194㎝

 

12番 C:三枝海  199㎝

 

 

「よろしくお願いします!」

 

「どうもッス」

 

両チームの主将である空と黄瀬が挨拶を交わす。

 

「こうやって顔を合わせるのは去年の夏の合宿以来ッスね」

 

「言われてみれば。コートでは今日が初めてですけど」

 

「昨日は休んでたみたいだけど、身体は大丈夫スか?」

 

「心配ご無用。絶好調ですよ」

 

「それを聞いて安心したッス。…では改めて、よろしく頼むッスよ」

 

「…」

 

「? どうかしたッスか?」

 

再度黄瀬が差し出した手を茫然と見つめる空。

 

「…いや、今まで戦ったキセキの世代の奴らは、どこか俺達の事舐めてたり、油断が見えたりしたんですけど、まさか、ここまで俺達の事を対等に見てくれるとは思わなくて…」

 

「……アッハッハッハ! そう言う事スか」

 

空の言葉を聞いて黄瀬が笑い出す。

 

「緑間っちと紫原っちに勝利して、青峰っちを後一歩の所まで追いつめた君達を侮るなんてあり得ないッスよ。…こっちはそんな余裕なんてない。君達は俺達と同等…いや、格上を相手にするつもりで戦うつもりッスよ」

 

途中で表情を真剣なものに変えて黄瀬が空に言った。

 

「……ハハッ! それはありがたい。油断に付け込んで勝っても嬉しくないですからね。全力で来るならこっちはその全力を超えて勝つだけだ」

 

「望むところッスよ」

 

2人が右手を差し出し、握手を交わした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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・・・・

 

 

整列を終えた選手達は両チームのジャンパーを残してセンターサークルの周囲に散らばっていく。

 

「よろしゅー頼むのう」

 

「こちらこそ」

 

センターサークルの中央で対峙する三枝と松永が軽く挨拶を交わし、ジャンプボールに備える。

 

「…」

 

審判がジャンパーに立つ2人の中央に立ち、ボールを構える。

 

『…』

 

試合開始目前の緊張感に包まれる中、選手達がコート中央のジャンプボールに注目する。やがて、審判がボールを頭上高くに放った。

 

 

――ティップオフ!!!

 

 

「…っ!」

 

「むぉっ!」

 

松永と三枝が同時に飛ぶ。

 

 

――バシィィィィッ!!!

 

 

「ちぃっ!」

 

ジャンプボールを制したのは三枝。松永よりも高い位置でボールを叩いた。

 

「ナイス海さん!」

 

「あっ!?」

 

ボールを確保した小牧。それを見た生嶋が思わず声を上げる。

 

三枝がジャンプボールを制すると確信していた小牧はティップオフと同時に前へと走っていた。それを見た三枝が小牧に向かってボールを落とした。

 

「先制点は貰うぞ!」

 

「させねーよ」

 

開幕速攻を仕掛けようとした小牧に対し、すぐさま空が立ち塞がる。小牧が動いたのを見て空もまたすかさず動いていた。

 

空が現れても止まる事なく突き進む小牧。

 

「あえて行かせてもらうぜ!」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

空の目前で小牧がクロスオーバーで切り返す。

 

「ハッ! その程度で…!」

 

これに空は遅れる事なく対応する。

 

「…らぁっ!!!」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

「…っ!?」

 

クロスオーバーで左に切り返した直後にすぐさま逆の右に再び切り返し、空を抜き去った。

 

『抜いたぁっ!!!』

 

空を抜き去った小牧はそのままリングに向かってドリブルで突き進む。

 

「させませんよ」

 

フリースローラインを踏んだ所で大地が小牧を捉え、横に並ぶ。

 

 

――スッ…。

 

 

それと同時に小牧はボールを後ろへと戻した。

 

「ナイスパス拓馬!」

 

そこには末広が走り込んでいた。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

ボールを受け取った末広はすぐさまジャンプシュートを放つ。ボールはリングの中心を射抜いた。

 

『先制は海常だ!』

 

「海常に来てから全中決勝でお前が見せたあれをイメージして磨きに磨きをかけた俺のダブルクロスオーバーだ。正直、まだキラークロスオーバーまでには程遠いけどな」

 

かつて全中の決勝で空が見せた事のあるダブルクロスオーバー。小牧はあれを理想として海常に入学してから特訓を重ねていた。

 

「まずは1本。全中での借りは返したぜ」

 

ディフェンスに戻る際のすれ違い様、したり顔で小牧が空に告げた。

 

「やってくれるじゃねーか」

 

それを聞いて空はニヤケながら悪態を吐いた。

 

「空…」

 

「わりぃ、油断や調子が悪い訳じゃなかったんだが、俺の思った以上にクロスオーバーのスピードとキレが鋭かったんでな」

 

「えぇ。私にも分かりました。これまで見せてはこなかったみたいですし、奇襲からの初見であれを止める事は困難でしょう」

 

謝る空に大地がフォローする。これまで見せて来なかった事から、空に対しての切り札としてこれまで隠してきたのだろう。

 

「切り替えましょう。1本、決め返しましょう」

 

「あぁ。とりあえず事前に決めた作戦通り……行きたい所なんだけど…」

 

「?」

 

「やられたままってのも気にくわねえ。作戦実行の前にやり返す」

 

ディフェンスに戻っていく小牧の背中を見ながら空が言い放った。

 

「そう言うと思ってましたよ。どうせ止めてもやるのですからあえて止めません。存分にやって下さい」

 

そう言い出すと予測していた大地は半分呆れながらも空のやる事に同意したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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・・・・・・・

・・・・

 

 

「っしゃぁっ!!! 1本、行くぞ!!!」

 

フロントコートまでボールを進めた空が指を1本立てながらゲームメイクを始める。

 

海常のディフェンスはマンツーマン。生嶋には氏原。天野には末広。松永に三枝。大地には黄瀬がマークをしている。

 

「…」

 

空には小牧がディフェンスをしている。

 

 

『神城が試合に出場する場合、神城を中心に攻めてくる可能性が大いにある。パスがある神城には迂闊にダブルチームもヘルプも出来ん。つまり、神城はお前1人で止めなくてはならん』

 

『上等ですよ。何が何でも止めて見せます!』

 

 

事前のミーティングで武内が小牧に対して言った言葉である。

 

「(俺がこいつを止める。その為にここまで練習してきたんだ)」

 

中学時代。キセキの世代が卒業した後の中学司令塔で注目されていたのは1年時から試合経験のある城ヶ崎中学の小牧に、2年で全国の舞台を経験した東郷中学の三浦、赤司から主将と司令塔の座を継いだ新海の3人だった。だが、蓋を開けてみれば頂点に立ったのは無名の初出場校の空だった。

 

自分の実力に自惚れていた訳ではなかったが、それでも試合に負け、司令塔としても上を行かれた空にライバル意識を持った小牧は、空との再戦を熱望し、今日まで腕を磨いてきた。その集大成を果たすチャンスが巡ってきた今、小牧の気合いは最高潮であった。

 

「…」

 

そんな小牧の気合いを空は肌で感じ取っていた。

 

ドライブを警戒してか、小牧は空に対して僅かに距離を取ってディフェンスをしている。空には外もあり、事実、全中時代に手痛い1発を貰っている為、小牧自身もそれを良く理解しているのだが…。

 

「(まさか、パスや外で逃げたりはしないよな?)」

 

不敵な笑みを浮かべながら空と対峙している。

 

「(心配すんなって。リクエスト通り、真っ向勝負してやるからよ…)」

 

小牧の心中を察した空は不敵な笑みで返した。

 

 

――ダムッ…ダムッ…ダムッ!!!

 

 

ゆっくりボールを突いていた空。突如加速した。

 

「(来た!!!)」

 

タイミングを計っていた小牧。空の動きに合わせて対応する。加速した空は小牧との距離を一気に詰める。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

「なっ…!?」

 

距離を詰めたの同時にそこからクロスオーバーで切り返しながらダックイン。さらに加速した空は一瞬のうちに小牧を抜き去った。

 

「(タイミングはドンピシャだった。フェイクにかかったわけでもないのに抜かれた。こいつ、速すぎる!)」

 

距離を取ってタイミングを計りながらのディフェンスだったが、空のドライブはその上を行った。小細工なしのスピードとアジリティーで小牧を抜き去った。

 

小牧を抜いた空はそのまま突き進み、フリースローラインを越えた所でボールを掴んで飛んだ。

 

「させんぞ空ぁっ!!!」

 

そこへ、三枝がヘルプに飛び出し、ブロックに現れた。圧倒的な高さで空とリングの間に割り込む。

 

「…っ」

 

 

――スッ…。

 

 

三枝がブロックに現れると、空はボールを手のひらに乗せ、指で転がすようにスナップを利かせながら放った。

 

「ぬぉっ!?」

 

ボールは三枝のブロックの上を越え…。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

リングを潜り抜けた。

 

『おぉぉぉぉぉーーーーっ!!!』

 

空の大技に観客が沸き上がる。

 

「…っ、フィンガーロールか…!」

 

スクープショットやティアドロップの派生とも言えるフィンガーロール。それを目の当たりにして目を見開く小牧。

 

「返したぜ」

 

すれ違い様、空がしたり顔で小牧に言った。

 

「(中学時代から桁違いに伸びてやがる…)」

 

自身の成長を遙かに凌駕する空の成長に悔しさを露にする小牧。

 

「拓馬…」

 

そんな小牧を見て末広が声をかける。

 

「心配すんな一也。こんなんで心が折れたりはしねーよ。例え個人では敵わなくとも、試合は譲らねえからよ」

 

心配を一蹴するように小牧が末広に言った。

 

「ドンマイ。さあ、オフェンスッス。頼むッスよ、司令塔」

 

黄瀬が小牧にボールを渡し、笑顔でそう告げた。

 

「うす! 1本、返しましょう!」

 

ボールを受け取った小牧は声を出してゲームメイクを始めた。

 

 

「…」

 

「…」

 

スリーポイントラインの僅か外側で対峙する空と小牧。

 

 

――ダムッ!!! …ダムッ!!!

 

 

再びダブルクロスオーバーを仕掛けるが…。

 

「2度も抜かせるかよ」

 

「…ちっ!」

 

同じ技で2度も抜かせる程空は甘くなく、冷静に対応した。

 

「こっちだ!」

 

「頼みます!」

 

左アウトサイド、エンドラインスレスレで氏原がボールを要求。小牧はすかさず氏原にパスを出した。

 

「させないよ」

 

「…ちっ」

 

氏原がボールを掴んだのと同時に生嶋が氏原の懐に入り込む。これでは膝を曲げられず、シュート態勢に入れない。かと言って生嶋を抜いて中に切り込んでもすぐに天野がヘルプに行ける位置にいる為、それも出来ない。

 

「こっちじゃ!」

 

その時、ローポストで松永を背中に張り付かせた形の三枝がボールを要求した。

 

「頼む!」

 

頭上に掲げていたボールをそのままの態勢でインサイドの三枝にパスを出した。

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

「迂闊だぜ!」

 

そのボールを空が飛び込みながらカットした。

 

「なっ!? あいつのポジションは把握していた。あの距離を一瞬で詰めたのか!?」

 

パスを出す際、氏原は周囲のポジションを確認していた。パスを出す直前では空との距離は確かにあった。にも関わらず空はそのパスをカットした。

 

「読み通り!」

 

ローポストの三枝へのパスを予測した空は氏原が自分から目を切ったのと同時にパスコースに割り込んだのだ。

 

「速攻!」

 

ボールを奪った空はそのまま自ら速攻をかけ、突き進む。

 

「…っと、戻りが早いな」

 

だが、フロントコートに入った所で小牧が目の前に立ち塞がる。

 

「今度こそ止める!」

 

再び気合いを露にしながら小牧がディフェンスに臨んだ。

 

小牧が目の前に現れた所で足を止める空。その隙に海常の選手達も自陣に戻り、ディフェンスを整える。

 

「…」

 

ゆっくりドリブルをしながらゲームメイクをする空。その時、前日のミーティングでの上杉の言葉を思い出す。

 

 

『明日の試合、序盤でのオフェンスの選択肢は2つ。まず、神城が試合に出る事を想定した場合、神城を中心に点を取る事だ。ここのマッチアップはうちに分がある。ここが1番狙い目だろう』

 

『当然ですね』

 

ニヤリと笑みを浮かべながら答える空。

 

『もう1つ。ここは極めてリスクが大きい。…だが、開ければ大きい。ハイリスクハイリターンだ。それは――』

 

 

「(監督にはどちらを選ぶかは俺に任せるって言われたけど、んなもんハナから決まってる。ここで行くに決まってんだろ!)」

 

ここで空はパスを出す。同時に花月の選手達が動く。

 

『…なっ!?』

 

『なにぃぃぃぃぃぃぃっ!!!』

 

花月の選手達の行動に観客達が声を上げた。

 

空は右45度付近に立っていた大地にパスを出した。同時に大地以外の4人は逆サイドに寄り、スペースを空けた。それはすなわち…。

 

「…おいおい、野郎、黄瀬とやり合う気か?」

 

それを見て観客席の青峰が驚き半分の表情で呟いた。

 

花月はアイソレーション。つまり、大地が1ON1し易いようスペースを作った。大地をマークするのは当然黄瀬。つまり、黄瀬との真っ向勝負を挑みかけたのだ。

 

「正気かゴウ!?」

 

この選択にベンチの武内も驚きを隠せなかった。

 

 

「監督、良いんですか? 確かに綾瀬で攻める事は昨日のミーティングで選択肢の1つとして決めましたが、アイソレーションをするとまでは…」

 

ベンチの菅野が上杉に問いかける。

 

アイソレーションを仕掛けるという事は、もはや大地は黄瀬と1ON1を仕掛ける以外に選択肢がない。つまり、やるかやられるかしかないのである。

 

「現場の神城の判断だ。ならば構わん」

 

腕を胸の前で組みながら返す上杉。空の判断を尊重した。

 

 

「へぇー、自信があるって事スか?」

 

事実上の真っ向勝負を挑まれた黄瀬は目の前の大地にそう尋ねた。

 

「自信があると言えば嘘になります。まさか、こうなるとは思いませんでした」

 

苦笑いをしながら大地はそう返した。

 

大地で攻める事はもちろん、事前に大地も聞いている。だが、アイソレーションをする事は大地も聞いていなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

試合前の控室にて、大地が席を外している時…。

 

『今日の試合、序盤大地で行く。大地にボールが渡ったら大地の為にスペースを空けてくれ』

 

空は大地以外のスタメンの3人を集めてそう告げた。

 

『アイソレーションするんか? けど、ええんか? それやと綾瀬の責任重大になるで。変にプレッシャー与えんでも…』

 

『これで良いんですよ。中途半端に逃げ道残すより、全部塞いで真っ向勝負させた方があいつは力を発揮しますから』

 

天野の懸念を空が一蹴した。

 

『うちのエースに一蓮托生。面白くないですか?』

 

そう言って空は笑みを浮かべたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

大地のいない所でそんな話し合いが行われ、了承された事など知る由もない大地。

 

「…ですが、チームの皆が私にここまで期待をかけてくれると言うなら、それに応えるしかありませんね」

 

「…なるほど、何だかんだ言って自信ありって事ッスね。上等ッス。その勝負、受けて立ちますよ」

 

返事をした大地の表情を見て自信と覚悟を感じ取った黄瀬は、集中力を最大限に高め、大地に立ち塞がるのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

遂に花月と海常の試合の火蓋が切られた。

 

開幕、かつての対戦相手同士であった空と小牧がやり合い、互いに得点を奪い合った。

 

互いに挨拶を終えると、試合はエース対決に移行する。

 

試合の勝敗を左右する両チームのエース対決が今、始まろうとしている……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





ここまでは何とか出来た。…けど、ここからどうしよう…(;^ω^)

理想としては陽泉戦くらい個人的に盛り上げたいんですが、とりあえずネタ集めしないと…(>_<)

感想アドバイスお待ちしております。

それではまた!
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