黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

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投稿します!

ネタのストックがまだあるので週1投稿です…(^-^)

それではどうぞ!



第121Q~第1ラウンド~

 

 

 

第1Q、残り9分5秒

 

 

花月 2

海常 2

 

 

試合開始直後、海常が小牧からのパスを末広が決め、その後のオフェンスで空が自ら決め返した。

 

次の海常のオフェンスは空のスティールによって失敗に終わり、花月のオフェンスに切り替わった直後、試合は動いた。

 

「…」

 

「…」

 

右45度のスリーポイントラインの外側のポジションにて、ボールを持った大地と黄瀬が対峙している。残りの4人は反対側に移動して1ON1し易いようにスペースを空けている。つまり、花月は大地に完全に委ねた形である。

 

「…っ」

 

「…っ」

 

大地が小刻みにボールを動かして牽制すると、黄瀬もそれに合わせて動きを見せる。

 

『(…ゴクッ)』

 

先程まで騒いでいた観客達は2人の対決の行方を固唾を飲んで見守っている。

 

2人はまるで居合の達人同士の立ち合いの如く睨み合っている。時間にして僅か数秒、決して長い時間ではないが体感では数分にも思える時間が経ったその時、2人の勝負の火蓋が切られた。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

大地が黄瀬の左手側から切り込んだ。黄瀬もタイミングを読み切り、大地に遅れる事なくピタリと並走して追いかけていく。

 

 

――キュキュッ!!!

 

 

直後、大地は急停止。

 

 

――ダムッ…ダムッ!!!

 

 

1度ボールをボールを右から左。さらに右へとクロスオーバーで切り返し…。

 

 

――スッ…。

 

 

バックステップで下がり、黄瀬との間に距離を作った。

 

「(…っ! 姿勢を変えないでそのまま態勢でバックステップ。紫原っちをも出し抜いた彼の得意技。目の前で見せられて初めてその凄さが分かる。けど、読めてるッスよ!)」

 

下がって距離を空けた大地に合わせて黄瀬もその距離を詰める。大地は既にボールを掴み、シュート態勢に入ろうとしている。

 

「(バックステップからのフェイダウェイシュート。…ドンピシャッス。これなら追い付け――なっ!?)」

 

ブロックに充分間に合うと思ったその時、大地は黄瀬がブロックに来るよりも早くボールをリリースした。

 

「(黄瀬さんのブロックに焦って無理に打たされた。これは外れる!)…リバウンド!」

 

外れると予想した末広は声を出し、リバウンドに備えた。

 

「…むっ」

 

「…っ!」

 

ゴール下では三枝が松永を、末広が天野をスクリーンアウトで抑え込み、絶好のポジションを確保し、リバウンドに備える。ボールの行方にゴール下の選手及び全ての選手が注目する。

 

 

――バス!!!

 

 

「うそ!?」

 

ボールはバックボードに当たりながらリングを潜り抜けた。

 

『うおぉぉぉーーーっ!!! 決めたぁぁぁっ!!!』

 

「ハハッ! 魅せてくれるじゃねーか」

 

「どうも」

 

近寄った空が大地の肩を叩いた。

 

「…ふぅ」

 

思わず黄瀬が溜息を吐いた。

 

「ドンマイ黄瀬さん。今のは運が悪かっただけですよ。次、お願いします」

 

駆け寄った末広が黄瀬をフォローした。

 

「(……運が悪かった、か。わざわざバンクショットで決めといてそれはないッスよ)」

 

黄瀬は理解していた。バンクショット…。バックボードに当てて決めるシュートはバスケの基本ではあるが、あの状況でやる必要性は低い。バックボードにボールを当てて決めるには角度調整が必要な為、咄嗟の判断力が求められる。普段から積極的に実戦でやっているならまだしも、そうでないならあの状況では直接リングを狙った方が確率は高い。

 

「(…要するに、それだけの余裕があるって言うアピール。つまりは誇示ッスね)」

 

今のバンクショットにどんな意味が含まれているのか、黄瀬はすぐに理解した。

 

「一昨日の紫原っちとの試合で自分の殻を破り、昨日のショーゴ君との試合で完全に自分のバスケを確立させたって所ッスか。…こうも見せつけられちゃったら、こっちもやり返さないとダメッスよね」

 

黄瀬の目に闘志が溢れたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

ボールを拾った末広が小牧にボールを渡し、小牧がボールを運んだ。

 

「来いよ」

 

立ち塞がるのは当然空。意気込みを露にしてディフェンスに臨む。

 

「(…やり返したい所だが、ここは……ここしかないよな!)」

 

やり返したい自らを自制し、小牧はパスを出す。同時に他の海常の選手達が動いた。

 

「…そう来ましたか」

 

海常の選手達の動きを見て大地がボソリと呟いた。

 

『来た来たぁっ!!!』

 

『そう来なくちゃ!!!』

 

これを見て観客達は興奮する。

 

ボールは小牧から黄瀬に渡り、他の選手達は反対側に寄ってスペースを作った。つまり…。

 

「お返しはきっちりさせてもらうッスよ」

 

アイソレーション。海常も黄瀬の1ON1を仕掛けてきたのだ。

 

「ありがたい限りです」

 

これを見て大地は薄く笑みを浮かべる。

 

「…」

 

ボールを掴んで小刻みに動かしながら機を窺う黄瀬。大地は距離を詰めてタイトにディフェンスをしている。

 

「…っ!」

 

『うぉっ!? スゲー当たり!』

 

激しい大地の当たりに黄瀬の表情が時折歪む。

 

「気合い入ってるッスね。序盤から張り切って体力は大丈夫はなんスか?」

 

「この程度で体力切れを起こすようなやわな練習はしてません。心配なさらずとも、最後までお相手致しますよ」

 

軽口で尋ねる黄瀬に対し、大地は薄く笑みを浮かべて返した。

 

「…っ、確かに凄い圧力ッス。けど、甘い!」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

大地のディフェンスに出来た僅か隙を突き、黄瀬は大地の背後に抜けた。

 

『抜いたか!?』

 

中へと切り込んだ黄瀬はそのままボールを掴んで飛んだ。

 

「まだです!」

 

だがそこへ、黄瀬とリングの間に割り込むように大地がブロックに現れた。

 

黄瀬が背後に切り込んだのと同時に大地は背中を向けたまま背後に下がり、そのままブロックに飛んでいた。スリーもドライブも超一流である黄瀬に対してタイトにフェイスガードを仕掛けたのはこのバックステップがあっての選択であった。

 

『スゲー! これは止めたか!?』

 

ブロックのタイミングはバッチリ。ブロックが成功するかと誰もが思ったその時…。

 

 

――スッ…。

 

 

両手で掴んでいたボールを右手に持ち替え、そこから指でボールを転がすようにスナップを利かせ、放った。

 

「っ!?」

 

ボールはブロックに飛んだ大地の上を弧を描きながら越えていった。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

大地のブロックをかわして放ったボールはそのままリングを潜り抜けた。

 

『おぉぉぉぉぉーーーーっ!!!』

 

『ていうか、今の!?』

 

「フィンガーロール…。俺がさっき見せた技じゃねえか!」

 

空が思わず声を出した。

 

これは先程空が小牧を抜いた直後、ヘルプに来た三枝をかわす為に放ったショットである。

 

「かわいい後輩がやり返したいのを我慢して俺にボールを回してくれたッスからね。代わりと言ってはあれッスけど、軽く意趣返しをしておいたッスよ」

 

「キャプテン…」

 

黄瀬の心遣いに思わず感動する小牧。

 

「(私がブロックに来た時の反応は明らかに予測の範囲外でした。咄嗟のリカバリーにあれを放ったという事ですか…)」

 

ヘルプのブロックを想定しての空と違い、今の黄瀬は咄嗟のもの。素早い判断力と驚異的なテクニックがなければ出来ない芸当である。

 

「止められると思ったッスか? 悪いけど、まだまだッスよ」

 

ドヤ顔で言い放つ黄瀬。

 

「何か腹立つなー。あの技、かなり練習してようやく出来るようになったってのによー」

 

練習を重ねて身に着けた空はあっさり真似されて思わず不機嫌になる。

 

「ボールをどんどん集めて下さい」

 

「大地?」

 

「あなたの分も含めて、私がやりますので」

 

そう空に告げて、大地はその場を後にした。

 

「…ハハッ! いいねいいね。あんな大地を見たのは久しぶりだ」

 

そんな大地の姿を見て空は満足気に笑う。

 

「言われずともそのつもりだ。任せたぜ、相棒」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

そこから試合は本格的にエース対決が始まった。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

クロスオーバーを仕掛ける大地。直後、バックロールターンで逆に反転しながら黄瀬の裏を取りに行く。黄瀬もこれを読み切って対応する。

 

 

――スッ…。

 

 

反転直後、ボールを掴んで大地は時間を巻き戻すように後ろへと反転し、その後、ステップバックで距離を取り、フェイダウェイで後ろに飛びながらシュート態勢に入る。

 

「…っ」

 

ブロックに向かう黄瀬だったが大地がボールを放つのが紙一重に早く、シュートを許してしまう。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

放たれたボールはリングを的確に射抜いた。

 

「よし!」

 

得点を決め、拳を握りながら喜ぶ大地。

 

 

 

――ダムッ!!!

 

 

攻守が入れ替わり、黄瀬がクロスオーバー→バックロールターンを仕掛け、直後に後ろに再び反転。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

そこからステップバックからのフェイダウェイで得点を決めた。

 

「お返しッスよ!」

 

「…っ!」

 

直前に見せた技をそのまま披露され、悔しがる大地。

 

 

続いて花月のオフェンス。ボールを大地に託し、大地がバックチェンジからロッカーモーションでバックステップを意識させた後、ゴール下まで切り込み、そこでボールを掴んで飛んだ。

 

「外せてな――っ!?」

 

大地とリングの間に割り込んでブロックに飛んだ黄瀬だったが、大地は空中でロール、黄瀬をかわしながら飛び、そこからリングに背中を向けながらボールを放った。

 

 

――バス!!!

 

 

バックボードに当たりながらボールをリングを潜った。

 

 

――バス!!!

 

 

海常のオフェンス。やはり黄瀬は先程の大地と同じ技で切り込み、同じ動きで飛んで得点を決めた。

 

その後も大地が決めれば、黄瀬が決め返す。どちらも退かず、互角の戦いを繰り広げていった。

 

『うぉぉぉーーっ!!! どっちも退かねえ!?』

 

『あの黄瀬と互角にやり合ってるぞ!?』

 

エース同士のしのぎを削る戦いに観客のボルテージはどんどん上がっていく。

 

「(分かっていた事ではありますが、やはり手強い。紫原さん程身体能力や高さがあるわけではありませんが、テクニックの幅やバリエーションがあり、的を絞り辛い!)」

 

「(スピードとキレは一級品。何より、あのバックステップとそこからシュートモーションに入ってからボールを放つまでが速過ぎる。やり合ってみて、紫原っちをあそこまで苦しめた理由がよく分かるッス!)」

 

互いが互いを認め合う2人。

 

「…ですが」

 

「…だけど」

 

「勝つのは私です!」

 

「勝つのは俺だ!」

 

互いに闘志をぶつけ合い、一歩も引かない2人だった。

 

 

 

――ダムッ…ダムッ!!!

 

 

大地がバックチェンジで2度切り返し、そこからバックステップ。距離を取って視線をリングに向ける。

 

「…っ」

 

シュートを警戒した黄瀬はすぐさま空いた距離を詰める。だが、大地はボールを両手で掴んではおらず、構えてはいなかった。大地の視線のフェイクが黄瀬にシュートを警戒させた。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

黄瀬が前に詰めたのと同時に大地が発進。すれ違うように駆け抜けた。

 

「…っ、この…!」

 

負けじと黄瀬が後ろに手を伸ばし、バックチップを狙う。

 

 

――キュキュッ!!!

 

 

大地はこれを予測していたのか、発進直後に急停止と同時にボールを掴み、黄瀬の手をかわした。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

そこからジャンプシュートを放ち、得点を決めた。

 

 

 

――ダム…ダムッ!!!

 

 

2度のバックチェンジからのバックステップ。先程の大地と同じムーブで後ろへと下がり、距離を作る。

 

「…っ」

 

すかさず大地が距離を詰めると、黄瀬は発進。これも先程の大地と同じプレーである。しかし…。

 

「っ!?」

 

すれ違う直前、大地は急停止し、バックステップで並走しながら黄瀬を追いかけた。

 

「まだッスよ!」

 

黄瀬はボールを掴んで止まると、そこからターンアラウンドで反転し、そこからフェイダウェイで後ろに飛び、クイックリリースでシュートを放った。

 

 

――チッ…。

 

 

「っ!?」

 

ブロックに飛んだ大地の指先に僅かにボールが触れた。

 

「リバウンド!」

 

外れる事を確信した大地が叫ぶ。同時にゴール下の4人が構えた。

 

 

――ガン!!!

 

 

言葉どおりボールはリングに嫌われ、弾かれた。ここからゴール下でのリバウンド勝負が始まった。

 

「(…くっ! 良いポジションが取れん!)」

 

三枝が松永を抑え込み、絶好のポジションを確保する。

 

「(あの12番、パワーもあって身体の使い方も俺から見ても相当や。やけど、紫原のような高さもウィングスパンもあらへん。ここは絶対取ったる!)」

 

末広を抑え込んでポジションを確保した天野。松永を抑え込んでポジションを確保している三枝をチラリと見て心中で意気込みを露にする。

 

「ふぬっ!」

 

リングにボールが弾かれたのと同時にボール目掛けて4人が飛ぶ。ボールは三枝の伸ばした両手に収まろうとしたその時…。

 

 

――ポン…。

 

 

「むっ!?」

 

宙に舞うボールを突如下から伸びてきた1本の手によって弾かれた。

 

「リバウンドは譲らんで!」

 

右手を伸ばした天野が誰よりも先にボールに触れ、弾いた。

 

「小癪な真似を――っ!?」

 

着地して再度リバウンドを図る三枝だったが…。

 

「ナイス天さん!」

 

弾いたボールを誰よりも早く空が掴み取っていた。

 

天野が先にボールに触れる事を予測した空はボールの軌道を予測してそこへ飛び込んだのだ。

 

「さすがです、天野先輩、空! …下さい!」

 

前へと走っていた大地がボールを要求する。

 

「おらっ、速攻!」

 

走る大地目掛けて空が前方へ大きな縦パスを出した。

 

「まずい、戻れ!」

 

カウンターを食らった海常。氏原が声を出して急いで戻ろうとする。

 

「よし」

 

ボールを掴むのと同時にドリブルを始める大地。

 

「させないッスよ」

 

直後、大地のすぐ背後から黄瀬の声が聞こえてきた。海常で誰よりも大地の速攻を察知していた為、速攻に対応出来たのだ。

 

大地のドリブルスピードもかなりものだが、やはりボールを持たない黄瀬のスピードは速く、フロントコートに入った辺りで大地に迫る勢いであった。そして、黄瀬が大地の横に並ぼうとしたその時!

 

 

――キュキュッ!!!

 

 

スリーポイントライン手前で大地が速攻の勢いを一瞬で殺し、その場で急停止した。

 

「なっ!?」

 

全速力で走っていた黄瀬は立ち止まる事が出来ず、思わず数歩前に出てしまった。急停止した大地はすぐさまスリーの態勢に入る。

 

「…くっ!」

 

何とか停止した黄瀬は反転して大地のスリー阻止の為、ブロックに向かった。

 

 

――チッ…。

 

 

「っ!?」

 

黄瀬の伸ばした手の指先に僅かにボールが触れた。

 

「(触れた! これは外れる!)」

 

手応えがあった黄瀬は外れる事を確信する。

 

 

――ガン!!!

 

 

予想通り、ボールはリングに弾かれた。

 

「ナイスキャプテン! リバウンド抑え――」

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

「なっ!?」

 

『なにぃぃぃぃぃぃぃっ!!!???』

 

次の瞬間、選手及び観客達が度肝を抜かれる。

 

「2人の勝負に水差すつもりはなかったが、外れたんだからいいよな?」

 

ニヤリと笑みを浮かべる空。弾かれたボールを空がそのままリングに叩きこんだのだ。

 

『うおぉぉぉーーーっ!!! リバウンドダンク決めやがった!!!』

 

「あいつさっきまでゴール下にいたじゃねーかよ。どんなスピードしてんだよ…」

 

信じられないものを見る目で空を見つめる小牧。ついさっきのリバウンドを取った直後、空は確かにゴール下付近にいた。小牧はリングから離れたフリースローライン付近に立っており、空が大地に縦パスを出したのと同時に自陣へと戻っていた。だが、空はそんな小牧をあっという間に追い抜き、あまつさえ外れたボールをダンクで押し込んだのだ。

 

「(あのスピードは青峰っち以上…。そして…)」

 

黄瀬が視線を空から大地に向ける。

 

「(全速力で走っていたあのスピードを一瞬で殺す脚力。何よりそこからシュート態勢に入ってから打つまでのあの速さ…。この2人に先頭で速攻を仕掛けられたら止めるのは至難の業だ…!)」

 

緩急が凄まじい大地と、最高速に達するまでが凄まじい空。速攻に走った際の2人を黄瀬は危険視した。

 

「助かりました、空」

 

「なに、昨日休んだ分走っただけさ。この後もガンガン走らせてもらうぜ」

 

パチン! っと2人はハイタッチを交わす。

 

「何はともあれ、均衡は崩れた。これで主導権は――」

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

その時、ボールがリングを潜り抜けた。

 

「「っ!?」」

 

空と大地が視線を向けると、自陣のリングの下でボールが転々とバウンドしていた。次に2人が真後ろを振り返ると…。

 

「主導権は……何スか? まさか、取ったと思ったッスか?」

 

そこには、シュートを放った態勢を取っている黄瀬の姿があった。

 

「本気で戦うつもりで試合に臨んだつもりッスけど、まだ認識が甘かったみたいッス。出し惜しみして勝てる相手じゃなかった。今度こそ、正真正銘本気ッスよ」

 

確かな決意が籠った目で黄瀬が2人に告げる。

 

「…っ、ここで出してきましたか」

 

「パーフェクトコピーか…!」

 

キセキの世代の技の再現をも可能とする黄瀬最大の切り札、パーフェクトコピー。その圧倒的な力が、花月に牙を向く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

――ダムッ…ダムッ!!!

 

 

大地が左右に揺さぶりをかけた後、バックステップで距離を取ってそこからフェイダウェイで後ろに飛びながらシュートを放った。

 

 

――バシィィィッ!!!

 

 

「っ!?」

 

だが、そのシュートは黄瀬にブロックされた。青峰のコピーで瞬時に距離を詰め、紫原のコピーでボールを叩き落とした。

 

「…くっ!」

 

零れたボールをすぐさま黄瀬が拾い、そのまま単独で速攻に走った。

 

「行かせませんよ!」

 

しかし大地もすぐさま反転し、黄瀬を追いかける。スリーポイントライン手前で黄瀬に追い付き、捉える。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

黄瀬は青峰のチェンジオブペースを再現し、一気の加速して中へと切り込み、即座にシュート態勢に入った。

 

「まだです!」

 

抜かれかけるも大地もブロックに飛び、シュートコースを塞ぐ。

 

 

――スッ…。

 

 

大地が目の前に現れると、黄瀬はボールを下げて右手に持ち替え、その態勢からブロックをかわしながらリングに向かって下から放り投げた。

 

 

――バス!!!

 

 

放り投げられたボールはバックボードに当たりながらリングを潜り抜けた。

 

『青峰のフォームレスシュート! これはもう止められないぜ!』

 

「…っ」

 

目の前で青峰の技を見せられ、思わず表情を曇らせる大地。

 

 

続くオフェンスも黄瀬によってブロックされてしまう。小牧がルーズボールを拾い、黄瀬にボールを渡す。そして黄瀬の前に大地が立ち塞がる。

 

 

――ダムッ…ダムッ…。

 

 

黄瀬が左右にボールを切り返し、揺さぶりをかけ始める。

 

「…ぐっ!」

 

2、3度ボールを切り返すと、大地はバランスを崩して座り込んでしまう。大地の片足に体重が乗っかった瞬間に切り返し、アンクルブレイクを引き起こしたのだ。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

大地が倒れこむと、黄瀬は悠々とボールを掴んで構え、ジャンプシュートを決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

その後黄瀬はパーフェクトコピーを披露し続けた。

 

花月の攻撃はことごとく防がれ、対して海常…黄瀬は全てのオフェンスを成功させた。

 

『…っ』

 

黄瀬のパーフェクトコピーに為す術も出ない花月。

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

『チャージドタイムアウト、花月!』

 

パーフェクトコピーを使い始めてから2分が経過したその時、上杉がタイムアウトを申請。コールされる。

 

 

第1Q、残り5分58秒。

 

 

花月 10

海常 18

 

 

1度はリードした花月だったが、黄瀬の活躍によって点差が付けられていた。

 

「…ふぅ」

 

ベンチに座った大地は深く溜息を吐いた。黄瀬を止められず、点も取れず、良い様にやられてしまっている状況だからである。

 

「綾瀬」

 

「…はい」

 

そんな大地に上杉が声を掛ける。

 

「良くやった」

 

「?」

 

その言葉の意味が理解出来ず、大地は目を丸くする。

 

「黄瀬からパーフェクトコピーを引きずり出した。それだけでもお前は十二分に仕事を果たした」

 

「それは、パーフェクトコピーの使用時間を減らした事がですか?」

 

生嶋が上杉の言葉の意図の予想を言葉にした。

 

黄瀬のパーフェクトコピーはその身体にかかる負担の大きさから使用時間に限りがあり、使用すればそれだけ残り時間は減っていく。

 

「それもある。…だが、1番の成果はパーフェクトコピーを直に体感出来た事だ」

 

『…』

 

上杉の言葉に選手達は耳を傾ける。

 

「この試合、昨夜も言ったが、パーフェクトコピーの攻略が必須だ。だが、終盤まで温存されてしまえば対抗策を考える時間がなくなる。そうなれば攻略は困難。仮に出来ても時間切れで終わりだ」

 

『…』

 

「だが、今体験した事でそれだけ対策に時間を掛けられる。それだけではなく、パーフェクトコピーに対しての耐性も出来、落ち着いて対応出来るようにもなる」

 

「…なるほど、確かに監督の言う通りやわ。綾瀬、よーやった!」

 

「あ、ありがとうございます」

 

背中を叩く天野、大地は戸惑いながら感謝の言葉を口にした。

 

「ここからだが、点差は付けられたが、これは想定の範囲内の事だ。変に焦って取り返しに行く事もない。…だが、時間をかけてじっくりチャンスを作って攻めるのもうちのスタイルではない。攻撃をリズムを崩さず、足を動かし、空いたら打つ。これを忘れるな」

 

『はい!!!』

 

「オフェンスはそれで良いとして、問題はディフェンス。…黄瀬のパーフェクトコピーがこれからどれだけ続くか…」

 

「昨日の試合で使用した後の黄瀬の様子を見る限り、奴がパーフェクトコピーを使える時間は精々7分と言った所だろう」

 

「…と言う事は、後5分はあれが来るのか」

 

上杉の言葉を聞いて空が溜息を吐いた。

 

「タイムアウト後は一旦止めて残り時間は今度こそ試合の勝負所まで温存するだろう。…恐らく、ここから向こうは――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

一方、海常ベンチ…。

 

「出だしはまずまずだ。…黄瀬は返事はせんでいい。頷くだけでいいから静かに呼吸を整える事に集中しろ」

 

「…(コクッ)」

 

武内の言葉に黄瀬は静かに頷いた。

 

パーフェクトコピーによる身体の負担を気遣っての指示である。

 

「とりあえず、主導権は握った。スタートとしては悪くない。だが…」

 

ここで1度言葉を切った。

 

「あえて悪く言えば、パーフェクトコピーを使わされたとも言える」

 

「すいません、少し焦り過ぎたかも――」

 

「いやいい。あそこでやらねば相手に主導権を渡していた恐れがあった。それを考えればお前の選択は正しかった」

 

途中で黄瀬を制した武内は黄瀬の選択を支持した。

 

「だが、パーフェクトコピーは一旦ここまでだ。後は終盤の勝負所まで温存しておけ」

 

この提案に黄瀬は了承し、頷いた。

 

「タイムアウト後はどう攻めて行きますか?」

 

司令塔である小牧が武内に攻め手を尋ねた。

 

「ふむ。ここまで黄瀬一辺倒だったが、ここからはうちのもう1つの強みを使って攻めていく」

 

「もう1つの強み…」

 

この言葉を聞いた末広がとある人物に視線を向けた。

 

「もちろん、全てと言う訳ではない。あくまでも中心にして攻めると言う事だ。…準備は出来ているな、三枝」

 

指名された三枝は飲料水を口にし、容器を置いて口元を手で拭った。

 

「ハッハッハッ! リョータと弟分の熱い戦いを見せつけられて身体の滾りが抑えられんかった所じゃ! 存分に暴れちゃるわ!」

 

豪快に笑った三枝がその身体から熱を溢れだしたのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

試合開始と同時に始まった両チームのエース対決。

 

花月が均衡を破り、主導権を握ろうとした瞬間、黄瀬がパーフェクトコピーによって強引に奪った。

 

タイムアウトを取って流れを切った花月。

 

空と大地の兄貴分である三枝の牙が今、突き立てられようとしている……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





今回の投稿で合計文字数が100万文字を超えました…(>_<)

我ながらよくここまで書けたと思います。正直、学生時代に書いた文字数を超えてるかも…(^-^)

前話の投稿で、一時的にですが久しぶりに日間ランキングの29位に記載され、かなりテンションが上がりました。この二次に立ち寄っていただき、ありがとうございました…m(_ _)m

コロナの影響で外出機会が少なくなった為、執筆時間とネタの構想を練る為のバスケの動画を見る時間が増えましたが、まだまだ練り上がらないのが現状です。久しぶりに書店に行きたいな…( ;∀;)

感想アドバイスお待ちしております。

それではまた!
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