黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

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投稿します!

何とか書きあがりました…(;^ω^)

それではどうぞ!



第122Q~格付け~

 

 

 

「ホラアツシ、急イデ急イデ!」

 

「あーもう、暑苦しい! …あと押さないでよアンちん!」

 

観客席に続く通路で紫原の背中を押しながら急かすアンリ。

 

花月対海常の試合観戦の為に会場にやってきた2人だったが、会場の目前で紫原がごね始め、アンリが強引に観客席まで連れてきたのだ。

 

「モウ試合ワ始マッチャッテルヨ。一緒ニ花月ヲ応援シヨウ!」

 

「はぁ? 嫌だし。何で俺が花月なんかの応援しなくちゃならないんだよ」

 

文句を言う紫原をアンリは無理やりコートを観戦出来る観客席まで連れて来た。

 

「ヨカッタ。マダ第1Qダ」

 

「…」

 

観客席に辿り着くと、紫原はまずスコアが表示されている電光掲示板に視線を移した。

 

 

第1Q、残り1分47秒。

 

 

花月 18

海常 24

 

 

コート上では空がボールを運んでいる。

 

「随分ト遅イテンポデ試合ヲシテイルネ」

 

「…けど、その割には結構点入ってる」

 

一見してディレイドオフェンスをしているのだが、その割に両チーム得点を重ねている為、展開が読めない。

 

「よう、紫原」

 

そこへ、紫原に話しかける者が現れた。

 

「あれー、峰ちんじゃん」

 

「むっくん!」

 

話しかけたのは青峰であった。傍には桃井の姿があった。

 

「お前も試合に見に来たのか」

 

「…別にー。暇だから来ただけだし」

 

青峰の質問にそっぽを向きながら答える紫原。

 

「ワオ! 君ワアツシト同ジキセキノ世代ダネ! 会エテ嬉シイヨ!」

 

話しかけてきた者が紫原と同じキセキの世代と分かったアンリは駆け寄って青峰の手を取って感激した。

 

「……黄瀬以上に暑苦しい野郎だな」

 

「それについては俺も同感」

 

げんなりする青峰にそれに同意する紫原。

 

「試合はどんな感じに進んでるの?」

 

「序盤はきーちゃんと綾瀬君のエース対決が始まって、途中までは互角だったけどきーちゃんがパーフェクトコピーを使ってからはきーちゃん優勢になって、花月が途中でタイムアウトを取ってからは両チーム時間をかけて点を取るようになったみたい」

 

紫原の質問に桃井が答えた。

 

「へー、あいつ、黄瀬ちんからパーフェクトコピー出させたんだ」

 

「伊達にお前に勝った訳でじゃねーってこったな」

 

「別に負けてねーし」

 

口を挟んだ青峰に対し、ムッとしながら返す紫原。

 

「フフッ、…今は花月は特定の選手じゃなくて全員が点を取りに行って、海常はあの12番の選手を中心に攻めてるわ」

 

「……あいつ」

 

桃井に促され、海常の12番、三枝に視線を向けて瞬間、紫原が一瞬険しい表情になった。

 

「知り合いか?」

 

「……かなり昔、バスケ初めて間もないくらいに時に1回だけ試合で戦った事がある」

 

「へー、むっくんが覚えてるなんて珍しいね。結果はどうだったの?」

 

「…」

 

桃井の問いに紫原は答えなかった。

 

「かなりやるな。俺が見た限り、お前とあの堀田を除けばあれ以上はいねぇ」

 

紫原の心中を察した青峰は特に追及せず、三枝の評価を口にした。

 

「木吉さんや根布谷さんよりも?」

 

「ああ。あいつは俺達に限りなく近い位置にいる」

 

キセキの世代と渡り合う事が出来る無冠の五将、木吉鉄平と根布谷永吉。共に全国トップクラスの選手である。

 

「黄瀬だけならいざ知らず、あいつがインサイドを支配してるとなると、花月はかなり苦戦するだろうな」

 

「「…」」

 

青峰の解説を聞いて、紫原とアンリはコートを食い入るような視線を向けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「…」

 

「…」

 

ボールをキープしているのは空。目の前には小牧。小牧の動向に注意を払いながら空はゲームメイクをしている。

 

「スー…フー……っし」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

1度深呼吸をした後、空は一気に中へと切り込んだ。

 

「っ! 行かすか!」

 

タイミングを読み切った小牧が並走しながら空を追いかける。ペイントエリアまで侵入した空は強引にシュート態勢に入る。

 

「舐めるな!」

 

そこへ、ヘルプで飛び出した末広がブロックに現れ、空のシュートコースを塞ぎにかかる。

 

 

――スッ…。

 

 

空はシュートを中断し、ノールックで真後ろへとボールを戻した。

 

「ナイスパス!」

 

スリーポイントラインの外側。リング正面に位置に走り込んだ大地がボールを受け取り、すぐさまシュート態勢に入る。

 

「させないッスよ!」

 

そこへ黄瀬がブロックに現れた。だが、黄瀬がブロックに現れるよりも早く大地はボールをリリースした。

 

 

――ガン!!!

 

 

「…くっ!」

 

しかし、ボールはリングに嫌われてしまう。黄瀬のプレッシャーに僅かに手元を狂わせてしまった。

 

「(緑間っちじゃないんスから百発百中はあり得ないッスよね…)リバウンド!」

 

「任せい!」

 

松永を抑え込んだ三枝が誰よりも高い位置でボールを掴み取った。

 

「ハッハッハッ! 速攻じゃ!」

 

リバウンドボールを抑えた三枝は前を走る小牧にボールを投げ、速攻に走った。

 

「あかん! 戻れ、カウンターや!」

 

思わず天野が声を出す。

 

「させませんよ」

 

「俺達相手に速攻なんて出来ると思うな!」

 

素早くディフェンスに戻った空と大地が速攻を阻止する。

 

「ちっ! 速過ぎなんだよ!」

 

戻りの速い空と大地に悪態を吐く小牧。

 

「こっちだ!」

 

そこへ続いて走り込んだ氏原がボールを要求。すかさずそこへパスを出す。

 

「打たせない!」

 

右45度付近のスリーポイントラインの僅か外側でボールを掴んだ氏原。同時に戻った生嶋がスリーを阻止するべく距離を詰めてディフェンスに臨む。

 

 

――ボムッ!

 

 

生嶋がハンズアップしながら距離を詰めたのと同時に氏原はボールを中へと入れた。

 

「ナイスパスじゃ!」

 

そこへ走り込んだ三枝がボールを受け取った。

 

「止める!」

 

同時にディフェンスに戻った松永が目の前に立ち塞がる。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

三枝は松永を押し込むようなドリブルを始める。

 

「…ぐっ! この…!」

 

背中をぶつけ、ローポストでアタックを続ける三枝。松永は苦悶の表情を浮かべながら侵入を阻止する。

 

「ハッハッハッ! ええのう、以前に見た冬の映像よりだいぶパワー付けたみたいやのう。…じゃけん」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

「そんなに耐えるの必死でこれに対応出来るのかのう!」

 

ドロップステップでクルリと反転し、松永の背後に回りこんだ。

 

「くっそ…!」

 

侵入を阻止するのに力の全てをかけてしまっていた松永にこれが対応出来なかった。

 

「やらせるかい!」

 

ボールを掴んでリングに向かって飛んだ三枝に対してディフェンスに戻った天野がブロックに向かう。

 

「じゃっかぁしい!」

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

天野のブロックの上からボールをリングに叩きこんだ。

 

「ええ闘争心じゃ。バンバンこんかい」

 

ボールを拾って天野の足元に放る三枝。

 

「…くっ」

 

「言ってくれるやんけ…」

 

不敵な笑みを浮かべて告げる三枝。松永は悔しさを露にし、天野は睨み付けながら返した。

 

「天さん、松永! 1本返すぞ!」

 

空がそんな2人に声を掛ける。そしてスローワーとなった天野からボールを受け取る。

 

「そんじゃそろそろ、俺達の本領と行こうか。…行くぞ、走れ!!!」

 

掛け声と同時に花月の5人が走り出す。

 

『っ!?』

 

今までのハーフコートバスケから一転、得意のラン&ガンのオフェンスに切り替わる。

 

「そう簡単にやらせると思うな!」

 

ボールを持つ空に小牧がチェックに入る。

 

「止められるもんなら止めてみろ!」

 

ここで空が左右に高速でハンドリングを始める。

 

「…くっ…ちぃっ…!」

 

あまりに速すぎる空の高速の切り返しの連続に小牧はボールを見失わないように懸命にディフェンスをする。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

「っ!?」

 

小牧の重心が右足に傾いた瞬間、そこを狙って空が逆にクロスオーバーで切り返して抜きさった。

 

「来いや空ぁっ!!!」

 

両腕を広げ、大きな咆哮を上げて威嚇をする三枝。

 

「っしゃおらぁっ!!!」

 

それに怯む事なく突っ込んでいく空はボールを掴んでそのままリングに向かって飛んだ。

 

「2度もやらせんぞ!」

 

三枝は空のティアドロップ、フィンガーロールを要警戒してブロックに飛んだ。結果、空のシュートコースを塞がれてしまう。

 

「こっちです!」

 

空の左側で大地がボールを要求した。空は掲げていたボールを下げ、パスの態勢に入った。

 

「残念、ここは空いてないッスよ」

 

だが、そこに黄瀬が現れ、パスコースを塞いでしまう。

 

「「っ!?」」

 

空がパスを出す。しかし、その瞬間、黄瀬と三枝が目を見開いた。空は左の大地ではなく、逆。右アウトサイド、エンドラインとサイドラインが重なるポジションに立っていた生嶋にパスを出したのだ。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

「あっ!?」

 

不意を突かれた氏原。ほぼフリーでボールを受け取った生嶋は危なげなくスリーを決めた。

 

「ナイスパスくー!」

 

「ナイッシュー」

 

ハイタッチを交わす空と生嶋。

 

「(1ON1スキルが目立ち過ぎて曇りがちだが、こいつ、視野の広さとパスセンスも桁違いだ…!)」

 

ディフェンスに戻っていく空を見て心中で驚愕する小牧。シュートコースを塞がれ、パスコースも塞がれ、八方塞のあの状況ですぐさま生嶋のパスに切り替えたパスセンスと判断の速さ。どれをとってもハイレベルである。

 

「これは個人の能力だけじゃない、司令塔としても赤司っちに確実に迫りつつあるかもしれないッスね」

 

今のを目の当たりにした黄瀬が空を再評価したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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・・・・・・・

・・・・

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

ここで第1Q終了のブザーが鳴った。

 

 

第1Q終了

 

 

花月 21

海常 26

 

 

その後も双方、攻め立てるが、得点には繋がらなかった。攻めきれずに小牧がボールをキープしていた所でインターバルに突入した。

 

「お疲れ様! どうぞ!」

 

姫川と相川が試合に出場した5人にタオルとドリンクを配っていく。

 

「何とか5点差か…」

 

「途中で主導権取られた事を考えれば悪ない結果や」

 

安堵とも焦りとも付かない表情で呟く空に天野が励ますように言った。

 

「あそこでムキになって焦って点差を詰めに行かなかった事が功を奏した」

 

「昔の空なら間違いなく無理に点を取りに行ってましたからね」

 

空を褒める上杉とクスリと笑う大地。

 

「俺だって成長しているつもりなんだけどな…」

 

何処かで腑に落ちない表情をする空。

 

「とは言え、問題はここからだ。現状、バックラインはうち。インサイドは向こうが支配している状況だ」

 

空が巧みにボールを運んでいる為、安定して点を取れているが、肝心なインサイドが三枝によって支配されてしまっている。

 

「あんまええ状況とは言えんのう。向こうの小牧も空坊相手に手も足も出えへん訳やないからのう」

 

天野が語るように小牧は空にやられてはいるが一方的な訳ではない。何とか空に付いてきてはいる。

 

「…っ」

 

これを聞いて松永の表情が曇る。

 

現状、松永は三枝に一方的にやられていると言っても過言ではない。パワーで押されるか、抗おうとすればテクニックでいなされている。

 

「とは言え、こればかりは松永を責められないぜ。正直、海さんに対抗出来る奴なんて今年のインハイ出場校の中だと紫原くらいだと思うぜ」

 

コート上で2人の戦いを見ていた空が松永をフォローする。松永は弱いのではなく、三枝が強すぎるのだと。

 

「言い訳にはならん。俺があの人を止めなければならないんだ…!」

 

拳をギュッと力一杯握りこんで悔しさを露にする松永。

 

「インサイドを強化するか? ゾーンディフェンスに切り替えるか、あるいは生嶋を代えて室井を投入するとか…」

 

「正直、ゾーンディフェンスはリスクも大きいです。向こうには外がある選手が3人もいますから。それと、生嶋を外すと外がなくなってしまいます。大地は黄瀬がマークしているから高確率で決めれないでしょうし、俺にしたってそこまで確実には…」

 

菅野が代案を出すが、空がそれを否定した。

 

「だったらもう、天野を付けてダブルチームで――」

 

「…俺がやる」

 

選手達が意見を出し合う中、松永がはっきりとした口調で言った。

 

「俺がやるって、まっつん1人で相手するって事?」

 

「あぁ。俺がやらなくてはならない事だ」

 

生嶋の問いに松永は真剣な眼差しで返した。

 

「…責任感じてるのかもしれないがよ、無茶だぜ。ここはダブルチームで確実にあいつを――」

 

「天野先輩が来てしまえば末広がフリーになってしまいます。あいつを自由にさせてしまえばそれこそ海常の連携を活性化させる事になってしまい、点差はもっと開いてしまいます。俺が止めるしかないんです」

 

末広は個人技だけでなく、味方を生かすプレーも優れている。そんな末広がフリーとなり、スクリーン等の汚れ役に徹してくれば外を連発されてしまう事になる為、松永は1人で止めると豪語した。

 

『…』

 

静まり返る花月ベンチ。松永の提案が妥当であるかどうか思案している。

 

「うちの正センターは松永だ。お前の覚悟に免じて今はお前に任す」

 

口を開いたのは上杉。松永の提案を受け入れた。

 

「ま、ここまでうちのインサイドを支えてきたのは松永だ。ひとまずはそれで行こうぜ」

 

続いて空が賛同した。

 

「頼りにしていますよ。海さんを倒して下さい」

 

笑顔で肩に手を置きながら大地も賛同した。

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

ここでインターバル終了のブザーが鳴り、第2Q開始の合図がされた。

 

「っしゃぁっ!!! ここからも足を動かしまくって点を取りまくるぞ!」

 

『おう!!!』

 

空の掛け声を合図にスタメンの5人がコートへと足を踏み入れていく。

 

「松永」

 

その時、コートに足を踏み入れようとした松永を上杉が呼び止めた。

 

「インサイドは引き続きお前に任す。それは変わらん。…1つ言っておく」

 

「…」

 

「『自分が勝てなければ花月は負ける』そんな考えは止めろ。お前の出来る事、やれる事、そして役割を忘れるな」

 

「…はい」

 

そう返事をし、松永はコートへと向かった。

 

「竜崎、室井」

 

「はい」

 

「何でしょう?」

 

「ここから先、いつでも試合に出れる準備をしておけ」

 

スタメンの5人がベンチを出ていった後、上杉が2人に声を掛け、そう告げた。

 

「は、はい!」

 

「分かりました」

 

2人は返事をし、ベンチから立ち上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

『おぉぉぉぉぉーーーーっ!!!』

 

第2Qが始まり、再び会場は熱気に包まれる。

 

「中に入れい!」

 

ローポストに立った三枝がボールを要求し、そこへ小牧がボールを入れた。ボールが渡ると、その背中に松永が張り付くようにディフェンスを始めた。

 

「あくまでも1人でワシとやる気かい。ええじゃろう。向かってくるなら相手しちゃるわい」

 

ドリブルを始めた三枝は背中で押し込み始める。

 

「ぐっ! …くっ…!」

 

腰を深く落とし、ポストアップに何とか耐えようとする松永。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

スピンムーブで突如反転し、松永の裏を抜けていく。そしてすぐさまボールを掴んでリングに向かって飛んだ。

 

「…っ! させん!」

 

これに松永も何とか対応。得点を阻止するべくリングと三枝の間に腕を差し込む。

 

 

――スッ…。

 

 

しかし、三枝はボールを下げ、空中でリングを通過していく。

 

 

――バス!!!

 

 

リングを通り過ぎた所で再びボールを上げ、リバースレイアップの態勢でバックボードに当てながらボールをリングに潜らせた。

 

『うめぇ! あいつ本当にセンターかよ!』

 

「くそっ!」

 

「ドンマイ! 次、オフェンスだ。取り返すぞ!」

 

悔しがる松永に空が声を掛けた。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

ボールを運んだ空がそのまま小牧を抜いて中へと切り込んでいく。直後にボールを掴んでシュート態勢に入る。

 

「絶対打たせねえ!」

 

そこへ末広がヘルプに飛び出し、ブロックに現れた。

 

「残念!」

 

同時に空はシュートを中断してボールを足元で弾ませながら中へとボールを入れた。

 

「ナイスパス空坊!」

 

ボールを受け取った天野はすかさずシュート態勢に入った。

 

 

――バシィィィッ!!!

 

 

「なんやと!?」

 

だが、ボールをリリースした瞬間、後ろから現れた1本の腕にブロックされてしまう。

 

「残念じゃが点はやれんのう」

 

「あざっす海さん!」

 

ブロックしたのは三枝。マークを外して打たせてしまった末広が礼の言葉を言った。

 

「ちぃ、大地!」

 

ルーズボールをすぐさま拾った空はスリーポイントラインの外側、僅か左側に立っていた大地にパスを出した。

 

「…っ!」

 

ボールを受け取った大地はその位置からすぐさまシュート態勢に入った。

 

「させないッスよ」

 

スリーを防ぐべく、黄瀬がすぐさまチェックに入る。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

「やっば…!」

 

しかし、大地はスリーを中断。黄瀬がチェックに入ったのと同時に加速。すれ違うように大地は黄瀬を抜いた。抜いたのと同時にシュート態勢に入った。

 

 

――バシィィィッ!!!

 

 

「なっ!?」

 

「ええ動きじゃ。じゃけん、ワシを忘れたらいかんのう」

 

大地をブロックしたのは再び三枝。

 

「(何処から…!?)」

 

完全フリーと思って放ったシュート。しかし、三枝は大地の死角から近付き、シュート態勢に入るのを予測してブロックした。

 

「ちっくしょう、これもかよ!」

 

再度ブロックされて思わず悪態を吐く空。

 

 

――ダムッ…ダムッ!!!

 

 

気持ちを切り替えて空が中に切り込んでいく。

 

「何度もやらせるかよ!」

 

これに小牧も何とか付いていき、目の前に立ち塞がる。

 

「…」

 

僅かに中に切り込み、何度か左右に切り返したところで空はボールを右へと流した。

 

「ナイスパスだ!」

 

そこへローポストに立っていた松永が戻ってボールを受け取った。

 

「来てみぃ」

 

「…っ、言われなくとも…!」

 

三枝と向かい合う形でボールを受け取った松永。ドリブルを始めると左右に揺さぶりをかける。

 

 

――ダムッ…ダムッ!!!

 

 

クロスオーバーの後、そこからバックロールターンで三枝の後ろへと抜けた。

 

「おぉっ!」

 

そこでボールを掴んでリングに向かって飛んだ。

 

 

――バシィィィッ!!!

 

 

「っ!?」

 

「動きもキレもなかなかやのう。じゃけん、ワシには話にならん」

 

これも後ろから三枝がブロックした。

 

『うぉぉぉーーっ!!! 3連発ブロック!!!』

 

『花月のフロントラインが壊滅だ!』

 

「なんて様や!」

 

「くそっ!」

 

「…っ」

 

この事実に天野と松永は悔しさを露にし、大地も僅かに表情を歪めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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・・・・・・・

・・・・

 

 

その後も、三枝がインサイドを支配し続ける事で流れは海常に傾いていった。

 

「ふん!」

 

小牧が放ったシュートが外れ、リバウンド争いとなったゴール下。三枝がパワーとテクニックを駆使して強引にボールをもぎ取る。

 

「(あかん! 紫原はでたらめな高さとジャンプ力とリーチの長さでリバウンドを取りまくっとったが、こいつはちゃう。パワーだけやない、テクニックも一級品や!)」

 

リバウンドに定評がある天野。その天野が認める程、三枝のテクニックは優れていた。

 

「何をやっているんだ俺は!」

 

絶好のポジションを奪われ、リバウンドも取られた松永は自身の不甲斐なさに怒りを覚えた。

 

 

第2Q、残り6分19秒。

 

 

花月 25

海常 36

 

 

点差はじわじわと開いていき、遂には二桁までに達していた。

 

「監督、ここはタイムアウトを取って流れを断つべきでは?」

 

「…」

 

そう提案する姫川。上杉は返事を返さず、無言で思案する。

 

流れを断つ案は上杉からしてももっともなのだが、既に1度タイムアウトを使っている為、このタイミングで使うべきか否か考えている。

 

「…」

 

現在、小牧がボールをキープしている。目の前には空がおり、何もさせないつもりでディフェンスをしている。

 

「(…ちっ、相変わらずプレッシャーかけてきやがる。迂闊に仕掛ければボールを奪われかねない…)」

 

ドリブル突破はもちろん、シュートも打てない。フリーの選手もいない為、攻めあぐねている小牧。

 

「(…ちと速いが、そろそろ格付けを済ますかのう)こっちじゃ!」

 

ローポストに立っていた三枝が突如その場を離れ、小牧の横にまで移動した。

 

「頼みます!」

 

すかさずそこへ小牧がパスを出した。

 

「(ゴール下を離れた? 何をするつもりだ?)」

 

三枝を追いかけた松永。三枝の狙いを考えている。

 

「(空いたゴール下にパスか? いや、違う!)」

 

ここで松永は確信した。三枝の狙いは、この位置から1ON1を仕掛ける事だと。

 

 

――ダムッ…ダムッ…。

 

 

ゆっくりドリブルを始めた三枝。腰を落として集中力を極限まで高めながら待ち受ける松永。

 

「…いくぞ」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

「っ!?」

 

キレのあるクロスオーバーで松永を抜き去る。

 

「ここは行かせんで!」

 

すかさず天野がヘルプに飛び出す。ここで三枝は立ち止まり、シュート態勢に入る。

 

「(フェイクやろ、それ)」

 

フェイクと読んだ天野は両腕を上げるもジャンプはしなかった。読み通り、三枝はターンアラウンドで反転し、改めてシュート態勢に入った。

 

「ドンピシャや!」

 

ここで天野はブロックに飛んだ。だが…。

 

「っ!?」

 

ここでも三枝はシュートを打たず、再度逆回転に反転した。

 

 

――バス!!!

 

 

そこでシュートを放ち、得点を決めた。

 

「よーし!」

 

拳を握って喜びを露にする三枝。

 

 

「こっちだ神城!」

 

続く花月のオフェンス。松永がローポストから離れ、ボールを要求した。

 

「…」

 

一瞬悩む空だったが、松永にパスを出した。

 

「行くぞ!」

 

宣言と共に松永がドリブルを始める。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

得意のクロスオーバーからのバックロールターンで抜きにかかる松永。

 

「温い、温いのう!」

 

これに三枝はきっちり対応。進路を塞ぐ。

 

「…くっ、これならどうだ!」

 

ここでボールを掴んでターンアラウンドで反転し、フェイダウェイで後ろに飛びながらシュートを放った。

 

 

――バシィィィッ!!!

 

 

「ええ動きじゃ。じゃが、ワシを相手にするのはまだ未熟じゃ!」

 

しかし、そのシュートはブロックされてしまった。

 

『アウトオブバウンズ、赤(花月)!』

 

ボールはラインを割った。

 

「…」

 

流れが悪いと見た上杉がタイムアウトを申請する為、立ち上がった。

 

「くそっ! 何をやっているんだ、俺は!」

 

不甲斐ない自分自身に腹を立て、自身の足を叩く松永。

 

「…松永」

 

そんな松永に空が歩み寄った。

 

「率直に言わせてもらうぜ。今のお前じゃ海兄には勝てねえ」

 

「っ!?」

 

「今ので分かった。今の時点じゃ、海兄の方が1枚も2枚も上だ。これはもうどうにもならねえ」

 

「だが! 俺がやらなければ試合には勝てない。俺がやらなければ――」

 

「本当にそうか?」

 

空の遠慮のない言葉に松永が熱くなったが、それを遮るように空が言葉を続ける。

 

「お前が海兄に勝てなければ花月は負けちまうのか?」

 

「……それはどういう意味だ?」

 

言葉の意味が分からない松永は思わず聞き返す。

 

「俺も同じ事を思ってたよ。俺がキセキの世代に勝てなければ花月は勝てないって。主将になってからもそれは同じだった」

 

「…」

 

「けどな、陽泉の試合、途中で俺が抜けて、それでも花月は勝った。昨日の試合も俺がいなくとも勝った」

 

「…」

 

「それで分かった。俺が花月の全てを背負い込む必要なんてないんだって事を。俺は試合に勝つ為にはどうすればいいか。今はそれしか考えてない」

 

「…」

 

「例えお前が海兄に勝てなくとも、花月は負けたりはしない。バスケは力を合わせればミスを帳消しに出来るしチャンスも作り出せる。誰かが勝てなくても試合には勝てるんだよ。だからよ、1人で戦うな。一緒に勝とうぜ。もちろん、俺もどうにもならなくなったらお前を頼らせてもらうからよ」

 

ポンっと、肩に手を置いて空はその場を離れていった。

 

「……スー…フー」

 

松永は大きく深呼吸をした。

 

「まさか、あいつに諭されるとはな」

 

かつては個人の感情で動く事が多かった空に諭された事に自嘲気味に笑った。

 

「(…だが、空の言う通りだ。俺は俺が三枝さんに勝てなければ花月は負けると思い込んでいた。周りが確実に結果を出し、俺だけが不甲斐ない結果ばかりで焦っていたのかもしれないな)」

 

チームのインサイドを任されていながらやられる事が多かった松永。戦う相手が悪かったと言えばそのとおりなのだが、生来の真面目な性格が災いしてか、本人はかなり焦っていたのだ。

 

「(俺は三枝さんには勝てない。それはもう認めよう。だが…)」

 

ここで松永は三枝の方に視線を向けた。

 

「試合の勝利だけは譲らん」

 

決意に満ちた表情で言ったのだった。

 

「(ええ表情しよるのう。ここで心へし折っちゃるつもりやったが、ここまで見せつけて折れるでもなく自暴自棄にもならんとはのう。なかなか骨のある男じゃ)」

 

ここに来て闘争心が衰えない松永を見て、その心の強さを称える三枝。

 

「ならとことんまで相手しちゃるわ」

 

松永の視線を受けて不敵な笑みを浮かべた三枝だった。

 

 

「……申し訳ない。タイムアウトは取り消させてもらう」

 

1度はオフィシャルテーブルに来てタイムアウトを申請した上杉だったが、空と松永のやり取りとその後の松永を見てタイムアウトは不要と判断し、申請を取り消したのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

試合は三枝を中心に攻め立てた海常に流れが傾き、点差が広がっていった。

 

松永を圧倒する三枝。この事実に熱くなる松永だったが、空の言葉を受けて自身を見つめなおし、冷静さを取り戻した。

 

しかし、依然として海常優位に試合は進んでいる。

 

花月の試練は、まだまだ続いていく……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





ネタ切れ感が半端ないorz

リアルが忙しくなり、ネタ切れも相まって執筆意欲が沸かず、時間を作れても動画を見たり原作を見直すだけで終わる事が多くなってきた…(>_<)

…これ、ウィンターカップの時みたいにインターハイだけで今年も終わるかも…(;^ω^)

感想アドバイスお待ちしております。

それではまた!
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