黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

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投稿します!

寒天ゼリー美味い…(*^_^*)

それではどうぞ!



第125Q~接戦~

 

 

 

第3Q、残り9分42秒。

 

 

花月 41

海常 48

 

 

試合の後半戦が開始される。

 

 

OUT 生嶋

 

IN  竜崎

 

 

第3Q頭から花月は生嶋に代わり、竜崎を投入。ディフェンスもマンツーマンから2-3ゾーンディフェンスに切り替わった。

 

後半戦最初の海常のオフェンスを止め、オフェンスが切り替わると…。

 

「1本! 行きますよ!」

 

竜崎にボールを渡し、竜崎がボールを運び、ゲームメイクを始めた。

 

「…」

 

ボールを持った竜崎の目の前には氏原。海常はこれまでどおりのマンツーマンディフェンス。ただし、大地には小牧と末広がダブルチームで付いている。

 

「…よし、行くぞ」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

攻め手を定めた竜崎は意を決して切り込んだ。

 

「…っ、行かせね――っ!?」

 

追いかけようとした氏原だったが、天野のスクリーンによって阻まれてしまう。

 

「…むっ? いかんのう、奴は確か…」

 

ここで三枝がある事を思い出す。昨日の試合で竜崎がスクープショットを見せていた事に。三枝は自身がマークしている松永のマークを外さず、あえてヘルプには行かず、竜崎の動向に備えた。

 

 

――スッ…。

 

 

ペイントエリアの侵入した所で竜崎はボールを外に出した。

 

「ナイスパス!」

 

ボールの先は空。中に走って竜崎に駆け寄る振りをし、タイミングを見てカットし、左アウトサイド、スリーポイントラインの外側、サイドラインとエンドライン交わる隅に向けて猛ダッシュして黄瀬のマークを外し、辿り着いたと同時にボールを受け取り、黄瀬がディフェンスに来る前にそこからスリーを放った。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

空が放ったスリーはリングの中心を的確に射抜いた。

 

「っしゃぁっ!」

 

見事にスリーを決めた空は拳を握って喜びを露にした。

 

『後半戦最初に決めたのは花月だ!』

 

「…ちっ、7点ビハインドでの第3Q最初の攻撃、流れを掴む為に普通なら慎重に攻める所を迷いなく打ちやがった」

 

出来れば決めたい最初のオフェンス。空の思い切りの良さに海常の選手達は戸惑う。

 

「1本! 次も止めるぞ!」

 

『おう!!!』

 

空が声を上げて檄を飛ばし、花月の選手達が応えた。

 

「…ちっ」

 

ボールを運ぶ小牧が思わず舌打ちを飛ばす。

 

2-3ゾーンディフェンスの花月は僅かではあるがゾーンの先頭の空と大地が距離を取ってディフェンスをしている。通常であればスリーを狙ってみてもいいのだが…。

 

「…(ピクッ)」

 

スリーに意識を向けようとすると空と大地がすぐさま飛び出せる備えをしてくる。その為、迂闊にスリーを放てば入る入らない依然にブロックされてしまう。切り込もうにも空と大地が距離を取ってディフェンスをしている為、それも困難。

 

「(…どうする)」

 

八方塞になる小牧。

 

「…へい!」

 

その時、黄瀬がスリーポイントラインの外側、右45度付近でボールを要求。

 

「頼みます!」

 

攻め手がなかった小牧は迷わず黄瀬にボールを渡した。

 

「…」

 

黄瀬がボールを掴むと、目の前には大地。集中力全開で黄瀬の動きに備える。

 

「…」

 

「……ふぅ」

 

対峙する2人、黄瀬が何気なく息を吐くと…。

 

「…っ!?」

 

大地が思わず目を見開いた。突如、黄瀬との距離が広がっていたからだ。

 

「(…いつの間に!?)…くっ!」

 

思わず大地は距離を詰めるが…。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

距離が詰まる前に黄瀬がスリーを放ち、確実にリングを射抜いた。

 

「今の、確か誠凛の前主将が使ってた、不可侵のシュート(バリアジャンパー)やないか!?」

 

技の正体を思い出した天野が思わず声を出す。

 

今のは昨年まで誠凛の主将を務めていた日向が使っていた、相手に気付かれずにディフェンスとの距離を空ける技、不可侵のシュート(バリアジャンパー)である。

 

「(聞きしに勝る技。…いえ、これは、使い手の身体能力と技量の差…)」

 

瞬発力がなくても速さが出せるこの技をある者が使えばその威力は当然跳ね上がる。

 

「止まっている状態なら俺でも君みたいに下がる事は造作もないッスよ」

 

勝ち誇った表情で大地に告げ、ディフェンスに戻っていく黄瀬。

 

「…ふぅ」

 

得意のコピーを見せられ、大地は一呼吸して気持ちを落ち着けたのだった。

 

 

花月のオフェンス、再び竜崎がボールを運ぶ。

 

「こっちです!」

 

フロントコートまでボールが進むと、リングの正面、スリーポイントラインの外側に立つ竜崎の真横、左方向まで下がった大地がボールを要求。

 

「綾瀬先輩!」

 

大地に迷わず竜崎はパスを出した。

 

「止める!」

 

「今度こそ!」

 

立ち塞がるのは小牧と末広。第2Q終盤同様、ダブルチームで大地をマークする。

 

「…」

 

ボールを小刻みに動かしながら隙を窺う大地。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

折を見て大地が仕掛ける。一気に加速して中に切り込む。

 

「…速い!? だが止める!」

 

「おぉっ!」

 

小牧と末広も何とかこれに反応、対応する。

 

 

――キュキュッ!!!

 

 

だが直後、大地は急停止。ドライブの勢いを一瞬で殺す。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

同時にバックステップ。先程立っていた場所より僅かに後ろまでドライブと変わらぬスピードで下がった。

 

「「っ!?」」

 

一瞬で距離を空けられた2人は思わず目を見開く。大地は距離が空いたのと同時にシュート態勢に入る。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

スリーポイントラインから1メートル以上離れてはいたが、大地は落ち着いてスリーを決めた。

 

『出たぁっ!!! 綾瀬の代名詞、バックステップからのスリー!』

 

『これはもう外れる事を祈るしかないぜ!?』

 

高難度の技に観客が沸き上がる。

 

「やるぅ、あれは俺にも出来ねえ」

 

「どうも」

 

ディフェンスに戻りながら空と大地がハイタッチを交わす。

 

「(…映像で見た綾瀬のバックステップからのスリー…。こんなの俺じゃあ止められっこねぇ…)」

 

「(ドライブ1つでも厄介なのに、その勢いを一瞬で殺しちまう強靭な足腰。なおかつドライブと変わらないスピードでのバックステップ…。しかも、スリーもモーションに入ってから打つまでが速過ぎる。こんなのどうしろって言うんだよ…!)」

 

1本の大地のプレーで絶望の淵に陥る2人。止めるどころかブロックにすら行けなかっただけに、そのショックは計り知れない。

 

「おらぁっ! シャンとせぇっ!!!」

 

「「った!」」

 

気落ちする2人の背中を三枝が手のひらでバチンと力強く叩いた。

 

「さっきまで闘志はどうした? まさか今ので怖気づいたんか?」

 

「「…っ」」

 

この言葉を聞いて2人はバツの悪そうな顔をする。

 

「…ならば、またリョータ1人に戦わせるか?」

 

「「っ!?」」

 

続いて発した三枝の言葉に2人はハッとした。

 

「(そうだよ。俺は何の為に練習してきた!?)」

 

「(黄瀬さんと一緒に優勝する為じゃないか!)」

 

昨年、黄瀬1人に全てを背負わせ、果ては黄瀬のワンマンチームとまで揶揄された海常。そんな不名誉な名を払拭し、黄瀬と共に海常を優勝に導く為に今日まで練習してきた。その悔しさを思い出した2人の目に再び闘志が宿った。

 

「「絶対に勝つ!」」

 

「よし! それでええ! 行くぞ!」

 

再び三枝は2人の背中を叩いて活を入れたのだった。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

オフェンスが海常に切り替わり、小牧が積極的に仕掛け、中に切り込んで行く。

 

「もう2度と抜かせねえ!」

 

これに空は対応、小牧に並走し、抜かせない。

 

「…むっ?」

 

抜けないと見ると小牧は急停止し、ボールを掴むとボールを頭上に掲げる。

 

「マークが外れてねえのに打たせる訳ねえだろ!」

 

シュートと見た空は両腕を上げる。だが小牧は打たず、両手で掴んだボールを右に放る。

 

「ナイスパス拓馬!」

 

ハイポストに立っていた末広にボールが渡る。

 

「させへん!」

 

そこにすかさず天野が背中に張り付くようにチェックに入る。

 

 

――スッ…。

 

 

それを見て末広はリングを背にしたままオーバヘッドパスでボールをローポストの三枝に入れた。

 

「ええパスじゃ!」

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

ボールを掴んだ三枝はそのままボースハンドダンクを叩き込んだ。

 

「まだまだこれからだ!」

 

「城ヶ崎コンビを舐めんなよ!」

 

拳を握りながら宣言する2人。

 

「ハハッ! そうこなくちゃな!」

 

それを聞いて空は不敵に笑ったのだった。

 

 

「こっちだ! 俺に持ってこい!」

 

花月のオフェンスになると、今度は空がボールを要求。

 

「頼みますよ、キャプテン!」

 

要求どおり、竜崎は空にパスを出した。

 

「今度はさっきみたいに打たせないッスよ」

 

空がボールを掴むと、目の前に黄瀬が現れた。

 

「今度はあんたをぶち抜いて決めてやるよ」

 

「させると思ってるんスか? 君のあのドライブはもう俺には通用しないッスよ」

 

あのドライブ。空のインビジブルドライブは第2Q最後に黄瀬に攻略されている。

 

「…ハッ、舐めんなよ。あれは俺の武器の1つに過ぎねえ」

 

 

――ダムッ…ダムッ!!!

 

 

ここで空が動き、クロスオーバーを仕掛ける。黄瀬もこれに追走し、対応する。

 

「ボールをこねくり回すだけが俺のバスケじゃねえ。俺の1番の武器は――」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

「スピードだ!」

 

左へのクロスオーバーの直後、すぐさま逆にクロスオーバーで切り返した。

 

「っ!?」

 

最初のクロスオーバーに対応する為に体重が右足に乗ったところをすぐさま逆に切り返された為、黄瀬は空に抜き去られてしまう。

 

「まだやぁっ、空ぁっ!!!」

 

中に切り込むと、ヘルプに飛び出した三枝が現れた。

 

「…っ」

 

三枝が現れると、空はすぐさまボールを掴んだ。ボールを掴み、三枝の目の前に1歩目の左足を踏み込んだ。

 

「(右か!?)…決めさせん!」

 

左足を踏み込んだ際、空の膝が左を向き、上体も左に傾いたのを見て三枝は自身の右側から抜けると予測し、右に飛んだ。

 

「っ!?」

 

しかし、空はその逆、三枝の左側に大きく踏み出した。

 

 

――バス!!!

 

 

ステップで三枝をかわした空はその態勢からボールを放った。ボールはバックボードに当たりながらリングを潜り抜けた。

 

『おぉぉぉぉぉーーーーっ!!!』

 

『黄瀬と三枝の2人をかわして決めたぁぁぁっ!!!』

 

ビッグプレーに観客が盛大に沸き上がった。

 

「(…速い、今のスピードは青峰っちよりも…!)」

 

空の最速を体感してそのあまりの速さに驚きを露にする黄瀬。

 

「キラー…クロスオーバー…」

 

思わず小牧が口にする。

 

かつて見たダブルクロスオーバー。自身が理想としたドリブル。それをさらに進化させた小牧の思う究極のドリブル。

 

「最後のはジノビリステップ…、陽泉戦で綾瀬が使っていた技! …神城も使えるのか!?」

 

苦々しい表情で氏原が口にする。

 

得点を決める際に空が行った独特のステップはジノビリステップ。

 

「もともとは空が使っていたのを見て私が咄嗟に真似ただけですので、空が言わば本家ですよ」

 

補足するように大地が説明する。

 

「インビジブルドライブを止めただけで俺を攻略したと思わない事だ。俺にはまだ武器はたくさんあるんだぜ」

 

黄瀬に指を差しながら告げ、空はディフェンスに戻っていった。

 

 

海常のオフェンス。

 

「(…キャプテンがやられた直後のオフェンスだ。ここは落としたくない)」

 

ボールを運ぶ小牧が心中で考える。

 

絶対的エースからの失点。直後のオフェンスを落とせば相手に流れを持っていかれかねない。

 

「(中の海さんは…ダメだ。あれじゃパスは出せない。…なら、ここしかない!)」

 

攻め手を定めた小牧はパスを出す。

 

『来たっ!!!』

 

『早速やり返すか!?』

 

ボールは黄瀬に渡った。

 

「っしゃ大地! ここを止めて流れ変えてやれ!」

 

「…そうですね。ここは何としてでも止めませんと」

 

空から発破をかけられ、大地の集中力が高まる。

 

「悪いけど、簡単に流れはくれてはやれないッスよ」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

ここで黄瀬が動き、クロスオーバーを仕掛ける。

 

「…っ!」

 

これに大地も対応。遅れる事なく黄瀬に付いていく。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

「くっ!?」

 

直後、黄瀬が逆に再びクロスオーバーで切り返し、大地を抜き去った。

 

『うぉぉっ! 早速やり返した!』

 

先程の空のお株を奪うダブルクロスオーバー…、キラークロスオーバーを披露した。

 

そのままリングに向かって直進……と、思ったその時。

 

「っ!?」

 

大地を抜いた直後、黄瀬の左側から1本の腕がボール目掛けて伸びてきた。

 

「俺の技までパクりやがって! だが、もう1陣あるぜ!」

 

現れたのは空。抜いた直後を空が間髪入れずに狙い打ったのだ。

 

「…っ、この程度、切り抜けられきゃキセキの世代は名乗れないんスよ!」

 

 

――スッ…。

 

 

そこから黄瀬は反転。バックロールターンで空の手をかわした。

 

『これもかわしたぁっ!!!』

 

「…やろ! まだ安心するのは速いぜ!」

 

 

――バチィィッ!!!

 

 

「なっ!?」

 

黄瀬の表情が驚愕に変わる。黄瀬の持つボールを空に叩かれたからだ。

 

空はスティールをかわされた直後、両足を滑らせるように前に出し、そこから倒れこむように身体を後ろに倒し、そこから手を伸ばしてボールを狙い打った。

 

「そんな態勢から狙ってくるんスか!?」

 

そのあまりの不安定な態勢からボールを狙われた事に思わず声が出る。

 

「さすが空です。…速攻!」

 

「既に走ってるぜ!」

 

ボールをカットした直後、空は倒れる事なく態勢を立て直し、すぐさま前線に向けて駆けだしていた。

 

「しかももう先頭に!?」

 

これにはもう黄瀬は頭を抱えるしかなかった。常人ならまず倒れこむ態勢でボールをカットし、にもかかわらず倒れる事なく態勢を立て直しただけではなく、誰よりも速く速攻に走っていたからだ。

 

「ナイスパース!」

 

先頭でボールを受け取った空はワンマン速攻を仕掛ける。

 

「戻れ!」

 

海常ベンチから声が出されるが、ボールを持っているにも関わらず、先頭を走る空に追い付くどころか逆に離されていく。

 

「っしゃ行くぜ!」

 

フリースローラインを超えたところで空はボールを掴み、そこからリングに向かって飛ぶ。そして…。

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

そのまま右手で持ったボールをリングに叩きつけた。

 

『おぉぉぉぉぉーーーーっ!!!』

 

『これでワンゴール差だ!』

 

『スリーなら逆転だぞ!?』

 

「おらぁぁぁっ!!!」

 

ダンクを決めた空は鼓舞するように拳を突き上げて喜びを露にする。

 

「ナイスだ神城!」

 

それに応えるように松永が拳を突き上げる。

 

遂に海常の背中を捉えた花月。チームの士気は最高潮にまで上がる。

 

『…っ』

 

決められたくない失点を喫した海常の選手達の表情が苦いものに変わる。

 

「…ふぅ、やれやれ、しんどい相手ッスね」

 

思わず溜息を吐く黄瀬。

 

「それも2人」

 

大地の方を見て、ボソリと呟く。黄瀬は改めて敵の強大さを痛感したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

その後は一進一退の攻防が続いた。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

海常が決めれば。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

花月が決め返す。2~4点差を繰り返し続けていた。

 

 

第3Q、残り6分37秒

 

 

花月 55

海常 57

 

 

「なかなか均衡が崩れないな…」

 

花月のベンチの菅野が思わずそう口に出す。

 

先程のターンオーバーで流れを掴んだかと思いきや、海常は動じる事なく淡々と点を取り返してきた。今や百戦錬磨の黄瀬がチームを落ち着かせ、自ら取り返してきたのだ。

 

「…」

 

「…」

 

両チームの監督もこの状況をベンチから座して見守っていた。

 

「…っ」

 

今の状況に何とか平常心を保とうとする小牧。

 

現状、外は打てない。空と大地のチェックが速過ぎる為、迂闊に打ちにいけばブロックされてしまう。そうでなくてもシュートセレクションが乱れてしまう為、外れる可能性が高い。

 

2人が最優先で外を潰しに来る、その為、比較的ゾーンディフェンスに隙間が出来るので中から点が取れている。しかし、それも決して余裕がある訳ではない。前述のとおり、空と大地のヘルプが速い為、時間をかけ過ぎるとたちまち囲まれてしまう。

 

『…っ』

 

海常はまだ追い付かれたわけではない。一見、淡々と点を取っているように見える。だが、胸中では焦っていた。

 

点差は僅か2点。花月に常に背中を追いかけられている為、ミス1つで同点…最悪、逆転されてしまう。ジワジワ詰め寄られる時間が続く今の状況でミスが出来ない状況にある為、焦りはかなりのものであった。

 

対して花月も決して余裕がある訳ではなかった。何故なら、海常は黄瀬のパーフェクトコピーという最大の切り札があるからだ。未だ、止める算段が出来ていない以上、いずれ使ってくる試合終盤までに何とか逆転してリードを広げておきたい。

 

現状、試合は花月、海常共に点差も精神面もほぼ互角状況である。

 

「こっちだ!」

 

ここで氏原がスリーポイントラインからさらに2メートル程離れた場所まで動き、ボールを要求。

 

「…」

 

それを見て大地が急速に氏原との距離を詰める。

 

「よし、こっち!」

 

大地が氏原の動きに釣られて中のスペースを空けたの見て、黄瀬が中に走り込み、ボールを要求した。

 

「頼みます!」

 

すかさず小牧が中に切り込んだ黄瀬にボールを入れた。

 

「むっ!? 待て!」

 

直後、何かを察した三枝が制止をかける。

 

 

――バシィィィッ!!!

 

 

「あっ!?」

 

思わず小牧が声を上げる。

 

小牧がパスを出すのと同時に大地が急停止し、バックステップで急速バックしながら下がり、黄瀬の手に収まる直前のボールを弾いたのだ。

 

「ええで綾瀬! ほれ!」

 

ルーズボールを天野がすかさず拾い、竜崎にボールを渡す。

 

「速攻!」

 

ボールを受け取った竜崎が声を出し、ドリブルを開始。それに合わせて他の花月の選手達もフロントコートに向けて走り出す。

 

「行かせるか!」

 

センターラインを越える直前、氏原が竜崎の前に立ち塞がる。

 

「こっちだ!」

 

そこへ、走り込んだ空がボールを要求。竜崎に空にボールを渡す。

 

「…ちっ!」

 

空にボールが渡ると、氏原は空のチェックに向かう。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

「くっ…そ…!」

 

氏原がチェックに来ると、空は1度止まり、クロスオーバーで氏原の右側から抜き去る。氏原を抜き去った空はそのまま突き進み、ツーポイントエリアに切り込む。

 

「何度も決めさせると思うな空ぁっ!!!」

 

その時、咆哮を上げながら三枝が空の前に立ち塞がった。氏原を抜き去る際に立ち止まった隙にディフェンスに戻っていた。

 

「…」

 

目の前に三枝が現れると、空は三枝に背を向けるように振り返った。

 

「(振り返った? 何をする気じゃ!?)」

 

動きの予測を立てられない空。三枝は空の次の行動に注視する。

 

 

――スッ…。

 

 

空は三枝に背中を向けると、そのままリングに向かってボールを放った。

 

『っ!?』

 

すると、松永が走り込んできて、空が放ったボール目掛けて跳躍した。

 

「させんぞぉぉっ!!!」

 

しかし、三枝もこのパスに反応し、ブロックに飛んだ。

 

「勝てなくてもいいとは言ったがよ、負けっぱなしってのも癪だよな?」

 

空中で松永がボールを両手で掴む。

 

「純粋なパワーなら海兄には敵わないかもしれない。だが、助走の勢いが付いた松永に対して海兄は態勢が不十分。パワーの差を覆すには充分だ」

 

ゴール下まで走り込んでスピードと勢いのある松永に対し、三枝は空のパスに松永が飛び付いたのを見て慌てて後ろに飛びながらブロックに飛んでいる為、態勢が悪く、力が乗り切れていない。

 

「ぶちかましてやれ!」

 

「おぉぉぉぉぉーーーーっ!!!」

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

三枝のブロックもお構いなしに松永は両手で掴んだボールをリングに叩きつけた。やはり不安定な態勢ではブロックし切れず、吹き飛ばされてしまう。

 

『おぉぉぉぉぉーーーーっ!!!』

 

『あのブロックを弾き飛ばしてアリウープを決めやがったぁっ!!!』

 

派手なビッグプレーで観客は大歓声を上げた。

 

「うぉぉぉぉぉぉーーーっ!!!」

 

アリウープを決めた松永は珍しく拳を握りながら咆哮を上げた。やられ続けた三枝に対して一矢報いる事が出来、興奮が抑えきれなかったのだ。

 

遂に海常の背中を捉えた花月。今のアリウープによって士気も最高潮。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……クソがっ…! おどれやってくれたのう…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時、床に膝を付いていた三枝からとても低く、それでいて良く通る声で確かにそう聞こえた。

 

「…っ!?」

 

その声に反応した松永が視線を声のした方に向けると、思わず心臓を鷲掴みされたかのような感覚に襲われた。

 

「ワシがおとなしゅーしとったら調子腐りよって…」

 

三枝が静かに、ゆっくりと顔を上げ…。

 

「しごうしちゃるわ…!」

 

怒りの形相に、血走った目でそう告げたのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「彼(三枝)のデータを集める為にスペイン時代の事を調べたんだけど、こんなデータがあったの…」

 

そう言って桃井は自身の調べ上げたデータが記載されているノートを広げた。

 

「スペインでもここまでと同じく、基本的に恵まれた体格と身体能力、その姿からは似つかわしくないテクニックで戦う選手なんだけど、突然、人が変わったみたいにプレースタイルが変わる事があるの」

 

「…」

 

青峰がコートに視線を向けたまま桃井の話を聞く。

 

「それまでとは打って変わって身体能力任せの激しいプレーをするようになって、スペイン人のインサイドプレーヤーと激しくぶつかって、時には負傷退場者も出す事も…」

 

ここで桃井がノートをめくる。

 

「その姿はスペインではこう呼ばれているの」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ベルセルク…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





ある程度、リアルが落ち着き、執筆の時間が取れて来たのでゆっくりネタ集めが出来る…(ノД`)・゜・。

新たに姿を見せた三枝のモード・ベルセルク。イメージはテニプリのデビル赤也です(ただし、最初の目が赤くなるだけのバージョンの方です)。狂戦士が花月に牙を向く…、っと、珍しく次回予告…(;^ω^)

感想アドバイスお待ちしております。

それではまた!
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