黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

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投稿します!

いくらか暑さが和らいできた……かな?

それではどうぞ!



第130Q~最強のキセキ~

 

 

 

第4Q、残り3分29秒。

 

 

花月 98

海常 88

 

 

試合時間残り5分を切った所で黄瀬が自身の切り札であるパーフェクトコピーを仕掛けていた。しかし、空と大地がダブルチームでこれを封殺。逆に点差を広げた。

 

点差が12点のまで開き、海常に絶望の影が差し掛かったその時、黄瀬がダブルチームを突破、ブロックに飛んだ天野、松永を吹き飛ばしながらダンクを叩き込んだのだった。

 

 

「……くっ!」

 

ボールをキープする空。その表情に余裕は一切なかった。目の前には黄瀬。その黄瀬から発せられるプレッシャーに圧倒されているのだ。

 

「(まずい、このプレッシャー半端ねぇ! 少しでも気を抜いたら取られる!)」

 

必死にボールをキープする空。だが、今の黄瀬を目の前にして、それが精一杯だった。

 

「空!」

 

その時、大地が空のいる横の列まで下がり、ボールを要求した。

 

「(仕方ねえ、一旦大地にボールを渡して中に切り込む。いくら今の黄瀬でも俺と大地を同時にマークする事は出来ない)…頼む!」

 

ボールを掴んだ空が大地にパスを出す為にボールを掴んだ。

 

 

――バシィィィッ!!!

 

 

「なっ!?」

 

パスを出そうとボールを掴んだ瞬間、黄瀬が空の持っていたボールを叩いた。

 

 

「あれは、赤司のコピー!?」

 

火神が目を見開く。

 

 

 

今のは赤司のコピーをディフェンスで応用したのだ。弾いたボールをすぐさま黄瀬が拾い、そのままワンマン速攻に走った。

 

『行けー!!!』

 

海常ベンチから黄瀬に向けて声援が贈られる。

 

「行かせません!」

 

フロントコートに入り、スリーポイントライン目前で大地が追い付き、回り込んで立ちはだかった。

 

「…」

 

黄瀬も大地が現れると一旦足を止めた。

 

「くそっ、せめて失点だけでも防いでやる!」

 

僅かに遅れて空も戻り、再びダブルチームで黄瀬のディフェンスに入る。

 

「止められるものなら止めてみろ!」

 

そう宣言し、黄瀬が動く。

 

 

――ダムッ!!! …ダムッ!!!

 

 

「「っ!?」」

 

黄瀬がドリブルを始める。青峰のプレースタイルをコピーして仕掛けているのだが…。

 

「(…っ! 元の速さが上がってるだけじゃねぇ!?)」

 

「(この荒々しいハンドリングは…、青峰さんの動きに葉山さんのドリブルを複合させているのですか!?)」

 

異常とも言える黄瀬の激しいドリブル。青峰の動きをコピーしつつ、ボールを突く度に轟音がコート一帯に鳴り響いているのだ。青峰+葉山の複合。ただでさえ黄瀬本人が素早く変則的に動くのに、ボールはあり得ない程速く動き回っているのだ。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

一気に加速した黄瀬は2人の間を高速で駆け抜け、抜きさり、ボールを掴んだ。

 

「…くそっ!」

 

「まだです!」

 

それでも空と大地は諦めず、抜かれてもすぐさま追いかけ、ブロックに飛んだ。

 

「「っ!?」」

 

ここで再び2人は驚愕した。直前で黄瀬の前に回り込めた2人だったが、ボールを掴んだ黄瀬は回転しながら飛んでいたのだ。

 

「(これは、ドリブルしながらのトールハンマー!?)」

 

技の正体に気付いた大地。従来のゴール下から回転するのではなく、ドリブルしながらボールを掴んで回転してのトールハンマーだった。

 

「おぉっ!!!」

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

「がっ!」

 

「ぐっ!」

 

空と大地がブロックに来てもお構いなしにボールをリングに叩きつける黄瀬。2人は為す術もなく吹き飛ばされた。

 

「…」

 

床に着地した黄瀬は2人に一瞥もくれる事無くディフェンスに戻っていった。

 

「「…っ」」

 

思わず歯を食い縛る空と大地。

 

ドリブルしながらトールハンマーを打たれてしまえばタイミングを掴んでいた大地でもどうしようもなく、ひとたび飛ばれてしまえば2人がかりでもブロックは出来ない。

 

「…まだだ、まだ逆転された訳じゃねえ」

 

自分に言い聞かすように呟きながら立ち上がる空。

 

「今の黄瀬さんを止めるのは困難。ならば、こっちも同じく点を取るしかありませんね」

 

同じく立ち上がる大地。

 

「行くぞ!」

 

スローワーとなった大地からボールを受け取った空は声を出し、その声に反応した花月の選手達が一斉に走り始めた。

 

 

「はぁっ!? ここでラン&ガンとか何考えてんだ!?」

 

花月の取った戦法に池永が思わず声を出す。

 

「…残り時間を考えてもここは時間を使って確実に攻めるべきだ。少なくとも、俺ならそうする」

 

同様の意見であった新海が胸の前で腕を組みながら言った。

 

「確かに、今の黄瀬君を考えればそれが無難な選択だけれど…」

 

顎に手を当てながら思案しながら言うリコ。

 

「守り切るんじゃなくて、あくまでも点を取って逃げ切るって事か…」

 

花月の選択の真意を読み取った火神。その選択の行き先を見守るのだった。

 

 

「(チマチマ攻めてたらいつ黄瀬に捕まるか分からねえ。迂闊に対峙したらボールを取られかねねえ。だったら、時間をかけず、そうなる前に決める!)…大地!」

 

フロントコートに入るのと同時に空が大地にパスをする。

 

「…っ!」

 

大地にボールが渡ると、すかさず黄瀬がチェックに入る。

 

「空!」

 

黄瀬に完全に捕まる前に大地が空にリターンパスを返す。

 

「行かせねえ!」

 

「止める!」

 

空にボールが渡るのと同時に小牧と末広がディフェンスにやってくる。

 

「(この密集地帯じゃこのダブルチームを突破するのに時間がかかっちまう…)」

 

ツーポイントエリアでボールを受けた空。しかし、スペースが少なすぎて2人を抜きさるにはボールを止めて揺さぶりをかける必要がある。しかしそれでは黄瀬に捕まる。

 

「こっちです!」

 

同じく中に走り込んだ大地がボールを要求した。

 

「…」

 

空はそちらに視線を向け、パスを出した。

 

『っ!?』

 

ここで、海常の選手達が目を見開いた。ボールは、走り込んだ大地にではなく、生嶋に出したからだ。

 

「ナイスパスくー!」

 

左アウトサイドでボールを受けた生嶋はすぐさまスリーの態勢に入った。

 

「くそっ、打たせるか!」

 

近くにいた氏原がすかさずブロックに飛んだ。しかし…。

 

「あっ!?」

 

生嶋はボールを頭上に掲げただけでシュートは打たなかった。真横に1歩スライドした生嶋はそこでシュート態勢に入った。

 

「っ!? 待て、生嶋!」

 

その時、空が制止をかけた。

 

 

――バシィィィッ!!!

 

 

「…えっ!?」

 

ボールを放った瞬間、突如現れた1本の手によってボールは叩かれた。

 

「ウチはリョウタだけで試合しとるんちゃうんじゃ!」

 

ブロックしたのは三枝だった。小牧と末広がダブルチームに入った瞬間、密かにフリーとなる生嶋とその生嶋に一瞬視線を向けた空の姿を目の当たりにし、ゴール下から飛び出して一目散に走っていた。自身がマークしていた松永をフリーにするのは賭けだったが、三枝はイチかバチか賭けを打った。結果、賭けに勝った。

 

「ナイス海! …黄瀬!」

 

ルーズボールを抑えた氏原がすぐさま黄瀬にパスを出した。

 

「くそっ、裏を掻いたのに読まれちまった…! 戻れ!」

 

悪態を吐いた後、空が声を上げる。

 

「…っと」

 

フロントコートに入った所で黄瀬が立ち止まる。大地がここで黄瀬を捉え、ディフェンスに入っていたからだ。三枝がヘルプに飛び出したのを視認した大地はカウンターの可能性を予期して戻っていたのだ。

 

「(止められなくてもいい、最悪、ファールしてでも…!)」

 

味方がディフェンスに戻る時間だけでもと集中力を高めてディフェンスに臨む大地。

 

「…」

 

目の前の大地を見て黄瀬は無理に仕掛けず、足を止めた。

 

「すまねえ大地!」

 

直後に大地の横に並ぶ空。続いて花月、海常の選手達が次々とフロントコートに走り込んできた。

 

「「…」」

 

「…」

 

睨み合う空・大地と黄瀬。

 

「…」

 

ゆっくりとボールを突いていた黄瀬。突如として動き出し、仕掛けた。

 

「行かせ――」

 

切り込んできた黄瀬を追いかけるべく反転した空。しかし、そこに黄瀬の姿はなかった。

 

「っ!?」

 

振り返ると、先程立っていた位置よりさらに下がった位置に黄瀬はいた。

 

「(これは大地の!?)」

 

今起きた事の全容を理解した空。そう、これは自身の相棒である大地のコピーだ。

 

下がった位置でボールを掴んだ黄瀬はそこからシュート態勢に入った。センターラインギリギリにまで下がった為、空ではもうブロックには間に合わない。

 

「させません!」

 

黄瀬のバックステップをすんでの所で気付いた大地が今まさにシュートを放とうする黄瀬との距離を詰める。黄瀬がシュート態勢に入ると、大地はブロックに飛んだ。

 

「っ!?」

 

ブロックに飛んだ大地。ここで大地は自分の目を疑った。シュート態勢に入ったはずの黄瀬が、飛んでいなかったからだ。

 

「(フェイク!?)」

 

ここで大地は初めて黄瀬がシュートフェイクをかけた事に気付いた。

 

「一気に点差を詰めさせてもらうッスよ」

 

 

――ドン!!!

 

 

シュート態勢に入った黄瀬。ブロックに飛んだ大地にぶつかりながらボールを放った。

 

 

『ピピーーーーーーーーー!!!』

 

 

審判が指を3本立て、笛を吹いた。

 

ボールは高くループし、落下。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

そのままリングの中心に落下し、潜り抜けた。

 

『おぉぉぉぉぉーーーーっ!!!』

 

一連のプレーを見て観客が沸き上がる。

 

『ディフェンス、緑6番! バスケットカウント、ワンスロー!』

 

『っ!?』

 

花月にとって非情のコールを審判がする。

 

『キタ! スリーだぁっ!!!』

 

『しかもバスカン! これを決めれば4点差。もう射程圏内だ!』

 

スリーに加えてボーナススローを獲得。海常は一気に点差を詰めてきた。

 

『いいぞいいぞ黄ー瀬! いいぞいいぞ黄ー瀬!!!』

 

ベンチからもエールが贈られた。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

フリースローも黄瀬がきっちり決め、4点プレーを成功させたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「すごい…」

 

一連の黄瀬の躍動を見て桃井がただただ感嘆していた。

 

「高精度のフェイクを見せてさも切り込んだように見せてバックステップする事で綾瀬のプレーを再現しやがった。実際切り込んだ訳じゃねえがそう思い込ませる事が出来れば結果同じ事だ」

 

青峰が今のプレーの解説をする。

 

「最後、ミドリンのコピーの前…」

 

「五将の地のシュート。その前に高精度…紫原ん所の片目レベル…いや、それ以上のシュートフェイクを入れた。ここからでも引っ掛かりそうになったレベルだ。コートにいる奴らじゃ判別は無理だろうな」

 

「その前はむっくんのダンクの隙を無くす為に助走付けながらモーションに入って、さらにその前は大ちゃんのコピーに同じ無冠の五将の葉山さんのドリブルを複合させた…」

 

ゾーンに入ってからの黄瀬のプレーを振り返り、その凄さを改めて痛感した。

 

「ムムムッ、サッキマデ12点モリードガアッタノニモウ4点差ダ。ドウニカシナイト…!」

 

「無理だな」

 

アンリの言葉を遮るように青峰が否定した。

 

「今の黄瀬を止められる奴はいねぇ。例え、俺達(キセキの世代)でも、あの三杉や堀田だろうとな」

 

黄瀬を止める事が出来なければもはや試合は勝てない。だが、青峰はそれは無理だと断定する。

 

「…」

 

紫原は何も言わない。普段の彼であれば反論の1つでも入れただろう。だが、紫原自身も今の黄瀬を止める事が出来ないと理解していた。

 

「もう決まりかな?」

 

「あぁ。99%な」

 

桃井の質問に青峰はほぼ断定したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「…っ」

 

ボールを運ぶ空。その表情は険しかった。

 

「…」

 

目の前には黄瀬。一時は12点もあった点差があっという間に4点に。現状、黄瀬を止められず、さらに黄瀬から点が取れない。そろそろ攻守どちらかで突破口を開かないと敗北は必至。

 

「(敵は黄瀬だけじゃねえ。黄瀬の躍動でどいつも息を吹き返しちまってる。これじゃ迂闊にパスも捌けねえ…!)」

 

頼りの黄瀬が立て続けに止められて1度は士気が落ちかけた海常。しかし、黄瀬が躍進し始めて士気は今や最高潮だ。

 

「(俺が…俺が何とかしないと――っ!?)」

 

空が攻め手を定めていたその時、突然黄瀬が動いた。空のキープするボールを狙い打ったのだ。

 

「うおっ!?」

 

咄嗟に空は上半身を後方に倒しながらボールを横に流した。これを見た大地がその場から下がり、ボールを掴んだ。

 

「…っ!」

 

ボールを掴むと、小牧と末広が大地に対して激しくプレッシャーをかけた。

 

「…くっ!」

 

バチバチと身体がぶつかる程密着させ、ディフェンスをする2人。これではとてもじゃないがスリーは打てない。

 

「(……空いた!)」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

隙を伺っている大地。一瞬の隙が出来た瞬間、大地はロールしてダブルチームを突破した。

 

 

――バシィィィッ!!!

 

 

「っ!?」

 

次の瞬間、大地の持つボールを横から伸びてきた1本の手に叩かれた。

 

「視野が狭まってるッスよ。点差がなくなって余裕がなくなったッスか?」

 

ボールを叩いたのは黄瀬だった。

 

「(…まさか、トラップディフェンス!?)」

 

ここで大地は気付いた。先程のダブルチームに出来た隙は意図的なもので、全ては黄瀬が待ち受ける方向に切り込ませる為の罠。

 

「ハハッ! 俺達にだってこれくらい」

 

「ただやられるだけじゃないぜ」

 

したり顔で小牧と末広が言った。

 

「俺を意識してくれるのは嬉しいッスけど、海常は俺1人のチームじゃないッスよ!」

 

ルーズボールをすぐさま抑えた黄瀬はそのまま速攻に走った。

 

『来るか!? 4連続得点!』

 

立て続けの海常の得点に観客が沸き上がる。

 

「くそっ! これ以上は!」

 

「何としてでも!」

 

フロントコートに突入した黄瀬。持ち前のスピードで誰よりも速くディフェンスに戻った空と大地が黄瀬を待ち構える。

 

「…試合終盤まで全く落ちないそのスピードには正直脱帽するッス。けど…」

 

 

――ボムッ!!!

 

 

「「っ!?」」

 

2人の間にボールを叩きつけ、リング付近にボールを弾ませると、黄瀬がさらに加速して2人の間を抜け、フリースローラインからボールに向かって飛んだ。

 

『まさか…!?』

 

『レーンアップ1人アリウープ!?』

 

一部の観客が立ち上がりながら叫ぶ。

 

「んなのさせっかよ!」

 

「おぉっ!」

 

空と大地が反転し、黄瀬とリングの間にブロックに飛んだ。

 

「はぁっ!!!」

 

 

――ガシャン!!!

 

 

「なっ!?」

 

「っ!?」

 

ボールを右手で掴んだ黄瀬はそこからリングに向かって上からボールを投げつけた。ボールはリングの中心を猛スピードで通過し、床に叩きつけられて大きくバウンドした。

 

『おぉぉぉぉぉーーーーっ!!!』

 

その直後、会場が揺れる程の大歓声が上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「…火神君!」

 

「…あぁ。今のは、メテオジャムだ」

 

今のプレーを見た黒子と火神が思わず目を見開いた。そう、今黄瀬が披露したのは火神最大の必殺技であるリングの上からリングに向かってボールを叩きつける流星のダンク(メテオジャム)であった。

 

「…ドリブルしながらやる従来のと違って、あらかじめボールを弾ませておいて助走のスピードを付ける事で足りないジャンプ力を確保した」

 

技の本来の使い手である火神はドリブルしながら踏み切って行うが、黄瀬はボールを弾ませ、ボールを持たずに助走を付ける事で再現した。ドリブルしながらよりボールも何もない状態で助走を付けて飛べばある程度高く飛ぶ事が出来るからだ。

 

「とんでもないセンスだわ。もはや手の付けようもないわ」

 

冷や汗を流しながらリコが分析した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

第4Q、残り2分1秒。

 

 

花月 98

海常 96

 

 

「……ちっ!」

 

「……くっ!」

 

点差はこれで2点。スリーを決められれば逆転。この状況に思わず空は苦々しく舌打ちをし、大地は心痛な面持ちとなった。

 

「君達は強い。資質なら俺より上かもしれない。けど、俺には勝てない」

 

2人の方に振り向いた黄瀬が口を開く。

 

「俺は海常に来て、先輩達を見てきた。その先輩達が志半ばで無念の思いを抱えて引退してきた姿を見てきた」

 

「「…」」

 

「君達はまがりなりにも去年の夏を優勝して、その年の冬は緑間っちのいる秀徳に勝って青峰っちのいる桐皇を後一歩まで追いつめてる。引退した君らの先輩達だって満足してたんじゃないッスか? けど、俺の先輩達は違う」

 

「「…っ」」

 

黄瀬の言葉に2人は表情が曇る。

 

卒業していった花月の先輩達とて決して悔いはなかった訳ではない。だが、花月が急激に強くなったのは空達が入学してきてからだ。過去の実績から考えればこれ以上にない大健闘であり、悔い以上に満足な思いがあっただろう。しかし、海常が違う。全国常連の実績があり、全国の頂点に目指す彼らは優勝以外では満足出来ない。

 

「俺はその先輩達の無念をこのキャプテンマークと一緒に背負ってるんスよ。俺は誓った。引退していった先輩達に必ず海常を優勝させるって。だから俺は負けない。ただ勝ちたいだけの君達には絶対に負けない」

 

そう言い放ち、黄瀬は2人の横を通り抜けた。

 

「……ただ勝ちたいだけか」

 

黄瀬に言われた言葉を口に出す空。

 

「それの何が悪い?」

 

「…?」

 

空の言葉が聞こえた黄瀬は足を止め、振り返った。

 

「俺はあんた程の思いは背負ってないかもしれない。それでも、花月を優勝させたい気持ちは誰にも負けるつもりはねぇ」

 

「私達も誓ったのですよ。必ずあなた達キセキの世代を倒すと」

 

「誓った? 誰にスか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「俺(私)達自身にだ(です)!!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!?」

 

その時、2人の変化に黄瀬が気付いた。

 

「このまま終わらせねえ。勝つのは俺達だ」

 

「もう負けはいりません。絶対に勝ちます」

 

黄瀬の目をしっかり見据えながら空と大地はそう宣言した。

 

「…ふぅ、やれやれ。ホント君達は楽させてくれないッスね」

 

溜息を吐きながらやや自嘲気味に黄瀬が言う。

 

「上等ッスよ。ここまで来たら実力も実績も何もない。より勝ちたいと思う方が勝つ。だったら、勝つのは俺達だ!」

 

真剣な表情に改めた黄瀬が空と大地及び花月の選手に言い放ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

試合は遂に最大の佳境を迎える。

 

高校最強の敵となった黄瀬の猛威が襲い掛かり、2点にまで点差を詰められた花月。

 

そんな黄瀬率いる海常を倒す為、再び同時に扉を開いた2人が立ち向かうのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





少し短めですが、キリがいいので一旦ここまでです。

次話にて決着……出来るかも…(;^ω^)

感想アドバイスお待ちしております。

それではまた!
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