黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

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投稿します!

ネタが降りてきたー!!!

と言う事で行きます…(^_^)v

それではどうぞ!



第135Q~ペース~

 

 

 

『おぉぉぉぉぉーーーーっ!!!』

 

会場は大歓声が上がり、盛り上がりを見せている。

 

 

――ピッ!!!

 

 

洛山の選手達が高速でボールをパスを回し、チャンスを窺っている。

 

『…っ』

 

何とかこのボール回しに対応しようとしている花月の選手達。しかし、絶えず高速で動き回るボールに四苦八苦。少しでも気を抜けばボールを見失ってしまう。

 

「…」

 

ボールが赤司の手元に戻って来る。

 

 

――ピッ!!!

 

 

次の瞬間、ボールを前に勢いよく投げるように放った。

 

「っ!?」

 

ボールは空の顔スレスレを通り抜けていった。

 

「あっ!?」

 

投げられたボールは松永のマークをかわし、ゴール下に走り込んだ五河の手元に収まった。

 

「ナイスパス!」

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

そのまま五河はボースハンドリバースダンクを叩き込んだ。

 

『スゲー! 絶妙過ぎる!』

 

選手がフリーになった瞬間、その選手の手元に的確かつ高速のパスを届けた赤司。そのパスの正確さ的確さに観客がどよめいた。

 

 

「1本! 落ち着いて返すぞ!」

 

人差し指を立てながら空がボールを運びながらゲームメイクを始めた。

 

「…」

 

ゆっくりボールを運びながら攻め手を定める空。

 

「…」

 

目の前には赤司。ボールを突きながら時折一方の足に重心をかけたり、踏み込む素振りを見せたり等、牽制しながらドリブルをしている。

 

「……ふぅ」

 

一息吐いた空。直後…。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

バックチェンジでボールを左に切り返し、スライドするように身体を移動させる。

 

「…」

 

当然、赤司もこれに対応、ピタリと後を追う。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

もう1度バックチェンジで今度は右に切り返す。赤司も追いかける。

 

「…」

 

「…」

 

無言で睨み合う両者。

 

「(去年やった時からも分かっていたが、やっぱり赤司相手にセオリー通りのバスケやっても埒が明かねえ…)」

 

最高峰のテクニックに、恐らくキセキの世代の中でもっとも洞察力、頭脳が優れているであろう赤司。純粋な読み合いや駆け引きで勝負を挑んだら空が分が悪い。

 

「(なら、ここは俺らしく。…頼むぜ、みんな)」

 

心中で願掛けをする空。同時に両足を後ろに滑らせるよう下げ、前のめりに倒れ込むような態勢を取る。

 

「?」

 

この、空の突然の行動に赤司も面を食らう。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

すると、空は倒れ込む程の低い態勢から急発進。地面スレスレを滑走するかのように前へと突き進み、中へと切り込んだ。

 

「っ!?」

 

常識では考えられない空の低空ドライブ。予測の範囲外のドライブに赤司は抜きさられてしまう。

 

「くそっ、デタラメな奴め!」

 

「何度もやらせるか!」

 

動揺しつつも洛山の選手達の対応は早く、四条、五河がすぐさまヘルプに飛び出し、中で空を囲いにかかる。

 

「空!」

 

同時に中に走り込んだ大地がボールを要求。

 

「ここは通さねえ!」

 

しかし、大地をマークする三村がパスコースを塞ぐように並走していた。

 

「神城、1度戻して仕切り直せ!」

 

ベンチに菅野が大声で指示を出す。

 

「…」

 

行動が遅れれば中で囲まれてしまう。ここで空が取った行動は…。

 

 

――ボムッ!!!

 

 

「…なっ!?」

 

空はパスを出す。走る三村の股下でボールを弾ませながら大地に通したのだ。

 

 

――バス!!!

 

 

まさかの所からパスを出され、これには誰も対応出来ず、大地は悠々レイアップを決めた。

 

『何だ今のパス!? あり得ねえ所通しやがった!?』

 

『それもスゲーけどその前のドライブなんだよ!? 何であんな動きが出来んだよ!?』

 

意表を突くドライブとパスに、先程と同じように観客がどよめいた。

 

 

半ば始まったナンバーワンポイントガード対決。早くも両者の間で火花が散っていた。

 

 

――ピッ!!!

 

 

味方だけではなく、敵すらも巧みに操り、高速のパス回しの中でも冷静にフリーの選手を見つけ、抜群のタイミングと場所にボールを届ける赤司。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

エンドラインとサイドラインが交わるコートの端でフリーとなった二宮にボールが渡り、的確にスリーを決めた。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

オフェンスが花月に変わり、何度かボール交換をした後、自身の足で赤司を振り切った空が中へと切り込み、フリースローラインを越えた所でボールを掴んでリングに向かって飛んだ。

 

「何度も決めさせねえぞ!」

 

そこへ五河がヘルプに飛び出し、ブロックに飛んでシュートコースを塞ぐ。

 

 

――スッ…。

 

 

五河がブロックに現れると、空はボールを下げ、ブロックを掻い潜るようにかわす。

 

 

――ピッ!!!

 

 

そこからリングに視線を向けると、空はリングにではなく、右方向にボールを放った。

 

「なっ!?」

 

すると、ダブルクラッチを警戒してヘルプに来ていた二宮が声を上げた。

 

「ナイスパスくー!」

 

ボールは二宮がヘルプに飛び出した為、フリーとなっていた生嶋に渡った。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

先程の二宮と同じポジションでフリーとなった生嶋が悠々とスリーを決めた。

 

 

その後花月は空、洛山は赤司を起点に得点を重ねていった。

 

赤司がハイポストに立つ四条にパスを出し、直後に四条に向かった走り、ボールを直接貰いに行った。

 

「ちっ、スイッチ!」

 

四条がボールを差し出し、そのボールを受け取る赤司。ボールを渡すのと同時に空へのスクリーンもこなし、空は追走の邪魔が入り、指示を出す。

 

「今度こそ!」

 

その指示に松永が動き、ヘルプに入る。

 

 

――スッ…。

 

 

ボールを受け取ったすぐさま赤司はボールを掴み、膝を曲げた。

 

「(打ってくる!? またフローターか!?)」

 

先程ブロックを越えて決められたティアドロップを警戒する松永。赤司のボールを放つ瞬間に照準を合わせる。そして赤司が飛んだ。

 

「打たせ――っ!?」

 

タイミングを合わせてブロックに飛んだ松永。しかし、目を見開く。右手を頭上に構える赤司だったが、その右手にボールはなかった。左手で持ったボールを横へトスするように放った。

 

「ナイスパス!」

 

そこへ、先程ハイポストで赤司への中継とスクリーンをした四条が走り込んでいた。

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

そのままリングに向かって飛んだ四条がワンハンドダンクを叩き込んだ。

 

『おぉぉぉぉぉーーーーっ!!!』

 

「…くそっ」

 

ティアドロップを警戒し過ぎてパスを許してしまった松永は悔しさを露にする。

 

「今のはしゃーない。切り替え、取り返すで」

 

松永の胸にコツンと拳を当てながら天野が励ます。

 

 

花月のオフェンスに変わり、空がボールを運ぶ。

 

「…」

 

赤司の目を見据えながらドリブルをしている。

 

 

――キュッ!!!

 

 

左足を踏み込み、牽制を入れ、直後、ボールを掴んで右へと飛ぶ空。

 

 

――ピッ!!!

 

 

飛びながら中へとループの高いパスを放った。

 

「っ!?」

 

松永が経つローポストに放られたボール。松永が咄嗟に腕を伸ばすがボールは伸ばした手の上を越えていった。

 

『うわーもったいねえ、パスミスだ!』

 

パスを受け取れなかったのを見て観客から溜息が漏れる。

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

『っ!?』

 

だがその直後、観客は度肝を抜かれた。ボールがバックボードに当たる直前、抜群のタイミングで走り込み、飛んだ大地がボールを右手で掴み、そのままリングに叩きこんだのだ。

 

『嘘だろ!?』

 

パスミスかと思われた空のパスが実は大地へのパスだった事が分かり、観客は驚きを隠せなかった。

 

「あー焦ったー」

 

「ったく、心臓に悪い」

 

それは観客ばかりではなく、パスミスだと思った生嶋と松永も同様であった。

 

「ナイス。よく走り込んでくれた」

 

「あなたとは長い付き合いですからね。何となくそこに走り込めばパスが来る気がしました」

 

ハイタッチを交わす空と大地。事前に打ち合わせをした訳でもなければ合図を出した訳でもない。長い付き合いの2人だから出来る阿吽の呼吸であった。

 

「…」

 

そんなやり取りをする2人を、赤司が無言で視線を向けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

洛山のオフェンス。赤司がフロントコートまでボールを運ぶ。

 

「…止める」

 

待ち受けるのは空。集中力を高めた空が腰を落としてディフェンスに臨む。

 

「…いいディフェンスをするようになった。去年はまだ粗削りでセンス任せであったが、…なるほど、さすがは上杉の教え子だ。よく鍛えられている」

 

相手ベンチに座る上杉に視線を向けながら称賛する洛山の監督である白金。

 

「…」

 

ゆっくりとドリブルをしながら攻め手を定める赤司。

 

『スゲーディフェンス。あれじゃ抜けねえぞ…』

 

空のディフェンスの上手さを感じ取った観客が声を上げる。

 

「……甘いな」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

一言そう呟くと赤司は空の横を駆け抜けていった。

 

「っ!?」

 

抜きさられた空は目を大きく見開きながら振り返る。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

直後に急停止し、ヘルプが来る前にクイックリリースのジャンプショットを決めた。

 

「…今の、キャプテンに隙でもあったか?」

 

ベンチで見ていた竜崎が思わず立ち上がりながら呟く。

 

「赤司には見えたのだろう」

 

胸の前で腕を組みながら上杉が言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

ここで第1Q終了のブザーが鳴った。

 

 

第1Q終了

 

 

花月 17

洛山 21

 

 

両チームの選手達がベンチへと下がっていく。

 

 

「…おっ? ちょうど第1Qが終わった所か」

 

第1Q終了のブザーと同時に青峰と桃井が会場入りをした。

 

「青峰っちー! 桃っちー! こっちッスよー!」

 

観客席に座っていた黄瀬が2人を見つけ、呼んだ。

 

「おーサンキューな黄瀬」

 

「2人共遅いッスよー。たださえ檄混みなのに1人で3人分席取ってたから超睨まれたんスよ?」

 

到着の遅い2人に抗議をする黄瀬。

 

「ちょっと聞いてよきーちゃん! 大ちゃんたらひどいんだよ!? せっかく早めに会場に付いたのに突然何処かに寄り道しだしたと思ったら、わざわざ本屋探して写真集買いにいってたんだよ!?」

 

肩をいきり立たせながら桃井が黄瀬に愚痴る。

 

「写真集って、もしかして青峰っちの大ファンのあの娘のッスか? そんなの後でいくらでも買いに行けるじゃないッスか」

 

それを聞いた黄瀬は呆れていた。

 

「売り切れるかもしんねえだろうが。って言うか、どうせ第1Qじゃ特に動きなんてねえだろうから見なくてもいいだろ」

 

抗議と呆れの言葉を小指で耳を掻きながら鬱陶し気に返す青峰。

 

「まあ、確かに派手な動きはなかったッスけど、それでも見所はあったッスよ? 最初の先取点争いとか…」

 

「…」

 

黄瀬が第1Qの試合内容をダイジェストで話す中、青峰は得点掲示板に視線を向けた。

 

「…4点差か」

 

「点差自体は大した事ないッスけど、試合は完全に洛山ペースッスよ。花月はペースを握られてるけど、それでも神城っちは赤司っちを相手にしながらよくやってるッス」

 

「ほう」

 

黄瀬の説明を聞いて青峰が唸るように返事をする。

 

「赤司っちは相変わらずッスけど、他の選手もかなりやるッスね。個々の力はかなりものッスよ」

 

「お前がそこまで言う程か」

 

「って言うか、二宮君も三村君も四条君も五河君も中学時代の同級生で元チームメイトだからね?」

 

他人事のように言う2人に桃井がツッコミを入れる。

 

「そのはずなんスけど、俺いまいち覚えてないんスよねー。あれだけ実力があったなら顔くらい覚えてるはずなんスけど…」

 

「まあ大ちゃんは中学の途中から練習に一切顔ださなくなったし、きーちゃんもサボりがちだったから。…でも、当時から今ほどじゃないけど上手かったよ? 多分、中学最後の年の全中大会は仮に大ちゃん達(キセキの世代)がいなくても優勝出来たくらいには」

 

桃井が当時を思い出しながら語っていく。

 

「洛山に入学してからかなり伸びたみたいで、実渕さんや葉山さんや根布谷さんがいたから出場機会は少なかったけど、それでも1年生の時からベンチ入りしてたし、私の調べた限りだとあの4人の総合的な実力はその3人に引けを取らない程に強くなってる」

 

「…ふん」

 

鞄からノートを取り出して説明をする桃井。青峰は鼻を鳴らした。

 

「パス回しがとにかく凄いッス。ビュンビュンボール回して気が付いたらノーマークの選手にボールが回って点が決まるんスよ。ここから見てたら圧巻ッス」

 

「…」

 

「観客席から見てても戸惑うくらいッスから、コートで戦う花月にはそれ以上の衝撃のはず。でも、俺は花月を応援するッスよ。なんせ俺達に勝ったチームなんスから。何としてでも勝ってもらわないと」

 

「俺は負けてねえ。むしろ勝ってんだよ」

 

冷ややかにツッコミを入れる青峰だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

花月ベンチ…。

 

「悪くねえぞ。充分あの洛山と張り合えてるぜ!」

 

戻ってきた選手達を菅野がタオルと飲み物を渡しながら労った。

 

「……ふぅ」

 

ベンチに腰掛けるなり空がタオルを被り、大きく息を吐いた。

 

「…やっぱり、赤司先輩の相手はきついですか?」

 

その様子を見た竜崎が尋ねる。

 

「それもなくもねえが、何と言うか、今日の試合はやけにやり辛い。そこまで点が入ってる訳じゃねえのにいつもより疲れるというか…」

 

汗をタオルで拭う空。

 

「赤司だな」

 

空の言葉に上杉が口を挟んだ。

 

「赤司に試合をコントロールされている。今の試合のペースは完全に洛山のペースだからな」

 

花月のバスケは機動力を生かしたオフェンス型のハイスピードバスケ。だが今はその足が止められ、自分達のペースに持ち込めていない。

 

「このままこのペースのまま試合を続ければ点差は大きく開く事はないかもしれないが、確実に開いちまう」

 

ボクシングで例えるなら花月が得意とするのは互いに足を止めての殴り合い。つまりインファイト。花月のオフェンス力を生かした存分に生かしたスタイルだ。だが、この試合では互いに足を使って一定の距離を保ちながら拳を交換し合う言わばアウトボクサーの戦い方。洛山の得意としているスタイルである。

 

選手全員がオールラウンダーである洛山相手に今のまま試合が進めば点差は自ずと開いていく。

 

『…』

 

何かこの流れを変える一手がないかと考える花月の選手達。

 

「第1Qを見ていて分かった事があります」

 

沈黙の中、姫川が口を開く。

 

「昨日の試合もそうでしたが、洛山の選手達はパスを出すのに迷いがないんです」

 

「迷いがないやて?」

 

口を挟む天野。姫川は説明を続ける。

 

「はい。あまりにも迷いがなさ過ぎる。つまり、あのボール回しはかつての大仁田のような広い視野とパスセンスによるものではありません」

 

「それじゃあ、あのボール回しはどういう絡繰りなんだ? あんなハイスピードのパス回しが毎回上手く行くはずが――」

 

「セットオフェンス、ですね」

 

ここで大地がそう発言した。

 

「そうか、予め決められていた動きをしていたのか。…けどよ、俺の勘違いでなければ洛山の連中の動きは毎回違ってなかったか?」

 

1度は納得した菅野だったが、再び疑問に行き着き、尋ねた。

 

「ナンバープレーか」

 

その疑問の答えが分かった空が答えを言った。

 

「…そういえば、赤司はボールを運ぶ度に変な動きをしていた気がする」

 

ここで空も赤司の違和感を覚える動きを思い出した。

 

「そう。昨日の試合映像をミーティングの後確認してみると、赤司さんが何らかのハンドシグナルを合図に洛山の選手達が動き出し、得点まで繋げています。今日の試合もここまでは昨日と同様です」

 

「と言う事は、赤司の出すサインとそこからの動きのパターンを見破ればいいわけか! それが分かれば――」

 

「ところが、そう簡単には行きそうにはありません」

 

光明が見えてテンションが上がる菅野だったが、姫川が表情を暗くしながら遮った。

 

「昨日の試合と今日の試合、ここまでの洛山の動きは全て違っていました。赤司さんのサインについても、昨日出したものと同じサインもあったのですが、動きは異なっていました。私がサインを見落としているのではなければ昨日と今日とではサインのパターンが変わっているのだと思います」

 

「マジかよ…」

 

姫川の言葉を聞いて菅野が頭を抱える。

 

「ちなみにパターンはナンボあったん?」

 

「正確な数かは分かりませんが、私が確認出来ただけでも10パターン以上は…」

 

「嘘やろ!?」

 

動きのパターンの数を聞いて思わず立ち上がる天野。

 

「ありえん話ではない」

 

ここで話を聞いていた上杉が口を開いた。

 

「洛山はもともと、圧倒的な運動量と、培ってきた経験と戦略で優勝を重ねてきたチームだ。それこそセットプレーの数は10や20程度ではないだろうな」

 

「っ!?」

 

上杉の話を聞いて菅野は言葉を失った。

 

「…洛山はもれなく全員が中からでも外からでも点が取れるからのう。的が絞れんと来とる。厄介やのう」

 

溜息を吐く天野。

 

「…どうする?」

 

松永が皆に問いかける。

 

「…」

 

暫しの無言の末、空が口を開いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

洛山ベンチ…。

 

「点差は4点と食いつかれたが、想定内だ。ここまでは事前に立てたプランどおりだ」

 

ベンチに座る選手達。選手達の前に立つ白金。

 

「…さすが、あいつら(キセキの世代)と対等にやり合っただけの事はある。1ON1スキルはもはや遜色ねえ」

 

タオルで汗を拭いながら四条が印象を語った。

 

「驚いたのは神城だ。正直、スコアラー型のポイントガードかと思ったが、しっかりゲームの組み立てが出来てる」

 

「しかも動きも考えも読めない。あんなタイプは初めてだな」

 

二宮と五河が司令塔としての空を称賛する。

 

「赤司、神城の相手はどうだ?」

 

「あぁ、今までマッチアップした事がないタイプだが、問題ない」

 

「そうか、聞くだけ野暮だったな」

 

調子を尋ねた三村。赤司は淡々と答えた。

 

「第2Q、予定通り次のプランに移行する。細かい指示は赤司に任せる」

 

「分かりました。……ふぅ」

 

第2Qからの指示を出す白金。

 

「(…赤司の息が弾んでいる。まだ第1Qを終えたばかりだと言うのに。やはり、赤司と言えど神城の相手をするのは簡単ではないと言う事か)」

 

僅かに息を弾ませている赤司を見た白金。

 

「(…なるほど、お前の所で育っただけの事はある。なかなかに厄介な相手だ)」

 

相手ベンチに視線を向ける白金。そこに立つ旧知の仲である上杉に視線を向けたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

インターバル終了のブザーが鳴り、両チームの選手達がコートへと戻ってくる。両チームともメンバーチェンジはなし。

 

「っしゃ行くぞぉっ!!!」

 

『おう!!!』

 

気合い充分の空が声を出し、選手達が応えた。

 

審判から生嶋にボールが渡され、生嶋が空にパスを出し、第2Qが始まった。

 

「…」

 

「…」

 

対峙する空と赤司。洛山のディフェンスは変わらずマンツーマンディフェンス。マッチアップの変更もない。

 

「…」

 

空は何か仕掛ける事もなく、大地にパスを出した。

 

「…来たか」

 

ボールの先、マッチアップをしている三村が集中力を高めながら呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

インターバルが終わる直前の事…。

 

『大地、任せていいか?』

 

空がそう口を開いた。

 

『このままじゃジリ貧だ。ここは俺が何とかしてやる。…って、カッコ付けたい所だけど、正直、赤司を相手にしながらだとしんどい。だから、任せていいか?』

 

『えぇ、もちろんです。あなたばかりに重荷は背負わせません。私がこの状況を打破してみせます』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「(やっぱり綾瀬で来やがったか…)」

 

三村が心中で呟く。

 

『恐らく、花月は綾瀬にボールを集めてくる。マークはお前だ。任せるぞ』

 

インターバルの時に赤司にそう言った。

 

「止めてやる。お前には仕事はさせないぜ」

 

腰を落とし、近過ぎず、遠過ぎずのドライブとスリーの両方に対応出来る距離を取り、三村はディフェンスに臨むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「三村彰人君。何でも出来るオールラウンダーだけど、赤司君を除けば4人の中でもっともディフェンスが上手い選手だわ」

 

「確かに、良いディフェンスしてるッスね」

 

黄瀬の目からもそのレベルの高さを窺えた。

 

 

「…」

 

「…」

 

コートでは、大地が小刻みにボールを動かしながら牽制し、三村はこれに対応している。

 

 

「…ふーん、さつきが言うだけの事はあるかもな」

 

2人の対峙を見ながら青峰が呟く。

 

「けどまあ、今のあいつ(大地)相手じゃ意味ねえだろうけどな」

 

 

 

――ダムッ!!!

 

 

機を見て大地が切り込んだ。

 

「(速い! だが、この程度!)」

 

切り込む速さに一瞬面を食らったものの、タイミングを読み切った三村は並走して追いかける。

 

 

――キュキュッ!!! 

 

 

直後、大地は急停止し…。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

高速バックステップ。三村との間に距離が生まれる。

 

「(なっ!? あのスピードを一瞬で殺すだけじゃなく、あんなスピードで下がるのか!?)」

 

ドライブを仕掛けた大地を追いかけようとした瞬間、大地の姿を見失い、気付いた時には大地は1メートル以上離れた場所にいた。

 

「…くっ!」

 

慌てて距離を詰める三村。大地はボールを掴み、フェイダウェイで後ろに飛びながらクイックリリースでジャンプショットを放った。

 

 

――バス!!!

 

 

ボールはバックボードに当たりながらリングを潜り抜けた。

 

『出た!!! 綾瀬の高速バックステップからのクイックリリース!!!』

 

『あんなの止められねーよ!!!』

 

今や大地の代名詞となっているドライブ→急停止からのバックステップ→クイックリリースでのフェイダウェイシュートが決まり、観客が沸き上がった。

 

 

「うはー、いきなり大技で決めてきたッスねー。しかもバンクショット。相変わらず派手っスねー」

 

苦笑しながら黄瀬が感想を述べる。

 

「…けど、わざわざあんな大技見せる必要あったのかな? 自信があったにしても外れる可能性だってあるのに」

 

「ふん。あいつ、勝負ってものをよく理解してやがるな」

 

1つの疑問を口にした桃井。青峰が背もたれに体重を預けながら話し始めた。

 

「早々に格付けを済ませたんだよ」

 

「格付け?」

 

「最初から大技で力の差を見せつけた。今のプレーはあの6番(三村)じゃまず止められねえ。それを理解させる事で戦意を奪いに行った」

 

「「…」」

 

黄瀬と桃井は青峰の説明に耳を傾けた。

 

「高速のパスワークってのは5人の歯車を嚙合わせるのが必須だ。だが、1つでも歯車が狂えばチーム全体に影響が出る。そうなれば、ディフェンスでもアドバンテージが取れる」

 

「なるほど…」

 

解説を聞いて桃井が納得する。

 

「目の前の相手は潰せる時に潰すのが定石だ。チマチマ出し惜しみして機会を逃すなんざバカのやる事だ。…なるほど、紫原、灰崎、それにお前(黄瀬)とやり合って一皮剥けたみたいだな」

 

コート上のディフェンスに戻る大地を青峰は見つめたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「…」

 

コート上の三村は下を向きながら拳を強く握りしめていた。

 

「(…っ、またあの領域の人間か…!)」

 

あの領域…、それはキセキの世代の立つ領域の事である。かつて、中学時代のチームメイトであるキセキの世代の立つ領域。1度は自分を絶望の淵まで落とす事となった絶大なる壁。

 

「…っ」

 

思わず叫び出しそうになったが、顔をパンパンと強く叩き、どうにか堪えた。

 

「…フー、っしゃ、オフェンスだ。取り返すぞ」

 

1度深く深呼吸をして心を落ち着け、三村はオフェンスへと参加していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「…」

 

洛山のオフェンスに切り替わり、赤司がボールを運ぶ。

 

「…来い」

 

待ち構えるのは空。一言そう告げて、ディフェンスに臨む。

 

「…」

 

 

――スッ…。

 

 

右手でドリブルをする赤司。おもむろに左手を上げる。

 

「っ!?」

 

その動きに空が注視する。

 

「…フッ、どうやら俺達のパスワークのカラクリには行き着いたようだね」

 

「おかげさまでな。うちには優秀なマネージャーがいるんでね」

 

空の反応を見てハンドシグナルでセットオフェンスの指示を出していた事を気付かれた事に気付いた赤司。

 

「姫川梢。女子バスケットにおける2人の天才の1人か。もう1人に才能では後れを取るものの努力と相手の分析を重点にする事でその差を埋めた選手か」

 

チラリと花月ベンチに視線を向け、赤司は姫川の姿を確認した。

 

「ならば、もうコソコソサインを出す必要はないな。ここからは堂々とサインを出そう」

 

「良いね。こっちとしてはありがたい限りだ。どれだけパターンがあるか知らねえが、全部止めてやるぜ」

 

薄く笑みを浮かべる赤司。対する空も不敵な笑みを浮かべながら宣言する。

 

「ではやってみるといい――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――53」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤司がセットプレーのナンバーをコールした……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





試合の4分の1が終了です。今回の試合は準々決勝程長引かずにパッパッと終わるかも…ってこれ毎回言ってるな…(;^ω^)

個人のテクニックならまだしも、チーム戦術となると、経験者ではない自分ではかなりハードルが高いです。戦術をググっても頭で映像として浮かばず、この辺が辛いです…(>_<)

またこれからバスケのお勉強です…(^_^)/

感想アドバイスお待ちしております。

それではまた!
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