黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

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投稿します!

朝の冷え込みがシャレにならないレベルになってきた…(;^ω^)

それではどうぞ!



第141Q~暗雲~

 

 

 

第3Q終了。

 

 

花月 65

洛山 64

 

 

第3Qが終了し、ベンチへと戻って来る花月の選手達。

 

「くそっ! 何やっとんねん俺は…!」

 

ベンチに座るなり頭を抱えながら自分自身に憤る天野。コート上の花月の最上級生であり、インサイド及びディフェンスとリバウンドの要である天野が一時離脱する事でチームに与える影響は大きい。

 

「…すまない。これは俺のミスだ」

 

選手達に謝罪をする上杉。赤司にフリースローを与えてしまったファールの時点でこの状況は頭によぎっていた。しかし、流れが花月に向いているこの状況で天野を引っ込めてしまっては良い流れを壊しかねない。その為、交代を見送ったのだ。しかし、それが裏目に出てしまった。

 

「謝らんといて下さい! 悪いのは俺ですわ!」

 

謝罪する上杉を慌ててフォローする上杉。

 

「天野、交代だ。一旦お前を下げる。…竜崎、すぐに出られる準備をしておけ」

 

「…えっ、俺ですか?」

 

指名された竜崎が思わず疑問の声を上げる。

 

インサイドの要の天野を引っ込めるなら室井を投入し、松永にパワーフォワードにし、室井をセンターに置くのが最良のはず。

 

「室井も既に2つファールをしている。ここで出せば確実に狙われるだろう。そうなればインサイドは完全に瓦解する。それだけ避けなければならん」

 

天野と松永程深刻ではないが、室井もファールを2つ犯しているのだ。試合に出せばディフェンスの穴としてだけではなく、ファールも狙ってくるだろう。もし、室井までファールトラブルに陥れば花月のインサイドは完全に死んでしまう。それを防ぐ為、上杉は竜崎を指名したのだった。

 

「っ!? すぐに準備をします!」

 

状況を理解した竜崎がすぐにユニフォームの上に来ていたシャツを脱いで準備を始めた。

 

「ディフェンスはこれまでどおり、2-3のゾーンディフェンス。前に神城と綾瀬。後ろに生嶋、松永、竜崎だ」

 

『はい!』

 

「松永、しばらくお前の負担が増えるだろうが、踏ん張ってくれ」

 

「はい、任せて下さい!」

 

任せられた松永は気合いの籠った返事をした。

 

「竜崎、向こうが綾瀬に引き続きダブルチームで来るようならお前がフリーになる機会も増える。これまでと同じ、空いたら即座に狙っていけ」

 

「はい!」

 

「綾瀬、恐らく赤司は第4Qからエンペラーアイを解禁してくるだろう。そうなれば神城は赤司を相手するだけで手一杯になるだろう。お前もダブルチームで苦しい状況だが、今の状況を打破出来るのはお前しかいない。任せたぞ」

 

「はい。やってみせます」

 

真剣な表情でしっかりと大地が返事をした。

 

「ちぇ、赤司が相手でもやってやるのに…」

 

ただ、空は拗ねたような口調でボヤいていた。

 

「まあいいや。…なんにせよ、逆転した事には変わりない。残りはたった10分。天さんだってもう試合に出られない訳じゃない。まだ俺達に流れは残ってる。最後まで走って洛山を倒すぞ!」

 

『おう!!!』

 

ベンチから立ち上がった空が選手達に振り返り、檄を飛ばすと、選手がこれに応えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

洛山ベンチ…。

 

「よーし、良くやったぞ四条!」

 

「あいつには何度も煮え湯を飲まされたからな。このくらいは…。それにこれは俺の手柄じゃなくて…」

 

天野を4ファール目に追い込むきっかけを作った四条に対し、二宮が労う。四条は謙遜しつつ視線をとある人物に向けた。

 

「予定通り、向こうの生命線の1つである天野をファールトラブルに追い込めた。四条、…そして赤司、良くやった」

 

白金が四条と赤司を労った。

 

実は天野をファールトラブルに追い込むプランは試合前に進めるはずだったプランにはなかった事である。全ては第2Q終了後のハーフタイムの時の事…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

「こちらには心もとないが、13点もの貯金がある。第3Qはこの貯金を有効に使う。点差は縮まるだろう。もしかしたら逆転されるかもしれんが、仮にそうなっても決して慌てるな。最初の10分は我慢の10分だ。ここを凌いで最後の10分でトドメを刺す。いいな」

 

『はい!』

 

そう白金が選手達に指示を出した後の事…。

 

「監督」

 

赤司が白金に話しかけた。

 

「何だ赤司。何か不服でもあるのか?」

 

この指示に納得していない事を悟っていた白金は棘のある物言いで赤司に返事を返す。

 

「いえ、そういう訳ではありません。…ただ、みすみす相手に点差を縮められ、得点を与えるだけというのはあまりにも芸がありません」

 

「ほう」

 

「相手の生命線をコートから追い出します」

 

低く返事をした白金に対して赤司が続けて言葉を続ける。

 

「生命線と言うと、神城か綾瀬を狙うのか?」

 

生命線と聞いて、花月のキーマンである空と大地の2人の名前を挙げる三村。

 

「違う。あの2人ももちろん替えの効かない生命線だが、その2人と同等かそれ以上に重要な役割を持つ選手がいるだろう」

 

「あの2人以外で…」

 

なぞなぞのように問いかけられ、二宮が頭を巡らせる。

 

「天野か…」

 

その答えに行き着いた四条が呟いた。

 

「そうだ。奴は神城と綾瀬と同等…いや、それ以上に花月に欠かせない選手だ。奴をベンチに退けばそれだけで花月の戦力は落ちる」

 

ディフェンスとリバウンド。オフェンスではスクリーンとポストプレー等、天野のチームにもたらす貢献度は高い。

 

「奴をファールトラブルに追い込む。それはこの僕がお膳立てをしよう」

 

自らの胸に手を当て、役割を担う事を宣言する赤司。

 

「天野のファール数は今の時点で2つ。後、センターの松永も2つのファールが記録されてますが、どうしますか?」

 

スコアブックを読み上げながら尋ねる洛山の記録係。

 

「奴は1つ取れれば充分だ。それ以上は無理に取りに行かなくてもいい」

 

そう返事を返す赤司。

 

「…うむ。却下する理由は見当たらないな。良いだろう。その案を採用する」

 

顎に手を当てながら今挙げられた案を吟味し、白金は採用した。

 

「では第3Qは相手の勢いを受け止めつつ、天野を狙う。細かい指示は赤司に任せる。いいな」

 

『はい!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

これが、ハーフタイム中に急遽決まった事であった。

 

「向こうは確実に天野を終盤の勝負所まで下げてくるだろう」

 

「そうなると、代わりに出てくるのは室井か…」

 

「いや、恐らく出てくるのは竜崎だろう。松永も予断を許されない状況だ。もしファールをしてしまえば花月のインサイドは終わりだ。私なら出さない。向こうの監督もそうするだろう」

 

室井と交代を予想した三村だったが、白金が否定した。

 

「どうする? 松永も狙うか?」

 

狙う…、つまり4ファールに追い込むと言う事である。五河が尋ねる。

 

「いや、無理に狙わなくていい。取れても劇的な効果は得られないだろう。優先すべきは再び逆転し、リードを広げる事だ」

 

五河が出した提案を却下する赤司。

 

「第4Qは花月にトドメを刺す。充と大智は中から積極的に狙っていけ」

 

「おう」

 

「分かった」

 

「秀平と彰人も、中に注意が向けば外の警戒は緩くなる。僅かでも外でフリーでボールを保持したなら積極的に打っていけ。外しても構わない。決まるまで何度でも打て」

 

「了解」

 

「任せろ」

 

赤司が選手達に指示を出していった。

 

「僕の失態によって逆転されてしまったが、ここまで良く踏ん張ってくれた。感謝する」

 

そう言って赤司が頭を下げた。

 

『…っ』

 

この赤司を知る選手達からすればあり得ない光景に思わず驚く。

 

「残りは第4Qの10分だ。力の差を見せつけ、僕達が最強である事を証明するぞ」

 

『おう!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「さすが赤司っち。ただでは転ばなかったッスね」

 

花月の勢いをただ受け止めてるだけかと思っていた所に天野を始めとしたインサイド陣のファールトラブルに追い込んだのを見て感心する黄瀬。

 

「もしかして、第3Qからエンペラーアイを使わなかったのもわざと?」

 

「いや違うな。神城に対抗しようと乱発したのは間違いなく赤司のミスだ」

 

桃井の推測を青峰が否定する。

 

「だが、赤司はそのミスすら利用した。花月の勢いを逆手に取って天野をコートから追い出した」

 

「昨日の準決勝の試合を見直して気付いたんスけど、あの天野って人、地味に活躍してたんスよね。俺も結構彼のディフェンスには苦労させられたし」

 

黄瀬は昨日の試合での天野の感想を述べた。

 

「大ちゃんも去年、最初はそれなりに抑えられてたよね」

 

「まあ、確かにやる気がなかったとは言え、俺相手にそこそこやってやがったな」

 

青峰はかなり素直ではないが、天野を評価した。

 

「だが、あいつがしばらく引っ込むとなると、花月はかなり追い込まれるだろうな」

 

「「…」」

 

「あいつがベンチにいる間は確実に点差は開く。花月はどこまで傷口を浅く抑えられるかにかかってる」

 

「けど、花月には神城っちと綾瀬っちがいるッスよ! あの2人なら…!」

 

花月の劣勢を断ずる青峰に対し、黄瀬は空と大地に希望を見出す。

 

「…いや、恐らくあいつらがいても点差は開く。ま、見てりゃ嫌でも分かるだろうよ」

 

その希望も青峰は否定したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

インターバル終了のブザーが鳴り、両校の選手達がコートへと戻って来る。

 

 

 

OUT 天野

 

IN  竜崎

 

 

『やっぱり7番(天野)を下げて来た!』

 

『けど、代わりに出るのは、10番(竜崎)?』

 

天野が1度ベンチに下がる事は予想していたが、代わりに竜崎が出てくる事は予想外だった為、軽く会場がざわつく。

 

「っしゃ行くぞ!!!」

 

『おう!!!』

 

空の気合いの籠った檄に、続く選手達が応える。

 

「…」

 

生嶋が審判からボールを空のパスを出し、第4Qが開始された。

 

『おぉぉぉぉぉーーーーっ!!!』

 

『泣いても笑っても最後の10分! どっちが勝つんだ!?』

 

同時に観客が沸き上がった。

 

「…」

 

ボールを運ぶ空。スリーポイントライン1メートル程の所までボールを運ぶと、赤司が立ち塞がった。

 

 

「最終Q最初の攻撃。第3Qまでの流れを切らさない為にもここは時間をかけて慎重に確実に決めたいトコッスけど…」

 

「…」

 

黄瀬も青峰も注目している。

 

 

「…」

 

「…」

 

睨み合う空と赤司。

 

『…っ』

 

その光景を固唾を飲んで見守る観客達。

 

「…っ」

 

ここで空が動いた。

 

『なっ、なにぃぃぃっ!!!』

 

それを見て観客達が驚愕の声を上げる。

 

『っ!?』

 

これには洛山の選手達も同様であった。

 

空はボールを回すでも、ドリブルで切り込むでもなく、シュート態勢に入ったのだ。天野がいないこの状況。外せばリバウンドは期待出来ない。それだけにこの選択は誰しも予想外だった。…ある1人を除いて。

 

「そうだね。こんな状況だからこそお前は強気で来る」

 

「っ!?」

 

 

――バシィィィッ!!!

 

 

ボールを掲げようとした瞬間、赤司が手を伸ばして頭上へとリフトさせようとしたボールをカットした。

 

「意表を突けたと思ったか? 残念だが、僕のこの眼の前では無意味だ」

 

空の手から零れたボールをすかさず赤司が拾い、そのまま速攻に走った。

 

「…くそっ!」

 

強気が裏目に出た空は思わず悪態を吐きながら赤司を追いかける。

 

「ここは行かせません!」

 

フロントコートに進んだ所で大地が赤司を捉え、立ち塞がる。

 

「さすが綾瀬! よく追い付いた!」

 

ベンチの菅野が立ち上がりながら声を上げる。

 

「(いくら赤司さんでもここからでは打ってこない。アンクルブレイクに注意していれば…!)」

 

アンクルブレイクを要警戒した大地は距離を取ってディフェンスを始める。

 

「…」

 

赤司は大地が前に立ち塞がるのと同時に立ち止まり…。

 

 

――スッ…。

 

 

ボールを右方向へと放った。

 

「ナイスパス!」

 

そこへ走り込んだ三村がボールを掴み、そのままリング向かってドリブルを始めた。

 

「…くっ!」

 

その三村を大地が追いかける。三村がリング近くまでドリブルすると、レイアップの体勢に入った。

 

「決めさせませんよ!」

 

大地がギリギリで三村に追い付き、ブロックに飛んでシュートコースを塞いだ。

 

『うわー! 綾瀬はえー!?』

 

 

――スッ…。

 

 

「っ!?」

 

三村はレイアップ中断し、ボールを後ろへと落とすように放った。そこへ走り込んだ赤司がボールを掴み、シュート態勢に入った。

 

「まだ…、間に合う!」

 

先程ブロックに飛んだ大地が着地と同時に再び赤司の放つシュートのブロックに飛んだ。だが…。

 

「っ!?」

 

赤司はボールをリングではなく、真上に放った。

 

「ナイスパスだ!」

 

そこへ走り込んだ五河が空中でボールを両手で掴んだ。そしてそのままリングへと振り下ろした。

 

「まだだ!」

 

その時、リングと五河の間に空がブロックに割り込んだ。

 

「よく追い付いた神城!」

 

再び菅野が立ち上がる。

 

「無駄だ。ブロックに間に合った所で、お前では止められない」

 

赤司が無情に言葉を吐く。

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

「ぐっ!」

 

空のブロックをものともせず、五河は空を吹き飛ばしながらボールをリングに叩きつけた。

 

 

花月 65

洛山 66

 

 

『第4Q初っ端からアリウープだ!』

 

派手なアリウープダンクを見て観客が沸き上がった。

 

「大丈夫ですか空?」

 

吹き飛ばされて座り込んでいる空に大地が手を差し出す。

 

「…あぁ、すまね――」

 

その手を取ろうとしたその時、赤司が空の下までやってきた。

 

「ここまで僕を愚弄したんだ。地に這いつくばるだけでは済むと思うな。2度と歯向かう気すら起きない程の屈辱をお前には味合わせてやろう」

 

座り込む空を見下ろしながら告げる赤司。

 

「っ!?」

 

その言葉を聞いて空はすぐさま立ち上がり、赤司の傍に寄って顔を近付けながら睨み付けた。

 

「やれるもんならやってみろよ」

 

赤司を見下ろしながら空はそう言い返した。

 

「君達、何をしている!」

 

不穏な空気を2人の間から感じ取った審判が駆け寄りながら注意を促す。

 

「…」

 

それを見て赤司は踵を返し、ディフェンスへと戻っていった。

 

「何かトラブルか?」

 

「いえ、大丈夫です。このまま続行して下さい」

 

審判に問い掛けられると、空は素っ気なく返事を返した。

 

「…熱くなる方向を間違えないように」

 

そう空に告げ、審判は離れていった。

 

「もう勝った気でいやがるのかよ。…上等だ…!」

 

挑発染みた赤司の言葉を聞いた空はさらにその胸の内の闘志を燃え上がらせた。しかし…。

 

 

「…ちっ」

 

ボールを運んだ空の目の前に赤司が立ち塞がる。だが、先程のスティールがある為、強気で攻める事を躊躇ってしまう。

 

「…くそっ」

 

下がって距離を取り、ビハインドパスを出した。

 

「よし!」

 

左45度付近のスリーポイントライン手前で竜崎がボールを受け取った。

 

「(空いた!)」

 

フリーでボールを受け取った竜崎はすぐさまスリーを放った。

 

「フリーだったとは言え、この状況でスリーを打てるその胆力には称賛する。だが…」

 

 

――ガン!!!

 

 

「…あっ!?」

 

「決められるかどうかは話は別だ」

 

ボールがリングに弾かれてしまう。

 

「おぉっ!」

 

リバウンドボールを五河が抑えた。

 

「くそっ!」

 

パワーとテクニックで劣り、しかもファールを恐れて強引に行けない松永は悔しがる。

 

「リバウンドが期待出来ないこの状況で実績のあるシューターでもない者が影響が出ないなどあり得ない」

 

「速攻!」

 

ボールを掴み取った五河が声を出し、前を走った赤司にパスを出した。

 

「くそっ、戻れ! ディフェンスだ!」

 

慌てて空が声を出し、選手達もディフェンスに戻る。

 

 

「あいつ(天野)がいなくなって1番影響が出るのがまずリバウンドだ」

 

青峰が口を開く。

 

「リバウンドの有無は勝敗の有無に直結する。これまではあいつがリバウンドを制していたから競っていけたが、リバウンドが取れないとなりゃ、シュートを外せなくなる。そうなれば無理なシュートは打てなくなる上に打ててもプレッシャーで確率は下がる。試合も終盤となれば尚の事な」

 

「「…」」

 

解説をする青峰の言葉に聞き入る黄瀬と桃井。

 

「そんで、もう1つの問題はディフェンスだ」

 

 

「…くっ!」

 

何とか空が赤司を食い止め、味方がディフェンスに戻る時間を稼いだが、ローポストに立った四条にボールが渡ると、四条はポストアップで竜崎を背中で押し込み始めた。

 

身長差が10㎝もあるミスマッチのマッチアップ。竜崎ではこのポストアップに耐える事が出来なかった。

 

「…っ」

 

「…くそっ」

 

これを見て空と松永がヘルプに飛び出し、フォローに向かう。

 

 

「10番(竜崎)じゃ、あの7番(四条)は止められねえ。当然、ディフェンスは収縮させざるを得ない」

 

青峰の言葉通り、空と松永が四条の包囲に動いた。

 

 

「「っ!?」」

 

しかし、四条はそんな2人を嘲笑うかのようにボールを外へと出した。

 

「ナイスパス!」

 

空が中に来てしまった為にアウトサイドに展開していた二宮がフリーでボールを受け取ってしまう。

 

「ちくしょう!」

 

慌ててチェックに向かう空だったが距離を放し過ぎた為、間に合わず。二宮は悠々とスリーを放った。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

「よし!」

 

打ったスリーが決まり、拳を握りながら喜ぶ二宮。

 

 

花月 65

洛山 69

 

 

「ここまではあの天野って奴がインサイドの抑えと同時にあの洛山の7番、四条って奴を抑えてからディフェンスもバランスが取れてた。だが、いなくなった事でその四条の抑えがなくなり、自由度が増した」

 

「「…」」

 

「さっきも言ったが、あの10番、竜崎だったか? あいつじゃ止められねえ。ゾーンディフェンスであっても誰かしらがフォローに向かう必要が出てくる。だが、フォローに向かえば誰かしらがフリーになる。となりゃ、選手全員が外からでも中からでも洛山相手じゃ手詰まりだ」

 

「…だったら、もうファールトラブル覚悟で11番の室井君を出すしかないんじゃ…」

 

「同じだ。あいつは縦の動きはそれなりだが横の動きは素人に毛が生えた程度だ。みすみす抜かれんのがオチだ」

 

代案を出した黄瀬だったが青峰はピシャリと否定した。

 

「だったらどうすれば…」

 

「知るかよ。…ま、止められねえならそれ以上に点取るしかねえだろうな」

 

打つ手を尋ねる桃井。青峰はオフェンスでカバーするしかないと判断。

 

「それしかないッスよね…」

 

黄瀬も同じ考えしか浮かばず、思わず溜息が漏れた。

 

「神城が赤司をどうにか抑える事が出来りゃ何とかなるかもしれねえが…」

 

ここで青峰が空に視線を向けた。

 

 

「…っ」

 

空がボールを運ぶと、当然、赤司がディフェンスにやってきた。

 

「竜崎!」

 

無理に仕掛けず、ハイポストから外へと移動した竜崎にパスを出した。

 

「っ!?」

 

ボールを受け取った竜崎は目を見開いた。スリーポイントライン手前でボールを受け取った竜崎に対し、誰もチェックに来ないのだ。

 

「(俺には外がないと思われてる?)…だったら!」

 

空いたら打てという指示の下、竜崎はスリーを放った。

 

「(…っ、ダメだ、肩に力が入り過ぎてる。あれじゃ…!)」

 

竜崎のフォームに異常を感じた生嶋。

 

 

――ガン!!!

 

 

予想通り、竜崎の放ったスリーはリングに弾かれてしまった。

 

「…あっ」

 

半ばフリーでのスリーを外してしまい、力のない声が漏れる竜崎。

 

『あぁ…、ここで決まらないのは痛い!』

 

観客からも悲鳴のような声が響く。

 

 

「あからさまに打たされてリズムが悪すぎる。あれじゃ入らないのは当然ッスね」

 

苦笑しながら黄瀬が言う。

 

 

「よし!」

 

コート上では五河が松永を抑え込み、四条が悠々とリバウンドを制した。赤司にボールが渡り、ボールを運んでいく。

 

「29だ」

 

赤司のナンバーコールと共に洛山の高速のパスワークが始まる。

 

『ここで洛山のお家芸のナンバープレーだ!』

 

ボールが絶え間なく動き回る。

 

「ここに来てパススピードが上がった!?」

 

ベンチの菅野が声を上げた。

 

ナンバープレーによるセットオフェンスが行われてからこの日1番のパススピードでパスワークを行う洛山の選手達。

 

ショットクロックが10秒を切った所でハイポストに立った二宮にボールが渡った。

 

『っ!?』

 

パス交換でゾーンディフェンスが乱され、フリーの状態で二宮にボールが渡ってしまう。

 

「…くっ!」

 

シュート態勢に入る二宮。慌ててブロックに向かった大地。

 

 

――チッ…。

 

 

間一髪、大地の伸ばした手の指先にボールが触れる。

 

 

――ガン!!!

 

 

決死の大地のブロックによってボールがリングに弾かれた。

 

「リバウンドや!」

 

ベンチから天野が声を張り上げる。しかし…。

 

「よーし!」

 

その願いも実らず、五河によってリバウンドを取られてしまう。

 

「ふん!」

 

リバウンドを制して着地した五河はすぐさまシュート態勢に入った。

 

「させんぞ!」

 

そうさすまいと松永がブロックに飛んだ。

 

「っ!?」

 

ここで松永が目を見開いて驚愕する。五河はポンプフェイクを入れただけでシュートに行っていなかったのだ。

 

「あかん!」

 

五河の狙いに気付いた天野が立ち上がりながら声を上げた。五河の狙いは松永からファールを貰う事。ブロックに飛んでしまった松永にはもう為す術もない。

 

「もらうぜ」

 

そう松永に告げ、再度五河はシュート態勢に入る。飛んだ松永にぶつかるように…。

 

 

――ドン!!!

 

 

『ピピーーーーーーーーー!!!』

 

 

審判が笛を吹き、笛を口から放し…。

 

『ディフェンス、プッシング、赤10番!』

 

ファールをコールした。だが、ファールを宣告したのは松永ではなく…。

 

「ふぅ、間一髪…」

 

腕で汗を拭う竜崎。

 

そう、ファールを宣告されたのは竜崎。松永と五河の身体がぶつかるよる前に竜崎が五河にぶつかるようにブロックに向かったのだ。

 

「ようやったで! ファインプレーや大成!」

 

喜びを露にする天野。

 

五河には松永と竜崎が接触したのだが、竜崎の方が僅かに早かった。バスケは2人同時にファールを取られる事はない。この場合、先にファールを犯した竜崎にファールが宣告される。

 

「助かったぞ、竜崎」

 

「スリー2本外してますんで、このくらいは…」

 

礼を言う松永に対し、竜崎は苦笑しながら返事をした。

 

「…ちっ、邪魔が入ったか」

 

松永をファールに追い込めず、悪態を吐く五河。

 

「ドンマイ。ここは可愛い後輩のナイス判断を褒めよう。それよりフリースローだ。決めろよ」

 

そんな五河を励ます四条。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

フリースロー、1本目を決め…。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

2本目も五河はきっちり沈めた。

 

「よっしゃ!」

 

フリースローを2本成功させた五河は拳を握りながら喜びを露にした。

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

『チャージドタイムアウト、花月!』

 

ここで、花月のタイムアウトがコールされたのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

第4Q開始して間もなく、花月がタイムアウト。

 

意気揚々とベンチに下がる洛山の選手達に対し…。

 

『…っ』

 

第3Q時とは打って変わって表情が暗い花月の選手達。竜崎の咄嗟の起点で最悪の事態は防げたが、未だ、状況は変わらない。

 

天野がファールトラブルをきっかけに試合は洛山に流れが傾いた。

 

花月には容易に晴れる事のない暗雲が漂うのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





正直、書いていて調子が出ず、悪い癖の試合よりも会話重視の話になってしまったorz

もはやこの試合に関してはネタ切れが半端なく、盛り上がるはずのクライマックスが1番盛り上がらなくなるかも…(>_<)

2020年も残り1ヶ月を切り、この準決勝共々残り僅か。共に勢いのまま突っ走って……行きたい!

感想アドバイスお待ちしております。

それではまた!
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