黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

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投稿します!

2021年2回目の投稿ですが、こちらは初なので改めまして…。

あけましておめでとうございます!

こちらの二次もよろしくお願いします…m(_ _)m

それではどうぞ!



第146Q~進化~

 

 

 

試合終了。

 

 

花月 96

洛山 99

 

 

ファイナルへの切符をかけた両校の準決勝の激闘が終わった。

 

「…くっ!」

 

拳をきつく握りしめ、悔しさを噛みしめながら涙を流す生嶋。

 

「…っ」

 

自分への不甲斐なさから床を叩く天野。

 

「くそっ!」

 

頭を抱えながら悔しさを口にする松永。

 

『…っ』

 

花月ベンチ内も、絶叫しながら太もも叩く菅野。茫然している帆足。下を向きながら涙を流す竜崎。叫び出したい気持ちを抑えながら歯を食い縛る室井。

 

「…っ」

 

口元を抑えながら涙を流す相川。

 

「…」

 

上杉は、胸の前で腕を組みながら深く目を瞑っていた。

 

「…」

 

大地は無表情のままリングの下に立つ空を見つめていた。

 

「…っ」

 

空は、両拳をグッと握り、下を向きながら身体を震わせていた。

 

『…』

 

一方、洛山の選手達は誰1人歓喜の声を上げている者はいない。まだ1つの山場を越えたに過ぎず、明日には決勝という最後の試練が残っているというのもあるが、それ以上に花月を相手に勝利で終えた事に安堵していた。

 

『…っ』

 

試合で戦った者達がその事を誰よりも理解しており、勝利への歓喜より、その恐ろしさから背中に冷たいものが滴っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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・・・・・・・

・・・・

 

 

「99対96で、洛山高校の勝ち。礼!」

 

『ありがとうございました!』

 

センターサークル内に整列した両校の選手達が審判の号令で礼を交わした。

 

『…』

 

空と赤司を除く4人が特に言葉を交わす事無く、互いの健闘を称え合う握手を交わした。

 

「…」

 

「…」

 

目の前で対峙する空と赤司。互いに距離を詰めながらも無言で視線をぶつける両者。

 

「…」

 

「……俺の…、俺達の負けだ。試合も、キャプテンとしても、司令塔としても…」

 

1歩踏み込んだ空が先に沈黙を破った。

 

「だが、次は負けねえ。ここでの雪辱は冬に絶対果たす。覚悟しておけ!」

 

そう宣言した空はその場を後にし、ベンチへと向かって行った。

 

「?」

 

この時、赤司は自分が無意識に右手を差し出している事に気付いた。これまでの赤司は例え自身が認めた相手であったとしても…、認めた相手だからこそ握手を交わしたりはしなかった。そんな赤司が知らず知らずのうちに握手を交わそうとしていた。

 

「…フッ」

 

そんな自分を皮肉交じりに鼻で笑った赤司だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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・・・・・・・

・・・・

 

 

ベンチへと戻ってきた洛山の選手達。

 

「次の試合が控えている。すぐに荷物を纏めて引き上げるぞ」

 

そう選手達に白金が指示を出す。

 

『…』

 

無言でベンチへと座る二宮、三村、四条、五河。

 

「どうかしたか?」

 

そんな4人に白金が声を掛ける。

 

「…試合に勝ちましたが…」

 

「何とか逃げ切れた感じでしたし…」

 

「何と言うか、勝ててホッとしたというか…」

 

「正直、気持ちの整理が付きません」

 

4人が今の心境を言葉にした。

 

『…』

 

辛くも試合に勝利したという自負があり、赤司のおかげで勝てたという自覚がある4人は今の感情を上手く表現出来なかった。

 

「ならば、素直に喜んだらどうだ?」

 

『えっ?』

 

白金の口から出た言葉に4人は驚きを隠せなかった。決勝戦を勝利で終えるまで慢心を決して許さない監督である事を理解していたからだ。

 

「事情は理解している。これでも私はお前達の気持ちを汲んでやれる度量は持ち合わせているつもりだ」

 

『…っ』

 

「無論、まだ明日の決勝が残っている。当然、それまでには切り替えてもらう。だが、今だけは目を瞑ろう」

 

そう言って、白金は4人に背を向けた。

 

「……うおぉぉぉっ!!!」

 

「勝った、勝った!!!」

 

「やったぞ!!!」

 

「っしゃぁぁっ!!!」

 

4人は立ち上がりながら拳を突き上げ、絶叫しながら喜びを露にした。

 

例年であれば、煌びやかな道を歩けるはずだった4人。だが、同チーム、同年代にキセキの世代と呼ばれる10年に1人の逸材が5人がいた為にその道を閉ざされたばかりか、実力も、実績も、努力すら否定された4人。

 

絶望のあまり、1度はバスケを辞める事も考えた。それでも尚、バスケを続け、キセキの世代と戦う事を選んだ。無論、この試合でキセキの世代に勝利した訳ではない。だが、キセキの世代に勝利した花月に勝利した事は4人にとってそれと同等の意味を持ち合わせていた。

 

胸に秘めていた悲願が果たされた今、4人は人目をはばからず、喜びを表現したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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・・・・

 

 

「さすがお前の創り上げたチームだ。良いチームだな」

 

花月と洛山のベンチのちょうど中間の所で上杉と白金が言葉を交わしていた。

 

「なに、良い選手達に恵まれただけだ」

 

称賛の言葉を贈った上杉に対し、白金は肩を竦めた。

 

「謙遜を…」

 

「フッ、お前なら私の気持ちを理解してもらえると思ったのだがな」

 

「……フッ、そうだな」

 

皮肉交じりに上杉が返すと、白金は同じく皮肉交じり返し、上杉は思わず笑った。昨年、三杉と堀田と言う、圧倒的な力を持った選手を抱えてインターハイを制した花月。上杉は白金の心中を痛いほど理解出来たのだ。

 

「相変わらず、お前の率いるチームと戦うと寿命が縮まる思いだ。だが、次も勝たせてもらうぞ」

 

「抜かせ。次こそ俺の教え子達が勝たせてもらう」

 

そう言葉を交わした2人は握手を交わしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・

・・・・・・・

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「引き上げるぞ。全員、速やかに作業に入れ」

 

ベンチへと戻ってきた選手達を出迎えた上杉は選手達にそう指示を出した。悔しさを噛みしめながら粛々と荷物を纏めた選手達はベンチを後にしていく。

 

「全員、顔を上げろ」

 

悔しさから下を向いてコートを後にしようとする選手達。その中で空がそう声を出した。

 

「情けねえ姿は見せるな。堂々とコートを去るぞ」

 

顔を上げ、胸を張って前を歩く空。

 

『…っ』

 

その空の声を聞いた花月の選手達は顔を上げ、堂々と空の後に続いて歩いて行った。

 

『惜しかったぞ!』

 

『冬も楽しみにしてるからな!』

 

『今度こそ優勝しろよ!』

 

その堂々した花月の選手達を見た観客から惜しみない声援と拍手が贈られた。その声援と拍手を背に、花月の選手達はコートを後にしていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「大ちゃんの言ったとおり、最後は洛山が勝ったね」

 

コートを去っていく花月と洛山の選手達を見つめながら桃井がそう呟いた。

 

「珍しいな黄瀬。お前の事だから花月びいきで見てたんだろ? てっきり、愚痴の1つでも零すと思ってたんだがな」

 

青峰が頭の後ろで両手を組みながら視線を向けた。

 

「…もちろん、赤司っちには悪いッスけど、花月に勝ってほしかったッスよ? 何と言っても、俺達に勝ったんスから」

 

溜息を吐きながらそう言う黄瀬。

 

「けど、今日の赤司っち…いや、洛山を見て、仮に俺達が戦ってたとしても、正直、勝てる自信がないッス」

 

「「…」」

 

「海常に入って、練習試合で黒子っちと火神っちのいる誠凛に負けて、皆と力を合わせて戦う事の大切さを知ったつもりだったッスけど、それでも何処かで、俺がしっかりすれば試合に勝てるって思ってた。けど、今日の試合で洛山の皆は最高のコンビネーションで花月に勝った」

 

「「…」」

 

「最後に見せたあのパスワークは、俺1人がどれだけ頑張って止められない。チーム全体が噛み合って実現出来る究極のパスワークッス。多分、あれがチームプレーの理想的な姿。うちのチームであれを実現出来るかって言われると正直…」

 

そこで黄瀬は肩を竦めながら言葉を止めた。

 

「…ハッ! 俺なら1人で点なんざ取れるし、あんなチマチマしたパスなんざ止めてやるよ」

 

「大ちゃん…」

 

青峰が不敵に笑うと、桃井が優しく笑みを浮かべた。

 

「青峰っちは相変わらずッスね。…それより花月は立ち直れるんスかね」

 

黄瀬が青峰の言葉に苦笑すると、神妙な表情でコートを去っていく花月の選手達を見つめた。

 

「点差は3点だけど、内容は完敗もいい所ッス。今日の負けはミスで負けたとか、次やれば勝てるって言える負け方じゃない。それは直接やり合った本人達が一番理解してるはず。時間が経てば経つほど身に染みて実感してくる」

 

「きーちゃん…」

 

「冬はどうなる事やら…」

 

「それこそいらねえ心配だろが」

 

そんな黄瀬の懸念を青峰が一蹴する。

 

「ここで凹んだまま立ち直れねえようなやわな連中じゃねえよ。奴らの負けず嫌い加減はあのテツ以上だからな」

 

昨年の冬の敗北を経て、どれだけ成長したかは青峰自身が理解しており、余計な心配だと言う。

 

「人の心配する前にまずはてめえの心配でもしたらどうだ?」

 

「分かってるッスよ! 青峰っちこそ、冬までにきっちり足完治させるんスよ? 怪我で力を出せなくて負けたとか言い訳にならないスからね」

 

「余計なお世話だボケ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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・・・・

 

 

「あぁ、ちくしょう…」

 

コートのあるフロアから通路へと入ると、空が嗚咽のように言葉を漏らす。

 

「全力を尽くした。それでも届かなかった…」

 

「…」

 

そんな空を無言で見つめる大地。

 

「もっと…、強くなりてぇ…」

 

そう漏らしながら空は涙を流した。

 

「空…」

 

そんな空の姿を見た大地が声を掛けようとすると…。

 

「強くなれるよ」

 

大地より先に姫川がそう声を掛けた。

 

「次は勝てるよ。だから、頑張ろう」

 

ふと見ると、空と同様に涙を流しながら姫川がエールを贈りながら励ましていた。

 

「(強く…、私ももっと強くならなければ。今度こそ、勝てるように…!)」

 

グッと涙を飲み込んだ大地は心中で決意したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

『来たぞ! もう1つの準決勝、注目のカードだ!』

 

激闘を繰り広げた花月と洛山の選手達がコートを去ると、入れ替わりに誠凛と秀徳の選手達がコート入りした。

 

『同じ東京都、過去に何度も戦い合った強豪。こっちも目が離せないぜ!』

 

両校とも東京都の高校と言うこともあり、何度も試合をした経験があり、共に全国区のチームという事もあってか、認知度、注目度は高い。

 

「来たッスね。こっちも目が離せないッスよ!」

 

もう1つの準決勝が今まさに始まろうとしている中、黄瀬がテンションを上げる。

 

「テツ君とミドリンが高校に入学してからこれまで公式戦で試合したのは5回。結果は3勝1敗1引き分けで誠凛が勝ち越してる」

 

「誠凛と秀徳もそうだけど、何より火神っちと緑間っちの相性が悪いッスからね」

 

黄瀬の言葉通り、過去2年間、単純な戦力なら秀徳が優れているにも関わらず、誠凛との対戦成績は悪い。その理由として、秀徳がアーリーオフェンスをあまり得意としていないことと、緑間にとって火神の相性が悪いからだ。

 

「確か、予選じゃ誠凛が勝ってるんスよね?」

 

「うん。僅差ではあるけど勝ってるよ」

 

「となると、誠凛有利は否めないッスかね」

 

そう断言する黄瀬。

 

「…」

 

青峰は言葉を挟む事無くコートを見つめていた。

 

『来たぞ!』

 

コート上に両校のスタメンに選ばれた選手、各5人がベンチからセンターサークル内に向かって行った。

 

 

誠凛高校スターティングメンバー

 

 

4番PF:火神大我  194㎝

 

9番PG:新海輝靖  183㎝

 

10番SG:朝日奈大悟 185㎝

 

11番SF:池永良雄  193㎝

 

12番 C:田仲潤   192㎝

 

 

秀徳高校スターティングメンバー

 

 

4番SF:緑間真太郎 197㎝

 

5番PG:高尾和成  178㎝

 

6番SG:斎藤宏   180㎝

 

7番 C:戸塚徳親  193㎝

 

8番PF:木村孝介  192㎝

 

 

スターティングメンバーの各5人がセンターサークル内に整列する。

 

「去年と違って今年の誠凛は長身選手が揃っている事が特徴だね」

 

桃井の言う通り、3番(スモールフォワード)から5番(センター)まで190㎝オーバーの選手が揃っており、1番(ポイントガード)新海、2番(シューティングガード)朝日奈にしてもそのポジションとしては大きめである。

 

「あれー、黒子っちベンチスタートッスか。誠凛は随分と余裕なんスね」

 

「バカか。テツが中学時代に何て呼ばれてたのか忘れたのか?」

 

「失礼ッスね。覚えてるに決まってるじゃないスか。幻のシックスマ……あぁ、そういう事ッスか」

 

青峰の物言いに一瞬唇を尖らせた黄瀬だったが、すぐにその意味が理解出来た。

 

「本来、テツはスタメンスタートさせるタイプじゃねえ。ミスディレクションは時間が経てば経つほど効果が薄くなる。何度も試合をすればそれは顕著になるからな」

 

黒子の特性をよく理解している青峰が解説する。

 

「スタメンの大半がいなくなった誠凛だけど、長身選手揃いなのは分かったスけど、実力はどうなんスか?」

 

「単純なテクニックと身体能力なら去年を上回ってるよ。去年まではかがみん以外は個人の特性を最大限生かしながら戦ってる感じだったけど、今年は多分、全てのポジションから真っ向勝負出来る選手が揃ってるよ」

 

「なるほど、黒子っちをシックスマンに置いて戦えるだけの戦力が揃ってるって訳スか…」

 

誠凛のスタメンの選手を見ながら黄瀬が呟く。いずれも全国の舞台でスタメンに立つに相応しい選手達である。

 

「秀徳は…、確か、緑間っちはスモールフォワードにコンバートしたんスよね?」

 

「うん。インターハイに入ってからは全ての試合でスモールフォワードで試合に出場してるわよ」

 

「…で、代わりに空いたポジションに入ったのが6番スか」

 

桃井に尋ねた後、黄瀬は視線を6番、斎藤に向けた。

 

「斎藤宏。去年まではミドリンのバックアップとしてベンチ入りしていたわ」

 

「…で、実力はどうなんスか?」

 

「秀徳内ではミドリンに次ぐシューターで、全中出場経験もあるから実力は確かだよ。多分、秀徳じゃなかったら大体のチームでスタメン入り出来るかも」

 

自身の調べたデータが載っているノートを開きながら説明する桃井。

 

「緑間っちがいるんじゃ、シューターは厳しいッスね」

 

苦笑しながら黄瀬が言う。

 

「それと戸塚君。同じく去年まではバックアップのセンターでベンチ入りしていて、今年からスタメンセンターに抜擢。身長はセンターとしてはそこまで大きい方ではないけど、とにかくフィジカルが強くて、多分だけど、去年のウチの主将の若松さんとも張り合えるかも」

 

「去年までの……あぁ、あの凄い声の大きい…、なら、相当ッスね」

 

記憶を巡らせ、行き着いた黄瀬は頷いた。

 

「情報を聞いただけじゃ結果は読めないッスね。…そうなってくると、双方のエース同士の対決。これを制した方が優勢になるけど…」

 

神妙な表情で黄瀬は火神と緑間に視線を向けた。

 

「やっぱり秀徳が不利なんスかねぇ…」

 

しみじみと結論付ける黄瀬。

 

「…どうだかな」

 

その時、青峰が口を挟んだ。

 

「昨日の試合を見た限り、黄瀬と緑間。どっちがやり辛いかと言われれば緑間だ」

 

「…むっ」

 

そう告げた青峰。それを聞いた黄瀬は少し眉を顰める。

 

「去年までならともかく、今年の緑間はちげー。もしかしたら火神は喰われるかもな」

 

意味深に青峰がそう言ったのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

『これより、誠凛高校対秀徳高校の試合を始めます。礼!』

 

『よろしくお願いします!!!』

 

審判の号令に合わせ、頭を下げる両チームの選手達。

 

「今日も勝たせてもらうぜ」

 

「勝つのは俺達だ」

 

両チームの主将の火神、緑間が火花を散らせながら握手を交わした。

 

「よろしくお願いします」

 

「…おう」

 

センターサークル内にジャンパーの田仲、戸塚だけが残り挨拶を交わす。残りの選手達はセンターサークルを中心に広がっていった。

 

「…」

 

審判がジャンパーの中心に立ち、双方に視線を向け、ボールを構える。そしてボールは高らかに上げられた。

 

 

――ティップオフ!!!

 

 

「「…っ!」」

 

ティップオフと同時にジャンパーの2人がボール目掛けて飛んだ。

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

「っし!」

 

「…くっ!」

 

先にボールを叩いたのは戸塚。戸塚がジャンプボールを制した。

 

「ナイス徳親!」

 

ボールは高尾の下に向かい、確保した。そのままドリブルを始めた。

 

「行かせないですよ」

 

スリーポイントライン目前で高尾の前に立ち塞がった新海。

 

「関係ねえな」

 

それでも高尾は強引に中へとドリブルで突き進む。

 

「…っ!」

 

強引に中へと切り込む高尾を身体を張って止める新海。

 

「なんてな♪」

 

ある程度中に切り込んだ所で高尾が後ろへとボールを弾ませた。そこへ、緑間が走り込み、ボールを掴んだ。

 

「緑間!」

 

同時に火神が緑間の前に回り込み、立ち塞がった。

 

「…」

 

「…」

 

スリーポイントラインの外側、右45度付近で睨み合う2人。2人が対峙する間に両チームの選手達が配置に付いた。

 

『来た来た! いきなりエース対決だ!』

 

両チームのエース同士のぶつかり合いに注目を集める観客達。

 

「(ポジションが変わってもこいつの武器は変わらねえ。スリーの体勢に入ったら即座に叩き落してやる!)」

 

緑間の代名詞であるスリーを要警戒した火神。

 

「…」

 

トリプルスレッドの体勢でボールを構える緑間。

 

 

――スッ…。

 

 

しかし、緑間はスリーを打つでもドリブルを仕掛けるでもなく、高尾にボールを戻した。

 

「(緑間が勝負もせずに逃げた?)」

 

この行動に火神は面を食らう。

 

『なんだよ、勝負しないのかよ…』

 

この行動に観客からガッカリとした言葉が飛び出る。しかし…。

 

「っ!?」

 

緑間はパスと同時に中へと走った。これに火神は意表を突かれるも即座に緑間を追いかけた。

 

「へい!」

 

ハイポストに立った緑間はボールを要求。

 

「ほらよ真ちゃん!」

 

その緑間に躊躇わず高尾がリターンパスを出した。

 

「行くぞ」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

自身の背中に立つ火神に告げると、背中をぶつけながらドリブルを始めた。

 

「なっ!?」

 

これには火神の口から思わず声が出た。

 

「いつか来るとは思ってたけど、いきなりとはね」

 

ベンチのリコが声を上げる。スリーが代名詞のはずの緑間が外からではなく中、それもポストアップを仕掛けてきた。事前情報はあったが、それでも驚きは隠せなかった。

 

 

「うは! マジすか…!」

 

観客席の黄瀬も同様の反応であった。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

ジリジリと背中をぶつけながらゴール下へと押し込むようにドリブルをする緑間。

 

「…っ!」

 

必死に歯を食いしばって侵入を阻止しようとする火神だったが、少しずつ押し込まれていく。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

「ぐっ!」

 

1度背中をぶつけると、一瞬、火神が僅かによろけた。

 

 

――キュキュッ!!!

 

 

その瞬間、ボールを掴んだ緑間がやや後方にターンをし、シュート体勢に入った。

 

「くそっ!」

 

慌ててブロックに飛ぶ火神。だが、緑間は後方にブロックを避けるように飛んでいた為、追い付けず。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

ブロックを避けるようにフェイダウェイで放った緑間のシュートはリングを潜り抜けた。

 

『早速秀徳が先制点を決めて来た!』

 

 

誠凛 0

秀徳 2

 

 

「…ちっ!」

 

「何を驚いている。こんなもの、バスケの基本のプレーに過ぎないのだよ」

 

睨み付ける火神に対し、緑間は淡々と告げ、ディフェンスに戻っていった。

 

『…っ』

 

いきなりかつての緑間にはなかったプレーを見せつけられ、動揺する誠凛の選手達。

 

「(予選の決勝リーグじゃ、ポジションこそスモールフォワードだったが、プレーは以前より中に切り込む回数が増えたくらいだった。…なるほど、今日は前とは違うって事かよ…!)」

 

以前との緑間との変化に戸惑う火神。

 

「分かってた事だろが! とっとと取り返そうぜ!」

 

緑間のプレーに飲まれそうになる自分と周りに苛立った池永が声を上げる。

 

「ハッ! お前に言われるまでもねえよ」

 

「分かってる」

 

火神は鼻で一笑し、新海は池永に言われたくないとばかりに舌打ちをした。

 

「頼むぜ」

 

「任せろ」

 

スローワーとなった田仲からボールを受け取った新海がボールを運び始めた。

 

「ゾーンディフェンスか…」

 

新海がポツリと呟く。

 

秀徳はマンツーマンディフェンスではなく、2-3のゾーンディフェンスを敷いてきた。誠凛にスリーに特化した選手がいない事を見越しての選択。

 

『火神に渡せ! やり返せ!』

 

観客から火神と緑間の勝負を期待する声が飛ぶ。

 

「期待されてるわね。火神君もやり返したいだろうけど、最初はここよ」

 

リコがそう言うのと同時に新海がパスを出した。パスの先はハイポストに立った朝日奈。その背中に戸塚が立った。

 

「こっちも行かせてもらうよ」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

宣言と同時に朝日奈がドリブルを始め、戸塚を押し込み始めた。

 

『おいおい、誠凛もやり返す気か!?』

 

先程の緑間の意趣返しとばかりにポストアップを始めた朝日奈に観客が声を上げた。

 

「朝日奈君は高校に入ってからシューティングガードにコンバートしたけど、中学時代はパワーフォワード。この手のプレーはむしろ十八番よ」

 

フフンと笑みを浮かべながら呟くリコ。

 

「…くっ!」

 

そこまで身長とパワーがない斎藤。踏ん張って侵入を防ごうとするもみるみる押し込まれてしまう。

 

「…ちっ」

 

「させるか!」

 

それを見て木村と戸塚が朝日奈を囲いにかかる。

 

「(来た!)」

 

それを見た朝日奈は新海にボールを戻す。ボールを受け取った新海はすぐさまゴール下にボールを投げるように放る。

 

「ナイスパス!」

 

 

――バス!!!

 

 

ゴール下に走り込んだ田仲がボールを掴み、そのままゴール下から得点を決めた。

 

 

誠凛 2

秀徳 2

 

 

『鮮やかな連携! 全国優勝メンバーが抜けても今年の誠凛はやるぜ!』

 

中→外→中とパスを繋いでの得点に唸る観客。

 

「ま、そのくらいやってくれないと張り合いがないってもんだぜ。だよな、真ちゃん?」

 

「当然なのだよ」

 

ボールを運ぶ高尾が緑間に問うと、緑間は問答無用とばかりに返事をした。

 

「そんじゃ、こっちも行くぜ!」

 

フロントコートまでボールを運んだ高尾がハイポストに立った木村にパスを出した。ボールを受けた木村も即座にパス。目まぐるしく絶えずボールを動かし続ける秀徳。

 

『っ!?』

 

ショットクロックが残り10秒となった所で右サイド、スリーポイントラインから1メートル程離れた所に立った緑間にボールが渡った。ボールを掴んだ緑間は即座にスリーの体勢に入った。

 

「(来たか! だが、ここからなら追い付ける!)」

 

フリーでボールが渡るも火神とさほど距離は離れておらず、この位置からならブロックに間に合うと踏んだ火神。すぐさま距離を詰めてブロックに飛んだ。

 

 

――ピッ!!!

 

 

「なっ!?」

 

ブロックに間に合うと踏んでいた火神の目が見開いた。火神がブロックに来るより早くリリースしたからだ。

 

「(バカな!? 速過ぎる!?)」

 

今の緑間のリリーススピードは過去に対戦時のリリーススピードとは比較にならない程速かった。それこそ、桐皇の桜井、いや…。

 

「(花月の綾瀬並のリリーススピード…!)」

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

放たれたボールはリングの中心を的確に射抜いた。

 

 

誠凛 2

秀徳 5

 

 

「ナイッシュー真ちゃん」

 

駆け寄った高尾が緑間の腰を叩きながら労った。

 

「シュート体勢に入ってから打つまでがメチャメチャ速くなかったか?」

 

ベンチの降旗が思わず声を出した。

 

「リリーススピードだけではありません。今のスリー、ループの高さもいつもと違いました」

 

「っ!? そう言えば…」

 

黒子に言われて気付いた。緑間のスリーの特徴は高弾道で放たれる事によってループの高さが異常である事。だが、今のスリーのループの高さは一般的なスリーのループの高さと同じであった。

 

「俺だけ何も変わっていないとでも思ったのか? 考えが甘いのだよ」

 

「っ!?」

 

そう緑間が言い放ち、思わず振り返る火神。

 

「敗北を糧に今日まで俺は人事を尽くしてきた。故にもう俺達は負けん!」

 

鋭い目付きで緑間が宣言する緑間。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――新たに進化した緑間真太郎が、誠凛の前に立ち塞がった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





決勝をかけたもう1つの対戦カードである誠凛対秀徳。こちらも大雑把ながらやってきたいと思います。

すみません、ここで1つ謝罪と釈明をさせていただきます。この第146Qを読んだ方は多分気付いたかもしれませんが、緑間のクイックリリースのスリーに関して、別作品を投稿されている方とネタ被りしてしまいました。止めるか変えるかするかを考えたのですが、緑間の進化を考えた時、行き着く先がそこしかなく、これがないと緑間がキセキの世代の中で精神面以外で成長が窺えないと言う事と、テクニックそのものは従来のバスケに基づくテクニックであり、現実のプレーヤーでも行っている選手がいるものである為、修正なしでこのままにしました。苦しい言い訳になりますが、断じてパクリではなく、投稿しようとしたネタを先出しされてしまっただけなので、そこのところ、ご容赦ください。

と、新年早々申し訳ございません…m(_ _)m

今年も自身の二次作品をよろしくお願いします!

感想アドバイスお待ちしております。

それではまた!
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