黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

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投稿します!

緑間の扱いに四苦八苦しています…(;^ω^)

それではどうぞ!



第148Q~止まらない~

 

 

 

「誠凛対秀徳。どないなってんやろ」

 

「ちょうど第4Qが始まったくらいかな」

 

通路を歩きながら会話をする天野と生嶋。

 

先程まで洛山と決勝進出をかけて激闘を行っていた花月の選手達。控室でのミーティングを終え、もう1つの準決勝を見に観客席に向かっていた。

 

「ま、今となっちゃ、どっちが勝っても関係ないな。気になるのはどれだけ強いかだ」

 

「空…」

 

勝敗に興味なさ気の空。そんな空に苦笑する大地。空の目は赤く。先程まで涙にくれていた事が窺い知れる。

 

『おぉぉぉぉぉーーーーっ!!!』

 

観客席に到着すると、コートは大歓声に包まれていた。

 

「盛り上がってるみたいですね。点差は…」

 

得点が表示されている電光掲示板に竜崎が視線を向ける。

 

 

第4Q、残り8分45秒。

 

 

誠凛 74

秀徳 75

 

 

「よし!」

 

コート上では緑間が拳を握り、喜びを露にしている姿から、緑間が得点を決めた事が理解出来た。

 

「互角やな」

 

「…両者の今年の戦力から、誠凛有利かと思ったが…」

 

高さがあり、個人の実力も火神を始めとして高く、更に黒子と言う切り札がある誠凛が有利と見ていた松永はこの結果に少なからず驚いていた。

 

「よう」

 

その時、空に話しかける人物がいた。

 

「お前、小牧か?」

 

「おう。今日は惜しかったな」

 

話しかけたのは海常の小牧だった。

 

「…お世辞はやめろ。どう見ても完敗だっただろ」

 

「そんな事ねえよ」

 

不機嫌になりながら空が言うと、小牧は苦笑する。

 

「何でここにいるんだ?」

 

「他のチームメイトは今日の朝に帰ったけど、キャプテン…黄瀬さんが残って試合を見ていくって言うから、俺も無理言って残らせてもらったんだ。試合もそうだがお前と赤司さんの戦いも気になったからな」

 

この会場にいる経緯を放す小牧。

 

「代わりに監督に準決勝のレポート提出と次の練習の筋トレ2倍になっちまったけどな」

 

「そりゃご愁傷様。…てか、黄瀬さんもいるんだ」

 

「あそこにな」

 

後ろ手で小牧が指を差すと、その先、僅かに離れた所で黄瀬の姿が。その隣に青峰と桃井の姿もあった。

 

「青峰!?」

 

黄瀬だけではなく、青峰もいた事に驚く空。

 

「最初はキャプテンの後ろで試合見てたんだけど、インターバル中にトイレに行って戻ったら青峰さんがいて、…さすがにあそこには戻り辛いわ」

 

ハハッと乾いた笑い声を浮かべる小牧。

 

「…」

 

2人が並ぶ席に視線を向ける空。

 

「どないしてん空。てっきり1発かましに行くと思てんけど」

 

「……いやいいです。あの2人に今は顔合わしたくないんで」

 

からかうように尋ねる天野。空は不機嫌そうに2人から視線を逸らした。

 

昨日の試合の対戦相手であり、勝利した相手である黄瀬。同じく前日の夜にタンカを切った相手である青峰。空はその2人に合わす顔はなく。敢えて声をかけに行かなかった。

 

「…で、試合はどんな感じ?」

 

「第1Qは秀徳ペースだったな。何と言っても緑間さんがスゲー。従来の高弾道のスリーじゃなくて、お前ん所の綾瀬のようなクイックリリースで決めてたぜ」

 

「大地の?」

 

大地のスリーはモーションに入ってから打つまでがとにかく速い、ジャンピングシュートによるクイックリリース。かつて見た緑間の高弾道のスリーとは対照的なものだ。

 

「それだけじゃねえ。カットインやそこからのポストアップでも点を取ってた。つうか、序盤はスリーより2点プレーの方が圧倒的に多かったぜ」

 

「へぇ…」

 

以前に見た秀徳の試合で緑間が披露していたのを見ていたが、誠凛…それも火神相手にそこまで多様出来るレベルになっていた事に思わず声が出る。

 

「第2Qから緑間さんと火神さんとエース対決が始まったけど、そこはほとんど互角だった。途中で黒子さんが出て、一時は誠凛ペースでリードが広がったけど、第3Qであのスリーが出た」

 

「あのスリー?」

 

「高尾さんのパスを空中で取ってそのままスリーを打つあのスリーだ」

 

「…あれか」

 

空は思い出した。シュートモーションに入った緑間の手元に高尾が寸分の狂いもない正確なパスを出し、緑間がそのままスリーを放つ、空中装填式(スカイ・ダイレクト)スリーポイントシュート。去年、花月も大いに苦しめられた技だ。

 

「それがきっかけで秀徳が再び盛り返して、高尾さんが上手くパスを捌きながら秀徳が追い付いた。新海もよくやってっけど、キャリアの差が大きいな」

 

高尾をマークする新海。個々のスペックは高尾を上回っているが、司令塔対決では高尾に軍配が上がっていた。

 

「それでまた秀徳が逆転したんだけど、1度ベンチに下がった黒子さんが第4Qからコートに戻って、今に至るってわけだ」

 

試合の流れを小牧は簡潔に説明した。

 

「正直、どっちが勝つか予想付かねえな。お前はどう見る?」

 

「…どっちが勝とうと関係ねえよ」

 

「……そうかい」

 

試合の予想を尋ねた小牧だったが、空の顔を見てコート上の試合に視線を移したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「…っ」

 

新海がボールを運び、中へとパスを入れる。

 

 

――バチィッ!!!

 

 

黒子がパスをタップし、中継。軌道を変える。

 

「ナイスパス黒子先輩!」

 

右アウトサイドやや深めの位置でボールを掴んだ池永がそのままスリーを放つ。

 

「打たせるか!」

 

スリーを阻止する為に木村がすかさずブロックに飛んだ。だが、それよりも速く池永はリリースした。

 

「(ちっ、短ぇ!)リバウンド!」

 

短いと判断した池永が声を出す。

 

 

――ガン!!!

 

 

言葉通り、ボールがリングに弾かれた。

 

『おぉっ!!!』

 

ゴール下に立った選手達がリバウンドを制する為にボールに飛び付いた。

 

「ちっ!」

 

緑間に絶好のポジションを奪われてしまった火神。

 

「まだだ!」

 

 

――バシィィッ!!!

 

 

「なに!?」

 

リバウンドボールを火神が外からその驚異的なジャンプ力で無理やり奪い取った。

 

「おらぁ!!!」

 

リバウンドボールを確保した火神はすぐさまリングに向かって飛ぶ。

 

「調子に乗るなよ火神!」

 

ダンクを阻止する為、緑間が同時にブロックに飛んだ。

 

「関係ねえ!!!」

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

ブロックなどお構いなしに緑間の上からボールをリングに叩きつけた。

 

 

誠凛 76

秀徳 75

 

 

再び誠凛が逆転した。

 

変わって秀徳のオフェンス。

 

「真ちゃん!」

 

フロントコートに入って早々に高尾が緑間にボールを渡す。

 

「緑間!」

 

ボールが渡るのと同時に火神がチェックに入った。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

火神が目の前に現れると、クロスオーバーで火神の左手側から仕掛ける。

 

「…っ、抜かせねえ!」

 

これに火神も対応、遅れずに追いかける。

 

 

――スッ…。

 

 

クロスオーバー直後、緑間はボールを掴み、ターンアラウンドで反転。スリーポイントラインから2メートル程離れたポジションからシュート体勢に入った。

 

「打たせねえ!」

 

火神もすぐさまブロックに飛んだ。

 

「っ!?」

 

しかし、緑間はブロックから遠ざかるように後ろ飛び、さらにクイックリリースでボールを放った。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

放たれたボールはリングを潜り抜けた。

 

 

誠凛 76

秀徳 78

 

 

「やろ!」

 

ボールがリングを潜ると、火神はリングから緑間に視線を移し、睨み付ける。

 

「勝つのは俺達だ。俺のスリーは誰にも止めさせはしない!」

 

睨み返すように緑間は言い放ったのだった。

 

「ナイッシュー真ちゃん!(とは言え今の、あの距離でのあのスリーは練習でも確率はそこまで高くなかった奴だ。あれを出したって事はそこまで真ちゃんも追いつめられてるって事か…)」

 

最強のシューターである緑間でも100%の確信の持てないスリー。それを出した事に今の状況を直視する高尾。

 

「…とは言っても、今の真ちゃんならなに注文しても決めちまいそうだけどな」

 

ハハッと笑い声を上げながら高尾は緑間にエールを贈ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

誠凛のオフェンス、ボールを運んだ新海が意表を突いてスリーの体勢に入った。

 

『この状況で打つ気か!?』

 

終盤の勝負所の大事な場面でのこの行動に観客も驚く。

 

「(今日俺はスリーを打ってない。無警戒なら俺でも…!)」

 

これまでパスとカットインから中からの得点しかしていなかった新海。それを逆手に取ってスリーを打ちに行った。

 

「(やべっ!? 完全に油断しちまった!)」

 

慌ててブロックに向かうもドライブを警戒して距離を取っていた為、間に合わない。それに加えて身長差もあり、新海は悠々とスリーを放った。

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

「っ!?」

 

しかし、その放たれたスリーは高尾の後ろから現れた1本の手に弾かれた。

 

「緑間先輩!?」

 

ブロックしたのは緑間。まさかの人物に新海は驚いた。

 

「(どうして俺のスリーが読まれた!?)」

 

現れたタイミング的に打つ前にスリーを打つと読んでいなければ間に合わない。

 

「お前からスリーを打つ気配を感じた。だからブロックに向かった。それだけなのだよ」

 

淡々と当たり前のように語る緑間。

 

決して新海が分かりやすいサインや仕草をした訳ではない。理屈ではなく、あの瞬間、緑間は新海からスリーを打つ気配を察知した。これはスリーにこだわり続け、狂信的に追及し続けた緑間だからこそ察知出来たのだ。

 

「さっすが真ちゃん! 速攻だ!」

 

ルーズボールを高尾が拾い、そのまま掛け声と同時に駆け上がった。

 

「ヤバい、戻れ!」

 

ここでターンオーバーからの失点を避けたい火神がディフェンスに戻りながら声を出す。

 

「これ以上は行かせない!」

 

「…っと、相変わらず戻りはえーな」

 

スリーポイントライン手前で新海が高尾を捉え、目の前で立ち塞がる。高尾が立ち止まり、その間に誠凛が戻り、ディフェンスを整える。

 

「てめえは絶対に空けねえぜ」

 

「…」

 

すかさず緑間を火神がマークする。

 

「…」

 

高尾がホークアイで全体を見渡しながら攻め手を定める。

 

「…っ」

 

その時、木村が動く。火神に対し、スクリーンをかける。同時に緑間が動く。

 

「火神!」

 

「分かってるよ!」

 

中に向かった緑間を追うように火神が動く。池永がスクリーンの存在を知らせると、火神は返事と同時にロールしながら木村のスクリーンをかわし、緑間を追いかけ

 

「頼んだぜ!」

 

高尾が振りかぶるようにボールを投げ、パスを出した。

 

『っ!?』

 

次の瞬間、誠凛の選手達全てが目を見開いた。

 

「ナイスパスだ高尾!」

 

ボールは緑間ではなく、中へ走り込んだ緑間に気を取られた田仲の隙を付いてゴール下に走り込んだ戸塚に渡った。

 

「しまっ――」

 

慌ててチェックに向かう田仲だったが…。

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

豪快なボースハンドダンクを戸塚が叩き込んだ。

 

 

誠凛 76

秀徳 80

 

 

「ウチは緑間だけじゃねえぞ! 余所見してんじゃねえ!」

 

自分の存在をアピールするかのように戸塚が叫んだ。

 

「ごめん…!」

 

「今のはそもそも俺のミスから始まった事だ。切り替えるぞ」

 

責任を感じる田仲に対し、新海が声を掛け、励ました。

 

「ディフェンスだ! 1本、止めるぞ!」

 

『おう!!!』

 

緑間が檄を飛ばし、選手達が応えた。

 

「…」

 

ボールを運ぶ新海。流れが秀徳に傾こうとしている今、ここのオフェンスを失敗すると本格的に流れを秀徳に持っていかれかねない為、慎重にゲームメイクをする。

 

「どうした? 来てみろよ」

 

挑発するように高尾が新海に話しかける。高尾は再び距離を取り、ドライブを警戒。

 

「…ちっ」

 

新海はそんな高尾に対して苛立ち交じりに舌打ちをした。

 

明らかにスリーを誘っている。先程のブロックが頭に残る新海はスリーを打つ選択肢を選べない。

 

「(だったら!)」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

ならばと新海は警戒されているドライブを敢えて選択。切り込んだ。

 

「こんだけ距離取ってりゃチョロいな」

 

距離があった為、高尾は容易にこのドライブに対応、新海の進路を塞ぐ。

 

「…っ」

 

1ON1を得意とする新海であっても、高尾を…それも距離を取っていた状態で抜くのは難しく、表情を顰める。

 

「新海君!」

 

その時、新海の耳に自分を呼ぶ声が聞こえ、その方角にパスを出した。ボースの先には黒子。

 

 

――バァァァァン!!!

 

 

飛んで来たボールを掌底で加速させながらボールの軌道を変えた。

 

「っしゃ!」

 

リング付近に飛んだボールを火神が右手で掴んだ。

 

「させないのだよ!」

 

その時、リングと火神の間に緑間がブロックに現れた。

 

「だろうな。来ると思ってたぜ!」

 

緑間のブロックを予測していた火神。右手で掴んだボールを左手で抑え、パスに切り替えた。

 

「よし!」

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

落とすように出されたパスの先に新海が走り込み、そこからジャンプショットを放ち、決めた。

 

 

誠凛 78

秀徳 80

 

 

「これも外してたら殺してたぜ」

 

「外すかよ」

 

茶化しながら肩を叩く池永を鬱陶し気にあしらった新海。

 

「上等だ。こっちも決め返すぞ!」

 

高尾がボールを受け取り、ボールを運ぶ。

 

「…」

 

緑間が高尾に向かって走り、直接ボールを受け取りに走ると、高尾が差し出すようにボールを出した。

 

「来るのか!?」

 

池永が緑間を警戒する。

 

「…なんてな♪」

 

緑間が目の前を通る瞬間、高尾はボールを引っ込め、斎藤へのパスに切り替えた。

 

「やっべ!」

 

緑間を警戒し過ぎたあまり、斎藤の警戒が緩くなり、ノーマークでボールを受けさせてしまい、思わず声が出る池永。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

ノーマークの斎藤は落ち着いてスリーを決めた。

 

 

誠凛 78

秀徳 83

 

 

「っしゃ!」

 

スリーを決めた斎藤はガッツポーズをした。

 

 

「上手いですね。緑間さんを使って上手くパスを散らせて得点を重ねています」

 

秀徳で1番存在感のある緑間。この緑間を上手く利用している事に関心する大地。

 

「緑間ばかりに気を取られとったらそらそうなるわ。緑間が目立ち過ぎて曇りがちやが、他の奴らもきっちり仕事をこなせるだけの力量もっとるからのう」

 

当然とばかりに天野が言う。

 

「高尾も、1年生の時から歴戦の王者、秀徳でスタメンポイントガードを任せられた選手だ。視野の広さ、パスセンスなら神城を上回る」

 

「…っ」

 

上杉の言葉に反論したかった空だったが、表情を顰めるだけに留めた。

 

 

その後、誠凛と秀徳が激しくぶつかり合う。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

秀徳は緑間が、あるいは緑間を使って高尾がボールを散らして得点を重ね。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

対して誠凛は黒子がパスを中継し、得点を重ねていったが、徐々に黒子の動きに対応出来るようになってくる同じ東京都という関係上、対戦回数も多い両校。途中、黒子を下げてミスディレクションを慣れさせないようにしたが、それでも黒子への耐性が付くのも早かった。

 

 

第4Q、残り3分37秒。

 

 

誠凛 82

秀徳 90

 

 

試合時間残り4分を切った時、点差はじわりじわり開いていた。

 

「開いてきたな」

 

得点が表示されている電光掲示板を見て空が呟く。

 

「…緑間さんの存在が大きいですね。失礼ながら戦力は誠凛に分がありますが、緑間さんがその差を埋め、さらに周りを生かしています」

 

身長が高く、個々の能力も優れた選手の多い今年の誠凛だが、緑間が火神とのエース対決を優勢に進めていた。

 

「それだけではない。緑間に目が生きがちだが、高尾が緑間を上手く生かしながらパスを散らしている。秀徳の影の功労者と言っても差し支えない」

 

上杉が高尾を評価した。

 

高尾が緑間を上手く使いながらパスを捌いて的を散らしながら得点を重ねていた。

 

「パスセンスとゲームメイク能力、流れを読む力はさすがです。赤司さんの次に優れたポイントガードは高尾さんかもしれません」

 

姫川も同様の評価をした。

 

「…ふん」

 

それを聞いた空は不機嫌そうに鼻を鳴らした。

 

「ま、空坊は1ON1特化の司令塔やから赤司とも高尾ともタイプがちゃう。一概にどっちが優れとるとは言えんかもしれへんけどな」

 

不貞腐れる空を天野がフォローを入れた。

 

「仕方ありません。高尾さんには司令塔としてのキャリアがありますからね。そのは中学の3年から司令塔にコンバートした空には厳しいハンデでしょう」

 

続いて大地もフォローした。

 

「司令塔対決となると、新海は厳しい。高尾がプレイメーカー型の司令塔なら、新海は全てを卒なくこなすオールラウンダー型の司令塔だ。何でも出来ると言えば聞こえはいいが、高尾相手では器用貧乏な印象を受ける。キャリアが劣る神城が去年に高尾相手に優勢に戦えたのは1ON1スキルが飛びぬけていたからだ」

 

「ん?」

 

ここまで試合を見ていた松永がボソリと言うと、空が耳を傾ける。

 

「…神城、お前が誠凛のポイントガードだったらこの局面、どうする?」

 

上杉が空に尋ねる。

 

「俺だったらガンガン切り込んで点を取りに行きますね」

 

空の迷う事無くそう答えた。

 

「俺も同意見かな」

 

横で聞いていた小牧も頷いた。

 

「突破力と得点力のあるお前達ならそうするだろう。だが、新海にはそれが出来ない。何でも器用に出来ると言うのは、見方を変えればここ一番で縋る武器がない。つまりは突破口がない。赤司程全てをこなせれば別だろうがな」

 

「…なら、この試合は秀徳の勝ちですか?」

 

「あぁ。…このままならばな」

 

空の質問に、上杉はそう答えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「(…くそっ!)」

 

試合の残り時間が無くなるにつれてジワジワと開いていく点差にボールを運ぶ新海は胸中は焦っていた。

 

「(どう攻める、俺が仕掛けるか? それともパス? だが誰に…)」

 

必死に突破口を模索する新海。

 

「…っ!? 新海君!」

 

何かに気付いた黒子が大声を上げる。

 

 

――ポン…。

 

 

「…えっ?」

 

次の瞬間、新海がキープするボールが叩かれた。

 

「考え事か? 手元がお留守だぜ!」

 

したり顔で高尾が新海からボールを奪った。

 

黒子をマークしていたはずの高尾だったが、新海の警戒が薄くなっていた事を察知し、一気にボールを狙いに行ったのだった。

 

「頼んだぜ真ちゃん!」

 

高尾がボールを拾うと、既に前へと走っていた緑間にパスを出した。

 

「良くやった高尾」

 

パスを受けた緑間はそのままワンマン速攻を仕掛け、スリーポイントラインの手前で止まってシュート体勢に入った。

 

「何やってんだよバカ野郎――っ!?」

 

悪態を吐きながらディフェンスに戻る池永だったが、その瞬間、池永の横を何者かが追い越した。

 

『決めろぉっ!!!』

 

秀徳ベンチからの声援を受けながら緑間がボールをリリースした。

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

「なっ!?」

 

リリースした直後、後ろから現れた何者かがボールを叩き落とした。

 

『アウトオブバウンズ、白(秀徳)ボール!』

 

ボールはそのままサイドラインを割った。

 

「緑間。お前はスゲーよ。これまでも凄かったが、今日はさらに別格だ」

 

「…っ」

 

表情を変えて緑間が振り返る。

 

「今の俺じゃ勝てねえかもしれねえ。だが、それでも負けられねえんだよ。お前がどれだけ俺の上に行こうとも、俺が勝つ!」

 

「火神…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「この感じは…! …空!」

 

「あぁ。…間違いない、ゾーンに入った」

 

火神の変化に気付いた大地が空に声を掛けると、空は静かに頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――火神大我が、ゾーンの扉を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

「っ!?」

 

秀徳のリスタート。緑間にボールが渡ると、ターンアラウンドからフェイダウェイでのスリーを放つも、火神のブロックに叩き落された。

 

「火神君!」

 

ルーズボールを拾った黒子がすぐさま火神へとパスを出した。

 

「…ちっ!」

 

「行かせるか!」

 

ボールを持った火神に対し。木村と斎藤が目の前に立ち塞がる。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

「「っ!?」」

 

しかし、火神は左右にフェイクを織り交ぜながら切り返し、それで出来た2人の間を一気に駆け抜けた。そのままドリブルで進むと、ボールを掴んでフリースローラインからリングに向かって飛んだ。

 

「火神!」

 

そこへ、木村と斎藤を抜きさる間に戻った緑間がブロックに飛んだ。

 

 

――ガシャン!!!

 

 

火神は緑間の上からリングに向かってボールを叩きつけた。

 

『出た! メテオジャム!!!』

 

無敵のダンク、メテオジャムが炸裂し、観客が沸き上がった。

 

第4Qに入り、秀徳がペースを掴み、ジワジワとリードを広げてきたが、ここに来て火神がゾーンの扉を開いた事で形勢が変わった。

 

「…」

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

オフェンスではこれまで火神を翻弄しながら得点を重ねていた緑間だったが、火神に立て続けにブロックされる。

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

ディフェンスでは火神を止める事が出来なくなった。

 

ゾーンに入った火神は攻守に渡った活躍し始め、秀徳は為す術もなく追い詰められていく。

 

 

――バチィン!!!

 

 

新海からのパスを黒子がリング近辺に手で弾く。するとそこへ、狙いすましたかのように火神が現れ、右手でボールを掴んだ。

 

「おぉっ!!!」

 

そこへ、緑間が決死の表情でブロックに現れる。

 

「らぁっ!!!」

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

「ぐっ!」

 

しかし、それでもお構いなしに火神はボールをリングに叩きつけ、緑間を吹き飛ばしながらダンクを決めた。

 

 

第4Q、残り2分4秒。

 

 

誠凛 93

秀徳 92

 

 

「「「逆転だぁっ!!!」」」

 

遂に点差をひっくり返し、ベンチで降旗、河原、福田が立ち上がりながら歓喜した。

 

『…っ』

 

秀徳の選手達は逆に士気が落ちていた。

 

 

「決まった……スか?」

 

「……かもな」

 

コートを見つめる黄瀬が尋ねると、青峰はコートを見つめながら頷いた。

 

火神の勢いは凄まじく、止められる気配がなく、断定するには充分だった。

 

 

「ハァ…ハァ……っ!」

 

肩で息をする緑間。立ち上がりながら歯をきつく食い縛った。

 

高尾がボールを運び、フロントコートまでボールを運ぶ。

 

「(改めて、ゾーンに入った火神はマジ化け物だ。どうする!?)」

 

先程の余裕はもうなく、心中は焦りが占め始めていた。

 

「止める!」

 

「…ちっ!」

 

新海が激しく当たりながら高尾のディフェンスに入る。

 

「(火神がゾーンに入った事でこいつ(新海)も吹っ切れやがった!)」

 

1度は追い詰められた新海だったが、火神の活躍で逆転した事で迷いがなくなった。もともとのスペックは新海が優れている為、高尾は大いに苦しんでいる。

 

「高尾!」

 

その時、緑間がハイポストからスリーポイントラインを越え、高尾の横まで移動してボールを要求する。

 

「頼む!」

 

そこしかパスの出し手がおらず、願いを込めてパスを出した。

 

「もうお前には何もさせねえ!」

 

すかさず火神がチェックに入る。

 

「…っ!」

 

激しく緑間をマークする火神。

 

『スゲー当たりだ!』

 

『何もさせない気か!?』

 

身体がぶつかる程密着してディフェンスをする火神。激しい火神のディフェンスに緑間はボールを奪われないようにするだけで精一杯になる。

 

「(…くっ! こうもプレッシャーが強くては抜きさる事は出来ん。スリーを打とうにも体勢が整えられないどころかリングが見えん…!)」

 

火神を抜きさる事は出来ない。スリーを打とうにもリングに背を向けているので大勢が悪いばかりかリングの位置や距離すら掴めない。

 

「まずい、もうすぐ5秒だ! 真ちゃん、早くボールを戻せ」

 

迫りくるヴァイオレーションに焦る高尾。

 

「…っ」

 

しかし、ゾーンに入った火神のプレッシャーは凄まじく、パスすらも容易に出せないでいた。

 

「(…いかん、これではボールを奪われる。仮に奪われずとも、ヴァイオレーションを取られる!)」

 

何か行動を起こしたくとも火神がそれを許さず、時間が刻一刻と迫っていた。

 

「っ!?」

 

その時、緑間の視界に一瞬だけリングが映った。

 

「(僅かにリングが見えた! 距離は……っ! ならば!)…おぉっ!!!」

 

「なにっ!?」

 

火神が驚きの声を上げる。

 

スリーポイントラインから2メートルは離れた位置から緑間が体勢も碌に整わなければ満足にリングも見えない態勢から乱れに乱れたシュートフォームから強引にスリーを放ったからだ。

 

「(ヴァイオレーションに焦ったか。いくら緑間でもこの距離であんな崩れた体勢で強引に打ったスリーが入る訳ねえ!)…リバウンド!」

 

外れる事を確信した火神は声を出す。

 

『…っ!』

 

すかさずゴール下でリバウンド勝負の準備が始まる。ボールはリングへと向かって行き…。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

リングの中心を通り抜けた。

 

「はぁ!?」

 

外れると思ったスリーが決まり、思わず声を上げる。

 

「…ちっ、ツイてねえ」

 

運悪く決まってしまったと断定し、悪態を吐く火神。

 

「ツイてない? まさかお前、今のがたまたまだと思っているのか?」

 

火神の声が聞こえた緑間が尋ねる。

 

「狙ったとでも言いてえのか? あんなリングも碌に見れない体勢から決められる訳がねえだろ」

 

あり得ないと火神が言う。

 

「何故断言出来る。お前はいつから俺の限界を理解した気になっている。リングの位置と距離が分かれば今の俺には充分なのだよ」

 

「なに?」

 

言った言葉が理解出来ず、聞き返す火神。

 

「舐めるな火神。まだ勝負は付いていない。俺の進化はまだまだ止まらないのだよ!」

 

吠える緑間。加速する緑間の進化に、試合は予断を許さないのであった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





決着まで進めようかと思いましたが、長くなったのと思う所があったのでここで止めます。

緑間のゾーンに付いてはやっぱり悩みますね…(;^ω^)

入れないといろいろ不都合が多すぎて…(>_<)

ただ、仮に入れてもスリーには制限はかけると思います。例を挙げるとコート上のどこからでもクイックリリースでスリーを打てるなんて事は絶対にないです。これやっちゃうといよいよ緑間が人間辞めるんで(既に辞めてる?)。

次話にて決着です。結末は……乞うご期待!

感想アドバイスお待ちしております。

それではまた!
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