黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

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投稿します!

熱かったり寒かったり、今はとにかく寒い…((+_+))

それではどうぞ!



第155Q~この時の為~

 

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

第1Q終了後のインターバルが終わり、両校の選手達がコートへと戻って来る。

 

 

花月 15

緑川 24

 

 

「っしゃぁっ!!! 行くぞおめーら!!!」

 

花月の選手の先頭を歩く選手がコート全体に響き渡る程の声量でチームを鼓舞しながらコート入りをした。

 

 

OUT 室井

 

IN  菅野

 

 

「…ん? 12番(室井)を下げたのか?」

 

花月がメンバーチェンジをした事に気付いた桶川が思わず声を上げた。

 

「代わりに入ったのは9番(菅野)か」

 

「となると、8番(松永)がセンターに入って、空いた3番に9番(菅野)が入るのか…」

 

城嶋と井上が選手交代を見てその意図を探る。

 

「(…穴となっていた室井を下げてその穴を松永に埋めさせるのは理解出来る。だが、そうなると逆に第1Qまでの得点源を失う事にもなる…)」

 

顎に手を当てながら一ノ瀬が思案する。

 

これまで、室井と城嶋に位置から崩され、得点される事が多かった花月。松永がセンターに入り、城嶋をマークすれば失点を減る。しかし、松永はここまでスモールフォワードのポジションから縦のミスマッチを突いて得点を重ねてきた。センターに入ってしまえば得点源を失う事になる。

 

「(…あの9番(菅野)、確か、3回戦の初戦で途中出場して、スタッツは確か、4得点、2アシスト、スティールが1つ。決めた得点は速攻からのレイアップとフリーでボールを受けてのジャンプショットの2つ。これと言って特徴はなかった。味方の補佐に徹するつもりか?)」

 

限られた情報から選手交代の意図を必死に導き出そうとする一ノ瀬。

 

「同じポジションだし、とりあえず俺があいつをマークする。体格差で攻めて来た8番(松永)よりやり易そうだし、任せてくれよ」

 

一ノ瀬の肩を叩きながら荻原が告げる。

 

「頼む。だが、くれぐれも油断はするなよ」

 

「おう!」

 

考えても答えは出なかったので、一ノ瀬は荻原に託した。

 

「(まあいい、どのような狙いがあるかはすぐに分かる事だ。今はこの流れをキープしたまま点差を広げていくだけだ)」

 

そう結論付けた一ノ瀬は試合に集中したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「花月はメンバー変えてきたッスね。…ただ、あの9番は少なくともインターハイじゃ見た事ないッスね」

 

「あぁ。この交代の意図はセンターから出来た穴を埋めるだけのものではないだろう。他にもある」

 

見覚えのない選手がやってきた事で首を傾げる黄瀬。赤司は攻守に渡って狙いがあると断定した。

 

「同感ッスね。注目なのは、あの9番に何が出来るか、スね」

 

黄瀬はコート入りした菅野に注目したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

試合が再開。第2Qが始まった。

 

「…」

 

ボールを受け取った一ノ瀬はゆっくりとボールを運ぶ。

 

「スー…フー…、来い」

 

1度大きく深呼吸をした竜崎が一ノ瀬の前に立ち塞がる。

 

「(…落ち着きを取り戻しているな。もう1度崩して歯車を狂わせてみるのもありだが…)」

 

ここで一ノ瀬は視線を動かして各ポジションを確認する。

 

「(まずはここだ。ここで空けられればさらに波に乗れる!)」

 

攻め手が定まった一ノ瀬がパスを出す。パスの先は…。

 

「…そこから来たか」

 

上杉が唸るように呟く。

 

「行くぞ」

 

「来い」

 

ボールはローポストに立っていた城嶋に渡る。その背中に張り付くように松永がディフェンスに入る。

 

 

――ダムッ!!! …ダムッ!!!

 

 

ポストアップで松永に背中をぶつけながら押し込むようにドリブルをする城嶋。

 

「…っ、行かせん」

 

歯を食い縛りながらポストアップに耐える松永。

 

「(…っ、技巧派と聞いていたが、存外パワーあるな)」

 

容易に押し込ませてくれない松永にパワーに軽く驚く城嶋。

 

「(…だが、俺の真骨頂はパワーではない!)」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

機を見て城嶋はスピンターンで松永の背後に抜ける。

 

『抜いた!』

 

背後に抜けた城嶋はそのままリングに向かって飛んだ。

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

「させん!」

 

次の瞬間、松永が背後からブロックに現れ、リングに叩きこまれようとしていたボールをその手で阻んだ。

 

「…ちぃ!」

 

ブロックされ、零れたボールをすかさず抑える城嶋。

 

 

――スッ…。

 

 

再度得点を狙おうとポンプフェイクを1つ入れる。だが、松永は釣られず、ハンズアップするだけに留まる。

 

今一度、次はフックシュートのようにボールを構え、ボールを掲げた。

 

「っ!? おぉっ!」

 

これを阻止する為、松永はブロックに飛んだ。

 

「甘いな!」

 

しかし、城嶋はこれを中断。ボールを下げて飛んだ松永の横を抜けていく。

 

「今度こそ!」

 

そのままボールを掲げ、リバースレイアップの体勢でボールを放った。

 

 

――バシィィィッ!!!

 

 

「なに!?」

 

「そないゴール下でチマチマ時間かけて攻めたらあかんで」

 

ブロックしたのは天野。天野がしたり顔でそう告げた。

 

「ナイスです天野先輩! 速攻!」

 

ルーズボールを拾った竜崎が掛け声と共に速攻に駆け上がった。

 

「戻れ、ディフェンスだ! ここは絶対取らせるな!」

 

指示を出しながらディフェンスへと戻る一ノ瀬。試合の節目であるインターバル終了直後にターンオーバーからの失点はせっかくの良い流れを途絶えさせかねない。何としてでもここで失点は避けたい緑川。

 

「ここは止めさせてもらうぜ」

 

「…っと、さすがに戻りが速いですね」

 

スリーポイントライン手前で竜崎に並んだ一ノ瀬が回り込んで立ち塞がった。

 

「頼みます!」

 

一ノ瀬が立ち塞がると、竜崎はすぐさまパスを出した。ボールは左45度付近のスリーポイントライン手前に立っていた菅野の下に。

 

「来たな。ここは取らせないぜ」

 

菅野の前に荻原が立ち塞がる。

 

「…」

 

「…」

 

ボールを小刻みに動かし、右足を動かしながら牽制する菅野。揺さぶりに対応しながらディフェンスをする荻原。

 

「…」

 

ひとしきり牽制をすると、菅野は頭上からローポストに立っている松永にパスを出した。

 

「パス!?」

 

勝負する事なくパスをした事に驚きと同時に拍子抜けする荻原。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

パスを受けた松永は背中に立つ城嶋をポストアップで押し込み始めた。

 

「…ちっ、この程度で…!」

 

先程のお返しとばかりにポストアップ。城嶋は歯を食いしばって侵入を阻止する。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

ある程度押し込んだ所で松永はスピンターンで城嶋の背後に抜け、そのままボールを掴んでリバースレイアップの体勢に入った。

 

「舐めるな。決めさせるか!」

 

背後を取られた城嶋だったが、すぐさま反応し、松永の背後からボールを叩き落とすべく、ブロックに飛んだ。

 

「っ!?」

 

しかし、ブロックに飛んだ城嶋はすぐさま目を見開きながら驚愕する。松永はボールを頭上にこそ掲げていたが、飛んではいなかった。

 

 

――キュキュッ!!!

 

 

城嶋が背後でブロックに飛んだのを見計らって再度フロントターンで城嶋の背後に抜ける。

 

 

――バス!!!

 

 

ブロックをかわしながらリバースレイアップを決めた。

 

 

花月 17

緑川 24

 

 

「ええぞマツ!」

 

「うす!」

 

松永と天野がハイタッチを交わす。

 

「(…ちっ、1個下とは言え、伊達に全国の猛者達とやり合ってきた訳ではないと言う事か)」

 

洗練された松永の動きを見て城嶋が目の色を変えた。

 

 

「…凄いな」

 

一連の攻防をベンチから観察していた室井。自身がテクニックでいなされ続けた相手を止め、さらには得点を決めた松永に感心していた。

 

「よく2人の動きを見て学べ。お前の出番はまだある。何が足らず、何が必要か考えるんだ」

 

「…はい!」

 

上杉が室井に声をかけると、室井は試合に今まで以上に集中するのだった。

 

 

「(…決められてしまったか。だがそれは仕方ない。それよりも…)」

 

一ノ瀬が菅野に視線を向ける。

 

「(仕掛けて来なかった。やはりチームのアシストや補助が目的なのか?)」

 

勝負する事無くパスで逃げた菅野を怪訝そうに見つめる一ノ瀬。菅野の存在と目的がさらに分からなくなるのだった。

 

 

「…」

 

攻守が入れ替わり、ゆっくりとボールを運ぶ一ノ瀬。

 

 

――スッ…。

 

 

ハイポストに立つ井上にパスを出し、同時に井上目掛けて走り、直接ボールを受け取りに向かった。

 

「…っ、スイッチ!」

 

井上がボールを差し出して渡したのと同時に竜崎に対してスクリーンの役割をこなし、マークを引き剥がす。これを見て竜崎が指示を出した。

 

「ここは取らせん!」

 

リングに迫り、レイアップの体勢に入る一ノ瀬に対して松永がヘルプに飛び出す。

 

「…」

 

目の前に松永のブロックが現れると、一ノ瀬はレイアップの体勢から肩越しに背後にボールを落とすように放った。

 

「ナイスパス!」

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

先程ボールをトスすると同時にスクリーンをこなした井上にボールが渡り、天野のブロックが来る前にジャンプショットを決めた。

 

 

花月 17

緑川 26

 

 

「あかん、マーク外してもうた! スマン、俺の責任や!」

 

自身のマークをフリーにしてしまった天野が頭を下げた。

 

 

「1本、行きましょう!」

 

人差し指を立てながら竜崎がボールを運ぶ。

 

「…よし」

 

意を決した竜崎がパスを出す。パスの先は再び菅野。

 

「っと、またお前か」

 

すかさず荻原がディフェンスに入る。

 

「(…さて、今度は何をする? パスか? それとも…)」

 

菅野の行動に注視する一ノ瀬。

 

『…』

 

一ノ瀬だけではなく、他の緑川の選手達も菅野の一挙手一投足に注目している。

 

「…」

 

ボールを小刻みに動かし、右足を動かしながら牽制する菅野。

 

「(3年最後の大会で遂に出番が来た…)」

 

花月高校に進学し、バスケ部に入部した菅野。同級生がその厳しい練習に耐えきれず、次々と辞めていく中、菅野はバスケ部に残った。1年時にレギュラー入りを果たし、試合に出場するも当時の静岡の強豪校である福田総合や松葉を相手に敗北した。来年こそはと意気込んだ菅野だったが…。

 

『星南中出身、神城空です。ポジションはPGです。よろしくお願いします!』

 

『同じく星南中学校出身、綾瀬大地です。ポジションはSFです。よろしくお願いします』

 

『城ケ崎中出身、生嶋奏です。ポジションはSGです。よろしくお願いします』

 

『照栄中出身、松永透です。ポジションはF、Cやれます。よろしくお願いします』

 

全中で活躍し、ベスト5に選ばれた空達が花月に加入。さらに、花月高校の姉妹校であるアメリカの高校から三杉と堀田が加入した事で出番はさらに減る事となった。それでも菅野は腐らず練習を続け、自分を磨き続けた。

 

『帝光中出身、竜崎大成。ポジションは何処でもやれます! よろしくお願いします!』

 

『水鏡中学出身、室井総司です。よろしくお願いします』

 

翌年、自身最後の年、スーパールーキーとも言える2人が加入した。チームの役割や事情を考えればこの2人の加入は菅野の出番はほとんどなくなる意味合いもあった。

 

 

――何の為に3年間厳しい練習に耐えてまでバスケ部に居続けたのか…。

 

 

時折、菅野の脳裏にチラつく疑問。その疑問を振り払うように菅野はチームの為に献身的にサポートに回り、声を出してチームを鼓舞し続けてきた。

 

3年最後の冬の大会。上杉から告げられた、空と大地抜きで県予選を突破を果たすと言う目標。そしてその最後の試合で現れた緑川と言う強敵。

 

「(ああ、分かったぜ。俺が何の為に今日まで花月でバスケを続けてきたのか…)」

 

小刻みにボールを動かし、目の前の荻原が重心が片足に乗ったのを見て菅野が動く。

 

「(そうだ、全ては――)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――今日この時の為だ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ダムッ!!!

 

 

「っ!?」

 

一気に加速し、目の前の荻原の横をドライブで駆け抜ける菅野。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

抜いた直後にボールを掴み、ジャンプショットを決めた。

 

 

花月 19

緑川 26

 

 

『おぉぉぉぉぉーーっ!!!』

 

ジャンプショットが決まるのと同時に歓声が上がる。

 

「っしゃぁっ!!!」

 

シュートが決まったのを見て菅野が拳を握りながら喜びを露にした。

 

「やるやないかスガ」

 

「たりめーだろ!」

 

パチンとハイタッチを交わす天野と菅野。

 

「…っ!? 今のドライブは…!」

 

一連の動きを見た井上が驚愕する。

 

「ハハッ、さすが。ドライブ技術だけなら、キャプテンと綾瀬先輩を除けばチームで1番のものを持ってるだけはありますね」

 

期待通りの役目をこなした菅野に対して賛辞の言葉を贈る竜崎。

 

「(かなりキレのあるドライブだった。まさか、花月にこんなスラッシャーがいるとは…!)」

 

荻原を抜きさったドライブを見て一ノ瀬は目を見開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「へぇー、彼、結構やるッスね」

 

観客席の黄瀬も今のドライブを見て感心していた。

 

「なるほど、あの9番、菅野を投入したのはそういう事か」

 

今のプレーを見て赤司が菅野投入の意図に気付いた。

 

「神城と綾瀬のいない花月は外の生嶋、中の松永を主体に得点を重ねるチーム。だが、外の生嶋が徹底マークで封じられている為、松永がミスマッチを突いて得点を重ねて来た」

 

「…」

 

「だが、一辺倒の攻撃がいつまでも通用するはずがない。そこで外から中に切り込めるだけのドライブ技術を持つ菅野を投入した」

 

「あれだけのドライブを持っているとなると、彼を無視出来ない。流れが変わるかもしれないッスね」

 

試合の流れが変わる予感を感じながら黄瀬は試合に注目したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

代わって緑川のオフェンス…。

 

「おらおらおらぁ!!!」

 

「っ!?」

 

ボールが荻原に渡ると、菅野が激しくプレッシャーをかけ始めた。

 

『スゲー迫力!?』

 

『まるで試合終盤の勝負所ような当たりだ!』

 

身体がぶつかりそうな程のタイトな菅野のディフェンスに観客からも声が上がる。

 

「…くっ…そ…!」

 

激しすぎる菅野の当たりに荻原はボールをキープするので精一杯な状態になる。

 

「…ちぃ!」

 

やむを得ず荻原は一ノ瀬にボールを戻した。

 

「スゲー気合い入ってんな!」

 

「たりめーだ。全国出場がかかってんだからな!」

 

思わず話しかける荻原。菅野は当然とばかりに返す。

 

「けどよ、いくら途中出場だからって、そんなんじゃ最後までもたないぜ?」

 

「余計なお世話だ」

 

皮肉交じりに告げる荻原に対し、菅野は鼻で一笑する。

 

「(百も承知だそんな事。それでも構わねえ! ここが俺にとっての高校最後の見せ場だ。ぶっ倒れるまで動いてやる!)」

 

覚悟に満ちた表情をする菅野だった。

 

「(…体力度外視の言わば特攻のようなディフェンス。あの手のタイプは実力関係なく怖い。荻原でもかなり苦しめられるかもしれないな…)」

 

執念のような菅野のディフェンスを評価する一ノ瀬。

 

「(ならばここは…)」

 

一ノ瀬は左手で拳を握り、それをこめかみに当てた。

 

「(…っ! ハンドシグナル。デザインプレーか!?)」

 

今の行動を何らかの指示と見た竜崎は周囲の緑川の選手達の動きにも気を配った。

 

次の瞬間、井上が生嶋に対してスクリーンをかけ、桶川をフリーにする。

 

「こっちだ!」

 

フリーとなった桶川がパスを要求。すかさず一ノ瀬がパスを出す。

 

「させるか!」

 

これを見てすぐさま竜崎がパスコースを塞ぎにかかる。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

しかし、一ノ瀬はパスを中断。竜崎の伸ばした手が空を切ると、そのままカットインした。

 

「今度こそ!」

 

「次は空けんで!」

 

松永がヘルプに飛び出し、天野がパスに対応するべく動く。中に切り込んだ一ノ瀬はそのままシュート体勢に入った。

 

「決めさせるか!」

 

これを見て松永がブロックに飛んだ。

 

 

――ドン!!!

 

 

空中で松永と一ノ瀬がぶつかる。

 

 

『ピピーーーーーーーーー!!!』

 

 

同時に審判の笛が鳴る。

 

「…っと」

 

空中で体勢を整えた一ノ瀬はリングに向かってボールを放った。

 

 

――バス!!!

 

 

「っ!?」

 

無造作に放られたボールはバックボードに当たりながらリングを潜り抜けた。

 

『ディフェンスファール! 緑8番(松永)、バスケットカウント、ワンスロー!』

 

ディフェンスファールがコールされ、フリースローが与えられた。

 

「…くそっ」

 

「ドンマイ、今のは仕方あらへん、切り替えていこか」

 

悔しがる松永の肩を叩きながら天野が励ます。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

フリースローを一ノ瀬がきっちり決め、3点プレーを完成させた。

 

 

花月 19

緑川 29

 

 

「…くっ、やっぱり一ノ瀬先輩は凄い」

 

周りが奮闘する中、自分が良い様にあしらわれている現状を見て悔しさが沸々沸き上がる竜崎。

 

「キャプテンがいないんだ。俺が何とかしないと――」

 

その時、竜崎の肩に手が置かれる。

 

「スガ先輩?」

 

「俺にボールを回せ。俺が何とかしてやる」

 

そう言って、菅野はその場を後にした。

 

「…言いましたね。なら、頼らせてもらいますよ」

 

竜崎にとって菅野は何かと普段は突っかかれる事のある先輩。だが、今ではその姿が頼もしく見え、思わず笑みが零れるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

――ダムッ!!!

 

 

花月のオフェンス。竜崎がボールを運び、菅野にパスを出すと、再びドライブで荻原を抜きさり、カットインした。

 

「ちっ、2度も決めさせるか!」

 

今度は緑川が素早く対応、城嶋がヘルプに現れた。

 

「スガ先輩!」

 

その時、竜崎がボールを要求する。

 

「任せた!」

 

すかさず菅野が竜崎にパスを出す。

 

「よし!」

 

ボールを掴むのと同時に飛び、シュート体勢に入った。

 

「させるか!」

 

そこへ、ヘルプに飛び出した井上のブロックが現れた。

 

 

――スッ…。

 

 

竜崎はレイアップの体勢からボールをフワリと浮かせ、スクープショットで井上のブロックを越える。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

ボールはリングの中心を潜り抜けた。

 

 

花月 21

緑川 29

 

 

「いいぞ竜崎!」

 

「痛っ! 叩かないで下さいよ」

 

駆け寄った菅野が竜崎の背中を強く叩きながら労うと、竜崎は痛さのあまり抗議した。

 

「…なるほど、当たり前の話だが、確実に成長しているな」

 

かつての後輩の成長に喜びを感じつつ、一ノ瀬はボールを受け取ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

花月が菅野を投入し、試合に動きが見え始めた。

 

「らぁっ!」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

菅野が荻原をクロスオーバーで抜きさり、その後、自ら決めるか、ヘルプディフェンスを引き付け、フリーになった選手にパスを出し、その選手が得点を決める。

 

 

「花月が盛り返してきたッスね。…にしてもあの9番(菅野)、意外にやるッスね。キレはともかく、スピードはそれほどでもないのに」

 

幾度と荻原を抜きさり、得点を演出する菅野に黄瀬が感心する。

 

「インバートドリブルか」

 

菅野のドリブルを見て赤司が呟く。

 

「? いんば…何スかそれ?」

 

「インバートドリブルだ。ボールを切り返した方とは逆にステップを踏んで相手を翻弄するドリブルのテクニックだ。青峰が良く使うドリブルだ」

 

言葉が分からなかった黄瀬に赤司が説明する。

 

「あーそれスか。だからさっきからあの黒子っちの友達が逆を行かれてるんスね」

 

説明を受けた黄瀬が納得する。

 

「追い風の要因はあの9番、菅野だけではない。あの8番、松永にもある」

 

 

「はぁ!」

 

 

――バキャァァッ!!!

 

 

ローポストからポストアップを仕掛けた松永が城嶋が体勢を崩した瞬間にターンでゴール下に切り込み、そのままボースハンドダンクを決めた。

 

 

「緑川のセンターは全国レベルの実力を有しているが、全国で紫原や三枝といった猛者とやり合った経験を持つだけの事はある」

 

荻原から城嶋にマッチアップの相手が変わった松永だったが、城嶋を攻守の両方で圧倒していた。

 

「後は、あの7番、天野の力も大きい」

 

 

――バシィィィッ!!!

 

 

「取らせへんで!!!」

 

桶川の放ったスリーが外れ、リバウンドボールを天野が抑えた。

 

 

「ここまでオフェンス、ディフェンス共にほとんどリバウンドを抑えている。後、緑川の得点源の1つであるあの15番(井上)を抑え込んでいる事も大きい」

 

ここまで天野は、リバウンドの大半をもぎ取り、さらには井上を抑え込み、得点を防いでいる。

 

「ディフェンスとリバウンドはホント凄いッスね。そう言えば、俺達との試合でも結構取られてたッスね」

 

インターハイでの試合を思い出した黄瀬。

 

「リバウンドが取れるのは大きい。おかげで花月は思い切りよくシュートが打て、結果良いリズムを作り出す事が出来ている」

 

追い上げムードの花月。それは天野がリバウンドを制している為だと赤司が断定した。

 

 

第2Q、残り1分21秒。

 

 

花月 39

緑川 43

 

 

「点差は4点。残り時間を考えても逆転も充分可能な時間帯ッス。だけど…」

 

「あぁ。この状況下で仕事をしてくるのが、奴だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「…」

 

ゆっくりとフロントコートにボールを運んだ一ノ瀬。

 

「…さすが、3度全国を経験をしたチームだ」

 

「?」

 

不意に一ノ瀬が口を開いた。

 

「一筋縄では行かない。だからこそ――」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

「(…来た!)」

 

言葉の途中で一ノ瀬が仕掛ける。ドライブでカットインしてきた一ノ瀬に竜崎が食らいつく。

 

「――倒し甲斐がある」

 

 

――スッ…。

 

 

中に切り込み、竜崎が食らいつくのと同時に一ノ瀬が反転、バックロールターンで竜崎を抜きさった。

 

「今度は俺や! 決めさせへんで!」

 

ヘルプに飛び出す天野。ボールを掴んだ一ノ瀬がリングに向かって飛んだ。

 

 

――ガシィィィッ!!!

 

 

天野と一ノ瀬が空中で激しく交錯する。

 

 

『ピピーーーーーーーーー!!!』

 

 

同時に審判が笛を吹いた。

 

「…っ!」

 

接触しながらも一ノ瀬は空中で体勢を立て直し、ボールを構えてリングに向かって放った。

 

 

――バス!!!

 

 

ボールはバックボードに当たりながらリングを潜り抜けた。

 

『ディフェンスファール、緑7番(天野)、バスケットカウントワンスロー!』

 

「なっ!?」

 

ファール覚悟のプレーだったが、得点を決められ、フリースローを与えてしまい、言葉を失う天野。

 

「…ふぅ」

 

コートに尻餅を付きながら安堵の溜息を吐いた一ノ瀬。

 

「ナイス一ノ瀬!」

 

「おう」

 

駆け寄った荻原が手を差し出し、その手を借りて立ち上がる一ノ瀬。

 

「結構派手に行ったはずやのに…」

 

交錯の際、それなりの衝撃の手応えがあった天野。にもかかわらず体勢を立て直せるフィジカルの強さに驚きを隠せなかった。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

フリースローを決め、3点プレーを成功させた。

 

 

花月 39

緑川 46

 

 

『…っ』

 

追い上げムードに水を差す1本に花月の表情が歪む。

 

 

――ガン!!!

 

 

その後、今の1本が後を引いたのか、続くオフェンスを失敗。リバウンドも奪えず、ボールを緑川に渡してしまう。

 

「死守や! ここは死ぬ気で抑えるで!」

 

残り時間を考えても第2Q最後の緑川のオフェンス。ここを取られたくない花月は天野が声を張り上げ、檄を飛ばした。

 

「おぉっ!」

 

ボールを運ぶ一ノ瀬に対し、竜崎が激しく当たる。

 

「…っ」

 

身体が接触すスレスレの激しい当たりに一ノ瀬も嫌がる素振りを見せる。

 

 

――スッ…。

 

 

だが、一ノ瀬は動じず、僅かに出来た一瞬の隙でビハインドバックパスでボールを左へと放った。

 

「よっしゃ、ナイスパース!」

 

左45度付近のスリーポイントライン手前に移動していた桶川にボールが渡った。

 

「っ! 打たせない!」

 

スリーは絶対に打たせまいと生嶋が桶川との距離を詰める。

 

 

――ボムッ!!!

 

 

しかし、桶川はスリーを打たず、中にボールを入れた。そこには、先程ビハインドバックパスをした一ノ瀬が中に走り込んでいた。

 

「…っ!? スイッチ!」

 

ロールしながら竜崎の後ろへと抜けた一ノ瀬。追いかけようとした竜崎だったが、城嶋のスクリーンに阻まれてしまう。ボールを中で掴んだのと同時にシュート体勢に入る。

 

「させん!」

 

得点を阻止すべく、松永がヘルプに飛び出し、距離を詰めた。

 

 

――ボムッ!!!

 

 

だが、一ノ瀬はそれを見透かしたかのようにボールを投げ、松永の股下を抜けていった。

 

「っ!?」

 

股下を抜けたボールはゴール下に走り込んだ井上に渡った。

 

「くらえ!」

 

ボールを右手で掴んだ井上はリングに向かって飛び、ボールをリングに叩きつけた。

 

「うわぁ!」

 

ベンチの帆足が頭を抱えながら悲鳴のような声を上げた。

 

 

――バチィィィィッ!!!

 

 

「なっ!?」

 

ボールがリングに叩きつけられる直前、右手に収まったボールをブロックされた。

 

「阿呆、決めさす訳ないやろ!!!」

 

天野が間一髪の所ででブロックに現れ、ダンクを防いだ。

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

同時に第2Q終了のブザーが鳴った。

 

ベンチに戻る両校の選手達。試合の半分が終わり、これよりハーフタイムとなり、それぞれ控室へと戻っていった。

 

「…ふぅ、やれやれ、さすが静岡の王者だ。簡単には行かせてくれないか」

 

思い描いた通りに試合が運ばず、溜息を吐く一ノ瀬。

 

「まあいい、ここまで大きく予想を超えていない。許容範囲だ」

 

そう意味真に呟き、コートを後にしたのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

試合の半分が終わり、緑川リードで試合は前半戦が終わった。

 

点差は7点。花月は菅野の投入で流れを掴みかけるも一ノ瀬によって乗り切る事が出来なかった。

 

残すは後半戦。試合は折り返し地点に進むのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





ここ最近は週1投稿でやってきましたが、リアルの変化、モチベーションの低下、ネタ不足から投稿が遅くなっております…(>_<)

状況次第ではしばらくこんな感じになると思います。

いやホント、マジでいろいろ…(;^ω^)

感想アドバイスお待ちしております。

それではまた!
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