投稿します!
だいぶ気温が上がってきましたね…(;^ω^)
それではどうぞ!
試合終了
花月 78
緑川 77
たった1つの全国への切符をかけた激闘が終わった。
「うおぉぉぉぉぉぉっ!!!」
両拳を突き上げながら喜びの咆哮を上げる天野。
「やった…!」
静かに拳を握り、喜びを露にする生嶋。
「よし!」
同じくガッツポーズで喜ぶ松永。
「勝った!」
満面の笑みで喜ぶ竜崎。
「…っ」
喜びを噛みしめ、静かに拳を握る室井。
「よっしゃぁぁぁぁっ!!!」
ベンチでは菅野が立ち上がりながら喜びの雄叫びを上げ、コート上の選手達に向かって走り出した。
「……グス! …ヒグッ!」
帆足はベンチに座りながら涙を流していた。
「きゃぁぁぁっ! 姫ちゃん! 勝ったよ! また全国に行けるよ!」
「…うん! おめでとう、みんな…!」
涙を流しながら姫川に抱き着く相川。姫川は涙を拭いながら笑顔を向けたのだった。
「……届かなかった」
下を向き、敗北の事実を痛感している城嶋。
「あぁ! …あぁ!」
両膝を床に付け、叩きながら悔し涙を流す桶川。
「……くそっ」
チームを勝たせる事が出来なかった不甲斐なさに憤る井上。
「……また、約束…守れなかった…!」
両拳を握り、必死に涙を堪える荻原。
「…」
両目を瞑り、天を仰ぐ一ノ瀬。その表情は無念そうであった。
「……整列だ」
敗北の悔しさに打ちひしがれているチームメイトに一ノ瀬が何とか喉から声を振り絞って指示を出したのだった。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
『78対77で、花月高校の勝ち。礼!』
『ありがとうございました!!!』
センターサークル内に集まった両校の選手達が審判の号令に合わせ、頭を下げた。
「強いな、お前達は」
「次やったら勝てる気せーへんわ」
「…勝てよ。俺達の分まで」
天野と井上が握手を交わした。
「ったく、お前のスリーはスゲーな」
「僕にはこれしかないからね」
「負けんじゃねえぞ。絶対優勝しろよな」
生嶋と桶川が握手を交わす。
「さすが、全国経験者は伊達じゃないな」
「これでもまだ足りないくらいです」
「…俺達に勝ったんだ。みっともない負け方すんなよ」
松永と荻原が握手を交わした。
「とんでもないパワーだな」
「自分にはそれしかありませんから」
「お前はもっと凄い選手になれる。頑張れよ」
室井と城嶋が握手を交わした。
「…強くなったな」
「先輩のおかげですよ。先輩がいなかったら、今の俺はきっとありませんでした」
「そう言ってもらえると、お前を指導した甲斐があった」
「やっぱり先輩は凄いです。まだまだ今の俺じゃ全然敵わないくらいに。今日まで、ありがとうございました!」
竜崎と一ノ瀬が握手を交わした。
各々が言葉を交わし終えると、選手達はベンチへと戻っていった。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
「…最後は花月が逃げ切ったッスか」
「あぁ。今日の花月であれば、10回戦えば9回は緑川が勝つだろう。…いや、今後、何度戦おうと、緑川が勝つ」
残念そうにつぶやく黄瀬。赤司が続くように言う。
「…一ノ瀬っちが全国で活躍する姿、見たかったッスね」
「あぁ。…この世界に神がいるなら、あまりに残酷だ。左目のハンデさえなければ、俺達と同じステージで同じ評価を得ていた逸材であったのに…」
一ノ瀬の資質を認める赤司と黄瀬。その雄姿と姿をその目に焼き付け、その場を後にしたのだった。
※ ※ ※
場所は変わってアメリカ…。
「大地ぃぃぃっ!!!」
大きな声が響き渡ると、大きな音を立てながらドアが開かれた。
「勝った! 勝ったぜ!!!」
現れた空が携帯の画面を見せながら大地に報告する。
「時間を考えて下さい空。皆寝ているんですよ?」
呆れながら空を窘める空。
「私も存じておりますよ」
そう言って、大地も携帯の画面を見せた。
『無事、優勝。12月に待ってる』
2人の画面にそう表示されていた。
「ま、勝ってもらわないと困るんだけど。とにかく、これで全国であいつらにリベンジ出来る」
「えぇ。私達の我が儘を許していただいただけではなく、我々抜きで県大会を勝ち抜いてもらった皆さんには感謝しかありません」
キセキの世代に勝つ為、アメリカの姉妹校に短期留学した2人。ネット情報で緑川の存在を知った大地が一時帰国する事を空に提案したが…。
『…いや、監督が俺達を呼び戻さないって事は、勝算があるって事だろ。なら、俺達は皆を信じて俺達は今出来る事をやろうぜ』
首を振りながら空はそう言った。
「帰国までもうそんなに時間がない。最後の追い込みだ。もっと強くなってみんなの期待に応えられるようにならないとな」
「そうですね」
不敵な笑みで言う空に、大地は笑顔で頷いた。
「そうと決まれば、明日…て言うか、今日の練習に備えてもう一休みと行きますか」
「寝坊しても起こしに行きませんからね」
「しねーよ」
そう返し、空は部屋を後にしていった。
「…ふぅ。さて…」
空が部屋からいなくなると、大地はベッドに横になり、布団を被る。
「……果たして寝られるか。空の事、言えなくなるかもしれませんね」
苦笑する大地。未だ花月がウィンターカップ出場を決めた興奮が冷めない大地。迫るキセキの世代との対決を夢見ながら、大地は両目を閉じたのだった…。
※ ※ ※
――ピリリリリリ…!!!
場所は変わって東京の某所。
「っ!?」
誠凛の黒子テツヤの携帯電話が鳴った。着信の相手は荻原シゲヒロ。
「…もしもし」
すぐさま電話に出る黒子。時間的に試合はもう終わっている時間。
『……黒子』
「……荻原、君?」
期待を胸に電話を取った黒子だったが、自身の名を呼ぶ荻原の声を聞いて嫌な予感がする。かつての中学2年時の全中大会の折の彼の電話を彷彿させるものであったからだ。
「…試合、どうでした?」
よぎった嫌な予感が外れている事を祈り、本命の内容を尋ねる。
『……悪い、また約束、守れなかった…』
「…っ!?」
1番聞きたくない、親友からの言葉だった。
※ ※ ※
翌日…。
――キュキュッ!!!
誠凛高校の体育館では迫るウィンターカップに向けて練習が行われていた。
「…あっ」
スリーメンの練習中、黒子がパスを取り損ね、ファンブルする。
「黒子君! 集中が足りないわよ! また最初からやり直し!」
「うへー…」
苦い表情をしながら池永が元の位置に戻っていく。
「すみません…」
頭を下げながら元の位置まで向かう黒子。
「…」
その表情は何処か浮かない表情をしていた。
「今日の黒子はミスが多いな」
その様子を見ていた降旗が呟く。
「3ON3でもかなりパスミスがあったしな」
続くように福田が今日の黒子を思い出す。
「…やっぱり、黒子の友達がいるチームが負けたから、だよな」
その原因を河原が口にする。
思い当たる節は先日行われたウィンターカップ静岡県予選の決勝、花月対緑川の試合結果。黒子の友達、荻原シゲヒロがいる緑川高校が花月高校に負けた報せを荻原自身から直接聞いた事であった。
「確か、いつか試合をするって約束してたんだよな?」
「あぁ。中学時代は結局いろいろあって実現出来なかったって前に黒子が話してくれたっけ」
「高校に入っても実現出来なくて、今回が最後のチャンスだったんだから、そりゃ落ち込むよな」
気持ちを理解する3人は黒子に同情の視線を向けた。
「…監督」
「えぇ、分かってるわ」
リコに話しかける火神。その内容を察したリコは静かに頷いた。
黒子はメンタルの良し悪しがプレーに顕著に表れる傾向にある。目の前のウィンターカップで勝ち抜き、優勝を果たす為には黒子の力は必須。大会が始まる前に立ち直ってほしいと言うのがリコの本音であり、皆の真意でもあった。
「…」
遠目から黒子を見つめるリコ。
「……よし!」
何かを決めたリコは大きく頷いたのだった。
※ ※ ※
「練習試合?」
「そう、突然だけど、今日は練習試合を組んだから、そのつもりでね」
その週の日曜日の朝。リコから選手達に通達される。
「突然過ぎるぜ監督さんよぉ。こっちにだって準備ってもんがあるんだぜ?」
「お前はそんなデリケートな性格してないだろ」
ジト目で抗議する池永に、新海が溜息を吐きながらツッコむ。
「相手は?」
「それは秘密♪ ただ、ウィンターカップを想定しての試合だから当然、強いわよ。そこは肝に銘じておきなさい」
対戦相手を火神が尋ねると、リコはいたずらっ子の表情でそう返した。
「監督が言うくらいだから強いんだろうな。正邦とか泉真館とかかな?」
対戦相手に予想し合う誠凛の選手達。
「…」
相手が何処か誠凛の選手達が盛り上がる中、黒子は1人、浮かない顔をしていた。
『チュース!!!』
その時、体育館の入り口から新たな来客の声が響き渡った。
「来たわね!」
お待ちかねの者達が現れ、笑みを浮かべるリコ。
「…えっ!?」
その現れた練習試合の対戦相手を見て黒子は動揺を隠せなかった。
「よう! 黒子!」
「荻…原…君?」
対戦校の先頭に立った1人の男が黒子の名を大きな声で呼んだ。
続けて、一ノ瀬、桶川、城嶋、井上の4人が現れた。
「おめーら!? …監督、今日の練習試合の相手って…!」
「そう! 緑川高校よ!」
驚愕の表情で火神がリコに尋ねると、リコは不敵な笑みで答えた。
「ハハハッ! 久しぶりだな黒子!」
駆け寄った荻原が黒子の肩に腕を回した。
「荻原君! …どうして?」
「誠凛の監督から練習試合の申し込みがあってな。それでここまで足を運んだんだよ」
状況が掴めない黒子が尋ねると、荻原が大まかな経緯を説明した。
「今日はわざわざこんな遠くまで来てくれてありがとう」
「いえ、こっちとしても不完全燃焼で燻っていた所だったのでむしろありがたい申し出でした」
兼任監督である一ノ瀬にリコが挨拶をした。
インターハイの優勝により、ウィンターカップ東京都予選が免除の誠凛。リコはそれによる実戦経験不足を補う為、当初より本大会前に試合を組む事は決めていた。黒子の様子を鑑みて対戦相手をダメ元で緑川高校に練習試合を申し込んだ所、相手側が二つ返事で了承したのだった。
「それじゃ、緑川高校の人達の着替えが終わったら一緒にウォーミングアップをしてから試合をするわよ! 火神君、緑川高校の方達を控室に案内してあげて」
「うす! それじゃ、緑川高校の皆は俺に付いてきて下さい」
頼まれた火神が緑川高校の選手達を案内する。
「それじゃ、また後でな」
「はい!」
黒子と話していた荻原も会話を打ち切って着替えへと向かって行った。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
着替えが終わり、ウォーミングアップを終えると、早速練習試合が開始される。両校のスタメンがセンターサークル内に集まった。
誠凛高校スターティングメンバー
4番PF:火神大我 194㎝
8番 ?:黒子テツヤ 169㎝
9番PG:新海輝靖 183㎝
11番SF:池永良雄 193㎝
12番 C:田仲潤 192㎝
緑川高校スターティングメンバー
4番PG:一ノ瀬京志郎 185㎝
5番SG:桶川文吾 179㎝
6番 C:城嶋則之 190㎝
14番SF:荻原シゲヒロ 183㎝
15番PF:井上智也 192㎝
「言っておくが、お前達に花を持たせるつもりはないからな。こっちは負けたモヤモヤをぶつけるつもりだからな。負けて調子狂っても恨むなよ」
「ハッ! 上等だぜ!」
一ノ瀬がそう告げると、火神が不敵な笑みで返した。
「真剣勝負だぜ黒子!」
「はい。負けませんよ」
互いに挨拶を交わすと、試合は開始された。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
――キュキュッ!!!
ボールをキープしているのは新海。
「どうした新海! この程度か?」
「…くっ!」
その新海をマークしているのは一ノ瀬。
「(全く隙がない。かなりやる事は分かっていたが、これほどとは…!)」
かつては同じ帝光中でプレーをしていた2人。新海にとって一ノ瀬の評価は1つ上の代の2番手のポイントガードと言う認識であった。今の自分であれば互角以上に戦えると思っていたが、実際は新海がかなり押されていた。
「これじゃ元帝光中の主将の名が泣くぞ。お前の後輩の竜崎の方がまだ歯ごたえがあったぜ」
「…っ!? 舐めるな!」
――ダムッ!!!
不敵な笑みを浮かべながら挑発をする一ノ瀬。これに怒りを覚えた新海が一気に加速。カットインした。
「(抜いた! このまま――)」
「やべー!? 止まれ新海!」
何かに気付いた池永が大声で制止を促した。
――バシィィィッ!!!
カットインした直後、新海の手からボールが消えた。
「隙だらけだ!」
抜いた直後の無防備な所を井上が狙いすました。
「頭に血を昇らせて冷静さを欠いちゃ司令塔失格だぜ。…速攻!」
緑川のターンオーバー。ボールを奪った一ノ瀬がそのまま速攻に走った。
「バカ野郎が!」
「くそっ!」
罵声を浴びせる池永。新海は悔しさを滲ませながらディフェンスに戻った。
――バシィィィッ!!!
「…っ!?」
フロントコートに入り、スリーポイントライン目前の所で一ノ瀬がキープするボールが叩かれた。
「すいませんが、ここは行かせません」
謝りながら黒子がボールを叩いた。
「(読んでいたのか? ホントにこいつは…!)」
これでも百戦錬磨の黒子。リスクを悟って前もってディフェンスに戻っていたのだ。
「目の前で見るとホントにスゲーな。気が付いたらどっか行っちまうんだもんな…」
黒子をマークする荻原。神出鬼没でいつの間にか姿を消し、あらぬ所に現れる黒子を見て感心をしていた。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
「…ふぅ、一筋縄では行かねえな」
汗を拭いながらぼやく火神
第2Qが終わり、ハーフタイムに突入。両チームはベンチに戻り、水分補給をしながら休憩中。前半戦を終えた現時点でのスコアは42対37で誠凛がリードしている。
「スタメンの5人全員が粒揃いの実力者です。恐らく、そこらの全国出場チームより手強い」
前半戦を戦い終えた感想を田仲が口にした。
「…その中でも一ノ瀬先輩だ。あの人が巧みにゲームメイクをしているから他の4人が生きる。同時に一ノ瀬先輩自身が生きてくる」
自分がマッチアップをしている一ノ瀬を新海が評価した。
「彼は間違いなく全国区…それも、トップクラスのポイントガードよ」
リコもお墨付きを出した。
「…花月は神城と綾瀬抜きでよくあのチームに勝ったな」
ベンチから見ていた朝日奈も緑川の強さを痛感。改めて先の花月の快挙を称えた。
「泣き言言わないの! 大会前に負けでもしたら明日からの練習、いつもの4倍行くからね!」
気落ちしかける誠凛の選手達にリコが活を入れた。
「とりあえず、黒子君交代ね」
「…えっ?」
選手交代を告げるリコ。指名を受けた黒子は目を丸くする。
「これは大会前の調整も兼ねてるんだからいろいろ試すのは当然でしょ? それに、どのみち黒子君のミスディレクションは切れかけてるんだからこれ以上はコートには置けないわ」
「……分かりました」
ぐうの音も出ない理由を聞き、黒子は肩を落としながら了承した。
「そんな顔しないの。また後で出番はあるから。…それじゃ、朝日奈君、お願いね」
「はい」
代わりに指名を受けた朝日奈が返事をし、準備を始めたのだった
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
「さすが、インターハイ優勝校だ」
対して緑川ベンチ。城嶋が感想を口にした。
「こっちは全力でやってんのにそれでも5点ビハインドか。いやー強いね」
続けて桶川が誠凛を評価した。
「群を抜いているのは火神だ。正直、追いすがるだけで精一杯だった」
火神をマークしている井上が弱音を吐く。
「黒子もスゲーぜ! 気が付いたら目の前から消えていつの間にかパスが通ってるんだぜ。とんでもねえよ!」
興奮しながら黒子を評価する荻原。
「敵に回すと黒子は本当に厄介だ。…まぁ、そろそろ一旦下げてくるだろうけどな」
「…そっか、残念」
一ノ瀬の予想を聞いて荻原が残念がる。
「…とは言え、俺達インターハイ優勝校ともやれてるぜ。3年間は無駄じゃなかったんだよ。このまま逆転して有終の美を飾ろうぜ!」
「簡単に言いやがって。…だが、同感だ」
勝利を目指す桶川に嘆息しながらも同意する城嶋。
「この試合が俺達の高校の最後の試合だ。悔いの残らない試合にするぞ!」
『おう!!!』
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
試合は後半戦に突入。
――ザシュッ!!!
黒子がベンチに下がった事で神出鬼没のオフェンスではパスの中継、ディフェンスではスティールがなくなり、緑川は攻守共に安定し始める。
――バス!!!
対して誠凛は黒子がいなくなった事で攻守の安定感がなくなり、得意の点の取り合いを仕掛ける。
試合はトラジッションゲームによる激しい点の取り合いへと移行する。取られたら取り返す息を吐く暇のない試合内容。
「おぉっ!」
――バキャァァッ!!!
火神の豪快なダンクが炸裂する。
「(…っ、何だこいつの跳躍力は!? 飛ばれたらもう止めようがねえ!)」
その圧倒的な跳躍力を誇る火神に驚きを隠せない井上。
点の取り合いとなると、火神のいる誠凛が優位に試合が進む。
「オラオラ! 俺を忘れんなよ!」
「…決める」
「はぁっ!」
池永、朝日奈、田仲も奮闘、攻守に渡って活躍。
「…」
司令塔である新海も一ノ瀬を相手にしながら巧みにゲームを組み立てた。
前半戦…それこそ、第3Qまでは何とか均衡を保っていた試合。しかし、第4Qに入ると地力の差が出始める。
――パン!!!
終盤戦になると黒子を再度投入。その勢いは止まる事がなかった。そして…。
『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』
ブザーが鳴り、試合は終了した。
試合終了
誠凛 106
緑川 93
「…ふぅ。さすが、強いな」
「おめーらも強かったぜ」
試合が終わり、主将である火神と一ノ瀬が握手を交わした。それに続くように互いに健闘し合った選手達が握手を交わしていく。
「いやー負けた負けた! …でも、楽しかったぜ!」
「僕も楽しかったです。今日はありがとうございました」
黒子と荻原が握手を交わした。
「思い残す事はなくなった。これで心置きなく引退出来る」
「…っ、そう…ですか」
ウィンターカップ本選を控える黒子達と違い、県大会決勝で負けた緑川の3年生にはこの先、公式戦はない。その事実を認識し、黒子は悲し気な表情をする。
「そんな顔すんなって。バスケはこれからも続けるからさ。今度こそ、ちゃんとした試合で勝負しようぜ」
「…はい! 楽しみに待ってます!」
こうして、誠凛と緑川の練習試合は終わったのだった…。
※ ※ ※
「いやー、強かったな誠凛!」
「そうだな。インターハイ優勝の実績は伊達じゃないな」
帰り道、桶川と城嶋が駅に向かいながら試合の感想を言い合っていた。
「…」
試合の感想に盛り上がる中、井上だけが何か思い詰めながら歩いていた。
「……悪い、野暮用を思い出した。皆は先に帰っていてくれ」
そう告げると、井上は1人何処かへと走っていった。
「おい井上! 何処行くんだよ!」
そんな井上を制止しようとする桶川。
「行かせてやれ。あいつにも清算しなきゃならない事があるんだよ」
一ノ瀬が走っていく井上を見守りながら桶川を制止した。
※ ※ ※
「…ふわぁ」
場所は変わり、練習を終えた青峰が1人帰路に着いていた。
「青峰」
「…あん? …っ!?」
誰かに名を呼ばれて振り返る青峰。そこに立っていた意外な人物に目を見開いた。
「久しぶりだな」
「……井上」
驚いた青峰は絞り出すようにその者の名を呼んだ。
「…」
「…」
無言で見つめ合う2人。
「……すまなかった」
先に沈黙を破ったのは井上だった。井上が頭を下げながら青峰に謝った。
「…何のつもりだ?」
「いつか謝らないと行けないと思っていた。…全中大会での事を」
かつて試合で戦った全中大会。ライバル対決と目されていた戦いは才能を覚醒させた青峰に全く歯が立たなかった。その悔しさから来る憤りから井上は青峰に心無い言葉をかけてしまった。
「自分の力のなさを棚に上げて、あんな言葉をぶつけちまって。今更遅いかもしれないけど、すまなかった!」
そう言って、再度井上は頭を下げた。
「……今更なんだよ」
そう返した青峰は頭を下げる井上の横を抜けて歩いて行った。
「…っ」
頭を下げたまま井上は歯をきつく食い縛る。当然の対応だ。あれから4年以上も過ぎているのだ。青峰からすれば今更頭を下げられても迷惑以外の何物でもない。
「…なあ」
横を通り過ぎた青峰が井上に声を掛ける。
「時間あんなら、1ON1、やらねえか?」
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
近くのバスケのリングのある公園に移動した2人。5本先取の1ON1を始めた。
――バキャァァッ!!!
対決は終始青峰が圧倒。才能を開花させ、そこからさらに伸ばした青峰に井上は手も足も出なかった。
「これで4本目だ。もう勝負は決まったようなもんだ。…止めるか?」
対して井上は全て青峰に止められて0本。2人の勝負は事実上決まったようなもの。
「ああ、やっぱり強いなお前は」
そんな青峰に自嘲気味に返す井上。
「…だが、まだ勝負は終わってねえ。例えどんだけ力の差があろうと、途中で投げ出すのはダサい事だろ」
不敵な笑みを浮かべながら続ける井上。
「…っ! そうかよ」
そう返し、井上の最後のオフェンスが始まる。
――バシィィィッ!!!
だがやはり、井上は青峰を抜けず、ブロックされてしまう。
――ザシュッ!!!
続いて最後の青峰のオフェンスは青峰がきっちり決め、2人の1ON1は青峰の圧勝で終わった。
「…ふぅ。ありがとな青峰」
勝負を終え、井上が青峰に礼を言う。
「…別に、暇だったから誘っただけだ」
そんな井上に対し、鼻を鳴らしながら返す青峰。
「そんじゃ、俺は帰るぜ」
荷物を持ってその場を後にしようとする青峰。
「(ありがとう、青峰。これで思い残す事はない。これで心置きなくバスケを――)」
「次は、また試合でやろうぜ」
青峰はそう井上に告げ、歩いていった。
「…次、か。…そうだな。いつかまた、コートの上で、今度は勝ってやるからな!」
バスケへの思い残しを解消した井上。これでバスケを辞めるつもりだったが、青峰のこの言葉に井上は再びバスケを、これからもバスケを続ける事を決意したのだった。
※ ※ ※
12月の上旬…。
季節はすっかりと冬。白い息が口から吐き出る中、迫るウィンターカップに向けて練習を重ねる花月の選手達。
「ただいま帰ったぜ!」
「こんにちは」
そこへ、見知った大きなが声が体育館に響き渡った。
「空坊、綾瀬! ようやっと帰って来よったか!」
その声に気付いた天野が練習を中断して2人の下へと駆け寄った。
「お帰りなさいくー!」
「待ちかねたぞ」
続くように花月の部員達が2人の下に駆け寄っていった。
「何や手土産はなしかい?」
「後で皆に配りますよ。…それよりも、そっちは大変だったみたいですね」
「それはそうだよ。ホントにギリギリだったよ」
県大会での激闘を2人に話していく。
「ようやっと主役が揃ったのう。後はウィンターカップを――」
「――待ってください」
盛り上がる中、竜崎が制止を促した。
「俺は2人がウィンターカップに出場する事は反対です」
『っ!?』
そんな竜崎の口から飛び出た言葉に周囲の部員達は驚愕した。
「お前、何言うてんねん!?」
「普通に考えて、チームの主将とエースが大会に出ないで独自にトレーニングってあり得ないでしょう」
「けどそれは、ウィンターカップで勝ち抜く為に…」
「でも、それで県大会で敗退したら意味ありませんよね? 現に、決勝はギリギリでした。次やったら間違いなく勝てません。勝ったのがある意味奇跡な内容だったじゃないですか」
空と大地をフォローしようとする生嶋だが、竜崎はそれを一蹴する。
「県大会は俺達が力を合わせてそれこそ死に物狂いで勝ち取ったものです。それをその間トレーニングに勤しんで、戻ってきて大会に参加とか虫が良すぎとは思いませんか?」
「「…」」
その言葉に空と大地は返す言葉がなかった。
「おいおい、気持ちは理解出来るけどよ、この2人抜きで大会は勝ち抜けねえんだからよ」
「そうだよ。俺は特に気にしないからな」
菅野と帆足も何とか2人の肩を持とうとする。
「県大会を勝ち抜けたのは2人の力あっての事です。キャプテンと綾瀬先輩が大会に参加すれば出番がなくなるんですよ? 菅野先輩は出場機会は限りなくなくなりますよ。最後の大会を自身の勝手な都合で出なかった2人の為に出番を譲って納得出来るんですか?」
「「…」」
竜崎のもっともな意見に言葉を失う2人。
「ならば、お前はウィンターカップには2人は参加させるべきではない。…と言う事で良いのか?」
これまで沈黙を保っていた上杉が口を挟んだ。
「…ウィンターカップは2人抜きで勝ち抜ける程甘くない事も分かっています。だから、2人にも俺達が潜り抜けて来た修羅場と同じだけのものを潜ってもらいましょう」
「どういう事だ?」
真意が理解出来ない松永が尋ねる。
「確か、今日は花月の付属中学のバスケ部と合同練習でしたよね? 最後の紅白戦で2人には中学生チームを率いてもらって、俺達高校生チームに勝ったら参加を認めます」
『っ!?』
その提案を聞いて周囲の者達は目を見開く。
「…それは少し無茶とちゃうんか?」
天野が口を挟む。
花月付属中学は静岡県でもその実力は甘めに見積もってもどうにか中堅レベル。如何に空と大地がいても厳しいと判断した。
「それくらいやってもらわないと。俺達はそれ以上の修羅場を潜ったんですから」
尚をも提案を引っ込めない竜崎。
「どうします? この提案突っぱねて主将権限行使して無理やり大会に参加しますか? もっとも、俺の知るキセキの世代なら二つ返事で引き受けるだろうし、このくらい修羅場なら突破するでしょうけどね」
挑発するように竜崎が続けた。
「もちろん、受けるぜ」
空はその提案を笑顔で引き受けた。
「竜崎さんの言う事はもっともです。チームから離れていた我々がすんなり大会に参加するのは虫の良い話。あなたの言う修羅場、潜ってみせましょう」
続いて大地もこの提案を受けたのだった。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
こうして、しばらくして中学生達がやってきて、合同練習が始まった。そして練習の最後、予定通り紅白戦が開始される。
『…』
コート上には高校生チームと中学生チームが集まる。高校生チームは県大会の折のスターティングメンバーで、中学生チームはポイントガードとスモールフォワード以外は中学生のメンバー。
「よ、よろしくお願いします!」
「一緒に試合が出来て、光栄です!」
緊張気味に空と大地に声を掛ける中学生達。
「ハッハッハッ! そう固くなるな。一緒に頑張ろうぜ」
「リラックスして、いつも通り試合に臨んで下さい」
空は笑いながら、大地は優しく声を掛けた。
『…』
高校生チームは表情が硬い。
試合は各8分の前後半制。中学生に合わせたルール。
『言っておくが、手加減はするな。明らかな手加減が見て取れたら例え中学生チームが勝っても参加は認めさせん』
試合は前に上杉から高校生チームに告げられた言葉。
「(こうなったらやるしかあらへん!)」
「(本気で勝ちに行く。だから…!)」
「(勝ってよ、くー、ダイ!)」
胸中で天野、松永、生嶋が願う。
「これより、高校生チームと中学生チームの紅白戦を始める」
中学生チームの顧問が審判となり、運命の紅白戦が始まった。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』
紅白戦終了のブザーが鳴り響く。
「…うん、何とか行けるな」
「どれだけ修正出来るかにかかってますね」
コート上で会話をする空と大地。
「ハァ…ハァ…、嘘やろ?」
肩で息をしながら驚愕する天野。
『…っ』
他の者達も同様であった。
紅白戦終了
高校生チーム 24
中学生チーム 38
紅白戦は、中学生チームの勝利で終わった。
「ハァ…ハァ…!」
両膝に手を置きながら呼吸を整えている竜崎。
「……ハハッ! さすがですよキャプテン、綾瀬先輩」
顔を上げた竜崎は思わず笑い出した。
「お帰りなさい。活躍、期待してますよ」
そう2人に言葉を贈ったのだった。
※ ※ ※
激闘の県大会が終わり、主力である空と大地がチームへと合流した。
竜崎の反発で2人の参加をかけて行われた紅白戦が始まり、無事、空と大地は勝利した。
かくして選手全員が揃った花月高校。目の前のウィンターカップに向けて、最後の追い込みが始まるのだった……。
続く
大会前の緑川や花月のイベントを一挙に終わらせました。ここからウィンターカップが始まるんですが、その前に空と大地のアメリカでのエピソードですよね…(;^ω^)
構想通りの事をやると地味に長くなるんですが、いろいろ空白だったり知識不足のものがあるので、投稿は少し遅れるかもしれません…m(_ _)m
感想アドバイスお待ちしております。
それではまた!
キャラ紹介に緑川高校の選手を追加しました。