黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

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投稿します!

遂にこれからウィンターカップ編に入ります!

それではどうぞ!



第162Q~進化の花月~

 

 

 

空と大地が日本に帰国し、チームに合流し、目の前のウィンターカップに向けて最後の追い込みを開始する。

 

「足を止めるな! プレーの1つ1つを意識して動け!」

 

監督の上杉からも厳しく指導の言葉が飛ぶ。

 

数ヶ月とは言え、空と大地がチームを離れた事により、僅かながらに連携にズレが生じている。そのズレを本選までに解消する為、現在ではチーム練習を重点的に行っている。

 

「良い感じになってきましたね」

 

練習風景を見守っていた姫川がポツリと言う。

 

「神城君と綾瀬君はアメリカでの留学で才能を伸ばしました。他の選手達も2人抜きで県予選を勝ち抜いた事で成長と共に自信を取り戻しました」

 

「うむ」

 

「2人とチームの間に未だズレがありますが、それも大会までには充分間に合います。このままなら最高の形でウィンターカップを迎えられそうですね」

 

チームの状態を見て満足そうに頷く姫川。

 

「だが、油断は禁物だ。高校最後の大会であるキセキの世代の士気は高い。死に物狂いで勝ちに来るだろう」

 

「…はい」

 

「敵はキセキの世代だけではない。油断や驕り、己自身にも存在する。そして何より、まだ知らぬ猛者とて存在するだろう」

 

「ですね」

 

昨年、キセキの世代を擁するチームばかりに注目したばかりに大仁田高校相手に苦しんだ経験がある。

 

「ウィンターカップまで残り少ない。それまでに最高のチームを作り上げる。練習もこれまで以上に厳しくする。…今度こそ、勝たせてやらねばならんからな」

 

並々ならぬ覚悟で口にする上杉。昨年のウィンターカップに今年のインターハイ。志半ばで敗退した事を上杉自身も負い目に感じており。今度こそはとその想いを口にしている。

 

ウィンターカップまでの残り少ない日数を猛練習に注ぎ込む花月の選手達。そしてその日はやってきた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

12月某日…。

 

東京の某所の会場にて、県予選を勝ち抜いた猛者達が終結した。開会式が終わり、各県の代表校同士の激闘が間もなく始まる。

 

「お久しぶりです」

 

「…よう」

 

会場の外の一角にて、誠凛の黒子と火神が挨拶をする。

 

「久しぶりッス! 国体以来っスね」

 

「あー黒ちんだー。…やっぱり火神もいるんだー」

 

「ようテツ、火神」

 

「遅いのだよ」

 

そこには笑顔で挨拶を返す黄瀬、淡々としている紫原、不敵に笑う青峰、眉を顰める緑間の姿があった。そして…。

 

「やあ。来たね」

 

同時に赤司がやってきた。

 

「おせーよ赤司。呼び出した本人が遅れんなよ」

 

「すまない。主将の仕事があったものでね」

 

訝しげに抗議する青峰に対し、赤司は苦笑しながら謝罪した。

 

「まあまあ。…青峰っちは分からないかもしれないッスけど、キャプテンって結構やる事多いんスよ?」

 

「その通りだ。気楽に選手をやっている奴はこれだから困るのだよ」

 

「全くだ」

 

そんな青峰に黄瀬、緑間、火神が赤司の肩を持つ。

 

「…ふん」

 

それを見て青峰が鼻を鳴らす。

 

「ハムハム…」

 

「紫原っち、珍しいッスね。ガム噛んでるんスか?」

 

「うん。本当はお菓子食べたいけど、試合前に食べると力出せなくなるらしいから大会1ヶ月前からこれ(ガム)で我慢してる」

 

溜息を吐きながらガムを噛む紫原。

 

「さて…」

 

赤司が周囲を見渡す。

 

「俺達にとって高校最後の大会。こうして誰も欠ける事なく集まれたのは僥倖と言える」

 

キセキの世代と黒子と火神。キセキを冠する者達が擁するチームがウィンターカップ出場が決まり、素直に喜ぶ赤司。

 

「どのようなシナリオが用意されているかは分からない。だが、確実に言えるのは、この大会で頂点に立っているのはこの中の誰か、と言う事だけだ」

 

『…』

 

赤司の言葉に集まった面々が真剣な表情となる。

 

「そうとは限らないんじゃねえの?」

 

その時、赤司の言葉に口を挟む者が現れた。

 

「…ふん」

 

「…来やがったか」

 

「久しぶりだな!」

 

「おー! 夏以来ッスね!」

 

「やれやれ、つくづくおは朝占いは当たるのだよ」

 

「…」

 

現れた者を見て青峰は鼻を鳴らし、火神は不敵な笑みで挨拶をし、黄瀬は笑みを浮かべ、緑間は肩を竦め、紫原は無言で視線を向けた。

 

「突然の無礼、申し訳ありません」

 

横に立っていたもう1人の男が頭を下げた。

 

「まさかここで会えるとは思わなかった。久しぶりだね。神城君、綾瀬君」

 

現れた2人を赤司は歓迎するように迎えた。

 

「ども、今回は邪見にしないよな?」

 

不敵に笑みを浮かべながら空が青峰に対して告げる。昨年のインターハイの折、キセキの世代と火神が集まった際、その時も空は宣戦布告のような言葉をぶつけたが、その時は青峰に敵として歓迎されなかったのだ。

 

「……へぇ、何処で何してたか知らねえが、夏からさらに伸びたみてーだな」

 

2人を交互に見定めた青峰が不敵に笑いながら2人の成長を確認した。

 

「シナリオなんてもう決まってんだよ。頂点に立つのは俺達だ」

 

親指で自身を指差しながら空が告げた。

 

「…その様子じゃ、県予選の欠場は怪我や病気ではないみたいだね」

 

県予選の2人の欠場を知る赤司は不幸が起こった訳ではない事を知って微笑んだ。

 

「はい。今度こそ優勝する為に、今日まで死に物狂いでやってきました」

 

大地が答えるように告げる。

 

「…ふっ、良いだろう。君達ももはや俺達と同格。優勝を競い合うライバルに充分たり得る」

 

赤司は空と大地をライバルと称した。

 

「言いたい事は各々あるだろうが、敢えて言うのはやめよう。言いたい事は皆同じだろうし、それはコートの上で示すべきだからね」

 

この場の全員を見渡しながら赤司が告げる。

 

「改めて、神城君と綾瀬君を含めて顔合わせる事が出来て良かった。試合が始まってしまえばこのように穏やかにとは行かないからね。…それでは次は、コートの上で会おう」

 

そう赤司が言い放つと同時に、その場にいた8人の天才と1つの影は、各々歩き出したのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「聞いたかよ? あいつら、優勝する気らしいぜ」

 

その場所から死角の位置で話を盗み聞きをしていたウィンターカップ出場チームの選手と思しき選手が口を開いた。

 

「可哀想に。高校最後の大会、あの中で誰も優勝出来ねえってのに」

 

尋ねられたもう1人の選手がニヤリと笑いながら返事をした。

 

『あれが10年に1人の逸材とか言われてるキセキの世代か。…大した事なさそうだな』

 

隣にいた1人の外国人がニヤニヤしながら感想を口にした。

 

「お前がいれば優勝間違いなしだ。頼むぜ」

 

その外国人選手に期待の言葉をかける。

 

「調子に乗ってられんのも今の内だけだ。全中の借りは何倍にもして返すぜ、キセキの世代…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

「っしゃぁっ! 気合い入れて行くぜ!」

 

遂にウィンターカップ1回戦が開始される時がやってきた。シード枠から漏れた花月は1回戦から試合があり、インターハイではキセキの世代を擁するチームに勝利してのベスト4と言う事もあり、注目度は高い。

 

「よし、行くぞお前ら!」

 

『おう!!!』

 

上杉の檄に応えた選手達はコートへと足を踏み入れた。

 

『おぉぉぉーーーーーっ!!!』

 

花月の選手達がコートにやってくると、会場が割れんばかりに歓声が上がった。今や優勝候補の一角に数えられる花月高校。キセキを擁するチームの中で最初の試合と言う事もあり、会場のボルテージもグングン上がっていく。

 

「スタメンは神城、生嶋、綾瀬、天野、松永だ、変更はない」

 

「久しぶりのベストメンバーでの公式戦やな」

 

国体とウィンターカップ県予選では空と大地が欠場した為、夏以来のベストメンバーに思わず懐かしむ天野。

 

「そうだね。凄く懐かしい感じがするね」

 

「フッ、数ヶ月とは言え、色々あったからな」

 

生嶋と松永も同様の感想であった。

 

「こっちもいつでも行ける準備はしておくんで」

 

「頼みます」

 

「速攻で試合決めちまえよ!」

 

「頑張って!」

 

スタメンに選ばれなかったベンチの選手達がエールを贈った。

 

「初戦だけに何が起こるか分からない。だが、遠慮は無用だ。オフェンスでもディフェンスでもガンガン走って攻めてて行け」

 

『はい!!!』

 

「行って来い!」

 

「行くぞ!!! 花月ーファイ!!!」

 

『おう!!!』

 

空の掛け声に選手達が続き、スタメンに選ばれた選手達がコートへと足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

両校の選手達がコート上のセンターサークル内に集まる。花月の1回戦の相手は三重県の代表校である鎌田中央高校。

 

「…ん?」

 

整列する両校の選手達。その時、空が何かに気付く。

 

「同じ顔だ」

 

相手チームである鎌田中央のスタメン選手に瓜二つ顔が2人いる事に気付いた。

 

「…前日のミーティングで相手チームのスタメンに佐々木と言う双子の選手がいると姫川さんが言っていたでしょう」

 

事前情報の話をしっかり覚えていた大地が空の耳元で囁くように説明した。

 

「そういや、そんな事言ってたような…」

 

おぼろげな空。

 

「…で、あれが例の留学生のアメリカ人か」

 

その中でひと際存在感を醸し出す、190㎝を超える留学生選手を見ながらポツリと空が呟いた。

 

「アンディ・ドガ―。アメリカからの留学生で、本場仕込みの選手ですので、油断は出来ませんね」

 

大地は警戒をしたのだった。

 

「さて…」

 

空が主将同士の挨拶の為に前に出る。鎌田中央の主将である双子の1人が前に出て、握手を交わした。

 

「よう。少しは楽しませてくれよ」

 

すると、双子の1人が空に話しかけた。

 

「善戦してくれれば楽しめると思うぜ」

 

皮肉な言葉に空も皮肉交じりに返した。

 

「言っとくが、こっちはお前らなんて眼中にねえんだよ。俺達にとってお前らはあくまでも明日の試合の予行練習に過ぎねえんだよ」

 

ニヤニヤしながら空に向かって告げる。

 

「へぇー、もう次の大会に向けて練習試合組んでんだ」

 

対して空は鼻であしらいながら返した。

 

「…っ! …良いぜ、1つ予言してやるよ。この試合、第3Qに入る頃には試合は決まる。その時、お前はコートには立ってないだろうよ」

 

一瞬ムッとした後、空に向けてそう言ってから握手を交わした手を放した。

 

整列が終わると、選手達はコートに散らばり、ジャンパーの選手だけがセンターサークル内に残った。

 

「…」

 

花月のジャンパーは松永。鎌田中央はセンターのポジションの選手がジャンパーに立った。

 

「いよいよッスね!」

 

「見せてもらうのだよ」

 

最初の試合だけにキセキの世代や火神だけではなく、ウィンターカップ出場校全てが花月の初戦に注目していた。

 

「…」

 

審判がボールを構え、ジャンプボールに備える両校の選手に視線を向け、ボールは高く上げられた。

 

 

――ティップオフ!!!

 

 

「「…っ」」

 

両ジャンパーが同時にボールに飛び付く。

 

 

――バシィィィッ!!!

 

 

「…くっ!」

 

松永が先にボールを叩き、ジャンプボールを制した。

 

「っしゃ! ナイス松永!」

 

ボールを確保した空。試合は花月ボールで開始された。

 

「…フッ、来いよ」

 

すかさずボールを運ぶ空の前に双子の1人、佐々木翔太がディフェンスに入った。

 

「(…啖呵切った割に大した選手には見えねえな)」

 

目の前に立つ相手選手の実力を推し量る空。それなりのキャリアと勘を持つ空は実際にやり合わずとも相手のだいたいの実力は見抜く事が出来る。その空から見て、目の前の相手はそれほどの選手とは思えなかった。

 

「(ま、いいや。とりあえず1本、行くぜ!)」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

最初の1本を決める為、空が加速。中にカットインした。

 

「ぐわ!」

 

空とすれ違い様に、佐々木翔太が尻餅を付いた。

 

 

『ピピーーーーーーーーー!!!』

 

 

『オフェンスチャージング、緑4番!』

 

審判がファールをコールした。

 

「…あっ? 今こいつに触れたか?」

 

コールされたファールに訝し気な表情をする空。切り込んだ際、空はせいぜい肩が軽く相手に触れた程度に接触しただけでファールを取られる程ものではなかったからだ。

 

「ハハッ、ナイス」

 

倒れた兄を弟の颯太が手を貸しながら称える。

 

「…」

 

その姿を大地がジッと見ていたのだった。

 

 

花月の最初のオフェンスが失敗に終わり、鎌田中央のオフェンス。相手のポイントガードがボールを運ぶ。

 

「カモン!」

 

フロントコートにボールを運んだ所でアンディがボールを要求し、すかさずパスを出した。

 

「…」

 

アンディには大地がディフェンスに入った。

 

 

「さつき、あの外人はどんな奴だ?」

 

試合を観戦していた青峰が桃井に尋ねる。

 

「えっと、彼はアメリカから来た留学生で、アメリカではその州の強豪校に所属していた選手みたい」

 

ノートを手に取りながら解説する桃井。

 

「マジか!? なら相当やるんじゃねえかあいつ!?」

 

それを聞いた福山は驚きを隠せなかった。

 

「…」

 

説明を聞いた青峰は何を言葉を発せず、試合に注目した。

 

 

「…」

 

ディフェンスに入り、相手の動きに注視する大地。

 

「……ハッ!」

 

アンディが大地を見て不敵に笑うと…。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

一気に加速し、仕掛けて来た。

 

「…っ」

 

これに大地も反応し、並走する。

 

「you can't beat me!(お前では俺に勝てない!)」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

並走されるのと同時にバックロールターンで反転…と見せかけて再度突き進み、大地を抜きさった。

 

『うぉっ!!! スゲースピードとキレ味だ!』

 

一連のプレーを見て観客が沸き上がる。

 

「ハッ!」

 

直後にボールを掴み、リングに向かって飛んだ。

 

「させるか!」

 

そこへ、松永がブロックに現れた。

 

「それでブロックのつもりか?」

 

 

――バキャァァッ!!!

 

 

松永のブロックの上からアンディがダンクを叩き込んだ。

 

『ダンクもスゲー!?』

 

「…っ」

 

ブロックをものともしないダンクに松永は思わず舌打ちをする。

 

「おいおい、この程度でこの国では強豪と呼ばれるのか? 俺の国なら小学生でも勝てるぜ」

 

嘲笑の言葉を浴びせながらアンディはディフェンスに戻っていった。

 

 

「1本、行くぞ!」

 

ボールを受け取った空がボールを運ぶ。

 

「…ハッ!」

 

待ち受けるのは先程同様、兄翔太。

 

「…」

 

空は無理に切り込まず、大地へとパスを出した。

 

「今度はお前か? 来いよ」

 

大地の前に立ち塞がるのは弟の颯太。

 

「…」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

何かを考える素振りをした後、大地は切り込んだ。

 

 

『ピピーーーーーーーーー!!!』

 

 

『オフェンスチャージング、緑6番!』

 

同時に倒れ込む颯太。審判は大地のファールをコールした。

 

「(…今のは)」

 

先程の空同様、大地もこのファールに違和感を覚えた。

 

「いいぞ颯太」

 

「ああ」

 

兄の手を取って立ち上がる颯太。

 

「(全中の時に負けたのは化け物が同じチームに5人もいたからだ。だが、その化け物も各地に散らばった)」

 

「(あれからファールを貰う技術に磨きをかけた。俺達がキセキの世代をコートから追い出しちまえばアンディを止められる奴はいない。優勝はいただきだ!)」

 

勝利を確信し、双子の2人は不敵に笑うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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・・・・・・・

・・・・

 

 

「出たッスね。彼らの十八番が…」

 

2つのファールを見て、黄瀬は全中での試合の事を思い出した。

 

「鎌田西中学出身の佐々木兄弟。合気道を応用してマークマンからファールの貰うのが得意な選手です。県予選でも相手のキーマンやエースを数多くファールトラブルでベンチに追い込んでいます」

 

桃井が佐々木兄弟の解説をする。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

コート上ではアンディがジャンプショットを決めた。

 

「県予選では彼が得点を量産して三重の県予選を勝ち抜いてるわ。県予選での得点の平均は40点を超えています」

 

「正攻法ではなく、搦め手で勝負するチームか。しかも、得点を荒稼ぎ出来る外国人もいるとなりゃ、…これは、あり得るかもしれないな」

 

番狂わせの可能性を示唆する福山。

 

「ふん、本気でそれ言ってんならめでてー頭してんな」

 

「あっ?」

 

青峰の物言いに福山がムッとした表情をする。

 

「この試合の結果なんざ興味ねえ。俺があるのは、1つだ」

 

コートに視線を向けたまま青峰がそう口にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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・・・・・・・

・・・・

 

 

「お前のスピードもリズムも掴んだ。お前からファールを貰う事なんざいつでも出来るぜ」

 

ボールを運ぶ空に対し、翔太が嘲笑交じりに言い除ける。

 

「ふーん。…じゃあ、やってみろよ」

 

 

――ダムッ…ダムッ…!!!

 

 

そう言ったの同時に空がその場で高速でハンドリングを始めた。

 

「無駄だ! てめえのリズムは掴んで――っ!?」

 

空からファールを貰うべく呼吸を合わせようとする翔太。

 

 

 

「ファールを貰う、ね。あの恐ろしく速い上に恐ろしく変則的なリズムの神城っちに呼吸を合わせられるなら大したものッスけどね」

 

黄瀬がポツリと呟いた。

 

 

 

「(何だよこれは!? 速すぎる! しかもリズムがバラバラ過ぎて合わせられねえ!?)」

 

ファールを貰うべく空の呼吸に合わせようとする翔太だったが、全く合わせられずにいた。

 

「…」

 

「(っ!? ここか!?)」

 

空の挙動を見て咄嗟に倒れ込む翔太。

 

「残念」

 

しかし、空は切り込んでおらず、当然、審判から笛が鳴る事はない。

 

「その程度の小細工でやられる程、俺は柔じゃねえ」

 

「っ!?」

 

座り込む翔太を見下ろしながら空はボールを掴み、ジャンプショットを放った。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

ボールは的確にリングの中心を潜り抜けた。

 

「くっ、くそっ…!」

 

ファールを貰えず、悔しがる翔太。

 

 

「ふん、点だったら俺が50点でも60点でも取れるから問題ない」

 

鎌田中央のオフェンス。早々にアンディにボールを渡し、アンディがすぐさま仕掛けた。

 

「行かせません」

 

しかし、大地がピタリとディフェンスをする。

 

「…っ! お前など敵ではない!」

 

ボールを掴んでターンアラウンドで反転し、すぐさまジャンプショットの体勢に入った。

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

「なっ!?」

 

ボールを頭上にリフトさせようとした瞬間、大地がボールを叩き落とした。

 

「残念ですが、その程度は私は崩れません」

 

そう言ってルーズボールを抑えると、そのまま速攻を仕掛けた。

 

「行かせるかよ!」

 

スリーポイントライン目前で大地に追い付いた颯太が大地の前に立ち塞がる。

 

「…」

 

これを見て大地は停止する。その間に鎌田中央の選手達がディフェンスに戻った。

 

「(来い、ファール取ってベンチに引っ込めてやるよ!)」

 

ファール狙いの颯太は、大地の動きに注視する。

 

「…」

 

大地は膝を曲げる。

 

「(来る! すれ違い様に――)えっ!?」

 

仕掛ける大地の備える颯太だったが、大地との距離が縮まるではなく、広がった事に思わず声を上げた。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

距離が空いた事で大地は悠々とスリーを打ち、決めた。

 

「うそ…だろ…」

 

一瞬の内に距離を空けられ、茫然とする颯太。

 

 

 

「あいつのバックステップのスピードは並の奴の切り込みより遙かに速い。あの双子程度の身体能力と高さじゃ、来ると分かってても止められねえだろうよ」

 

今の大地のプレーを見て青峰がそう断言した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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・・・・・・・

・・・・

 

 

試合が始まって、当初は鎌田中央の佐々木兄弟のファールとアンディの連続得点で主導権を掴んだかに見えたが、すぐさま空と大地が主導権を取り返した。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

空が高速かつ独特のリズムで双子に兄、翔太のディフェンスを突破し、中に切り込む。

 

 

――バス!!!

 

 

そこからパスあるいは自ら決めて得点に繋げた。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

大地もバックステップで距離を取ってスペースを作り、そのままシュート。バックステップを警戒して距離を潰してきたら前進して弟颯太を抜きさり、そのまま得点を決めた。

 

 

――バシィィィッ!!!

 

 

「うっ!?」

 

強引にダンクを狙ったアンディだったが、大地によってブロックされてしまう。

 

 

「「くっ…、くそっ!」」

 

得意の技術で空と大地をファールトラブルに追い込めず、悔しがる佐々木兄弟。

 

「そんな…。俺が日本人なんかに…」

 

本場仕込みのバスケのアンディも大地の抑えられ、茫然とする。

 

当初は苦戦も予想された試合だったが、花月はその不安を払拭し、鎌田中央を圧倒。前半戦が終わった時点で56ー23と、大差を付けていた。

 

「あーあ、出番は終わりか。久しぶりの公式戦だからフル出場したかったなぁ」

 

「まあまあ。先輩達や後輩達もいるんですから…」

 

拗ねる空を大地が窘める。

 

「ちくしょう…、余裕こきやがって…!」

 

ベンチに下がった2人の姿を見て一層悔しがる佐々木兄弟。奇しくも試合開始前に予告した展開にある意味同じになってしまい、その屈辱は計り知れない。

 

 

 

「…」

 

試合を見ていた青峰は立ち上がり、その場を後にした。

 

「おい青峰、何処に行くんだよ?」

 

「便所だよ。もう結果は知れてんだ。これ以上見てても意味がねえ」

 

福山の問いにそう返し、青峰はそのまま歩き出した。

 

「まるっきり本気じゃなかったが、…なるほど、確かに伸びてんな」

 

前半戦のみだが、空と大地は実力のほとんどを見せないままベンチへと下がったが、それでもその一挙手一投足から2人の成長を感じ取った青峰。

 

「良いね。今度は前よりさらに楽しめそうだ」

 

進化した2人を見た青峰は満足そうに笑ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「くそっ! もう1度お前らをコートに引き摺り出してやる!」

 

主力を温存させられた事で屈辱を味合わされた佐々木兄弟は2人を再度投入させる為に奮闘を試みる。しかし…。

 

「ファール狙いって分かってるのに馬鹿正直に仕掛けませんよ」

 

空の代わりにコートに入った司令塔の竜崎は慎重にボールを回し、得点を重ねる。

 

 

――バシィィィッ!!!

 

 

「っ!? お前なんかに…!」

 

「確かにやるみたいやけど、キセキの世代に比べたら楽やな。五将の方がまだマシや」

 

大地に代わってマークに付いた天野がアンディを抑え込む。

 

空と大地が下がり、得点は減り、失点は増えたのだが、それでも花月は鎌田中央を相手に優位に試合を進めていた。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

生嶋が外からスリーを決め、ディフェンスを広げさせる。

 

 

――バキャァァッ!!!

 

 

松永がボースハンドダンクを叩き込んだ。

 

「おぉっ!」

 

リングに弾かれたボールを室井が相手選手を抑え込み、リバウンドボールをもぎ取る。

 

「らぁっ!」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

得意のドライブで菅野が中に切り込む。

 

「行ってください!」

 

帆足も得意のスクリーンで味方をサポート。隙を突いてフリーになって2本のスリーを決めた。

 

『おいおい、神城と綾瀬下がってもつえー!』

 

『そりゃ、県予選をあの2人抜きで突破したんだからな』

 

空と大地のいない花月であっても試合を優位に進めている事に観客も歓声を上げる。

 

「そんな…」

 

「キセキの世代相手ならまだしも、こいつらなんかに…」

 

既に試合は終盤。点差はもはやひっくり返りようのない程にまで開き、茫然とする佐々木兄弟。

 

「今の日本人は、こんなにもレベルが高いのか…」

 

県予選の結果から日本人を見下していたアンディ。しかし、自分のバスケが全く通用せず、表情を強張らせている。

 

「強さは健在ッスね」

 

改めて花月の強さを認識する黄瀬。

 

「ふーん」

 

興味なさげなリアクションをするもしっかり花月の実力を見据える紫原。

 

「そうでなくては倒し甲斐がないのだよ」

 

眼鏡のブリッジを押し上げながら緑間が呟く。

 

「良いね。燃えてきたぜ」

 

テンションを上げる火神。

 

「面白い」

 

赤司は薄っすらと笑みを浮かべたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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・・・・

 

 

「あのアメリカ人、最初は結構やるかと思ったがよ、そこまでもねえな? 本当に州の強豪チーム出身なのか?」

 

「…それは間違いないんだけど、向こうではスタメンはおろか、ベンチ入りも出来なかったらしくて」

 

福山の疑問に桃井がおずおずと答えた。

 

「そういう事かよ。向こうじゃ通用しねーからってこっちで一旗揚げようとしたって訳か。舐められたもんだぜ」

 

それを聞いて鼻を鳴らす福山。

 

「…でも、あれだけ実力があってもアメリカではベンチにも入れないんですね。日本なら全国区のチームであってもスタメンになれそうな実力なのに…」

 

それでも高い実力を誇るアンディを見て桜井はアメリカの実力を知ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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・・・・・・・

・・・・

 

 

試合はそのまま花月優勢で進んだ。ベンチに下がった空と大地は以降、試合に出る事はなく。ベンチワークを駆使して試合を進めた。

 

 

『ビビーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

そして試合終了のブザーが鳴った。

 

 

試合終了

 

 

花月   98

鎌田中央 62

 

 

ウィンターカップ初戦を花月が無事、勝利で飾った。

 

「っしゃぁぁぁっ!!!」

 

「…ふぅ」

 

3年最後の大会にして全国デビューを飾った菅野。同じく全国の舞台で試合に出場した帆足。菅野は絶叫しながら喜び、帆足は試合に貢献出来た事に喜んだ。

 

「まずは初戦、勝利出来ましたね」

 

「うむ。だが、ここからだ」

 

喜びも他所に上杉は次を考え、表情を改めた。

 

「勝ったな」

 

「ええ」

 

そう言って、軽く手を叩き合う空と大地。

 

「明日だ。ようやく去年の借りを返せる」

 

「必ずや、リベンジを果たしましょう」

 

2人はそう宣言したのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

無事、花月が1回戦を突破した。

 

シード枠の洛山、誠凛、桐皇は試合がなく、海常、秀徳、陽泉は危なげなく1回戦を突破した。

 

翌日、2回戦及びシード枠の試合が始まる。

 

 

 花月高校 × 桐皇学園高校

 

 

その中での注目の対戦カードがこの試合。今年の夏に実現しなかった対戦カードである。

 

昨年のウィンターカップで煮え湯を飲まされた相手である桐皇学園高校。

 

リベンジマッチの火蓋が明日、切られるのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





と言う訳で、一気に大会初日終了です。

帝光過去編でおなじみのあの双子が登場です。何処かで出そうと思っていたのですが、満を持してここで登場です…(^-^)

留学生のアンディ・ドガ―。名前の由来はUnderdogからです…(;^ω^)

さて、ここからが本題となるので、今から試合のネタ集めに入ります。自分的に過去の試合が出来過ぎかと思っているので、それに負けない試合にしたいですね…(>_<)

感想アドバイスお待ちしております。

それではまた!
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