黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

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投稿します!

遂に本題が始まります!

それではどうぞ!



第163Q~リベンジマッチ~

 

 

 

「……よし!」

 

時刻は早朝、外は完全には日が昇っていない時間。ジャージ姿に着替えた空は旅館の庭で軽く身体を解し、気合いを入れた。

 

「早いですね」

 

走り出そうとした時、ちょうど旅館から出て来た大地が声をかけた。

 

「おう。今日は激戦になるからな。早めに身体を動かしておかねーとな」

 

「考える事は同じですね。…近くの公園までどうです?」

 

そう大地が尋ねると、空はニヤリを笑い…。

 

「良いねえ。負けた方はジュース奢りな」

 

その提案を受けたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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・・・・

 

 

「…ふぅ、私の勝ちですね」

 

「ちっくしょう! 途中の車さえ来なけりゃ俺勝ってたのに!」

 

旅館から公園までの競争は大地の勝利で終わった。空は傍の自販機で飲料水を買い、大地に手渡した。

 

「ほらよ」

 

「どうも」

 

大地に飲み物を渡すと、2人は蓋を開け、口にした。

 

「…いよいよだな」

 

「ええ。去年の雪辱を返す時が来ました」

 

本日、ウィンターカップ2回戦。花月は桐皇と激突する。昨年のウィンターカップは準々決勝で戦い、敗退した。

 

「去年戦った時は、力の差は歴然だった。結果は1点差だったとは言え、次やり合えば間違いなく点差を付けられて負ける程に…」

 

紙一重での敗北ではあったのだが、奇策がハマったり、あらゆるものが花月を味方した。しかし、それでも勝つ事が出来なかった。

 

「桐皇はキセキの世代を擁するチームの中でもっとも昨年の主力が残ったチーム。唯一代替わりをした國枝さんも、身体能力では若松さんに後れを取りますが、それでも決して大きく劣っている訳ではありません。経験値以外は総合的に見てもそこまで差はないですからね」

 

去年のスタメンが4人も残り、経験豊富な選手が残り桐皇。去年の主将であった若松の穴を埋める國枝も、技巧派ながらパワーもそれなりにあり、総合的には引けを取らない。

 

「オフェンスは特に厄介ですね。青峰さんを始め、主将の福山さんや、シューターの桜井さん等、得点能力の高い選手が揃っています」

 

桐皇の特徴はその圧倒的なオフェンス力。東京都予選でも100点ゲームを連発し、下馬評ではオフェンス力ナンバーワンとも言われている。

 

「厄介なのは、向こうは俺達の動きを先読みしたディフェンスをしてくる事だ」

 

もう1つ。桐皇と言えば、全国屈指のオフェンス力を持つチームであるが、ディフェンスも曲者である。桐皇のマネージャーであり、参謀でもある桃井さつきによるデータ収集能力。これにより、相手のオフェンスは先を読まれ、後手に回される。

 

「試合は間違いなく点の取り合いになる。…責任重大だぜ?」

 

空は大地を見ながらニヤリと笑う。

 

前日のミーティングにて、青峰のマークはスタートから大地がする事になった。ポジションや身長を考えたら天野の方が適任ではあるのだが、キセキの世代の中でも指折りのスラッシャータイプでも青峰を相手にするには、多少のミスマッチであってもスピードがある大地が適任となったのだ。

 

「前回は食らいつくのがやっとでしたが、私とて去年とは違います。必ず、勝ってみせます」

 

力強く、確かにな目をしながら大地が宣言した。

 

「なんや。お前らも来とったんか」

 

そこへ、2人に話しかける者が現れた。

 

「天さん!」

 

「おはよう、くー、ダイ」

 

「相変わらず早いな」

 

現れたのは天野。その後ろに生嶋と松永が続いて挨拶をした。

 

「水臭いのう。俺らも誘えや」

 

「申し訳ありません。起こすのも悪いと思ったので…」

 

茶化すように言う天野に対し、大地は申し訳なさそうに頭を下げた。

 

「みんな早いな。もしかして寝られなかったのか?」

 

「阿呆。こちとらお前らと違って昨日フル出場しとんねん。グッスリや」

 

昨日、花月で唯一フル出場した天野は空の問いにツッコミを入れるように返した。

 

「普段なら緊張してあまり寝られないんだけど、今日は何故か良く眠れたよ」

 

「俺もだ。強敵を前にここまで万全に朝を迎えられるのは久しぶりだ」

 

生嶋と松永もしっかりと睡眠が取れ、コンディションは万全であった。

 

「そりゃ心強い。今日は頼りにさせてもらうぜ」

 

それを聞いた空は満足そうに微笑んだ。

 

「先輩達、早いですね」

 

「おはようございます」

 

そこへ、竜崎と室井がやってきた。

 

「考える事はみんな一緒みてーだな」

 

「…ふぅ、菅野先輩、置いてかないで下さいよ」

 

続いて菅野と帆足もやってきた。

 

「なんや、結局いつものメンバー勢ぞろいかい。ほなら、せっかく揃っとるやし、朝飯前に軽くチーム連でもやろか」

 

「っしゃ! まずはランニング…は、既に皆ここまで走り込んでるからいいか。んじゃ、スリーメンでもやるか」

 

空を先頭に、揃った花月の選手達はチーム練習を行った。その後各々自主練をし、軽くシュートを打ち込んだりする者、軽めに1ON1等をする者。あるいはそのサポートと、各々取り組んだ。

 

「…もう時間やな。そろそろ旅館に戻って飯にしようや」

 

ひとしきり練習を行っていると、時刻は朝食時。日も完全に昇っており、天野が切り上げるように指示を出す。

 

「…ですね。あー腹減った!」

 

こうして花月の部員達は旅館へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

旅館に戻り朝食を取る(前に上杉から軽く説教)、と、選手達は準備をして会場まで移動した。

 

『おぉぉぉーーーーーっ!!!』

 

試合前の練習の為、花月と桐皇の選手達がコートに現れると、会場が割れんばかりの歓声に包まれた。

 

『…』

 

両校の選手達は淡々とアップをしている。

 

『…なんつーか、凄い緊張感だな』

 

両校の選手達の緊張感が観客にも伝わり、当初は沸き上がっていたのだが、徐々に収まっていった。

 

「下がるぞ!」

 

「撤収だ、急げ!」

 

やがて時間になり、両校共にコートから下がる準備を始める。

 

「よう」

 

その時、空に対し、青峰が話しかけた。

 

「随分と大人しいじゃねえかよ。まさか、ビビってんじゃねえだろうな?」

 

不敵に笑いながら青峰が尋ねる。

 

「そんな訳ねえだろ。むしろ、待ち遠し過ぎて武者震いするくれーだよ」

 

そう言って空は胸の辺りを掴む。

 

「あんたは初めて試合で負かされた相手だからな。ひとたび顔を合わしちまったら、…抑えられそうにねえから必死に抑えてんだよ」

 

「…へぇ」

 

それを聞いて青峰は満足気に笑う。

 

「焦らなくても試合になったら全開でやるつもりだからよ。それまで待ってろよ」

 

「ハッ! ちったぁ、マシな顔するようになったじゃねえか。せいぜい楽しませろよ」

 

そう言って、青峰は踵を返し、チームメイトの下へと向かって行った。

 

「1つ言い忘れた」

 

「あん?」

 

戻ろうとした青峰は空の言葉に振り返る。

 

「機会があればやり合うつもりだがよ、今日あんたが相手するのは、こっちだ」

 

「…ほう」

 

「…」

 

親指で指差した先に、大地の姿があった。

 

「言っとくが、大地はつえーぞ。少なくとも、去年の俺より遙かにな」

 

ニヤリと笑いながら空が青峰に告げる。

 

「…へぇ、てめえが今日俺をマークすんのか」

 

「はい。今日、あなたを倒す為、腕を磨いてきました」

 

力強い口調、力強い目で大地が青峰に告げた。

 

「…ハッ! 去年はお前(空)か関西弁の奴のどっちかがいなけりゃ相手にならなかった奴が、何処までやるようになったか、楽しみにしてるぜ」

 

そう皮肉交じりで返し、青峰は今度こそその場を去っていった。

 

「…ああ言ったからには、もう後には引けないぜ?」

 

「引くつもりありません。今日、私は青峰さんを倒します」

 

「ハッハッハッ! それでこそ花月のエース。そして、俺の相棒だ」

 

満足そうに空は笑うと、2人もコートを後にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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・・・・

 

 

控室にて、桐皇学園高校…。

 

『…』

 

刻一刻と試合時間が近付く中、試合に向けて着々と準備を進めていた。

 

「…って、青峰はまだ戻らねえのか」

 

控室にて唯一青峰がいない。1度は合流したのだが、控室に入らず、1人何処かに行ってしまったのだ。

 

「えっと…まだ戻ってません。さすがに試合前には戻ると思うけど…」

 

不安そうに桃井が言った。

 

「ハハッ。青峰はんは相変わらずマイペースやのう」

 

「気取った言い方すんな。あんなのただの自己中だ自己中」

 

いつもの様子の青峰を見て今吉が笑うと、福山は口先を尖らせる。

 

「さつき。ドリンクくれ」

 

その時、控室の扉が開かれると、青峰がやってきた。

 

「青峰、いい加減勝手に別行動するんじゃ……って、スゲー汗だなおい!」

 

1人別行動を取る青峰に一言文句を言おうとした福山だったが、青峰の身体から滝のような汗の量を見て驚いた。

 

「…あん? 少しきつめにアップしただけだよ」

 

そう青峰が返すと、受け取った飲み物を口にした。

 

「(…それだけ青峰さんは花月を警戒してるんだ)」

 

桜井が青峰の胸中を察した。

 

青峰の特徴の1つにスロースターターと言う一面がある。試合開始直後は調子が出ず、同じキセキ級の選手がいるチームと戦うと良くて拮抗、場合によってリードを許してしまう事が多々あった。このきつめのアップは試合開始直後に全開で戦えるようにする為。つまり、青峰はそれだけ花月を認めているのだ。

 

「そんな様で試合後半でバテたりすんなよ」

 

「それは大丈夫だと思うよ。大ちゃん、怪我治ってから毎日練習後に走り込んでたから」

 

「余計な事喋ってんじゃねえよ」

 

心配する福山に対し、桃井が弁明すると、青峰が諫めるように口を挟んだ。

 

「ほう? あの基礎連嫌いの青峰が自主的に走り込みねぇ…」

 

「ド下手なディフェンスするてめえの尻拭いするとなると体力はどれだけあっても足りねえんだよ」

 

「んだと!?」

 

茶化す福山に青峰が呆れ顔で返すと、福山は怒りを爆発させた。

 

「わーわー! 落ち着いて下さい!」

 

それを見て桜井が慌てて止めに向かった。

 

「キャプテンと青峰先輩は相変わらずですね」

 

「いい加減見飽きたわ」

 

嘆息する國枝に対し、今吉は慣れたのか、ニヤニヤと笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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一方、花月の控室…。

 

『…』

 

選手達は黙々と試合に向けて準備を進めていた。

 

「(…凄い空気を重い)」

 

誰も言葉を発せない控室。相川がズシッと何かを感じていた。

 

「準備は出来ているな?」

 

そこへ、上杉が控室にやってきて選手達に尋ねた。

 

「もう時間ですか?」

 

「間もなくだ。そろそろ試合に向けて気持ちを入れ替えろ」

 

その言葉を聞き、選手達は移動の準備を始めた。

 

「っしゃぁっ! 行くぞ!!!」

 

『おう!!!』

 

空の掛け声を合図に選手達が応え、コートのあるフロアへと向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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『来た!!! キセキの世代撃破を成し遂げた不屈の旋風、花月高校!!!』

 

『今回も奇跡を起こしてくれよ!!!』

 

花月の選手達が改めてコートに現れると、観客が割れんばかりの声援を贈った。

 

『対するは、キセキの世代エース、青峰大輝を擁する新鋭の暴君、桐皇学園高校!!!』

 

『力の差を見せつけろよ!!!』

 

続いて桐皇の選手達が現れると、同様に声援を贈った。

 

『どっちも高いオフェンス力を誇るチームだ。まず間違いなく点の取り合いになるぞ!』

 

キセキの世代を擁するチームとキセキの世代を撃破した実績のあるチームとの激突。注目度は高い。

 

「おっ? 来たな。さて、どうなるかな」

 

観客席の高尾が注目する。

 

「真ちゃんの予想は?」

 

「…予想は出来ん。どっちが勝ってもおかしくはないのだよ」

 

尋ねられた緑間はそう答えた。

 

「去年の試合前予想は桐皇に圧倒的優勢だったけど、今年は読めないな」

 

観客席の別の場所で海常の小牧が予想を立てるも答えが出なかった。

 

「……インターハイでの花月を見れば、花月が優勢ッスかね」

 

直接最近の花月と手合わせをした黄瀬は花月の優勢を予想した。

 

「ただ…」

 

「?」

 

「青峰っちが何処まで強くなったか次第ではこの予想はあてにならないッス」

 

続いてそう言葉を続けた。

 

「青峰はインターハイでの負傷で途中で欠場したが、後に引き摺る程ではなかったはず。夏の時と大して変わらなければ花月が優位だろうが…」

 

ここで赤司は言葉を止める。

 

「昔の青峰ならいざ知らず、あの青峰が今日までただ日々を過ごすとは思えねえ」

 

「同感です。もともと、青峰君は負けず嫌いで日々の努力を怠らない人でもありましたから、きっと夏より進化していると思います」

 

青峰の性格を汲み取る火神。黒子も頷いていた。

 

「インターハイデハ残念ナ結果ニナッテシマッタカラ楽シミダ!」

 

アンリが今か今かと試合を待ち望む。

 

「本気になった峰ちんを止めるのは面倒なんだよねー」

 

紫原も青峰を脅威に感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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・・・・

 

 

「スタメンに変更はない。神城、生嶋、綾瀬、天野、松永だ」

 

『…』

 

選手達の前に立った上杉が告げる。

 

「今更細かい作戦を言うつもりはない。相手の倍走り、空いたら即座に得点を狙い、相手の倍点を取れ」

 

『はい!!!』

 

「…少なからず去年の敗北を引きずっている者もいるだろう。いいか。お前達は強い。今のお前達なら例え桐皇であっても真正面からぶつかって倒せるだけの力を持っている。それだけの練習をお前達にさせてきた」

 

『…』

 

「俺の監督人生において、もっとも厳しい練習をさせたのがお前達だ。お前達が今日まで積み上げて来たものが今日の試合で発揮出来るはずだ」

 

『…』

 

「月並みだが、自分を信じろ。もう1度言う。お前達は強い!」

 

『はい!!!』

 

「よし! 俺からは以上だ」

 

「全員集まれ!」

 

上杉の話が終わると、空が立ち上がり、皆を集める。選手達は円陣を組むように集まった。

 

「リベンジマッチだ。俺はこの日を待ちわびた。他と潰し合う前にぶつかれた事に感謝しかねえ」

 

『…』

 

「正真正銘、最後の大会だ。もう次はない。今度こそ、俺達が頂点に立つ」

 

「せやな。負けは充分味わったからのう。もうよういらんわ」

 

「だね。目指すのは優勝。それだけだね」

 

「ああ。その為に花月に来たのだからな」

 

空の言葉に天野、生嶋、松永が賛同する。

 

「その為の今日の試合です。昨年の雪辱を晴らしましょう」

 

大地が意気込みを露にした。

 

「スー…フー…、よし、それじゃ、花月ー!!! ファイ!!!」

 

『おう!!!』

 

「行くぞ!!!」

 

掛け声と同時にスタメンに選ばれた5人がコートへと足を踏み入れたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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・・・・

 

 

コート上のセンターサークル内に花月、桐皇のスタメンの選手が集合する。

 

 

花月高校スターティングメンバー

 

 

4番PG:神城空  180㎝

 

5番SG:生嶋奏  182㎝

 

6番SF:綾瀬大地 185㎝

 

7番PF:天野幸次 193㎝

 

8番 C:松永透  196㎝

 

 

桐皇学園高校スターティングメンバー

 

 

4番SF:福山零  191㎝

 

5番PF:青峰大輝 195㎝

 

6番SG:桜井良  177㎝

 

9番PG:今吉誠二 179㎝

 

10番 C:國枝清  192㎝

 

 

「これより、花月高校対桐皇学園高校の試合を始めます。礼!」

 

『よろしくお願いします!!!』

 

審判の号令と同時に挨拶を交わす両チーム。

 

「よろしく頼むぜ!」

 

「こちらこそ」

 

主将の空と福山が握手を交わした。そして、ジャンパーの松永と國枝を残し、コートに散らばっていった。

 

「っしゃ! 9番(今吉)!」

 

「6番(桜井)」

 

「4番(福山)や!」

 

「10番(國枝)」

 

花月の選手達がナンバーコールをする。

 

「5番(青峰)」

 

最後に大地がコールした。

 

 

「ナンバーコールしたって事は、マンツーマンで行くのか」

 

「って事は、真っ向勝負で挑むつもりか」

 

ナンバーコールを聞こえ、新海と池永がそう解釈した。

 

「青峰は綾瀬が相手するのか」

 

「英断なのだよ。福山は中と外で勝負が出来る選手だが、どちらかと言うとゴリゴリ身体をぶつけて中から仕掛ける事を好む選手だ。天野の方が適任なのだよ」

 

ポツリと呟く高尾。緑間がこの決断を評価した。

 

 

「…」

 

「…」

 

ジャンプボールに備える松永と福山。

 

「…」

 

審判がジャンパーの2人を交互に視線を向け、ボールを構え、高くボールを上げた。

 

 

――ティップオフ!!!

 

 

「「…っ!」」

 

同時にジャンパーの2人がボールに飛び付く。

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

「…ちぃっ!(こいつ、結構飛ぶ!?)」

 

思わず舌打ちをする松永。ボールを先に叩いたのは國枝。

 

「おおきに!」

 

今吉がボールを抑え、そのままボールを運びを始めた。

 

「……来な」

 

そんな今吉の前に空が立ち塞がった。

 

「うはっ! ホンマかいな…」

 

思わず今吉が吹き出す。

 

「(たった1年でここまで変わるんか…。まるで別人やんけ…)」

 

空から放たれるプレッシャーを受け、今吉がたじろぐ。

 

「(あかんわ。去年はまだ付け入る隙もあったんやが、今回はワシでは話にならんわ。まともに仕掛けんのは避けんと…!)」

 

力の差を理解した今吉はすかさず左45度付近のスリーポイントライン手前に立つ桜井にパスを出した。

 

「打たせないよ」

 

すぐさま生嶋が密着マークでディフェンスに付いた。

 

「(…っ! 凄いプレッシャーだ! けど!)」

 

隙を突いて桜井がターンアラウンドで反転し、生嶋をかわす。

 

「すいません!」

 

直後、得意のクイックリリースのスリーを放った。

 

「っ!? あかん! ストップや!」

 

「…えっ?」

 

 

――バシィィィッ!!!

 

 

咄嗟に制止をかける今吉だったが一足遅く。ボールがリリースされるのと同時に横から現れた1本の手にブロックされた。

 

「桐皇の最初のオフェンスの大半はあんたからだからな。簡単には打たせねえよ」

 

「(神城君!?)」

 

ブロックに現れたのは空だった。

 

「(そんな…、あれだけ距離があったのに……ハッ!?)」

 

ここで桜井はある事を思い出す。

 

『神城君と綾瀬君のディフェンスエリアはとにかく広く、気が付くとあっという間にヘルプに来るので注意して下さい』

 

事前のミーティングで桃井に言われた言葉。

 

「しまった、打たされたのか…」

 

ここでもう1つ気付く。ターンアラウンドをした事で僅かではあるが空がいる側に移動させられてしまった事に。生嶋はわざとターンアラウンドを誘発させたのだ。

 

「よし! 先取点貰うぜ!」

 

ルーズボールを抑えた空がボールを運ぶ。

 

「っと、戻り早いな」

 

サクッと1本速攻を決めるつもりだったが、桐皇がいち早くディフェンスに戻り、速攻を阻まれてしまう。

 

「…何処までやれるか分からんけど、全力で止めさせてもらうで」

 

今吉が空の前に立ち塞がった。

 

「…」

 

ゆっくりドリブルをしながら攻め手を定める空。

 

「……フッ、ま、最初はここしかねえだろ」

 

そう呟き、パスを出した。

 

「っ!? おいおい、いきなりかよ!」

 

この選択に高尾は驚いた。

 

「正気とは思えないぜ」

 

同様に小牧も驚いていた。

 

「良い度胸じゃねえか。…来いよ」

 

目の前に立つ青峰がニヤリと笑いながら告げる。

 

「行きますよ」

 

ボールを掴んだ大地がそう返した。

 

「…」

 

「…」

 

ボールを小刻みに動かし、小刻みに右足を動かし、ジャブステップを踏みながら牽制する大地。

 

「…っ」

 

「(…来る!)」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

意を決して大地がドライブを仕掛ける。仕掛ける気配を察した青峰が大地に並走するように追いかける。

 

 

――キュキュッ!!!

 

 

直後、大地が急停止…。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

バックステップで下がり、距離を空けた。

 

「(急停止して下がるんだろ? そのくらい…!)」

 

これも予測した青峰も急停止し、すぐさま大地との間に出来た距離を潰す。下がったのと同時にボールを掴んだ大地はステップバックを踏んでジャンプシュートの体勢に入る。

 

「(その程度で俺を出し抜いたつもり――っ!?)」

 

追い付けると踏んだ青峰だったが、次の瞬間、驚愕する。大地はステップバックをした左足でそのまま後ろに飛び、かつ速いリリースでボールを放ったのだ。

 

「っ!?」

 

思わず青峰が振り返り、ボールの行方に注目する。

 

 

――バス!!!

 

 

ボールはバックボードに当たりながらリングを潜り抜けた。

 

 

花月 2

桐皇 0

 

 

『おぉぉぉーーーーーっ!!! いきなり決めたぁっ!!!』

 

『ステップバックをした足でそのままジャンプして決めやがった!』

 

『何であんな速いリリースで決められんだよ!?』

 

いきなりの大地の大技に観客は大歓声を上げた。

 

 

「…片足でのフェイダウェイからのクイックリリース。あの様子じゃ、完成させたんスね」

 

インターハイでの対戦時に目の前で決められた黄瀬。当時は確率の低さを感じていたが、今の様子を見てきっちり仕上げてきた事を理解した。

 

 

「去年とは違います。必ず、今日あなたを倒します」

 

そう青峰に告げ、大地はディフェンスに戻っていった。

 

「…なるほど、やるようになったって訳か」

 

去年は相手の動きを見て止める事も出来たが、今回はある程度動きを予測していたにも関わらず止める事が出来なかった。全国屈指のドライブ技術を持ち、確率の高いスリーも併せ持つ大地。迷いが出たり、どちらも止めようと考えてしまうともはや止める事は至難の業。

 

「良いね。勝負ってのはそうでなくちゃ面白くねえ…!」

 

目の前で大地の成長を見せつけられた青峰は、その成長を見て心を躍らせ、ニヤリと笑ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

変わって、桐皇のオフェンス。

 

「…」

 

ボールを運ぶのは司令塔である今吉。

 

「…」

 

目の前に立ち塞がるのは空。

 

「……そんな睨まんでや。言われんでもそのつもりやって」

 

そう呟き、今吉はパスを出した。

 

 

「だろうな。あいつがやられっぱなしで黙ってる訳がねえ」

 

ボールが渡った先を見て火神がニヤリを笑った。

 

 

「…止めます」

 

「ハッ! やれるもんならやってみろよ」

 

意気込みを露にする大地。対して青峰は不敵に笑う。

 

「…」

 

右45度付近のスリーポイントラインの外側で対峙する2人。大地は腰を落とし、青峰の仕掛けに備える。屈指のドリブラーである青峰。大地にも決して劣らないスピードに加え、驚異のアジリティを併せ持っている。しかもそこから型にハマらないストリートバスケのムーブに加え、従来のセオリーから外れたフォームレスシュートを放ってくる。

 

「(とにかく抜かせない事が先決。中に切り込まれると体格の劣る私が不利…)」

 

万が一にも中に切り込まれ、ダンクを狙われると体格差のある大地では止めるのは困難。その為、何としてもそれを避ける為、大地は距離を取って青峰のドリブルに備えた。

 

「(この日を想定して空に仮想青峰さんの練習をしてもらいました。絶対に止めてみせます!)」

 

組み合わせを見て桐皇と戦う事を理解した大地は空を相手にこの日の為に練習を積んでいた。

 

『…』

 

会場にいる全ての者がこれから始まる勝負に注目している。

 

「…」

 

大地も集中力を高め、青峰の一挙手一投足に細心の注意を払う。

 

「……ハッ!」

 

そんな大地を見て一笑する青峰。次の瞬間…。

 

「……なっ!?」

 

青峰の行動に大地が思わず声を上げる。

 

『なっ!?』

 

これには桐皇を除くコート上及びベンチの選手。観客全てが同じリアクションを取った。

 

青峰は得意のストリートバスケのドリブルアクションではなく、その場からシュート体勢に入り、スリーを放ったのだ。

 

「っ!?」

 

思わず振り返る大地。距離を取っていた上に、スリーに対し無警戒だった為、為すが儘に見送ったスリー。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

ボールはリングを潜り抜けた。

 

 

花月 2

桐皇 3

 

 

『マジかよ!? スリー打ちやがった!?』

 

『前にはなかったよな!?』

 

過去にデータのない青峰のスリーに観客は驚愕した。

 

 

「マジかよ…」

 

これには火神も驚いていた。

 

 

「何驚いてんだよ。こんなの、放り投げて決めるより遙かに簡単なんだよ」

 

「っ!?」

 

そう言い放つ青峰に振り返る大地。

 

「てめえの成長は認めてやる。だがな、俺に勝てる思ってんなら、考えがあめー。…俺に勝てんのは、俺だけだ」

 

最後にそう告げ、青峰はディフェンスに戻っていった。

 

「やられたな」

 

大地に歩み寄った空が話しかける。

 

「青峰の性格を考えて、あのスリーはハッタリじゃねえだろうな。さすがに緑間や生嶋程決めてこないだろうが、距離を空けりゃガンガン打ってくるだろうよ」

 

そう分析した空。

 

「…それでも、私が彼を抑えなければなりません」

 

顔を上げる大地。

 

「過去にも、容易く打倒出来たキセキの世代はいませんでした。この程度は覚悟の上です。…大丈夫。必ず倒してみせます」

 

確固たる決意に満ちた表情で大地は空に告げた。

 

「そうこなくちゃ。ガンガンボールを回す。ガンガン決めろよ」

 

そう言って、空は大地の肩に手を置いたのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

遂に始まったリベンジマッチ。

 

互いのエースが互いの進化を見せつける形で試合は始まった。

 

どちらのエースがエース対決を制するのか…。

 

試合は、ここから激化していくのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





気が付けばUAが50万を超えてました・・・(^^)/~~~

コツコツ積み上げ、遂にここまで来たと言う感じです。次の目標はお気に入り登録数1000人ですかね…(;^ω^)

満を持して始まったリベンジマッチ。これはキセキの世代との試合が始まると毎回言ってるんですが、大雑把な内容以外、試合展開が白紙です…(>_<)

これから先の試合展開にも負けないようネタを練らなければ…(T_T)

感想アドバイスお待ちしております。

それではまた!
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