黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

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投稿します!

とうとう今年も2ケ月を切りましたね。今年も……何もなかったorz

それではどうぞ!



第170Q~虎視眈々~

 

 

 

第3Q終了。

 

 

花月 88

桐皇 90

 

 

一時は11点まで点差が開いたが、空がゾーンの扉を開き、試合を支配する程の活躍を見せた結果、2点差、シュート1本分で第3Qを追える事が出来た。

 

 

花月ベンチ…。

 

「よく踏ん張ってくれた神城」

 

「ま、当然ですよ」

 

活躍を労う上杉。空は当然とばかりに親指を立てた。

 

「……っ」

 

しかし、その代償は軽くはなく、目に見えて消耗しているのが見て取れた。

 

「…おっ?」

 

その時、空の首の後ろに冷たい物が当たり、思わず声を上げる。

 

「茜ちゃん、神城君に栄養補給を」

 

「分かった!」

 

姫川が指示を出すと、相川は鞄からはちみつレモンの入ったタッパーを取り出し、空に渡した。

 

「足を出して」

 

空の足元まで移動した姫川は空のマッサージを始めた。

 

「後10分。あなたにはコートにいてもらわないと困るわ。だから、気休め程度だけど、回復させるわ」

 

「…サンキュ」

 

「…マネージャーなんだから当然でしょ。喋らないで、第4Q始まるまで呼吸を整えていなさい」

 

静かに礼を言う空。姫川は僅かに顔を赤らめながらマッサージを続けた。

 

「綾瀬、大丈夫なんだな?」

 

「治療はしっかり施してもらいました。お医者様からのお墨付きです。任せて下さい」

 

松永が敢えてもう1度尋ねた。理由は怪我の有無だけではなく…。

 

「……そのようだな」

 

確認した松永はフッと笑みを浮かべそう返した。

 

コートから去る前の大地はかなり熱くなっており、冷静さを失っていた節があった。しかし、今は頭が冷えて落ち着いており、それを確認出来た松永は満足そうに頷いた。

 

「とりあえず空坊のおかげで何とか背中捉えて終えたけど、この後はどないしよか?」

 

天野がそう切り出す。

 

「青峰先輩の脅威は去った訳ではないですからね」

 

「何だかんだ、ギリギリ追いつけずに終わったからな」

 

竜崎と菅野の懸念、それは青峰の存在だ。青峰はゾーンに入った空を相手にし、圧倒されるも逆転を許す事はしなかった。空が元の状態に戻るとなると、再び青峰の脅威が復活する。

 

『…』

 

残り10分。この試合を勝利する為にどうすればいいか考える花月の選手達。

 

「考えるまでもないだろう」

 

沈黙を破ったのは上杉だった。

 

「ここで小器用に相手をあしらうような戦い方を俺は教えてはいない。俺がお前達に叩き込んで来たのは相手より走って相手より点を取る。これだけだ」

 

「……ハハッ、そうだよな。考えるまでもなかった」

 

上杉の言葉に頷きながら空が笑った。

 

「俺達の原点に立ち返ろうぜ。この試合の後にぶっ倒れて動けなくなっても構わねえ。死ぬ気で走ろうぜ」

 

立ち上がりながら空が皆に問い掛ける。

 

「座ってなさい!」

 

そんな空を姫川が強引に座らせ、マッサージを続ける。

 

「せやな。俺らのバスケは走って攻めてナンボや。日本一の機動力、見せたろうや」

 

天野が賛同する。

 

「走りましょう。そして、勝ちましょう」

 

大地が続いて賛同した。

 

「よし。俺からの指示はとにかく走れ。そして、空いたらとにかく打って行け。いいな」

 

『はい!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

『ビビーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

インターバル終了のブザーが鳴り、両校の選手達がコートへと戻って来る。

 

 

OUT 竜崎

 

IN  大地

 

 

『来た来た!』

 

『エースの復活だ!』

 

大地がコートに足を踏み入れ、観客が沸き上がる。

 

「…はっ?」

 

コートに足を踏み入れた空が思わず声を上げる。

 

『おいおい、どうなってるんだよ…』

 

同じく観客達も戸惑いの声を上げた。

 

 

OUT 青峰

 

IN  新村

 

 

「青峰さんがベンチに下がった?」

 

ベンチに座っている青峰を見て戸惑いを隠せない大地。

 

「…」

 

ベンチに座る青峰は頭からタオルを被り、下を向きながら座っている。

 

「何処か故障でもしたんか?」

 

「いや、それは多分ないかと思います」

 

考えを口にした天野。しかし空はそれを否定する。

 

「ならば、スタミナ切れか?」

 

「…いや、消耗はしてるだろうけど、ベンチに下がる程とは思えない」

 

別の考えを松永が口にするが、これを空は否定する。

 

「考えるのは後だ。青峰がいないとなれば、桐皇の攻撃力は落ちる。今の内に逆転してリードを広げよう」

 

「そうだね」

 

松永の言葉に生嶋が賛同した。

 

「…」

 

しかし、空は何かを考えながら桐皇ベンチを見つめている。

 

「空」

 

「…あぁ、分かってる。今はただ攻め立てるだけだ」

 

大地に話しかけられると、空はそう返し、コートの中へと歩いて行ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

審判から生嶋がボールを受け取り、スローワーとなった生嶋が空にパスをし、第4Qが開始された。

 

「…おっ?」

 

空にボールが渡ると、今吉がディフェンスに入り、激しくプレッシャーをかける。

 

「(気合い入ったディフェンスにし始めたな。インターバルの間に何があったんだ…)」

 

これまで今吉は桃井のデータと自身の分析によってはじき出した確率を基に相手の先を読んでディフェンスをしてきた。しかし今は、何もさせないとばかりに激しく当たってきている。

 

「(ディフェンスはマンツ―マン、大地には7番(新村)か…)」

 

今吉のプレッシャーを受けながら周囲に視線を配り、確認。

 

「(なら、ここだろ!)」

 

空は大地の方へ身体を向け、パスを出す。

 

「…っ!」

 

これを見た新村が警戒を強める。だが、空は大地のパスを途中で中断し、ノールックビハインドパスで逆サイドの生嶋にパスを出した。

 

「…っ」

 

ボールを掴んだ生嶋だったが、桜井の素早いチェックに表情を歪める。

 

「(桃井さんのデータ通り、彼(空)はあからさまなパスを出さない!)」

 

桜井は空が大地にパスを出そうとした段階でパスターゲットが大地ではなく、生嶋であると判断、すかさず生嶋にチェックに入っていたのだ。

 

「…くっ!」

 

激しい桜井のディフェンスに生嶋はスリーはおろか、ボールキープに手一杯となる。

 

「イク! こっちや!」

 

ハイポストに立った天野がボールを要求。

 

「頼みます!」

 

すかさず生嶋は天野にボールを入れる。

 

「天さん!」

 

ボールが渡った天野に空が走って近付き、すれ違い様にボールを受け取る。

 

「っしゃ!」

 

空はボールを掴むと、そのままリングへ向かってドリブル。

 

「ちぃっ!」

 

 

――ドン!!!

 

 

これを見て新村が空のチェックに入り、ぶつかる。

 

 

『ピピーーーーーーーーー!!!』

 

 

『ブロッキング、黒7番(新村)!』

 

審判がすかさず笛を吹いた。

 

「ってぇ…」

 

衝突によってバランスを崩した空は腕を擦りながら立ち上がった。

 

「悪い」

 

当の新村は軽く謝罪の言葉を述べた。

 

「(迷いなくファールをして止めに来ましたね。それよりも…)」

 

大地が空に視線を向ける。

 

「(やはり、かなり消耗しているみたいですね。普段の空であればファールをされる事無くシュートまで持って行けたはず…)」

 

ファールで止められた空を見て、大地は空が消耗している事を実感する。

 

試合が再開され、再び空にボールが渡る。

 

「空!」

 

大地が空に走り寄り、自らボールを受け取りに行く。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

「「っ!?」」

 

大地はボールを受け取ると同時に急停止し、バックステップで下がりながら方向転換し、自身のマークマンである新村を一瞬でかわした。

 

「打たすか!」

 

ボールを掴み、スリーの体勢に入ったのを見て福山がヘルプに飛び出し、ブロックに飛んだ。

 

 

――スッ…。

 

 

しかし大地はスリーを打たず、アップ&アンダーで福山のブロックをかわしながら中に入り、そこからジャンプショットを放った。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

放たれたボールはリングを射抜いた。

 

 

花月 90

桐皇 90

 

 

『おぉっ! 早速同点だ!』

 

「いいぞ綾瀬!」

 

ベンチから菅野がエールを贈った。

 

「…ちっ!」

 

「ドンマイ、今のは仕方あらへん。それよりも…」

 

「あぁ、分かってるぜ」

 

悔しがる福山に今吉が近付いて声を掛けた。

 

「…」

 

その様子をベンチから見ていた上杉が何かを考える素振りをした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「ほな、1本行こか」

 

ボールを受け取った今吉がゆっくりボールを運んでいく。

 

「頼んまっせ」

 

フロントコートまでボールを運んだ今吉は桜井にボールを渡す。桜井にボールが渡ると、生嶋がすぐさまディフェンスに入る。

 

「打たせないよ」

 

「…」

 

暫しボールをキープし、ドリブルをする桜井。

 

「すいません!」

 

そう言いながら桜井は中へボールを放った。

 

「よし!」

 

ハイポストの位置で福山がボールを受け取る。

 

「勝負や!」

 

すかさず天野がディフェンスに入る。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

背中に天野を背負う形でボールを掴んだ福山はポストアップで背中で天野を押し込みながらドリブルを始める。

 

「…っ! 打たせへんで!」

 

歯を食い縛りながら侵入を阻む天野。

 

「…」

 

数度ボールを突いた後、今吉にボールを戻した。

 

 

「? …桐皇にしちゃやけに慎重だな」

 

火神が思わず口にする。

 

桐皇のオフェンスは本来はテンポが速く、隙さえあればとにかく得点を狙ってくる。だが、今の桐皇のオフェンスはとにかく慎重…言うなれば消極的。

 

「…」

 

これを見てリコは顎に手を当て、何かを思案した。

 

 

そこから桐皇は積極的に得点は狙いにこず、ボールを回し、時間をかけてオフェンスをした。シュートクロックが残り5秒となった所で…。

 

 

――ピッ!!!

 

 

今吉が矢のようなパスを出した。

 

「ナイスパス!」

 

ボールはゴール下に走り込んだ國枝に渡った。

 

「っ!?」

 

 

――バス!!!

 

 

ロールで松永の裏を取った國枝がそこからリバースレイアップで得点を決めた。

 

 

花月 90

桐皇 92

 

 

「…ちっ、ドンマイ! 次、行くぞ!」

 

ボールを受け取った空がそう声を出し、ボールを運んだ。

 

「…」

 

フロントコートまでボールを運ぶと、先程同様、今吉が空のディフェンスに現れ、激しくプレッシャーをかけた。

 

「…っ」

 

少し嫌そうな素振りを見せるも空は大地にパスを出した。

 

「…おぉっ!」

 

ボールを持った大地に激しくプレッシャーをかける新村。

 

「…」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

大地は動じる事無く隙を見て中へと切り込んだ。

 

 

――ドン!!!

 

 

『ピピーーーーーーーーー!!!』

 

 

『ホールディング! 黒4番(福山)!』

 

すかさず福山が大地と衝突、ファールがコールされた。

 

「またか…」

 

空は、2度目の迷いのない桐皇のファールを見て思わず言葉にする。

 

「(ファールで止めに来るってんなら…)」

 

「っ!?」

 

ボールを受け取った空は間髪入れずにシュート体勢に入った。

 

「アカン!」

 

これを見て今吉が慌ててブロックに飛んだ。

 

「食いついたな」

 

ニヤリと笑った空はシュートを中断し、ビハインドバックパスで生嶋にパスを出す。

 

「っ!?」

 

スリーを警戒した桜井が慌てて距離を詰める。

 

 

――スッ…。

 

 

生嶋はスリーを打たず、ボールを中へと入れる。そこへ大地が走り込み、ボールを掴んだ。

 

「くそっ!」

 

ボールを持った大地に新村が迫る。大地はボールを掴むのと同時に背後にボールを放る。

 

「ナイスパス!」

 

そこへ走り込んだ空がボールを掴んだ。

 

「ちぃっ!」

 

國枝が舌打ちをしながら空のチェックに向かう。

 

 

――スッ…。

 

 

ブロックに飛んだ國枝を、スクープショットでかわしながらボールを放った。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

ボールは弧を描きながらリングを潜り抜けた。

 

 

花月 92

桐皇 92

 

 

桐皇のオフェンス…。

 

やはり桐皇はゆっくりボールを運び、時間をかけて攻めて来た。

 

 

――バス!!!

 

 

シュートクロック残り7秒で福山が天野をマークに背負うも強引に打ちに行き、決めた。

 

「スマン!」

 

「今のは仕方ありません。それよりも…」

 

「今のもさっきのも、らしくなく時間かけて攻めてきよった。狙いは――」

 

「時間稼ぎ…」

 

天野が回答を言う前に空が答えを言った。

 

「オフェンスはとにかく時間をかけ、ディフェンスはファール覚悟で止めて来るみたいですね」

 

「…薄々予感はしとったが、シナリオが見えてきたのう」

 

辿り着いた考えに表情を険しくする天野。

 

「となると、今の内に出来るだけ点差を付けておかないとヤバいですね」

 

そう言って、空は首をコキコキと鳴らした。

 

「ディフェンスはオールコートで当たってとにかくスティール狙っていきましょう」

 

「名案や……と、言いたいが、空坊は大丈夫なんか?」

 

心配そうに尋ねる天野。空は第3Qで大地が負傷の治療で下がった際にその場を繋ぐ為にゾーンの扉を開いて試合に臨んだ事で残りのスタミナが気掛かりなのである。

 

「大丈夫ですよ。泣き言言ってられないですからね。ぶっ倒れるまで走ってやりますよ」

 

表情を改め、空は覚悟を決めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「1本、行くぞ!」

 

人差し指を立てながら空がボールを運ぶ。

 

「(顔付きが変わりよった。…ま、さすがに気付くわな)」

 

空の顔を見て察する今吉。

 

「…」

 

ドリブルをしながら攻め手を定める空。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

機を見て空が切り込む。

 

「っ!」

 

タイミングを読み切った今吉は遅れずに空の動きに付いていく。

 

 

――キュッ!!!

 

 

直後に急停止し、頭上からローポストに立つ松永にパスを出す。

 

「…っ!」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

ボールを掴むのと同時にスピンムーブで背中に張り付く國枝をかわす。

 

「おぉっ!」

 

そこからリバースレイアップを仕掛ける。

 

 

――バシィィィッ!!!

 

 

「っ!?」

 

「させるか!」

 

ボールを放った直後に新村がブロックした。

 

「(ええ塩梅や。急かすあまりリズムが単調やで)」

 

内心でほくそ笑む今吉。

 

「ちぃっ!」

 

弾かれたボールを天野が確保する。

 

「打たせねえぜ!」

 

ボールを確保した天野にすかさず福山が張り付く。

 

「(アカン! いくらこいつ(福山)がディフェンスに長けてへん言うても、俺もオフェンスは得意やあらへんから打たれへん!)」

 

すぐにでも得点を決めたい場面で焦りを加速させる天野。

 

「天さん、1度戻して!」

 

焦る天野に対して空が声を掛ける。

 

「頼む!」

 

やむなく空にボールを戻した。

 

「焦り過ぎた! もっと自分達のリズムで落ち着いて攻めろ!」

 

ボールを受け取った空が皆に言い放つ。

 

比較的オフェンスのテンポが速い花月だが、今回は焦りのあまり小細工なしで仕掛けた為、あっさり止められてしまった。それを見かねて空が檄を飛ばした。

 

「(チンタラはしてらねえが、焦る必要もねえ。いつものペースを貫きゃいい!)」

 

自らに言い聞かせるように自制する空。

 

「(神城の言う通りだ。焦ればそれこそ相手の思う壺だ…)」

 

「(空坊に言われてまうとはのう。…よし、俺ららしくや!)」

 

空の言葉に焦る気持ちを自制させる松永と天野。

 

「(…ホンマ、去年とは違うのう。前戦った時のこいつ(空)なら自らガンガン仕掛けて来よっただろうに…)」

 

逸る気持ちを律し、チームを落ち着かせる空を見て今吉は胸中で舌打ちをする。

 

「…」

 

ボールをキープしながら攻め手を定める空。

 

「……こっちです!」

 

その時、大地が中に走り込み、ボールを要求した。

 

「くっ!」

 

一瞬で新村の背後に抜け、マークを振り切った。同時に空は大地の手元にボールを贈った。

 

ボールを受けた大地はそのままリングに突き進み、飛んだ。

 

「おぉっ!」

 

それを見て國枝がヘルプに飛び出し、ブロックに飛んだ。

 

 

――バス!!!

 

 

ブロックが現れると大地はボールを下げ、ブロックをかわし、ダブルクラッチで得点を決めた。

 

 

花月 94

桐皇 92

 

 

「…ちっ」

 

舌打ちをしながら國枝がスローワーとなる為にボールを拾う。

 

「当たれ!」

 

同時に空が大声で指示を出した。

 

「っ!?」

 

スローワーとなった國枝の前に松永が両手を広げて立ち塞がる。

 

『来た!!!』

 

花月がオールコートマンツーマンディフェンスを仕掛けた。

 

「やはり来ましたね」

 

ベンチの原澤は予想通りだったのか、動じずに呟く。

 

「…」

 

青峰はタオルを被ったままコートを見向きもせず、ジッとしている。

 

「(慌てるな! 向こうがオールコートを仕掛けてくるのは予測の範囲内だ!)」

 

インターバル時、桐皇が時間をかけてオフェンスを仕掛けて来る事が見抜かれれば花月は必ずオールコートマンツーマンディフェンスを仕掛けて来ると事前に指示を受けていた國枝はすぐに冷静さを取り戻す。

 

「…っ」

 

國枝は1歩後ろに下がり、距離を取る。

 

「こっちだ!」

 

「下さい!」

 

それに合わせて福山と桜井が前へと走る。それを見て國枝がボールを構えて大きく振りかぶる。

 

「…ちっ」

 

縦パスを阻止するべく、松永がその場からジャンプする。…が。

 

「っ!?」

 

松永が飛ぶと、國枝は構えを中断、松永の脇の下からボールを放った。

 

「上出来やで國枝。…ほな、頼んまっせ!」

 

ボールを受けた今吉は前走る福山に大きな縦パスを出した。

 

『うわー! あっさりオールコートマンツーマンが破られた!』

 

観客席から悲鳴のような声が飛び出る。

 

「おっしゃ、いただき――」

 

 

――バシィィィッ!!!

 

 

次の瞬間、今吉の出した縦パスに対し、大きくジャンプした大地によってカットされた。

 

「ナイス大地!」

 

パスカットに成功した大地に対し、空が歓喜する。

 

「…よし」

 

ボールを掴んだ大地はそのままリング目掛けてドリブルを始めた。

 

「あれをカットするとか反則やで!」

 

高さを付けてパスを出したつもりだったが、それでも届かせてしまった大地に対して思わずボヤキが漏れ出る今吉。すぐさま大地の前に立ち塞がる。

 

「…」

 

今吉が目の前に現れると大地は目の前で急停止し…。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

すぐさま再加速し、今吉を抜きさった。

 

「(っ!? アカン、信じられん緩急とスピードや。動きが読めるとかそんなの関係あらへん。もはや次元が違うで!)」

 

最悪ファールしてでも止めようとしたがそれすらも叶わわず、棒立ちで抜かれてしまう。

 

「くそっ…!」

 

次に新村がディフェンスに現れる。

 

「…」

 

大地は新村が現れるもお構いなしに突っ込む。

 

『おいおい、ぶつかるぞ!?』

 

迷いなく新村に突進していく大地を見て観客が思わず声を上げる。

 

 

――キュキュッ…ダムッ!!!

 

 

しかし、大地はぶつかる直前に急停止…バックステップで距離を空けた。

 

「っ!?」

 

ぶつかると思った新村は寸前に身構えてしまい、身動き出来ず…。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

事実上のフリーとなった大地は悠々とジャンプショットを決めた。

 

 

花月 96

桐皇 92

 

 

『相変わらずあのバックステップえげつねえ!!!』

 

『…っ』

 

開き始めた点差を見て焦りの色が見え始めた桐皇の選手達。

 

「…っ」

 

ボールを拾い、スローワーとなった國枝の前に再度松永が立ち塞がる。

 

「…あくまでも続ける気ぃかいな」

 

「当然だ。思惑はどうあれ、ここが突き放すチャンスなんだからな」

 

げんなりする今吉。空はニヤリと返す。

 

ヴァイオレーションとなる前に何とか今吉にボールを渡した國枝。

 

「何もさせねえぞ」

 

その今吉の前に空が立ち塞がる。

 

「(…第3Qに確かに消耗しとるはずやのに、まるでキレが落ちとらんやんけ!)」

 

全く隙を見せずにディフェンスをする空に驚く今吉。

 

「(…行け!)」

 

その時、新村が空にスクリーンをかけ、合図を出した。

 

「(助かりまっせ、新村はん!)」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

新村の援護を受けて今吉がドリブルを始める。

 

「あめーよ」

 

空はスクリーンをロールしながらかわし、今吉を追いかける。

 

「一瞬マークが外れれば充分や!」

 

スクリーンをかわす際に出来た僅かに空のマークが外れた隙に今吉は前にパスを出した。

 

「おっしゃ今度こそ!」

 

先頭を走る福山にボールが渡る。

 

「…っ!」

 

しかし、すぐさま大地がスリーポイントライン目前で先回りし、立ち塞がった。

 

「…こちとら、毎日青峰と1ON1してんだ。オフェンスなら負けっかよ!」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

そう叫び、福山が仕掛ける。

 

「…」

 

仕掛けて来た福山を追走する大地。

 

 

――ダムッ…ダムッ!!!

 

 

クロスオーバーで左へ切り返し、すぐさまバックチェンジで反対に切り返すと同時にボールを掴み、ジャンプショットを狙った。

 

「……バカが」

 

ベンチの青峰が呟く。

 

 

――バシィィィッ!!!

 

 

「っ!?」

 

ボールを頭上にリフトさせようとした瞬間、大地がボールを叩き落とした。

 

「(阿呆! 早打ちをするなって言われとったやろ!)」

 

勝負を仕掛けた福山を胸中で叱りながらルーズボールを追いかける今吉。

 

「さすが大地!」

 

先にボールを確保したのは空。

 

「おら、派手にかませ!」

 

空は前へ大きな縦パスを出す。そこには…。

 

「嘘!? もうあんな所に!?」

 

思わず声を上げる桜井。先頭を走っていたのは先程福山のボールを奪った大地だったからだ。

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

先頭でボールを掴んだ大地はそのままリングに突き進み、ボールを叩き込んだ。

 

 

花月 98

桐皇 92

 

 

『おぉぉぉぉぉぉーーーっ!!!』

 

「(この調子です。青峰さんがいない内に確実に点差を――っ!?)」

 

チラリと桐皇ベンチに視線を向けた大地は心臓を掴まれるような感覚に襲われた。ほんの一瞬、青峰と目が合った大地。その青峰のギラついた視線に大地は身体を震わせた。

 

「(…いつ青峰さんが戻るか分かりませんが、それまでに点差を付けなければまずそうですね…!)」

 

予想ではなく、確信した大地だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

その後も花月は桐皇に対し、猛攻を仕掛ける。

 

 

――バシィィィッ!!!

 

 

とにかくボールを回して時間をかけようとする桐皇の逆手に取り、スティールする。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

ボールを奪うと大地が確実に得点を決める。

 

 

第4Q、残り7分9秒

 

 

花月 100

桐皇  92

 

 

第4Qが始まり、もうすぐ3分が経とうしている。花月の得点は3桁の100点に到達した。

 

『…っ』

 

着実に開きゆく点差を見て桐皇の選手達は焦りを隠せない。

 

「止めろ! 止めるんだ!」

 

声を張り上げ、チームを鼓舞する福山。

 

「…」

 

ボールをキープしながらゲームメイクをする空。

 

 

――ピッ!!!

 

 

横にスライドした空はリングに向かってボールを押し出すように放った。

 

「(シュート……いや、ちゃう!)」

 

目の前の今吉はすぐさま違う事に気付く。

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

リング付近に放られたボール。そこへ飛び込んだ大地が空中でボールを掴み、リングに叩きこんだ。

 

『うおぉぉぉっ!!!』

 

空と大地のビッグプレーに観客のボルテージが最高潮に上がる。

 

 

『ビビーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

「メンバーチェンジ! 黒(桐皇)!!!」

 

ここで桐皇のメンバーチェンジがコールされた。

 

「…来ましたね」

 

オフィシャルテーブルに立つ人物を見て大地が口を開く。

 

「出て来たな。化け物がよ…!」

 

新村と入れ替わりにコートをやってきた青峰。

 

『…っ』

 

その青峰から発せられる気迫を見て花月の選手全てが理解した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――青峰がゾーンの扉を開いている事に…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





本日、ワクチン接種2回目を終えました。経過はこの話を投稿する現在、特に副反応はなく、1回目は翌日に少し影響が出たので、戦々恐々としながら経過を見守っています…(>_<)

しかし、コロナが終息しないと毎年ワクチンを打つハメになるかもなんですねよね。いやー怖い怖い…(;^ω^)

感想アドバイスお待ちしております。

それではまた!
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