黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

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投稿します!

ワクチン接種2回目。副反応で死にました…(;^ω^)

それではどうぞ!



第171Q~最強のエース~

 

 

 

第3Q終了後のインターバル時の桐皇ベンチにて…。

 

「お疲れ様です。ゆっくり呼吸を整えながら水分補給と栄養補給を行って下さい」

 

『…っ』

 

ベンチに座る試合出場していた選手達。その表情は険しい。

 

「…ちっ」

 

その中でも青峰は機嫌悪そうにしていた。

 

「…ふむ。それでは第4Qの指示を出します。まずは…」

 

選手達の前に立った原澤が青峰の方に視線を向け…。

 

「青峰君。一旦交代です」

 

『っ!?』

 

この指示に選手達は驚きを隠せなかった。点差を2点にまで詰め寄られたこの状況でエースを下げると言う選択が理解出来なかったからだ。

 

「…あっ? 冗談じゃねえよ。こんな状況で下がれっかよ。この程度でバテる程柔でもねえんだよ」

 

この指示を受け入れる事が出来ない青峰は不満顔で異を唱える。

 

「無論、理解しています。青峰君が1年時のウィンターカップ終了後…特に、今年のインターハイ終了後からは練習後に念入りに走り込みをしていたは知っていますので」

 

「…っ!? …ちっ。だったら――」

 

影でしていた努力が見られていた事に一瞬恥ずかしがる青峰。

 

「ですが、少しオーバーペースです。第4Qから綾瀬君がコートに戻って来る事を考えると、まず間違いなく、終盤の勝負所で失速は免れません」

 

スロースターターを解消する為に試合前のきつめのウォーミングアップ。攻守に渡っての活躍に、第3Qではゾーンに入った空を相手にしながらオフェンスを支えた。これでは重要な場面でもたないと原澤は判断した。

 

「ざけんな! 俺は絶対に――」

 

「勝つ為です」

 

「…っ」

 

立ち上がって指示を一蹴しようとした青峰に原澤は真剣な表情で返した。この言葉に青峰は言葉を続ける事が出来なかった。

 

「だー!!! 監督が言ってんだからお前は黙って従え!」

 

指示を受け入れようとしない青峰に福山が言い放つ。

 

「それまで俺達が何とか繋いでやる。お前はしっかり力蓄えてそれから思う存分暴れやがれ!」

 

「……ちっ、うるせーな分かったよ」

 

げんなりした表情で青峰は渋々指示を受け入れた。

 

「よろしい。青峰君に代わって新村君、コートに入って下さい」

 

「はい」

 

「オフェンスは早打ちは厳禁です。必ず15秒以上時間を使って下さい。ディフェンスでも時間を使わせて…最悪はファールでも構いません。相手のオフェンス機会を減らして下さい」

 

『はい!!!』

 

「3分が経過したら再び青峰君をコートに戻します。逆転を許し、点差は開くかもしれません。それでも慌てず、今言った指示を守って下さい」

 

『はい!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

第4Qが始まって間もなく3分が経過しようとした時…。

 

「…青峰君。準備はいいですか?」

 

「おせーよ。準備も何も、そもそも最初から休憩なんざ俺には必要なかったんだからよ」

 

「それは結構。次の交代のタイミングで投入します。思う存分暴れて下さい」

 

「ハッ! 了解」

 

被っていたタオルを外した青峰。目をぎらつかせ、不敵な笑みを浮かべながら立ち上がり、オフィシャルテーブルへと向かって行ったのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

第4Q、残り6分58秒

 

 

花月 102

桐皇  92

 

 

最終Q、3分が経過した所で桐皇の絶対的なエースにしてスコアラー、青峰がコートに戻ってきた。

 

『…っ』

 

その青峰から発せられる圧力に花月の選手達は皆一様に圧倒されていた。

 

「インターバル含めてきっちり5分休んでの投入かい。ワンチャン、集中切れとる事期待しとったけど、あの分じゃなさそうやな」

 

コート入りする青峰を見て天野がげんなりする。

 

「集中が切れてないどころか、ゾーン状態…、しかも、きっちり底まで到達しての登場ですよ」

 

「底?」

 

空が言う、抽象的な表現を理解出来ず、天野は思わず尋ねる。

 

「ゾーンは普通は出せない100%の力を引き出す事が出来るんですが、扉を開いてすぐに100%の力が出せる訳じゃないんですよ。扉を開いてゆっくりと沈んでいって、底に到達してようやく100%の力が出せるようになるんです」

 

「要は、集中力が増す事でより引き出せる力が増えて行くと言う事です」

 

抽象的に説明する空に大地が補足して解説した。

 

「解説おーきに。ポテンシャル全開の青峰が登場って訳かいな」

 

説明を聞いた天野が苦笑する。

 

「ベンチにいる間にゾーンに入って、そこからひたすら集中力を高めていたんでしょう」

 

「しっかり休憩されましたからね。ここから試合終了まで全開の青峰が来ますよ」

 

引き攣った笑みを浮かべる空。

 

「…10点差なんてあってないようなもんやな」

 

「まず守り切れません。乱打戦に持ち込んで打ち勝つしかない」

 

「あの青峰とかいな。…けど、それしかあらへんな」

 

天野は覚悟を決めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

青峰がコートに入り、桐皇ボールでオフェンスが始まる。

 

「頼んまっせ」

 

ボールを運んだ今吉は早々に青峰にボールを渡した。

 

「(…っ、凄いプレッシャーだ…。気を抜けばそれだけで後ろに倒されてしまう程の…!)」

 

青峰の目の前に立った大地。その青峰から放たれるプレッシャーを一身に受け、気圧されるのを堪えていた。

 

「(パーフェクトコピーとゾーンを併用した黄瀬さんも圧倒的でしたが、青峰さんはまた別方向で圧倒的。…私に止められるのか…いや、それでも止めなければ…!)」

 

先のぶつかり合いで相性の悪さを露呈した大地。ゾーンに入った青峰を前に自信を失いかけるも負傷欠場した穴を埋めてくれた空及びチームの為に奮い立たせる。

 

「…」

 

ボールを持った青峰がゆったりと動きを見せる。そして…。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

一気に加速し、大地の横を高速で駆け抜ける。

 

「(っ!? 速い!)」

 

集中力を全開にして待ち構えていた大地。青峰の揺さぶりに僅かに左足に体重が乗った瞬間、逆方向から切り込まれ、一瞬で抜かれてしまう。

 

「このやろ…!」

 

大地が抜かれる事を見越してか青峰が動きのと同時にヘルプに走った空が直後に青峰の前に立ち塞がる。

 

「スピードは相変わらずか。…けどな、ゾーンに入れなくなったてめえに俺が止められるかよ!」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

「っ!?」

 

クロスオーバーで空を抜きさる青峰。

 

「ちぃっ!」

 

ヘルプに飛び出す松永。

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

「ぐぉっ!」

 

ダンクに向かった青峰に対してブロックに飛んだ松永だったが、吹き飛ばされてしまう。

 

 

花月 102

桐皇  94

 

 

「…」

 

床に着地した青峰は一瞥もくれずにディフェンスへと戻っていく。

 

「(スピード、アジリティもさることながら、キレも半端ねえ。こりゃ反射じゃ話になんねえぞ…!)」

 

「(速い…。ほんの一瞬出来た隙を突かれて…、正確に相手の動きとタイミングを読み切らねば勝負にもならない…!)」

 

たったワンプレーで圧倒的な力を見せつけた青峰。空と大地はその力に圧倒される。

 

 

「1本! 行くぞ!!!」

 

大声を張り上げながら空がボールを運ぶ。

 

「(…現状、確率が高いのはローポストの松永か俺自ら仕掛けるのが良い。…だが、ちっ、青峰はやや内側に陣取りながら大地をマークしてやがる…)」

 

大地をマークしている青峰は内側にポジション取りをしている。つまり、自ら仕掛けるにしても松永にパスするにしてもすぐさま青峰がヘルプやってくると言う意味でもある。

 

「(……悪いな。やっぱり、今はここしか考えられねえわ)」

 

フッと笑みを浮かべ、パスを出した。

 

「…へぇ」

 

ボールの行き先を見て青峰が声を上げる。

 

「…」

 

右ウイングの位置で大地がボールを掴んだ。

 

「良い度胸だ。…来いよ」

 

勝負を仕掛けて来た事に喜びつつ青峰が構えた。

 

「…っ!」

 

青峰から放たれるプレッシャーに耐えながら構える大地。

 

「…」

 

「…」

 

ジャブステップを踏み、ボールを小刻みに動かしながら牽制する大地。

 

「(今更隙を見せる事はあり得ません。ならば!)」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

僅かな隙も見せない青峰を見て、自ら仕掛けて隙を作り出す選択をした大地。

 

「…」

 

全国トップレベルのスピードを誇る大地のドライブ。青峰は平然と付いていく。

 

 

――ダムッ…ダムッ!!!

 

 

大地はレッグスルーで切り返し、そこからバックステップでスリーポイントラインの外側まで下がり、距離を空けた。

 

「…っ」

 

直後にボールを掴んだ大地はステップバックで後ろに下がり、ステップバックを踏んだ左足で後ろに飛びながらスリーの体勢に入った。

 

 

――バシィィィッ!!!

 

 

「なっ!?」

 

しかし、飛びながらボールを頭上に掲げようとした瞬間、一気に距離を詰めた青峰によってボールは叩き落された。

 

「(速…すぎる!)」

 

「おせーんだよ」

 

零れたボールを青峰がすぐさま確保し、そのまま速攻に走った。

 

「アカン、戻れ!」

 

天野が声を張り上げながらディフェンスに戻る。が、ドリブルをしながらでも尚圧倒的なスピードを誇る青峰には追い付けない。

 

「…ちぃっ!」

 

それでも唯一、空のみが青峰に追い付き、スリーポイントライン目前で青峰を捉え、横に並んだ。

 

「今のお前じゃ、何度来ても同じだ」

 

そう囁き、青峰は急停止した。

 

「っ!?」

 

これを見て空も慌てて停止し、振り返る。すると、青峰がボールを構えた。

 

「(くそっ、スリーか!?)」

 

スリーを決められればダメージは大きい。慌てて空はシュートチェックに向かう。

 

「(っ!? これは…!)」

 

ここで空は気付いた。確かに足は止まり、ボールも腰の付近で一瞬止まっていたが、両手で掴んではいなかった。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

青峰は再度急発進し、空の横を高速で駆け抜けた。

 

「…が! こんの野郎…!」

 

それでも空は上半身を後方に大きく倒し、諦めずに青峰の持つボールに右手を伸ばし、狙い打つ。

 

「くそっ、ダメか!」

 

しかし、伸ばした右手は空を切った。

 

ここで青峰はボールを掴み、リングに向かって飛んだ。

 

「まだです!」

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

次の瞬間、大地が青峰とリングの間に現れ、ブロックをした。

 

「あいつ! 青峰が動きを止めた一瞬に!?」

 

圧倒的な青峰のスピードに追い付いた大地に福山が思わず声を上げる。

 

「無駄なんだよ!」

 

「っ!?」

 

青峰のダンクをブロックした大地だったが、徐々に押されていき…。

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

「ぐぅっ!」

 

大地を吹き飛ばしながら青峰は強引にボールをリングに叩きこんだ。

 

 

花月 102

桐皇  96

 

 

「大地!」

 

床に倒れ込んだ大地に駆け寄る空。

 

「だ、大丈夫です。…っ」

 

そんな空を手で制し、大地は立ち上がった。

 

 

花月のオフェンス、空がゆっくりとボールを運ぶ。

 

「…」

 

慎重に攻め手を定める空。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

視線だけで周囲を見渡した後、空が一気に加速し、仕掛けた。

 

「っ!?」

 

目の前の今吉を一瞬で抜きさった空はそのままリングに向かって突き進む。

 

「…っ」

 

これを見た青峰がヘルプに飛び出し、空の前に立ち塞がった。

 

「(来た!)」

 

青峰がヘルプに来る事を想定していた空はここでボールを掴み、ノールックビハインドパスでパスを出す。パスターゲットは左アウトサイドに展開した生嶋。

 

 

――バチィ!!!

 

 

右手で持ったボールを背中からパスを出した空。同時に左肘を背中に突き出し、ボールの軌道を左から右へと変えた。

 

『エルボーパス!?』

 

左アウトサイドの生嶋にパスをすると見せ、本当のパスターゲットは右アウトサイドの大地だった。

 

 

――バシィィィッ!!!

 

 

「…なっ!?」

 

「見え見えなんだよ」

 

不意を突いたはずのパス。エルボーパスで逆方向に跳ね返ったボールは青峰がスティールされてしまう。

 

空がパスの動作に入った瞬間、青峰は瞬時にこれはフェイクで大地へのパスであると嗅ぎ分けた。仮に外れても生嶋相手ならば桜井で大丈夫だと判断し。

 

『連続でターンオーバーだ!』

 

「ちくしょう!」

 

再び青峰にボールを奪われ、空は悪態を吐きながら青峰を追いかける。

 

「…くっ!」

 

先頭を走る青峰に何とか追い付いた大地。

 

「お前と言い、神城と言い、ゾーンに入った俺に追い付くそのスピードだけは敬意を表してやるがよ…」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

瞬時に逆に切り返す青峰。

 

「…っ!」

 

何とか大地は歯を食い縛りながら食らいつく。

 

 

――ダムッ…ダムッ…!!!

 

 

「…あっ!?」

 

直後にバックチェンジからのレッグスルーで切り返され、大地はアンクルブレイクを起こして倒れ込んでしまう。

 

「何度も何度も決めさせるかよ!」

 

大地が時間を稼いだ隙に追い付いた空。ボールを掴んでシュート体勢に入ろうとするのを見てブロックに飛んだ。

 

「っ!?」

 

ブロックに飛んだ空。しかし、青峰はそのブロックを避けるように横っ飛びし、ドッジボールのような構えをした。

 

「させへんわ!」

 

そこへ、天野がタイミング良くブロックに現れた。

 

「ナイス天野! よく追い付いた!」

 

ベンチの菅野が立ち上がりながら叫ぶ。

 

「っ!?」

 

しかし、天野が現れるのと同時に青峰はボールを下げ、下から上へ放り投げるようにして天野のブロックをかわしながらボールを放り投げた。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

放られたボールは高く上がり、落下しながらリングを潜り抜けた。

 

 

花月 102

桐皇  98

 

 

『うおぉぉぉっ!!! 青峰連続得点!!!』

 

『あっという間に4点差だ!』

 

『もう止まらねえよ!!!』

 

みるみる縮まっていく点差を見て観客のボルテージが上がっていく。

 

『…っ』

 

花月の表情はさらに険しくなる。

 

状況は最悪と言ってもいい。失点はある程度覚悟し、点の取り合いを挑むはずだったが、その肝心な点が取れない。全国トップレベルのスピードとアジリティを持った青峰にディフェンスはそのエリアと共に脅威であり、そこを何とか避けても他も桃井のデータを持った選手達。抜く事は困難である。

 

 

「天さん!」

 

花月のオフェンス。空はハイポストに立った天野にパスを出し、すかさず天野に向かって走り出し、すれ違い様にボールを手渡しで受け取る。

 

「野郎!」

 

天野の背中に張り付くようにマークしていた福山は空を追いかける。が、既に加速していた空には追い付けず。

 

「おぉぉぉぉぉぉーーーっ!!!」

 

福山をスピードでちぎった空はボールを掴み、リングに向かって飛んだ。

 

「調子に乗んな!」

 

「(来た!)」

 

ダンクに行った空。そこへ青峰が高速でヘルプに飛び出し、空のダンクをブロックしにやってきた。

 

「(ギリギリだ。ギリギリまで青峰を引き付けて…)」

 

高速でやってきた青峰をギリギリまで引き付け…、パスを出した。

 

「ナイスパス!」

 

ボールは、國枝の裏を取ってゴール下に走り込んだ松永に。

 

「おぉっ!」

 

両手でボールを掴んだ松永はリングに向かって飛んだ。

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

「っ!?」

 

「青峰だけじゃねえって言ってんだろ!」

 

ボールがリングに振り下ろされる直前、そこへ飛び込んだ福山にボールを叩き落とされた。

 

「おぉっ! キャプテンのギャンブルブロックが決まりよったわ」

 

感心する今吉。

 

 

『ピピーーーーーーーーー!!!』

 

 

『ディフェンス、イリーガル黒4番(福山)! フリースロー!』

 

審判が笛を吹き、指を2本立てながらファールをコールした。

 

「…相変わらずええオチ付けてくれるで」

 

苦笑する今吉。ブロックの際、福山の手が松永の手に触れていたのだ。

 

「だーちくしょう!」

 

頭を抱えて悔しがる福山。

 

「…ちっ」

 

舌打ちをする空。

 

フリースローを貰える結果にはなったが、流れを変える為に欲を言えばきっちり決めておきたい場面であった。

 

「…」

 

フリースローラインに立った松永はボールを2度突き、縫い目を確かめながらボールを掴み…。

 

「……フー」

 

1度深く息を吐き…。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

1投目を成功させ…。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

2投目もきっちり決めた。

 

 

花月 104

桐皇  98

 

 

「よー決めたマツ!」

 

フリースローを2本成功させた松永の背中を叩きながら天野が労う。

 

「ちっ、決めやがったか…」

 

これを見て福山が舌打ちをする。

 

「まぁ、しゃーないわ。けどまあ、決められた所でもはや関係あらへんけどな」

 

スローワーの國枝からボールを受け取った今吉が青峰に視線を向ける。そこには、選ばれた者にしか醸し出せないオーラを放っている青峰が。

 

「もはや疑う余地もあらへん。…疑った事なんか1度もあらへんけど、最強は青峰はんや…!」

 

ニヤリと笑い、青峰にボールを渡した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

青峰がゾーンに入ってからようやく得点を加算させた花月。しかし、空の思った通り、流れを変えるには至らない。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

シュートブロックに来た大地を1度ボールを下げ、ボールを風車のように回しながらフックシュートに切り替え、決める。

 

 

『ピピーーーーーーーーー!!!』

 

 

『24秒、オーバータイム!』

 

次の花月のオフェンス。ボールを回して慎重に攻めるも攻めきれず、オーバータイムをしてしまう。

 

 

――バス!!!

 

 

変わって桐皇のオフェンスは、青峰が大地のブロックをかわすようの飛びながらボールを放り、決めた。

 

続く花月のオフェンスも、青峰のブロックに捕まり、失敗。青峰がワンマン速攻を成功させた。

 

 

花月 104

桐皇 104

 

 

『とうとう背中を捉えたぞ!』

 

この1本で桐皇は同点に追い付いた。

 

「1本! 取り返すぞ!」

 

続く花月のオフェンス。焦りを感じながらもそれを隠しながらボールを運ぶ空。

 

「大地!」

 

フロントコートまでボールを運んだ空が大地にボールを渡す。

 

「…っ」

 

大地はボールを保持するものの、青峰を前にボールを奪われないようにするのに精一杯。仕方なく空にボールを戻す。

 

「ほな、行きまっせ」

 

ボールが戻って来ると、今吉が空に激しくプレッシャーをかけた。

 

「…ちっ」

 

身体がぶつからんばかりに激しく当たる今吉。

 

「遠慮せんと、突破したらよろしいやん。ワシは別に通行止めしとる訳やあらへんで?」

 

ボソリと囁く今吉。

 

今吉はとにかく空のスリーのみを警戒している為、それ以外は無警戒。空ならば突破は容易い。しかし…。

 

「(青峰は一瞬でやってくる。同じパターンが2度も通用する程、桐皇は甘くねえ!)」

 

迫り来る青峰をギリギリでかわし、パスを捌くパターンは先程見せたパターン。青峰のヘルプを逆手に取って大地にパスをしようにもパスコースのケアは先程もしっかり行われていた。

 

「(ここでボールを止めても仕方ねえ!)」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

やむなく空はカットインする。

 

「…」

 

中に切り込んだ空を見て青峰が動く。

 

「(来やがった! さて、ここからどうする!?)」

 

切り込んだ瞬間の0コンマ何秒で攻め手を思考する。生嶋も松永もマークがきつい。天野は若干マークは甘いが、青峰が近い位置にいる為、使えない。

 

「空!」

 

その時、空の後ろから大地の声が聞こえた。青峰がヘルプに動いたのと同時に空の真後ろまで移動したのだ。

 

「頼む!」

 

その声に従い、空は大地にパスを出した。

 

「あっかんわ」

 

パスをカット出来ず、大地の手にボールが渡るのと同時に今吉がディフェンスに入る。

 

「…」

 

大地はボールを掴むのと同時にポンプフェイクを入れ、横へとスライドするように移動し、シュート体勢に入る。

 

「読めとるわ!」

 

これを読んだ今吉は大地のスライドに合わせて自身もスライド。シュートブロックに向かう。

 

 

――スッ…。

 

 

今吉がシュートブロックに入ると、大地はシュートを中断。ターンアラウンドで元居た位置に戻り、今吉をかわす。改めてシュート体勢に入った。

 

「やっぱ、ワシでは敵わんで。…けどまあ」

 

 

――バシィィィッ!!!

 

 

「っ!?」

 

「これだけ時間が稼げたら充分やろ」

 

今吉をかわす僅かな時間に青峰が再度ヘルプに向かい、大地のシュートを叩き落とした。

 

 

「凄イ、今ノハアツシト同ジ、イヤモシカシタラ!」

 

アンリがチームメイトの紫原を彷彿させるブロックを見て声を上げる。

 

「いや、スピードは紫原を遙かに凌駕してるぞ…!」

 

永野はスピードはそれ以上と評価した。

 

「…峰ちん」

 

これには紫原も僅かに表情を険しくしていた。

 

 

零れたボールを青峰自ら抑え、そのまま速攻に走った。

 

「…くっ!」

 

大地が青峰を追いかける。スリーポイントライン目前で青峰に並ぶも青峰は構わず強引に突破を図る。

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

ブロックに飛んだ大地だったが青峰はその上からボールをリングに叩きこんだ。

 

 

花月 104

桐皇 106

 

 

『来たぁっ!!! 遂に逆転だ!』

 

遂に桐皇は逆転に成功した。

 

「(もろたで。もうワシらの勝ちや!)」

 

密かにほくそ笑む今吉。

 

「やった!」

 

拳を握る桜井。

 

「っしゃぁぁっ!!!」

 

咆哮を上げながら喜ぶ福山。

 

 

「決まったな」

 

観客席の池永がボソリと結論付けた。

 

「神城…、綾瀬…!」

 

田仲が祈るように試合を見守っている。

 

 

『…っ』

 

遂に逆転を許し、花月の選手達の表情にもはや余裕は一切ない。

 

「…っ」

 

大地が苦悶の表情で汗を拭う。

 

「やべーな…」

 

横に並ぶように歩み寄った空が呟く。

 

「絶体絶命だ」

 

「…」

 

空のこの言葉に大地は何も返す事が出来ない。

 

「……けど何でだろうな。絶体絶命なのに、ワクワクしてる自分もいるんだ」

 

「?」

 

「中学時代に見たキセキの世代は当時の俺達じゃまるで歯が立たない程実力差があった。けど今は、そのキセキの世代をここまで追いつめてんだ」

 

「…」

 

「勝ちてーよな」

 

空がそう言った。

 

「勝ちたい……そうですね。勝ちたいですね。空と、皆で勝ちたいです」

 

その言葉に、大地が反応するように勝利を望んだ。

 

「――」

 

その時、大地の視界に映る景色が変わる。

 

「空」

 

「あん?」

 

「次の1本、ボールを貰いに行きますので私にパスを下さい。パスを出したらその場から動かないで下さい」

 

「? 分かった」

 

意図は分からなかったが、空は頷いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

ボールを運ぶ空。

 

「1本! 絶対止めんぞ!」

 

士気の高い桐皇。福山が大声で鼓舞し、チームを盛り立てる。

 

「空!」

 

フロントコートまで空がボールを運ぶと、大地が空の駆け寄りながらボールを要求する。

 

「…あん?」

 

大地の動くのと同時に青峰が追いかけるように動く。

 

空に駆け寄った大地はすれ違い様にボールを受け取り、バックステップの後にステップバックで横にスライドし、スリーポイントラインから1メートル離れた場所まで高速移動した。

 

「打たせ――っ!?」

 

スリーをブロックしようとした青峰だったが、間に空が阻むように立っていた為、かわすようにしてブロックした。

 

「ちっ!」

 

空をかわす僅かな時間によってブロックが間に合わず…。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

放たれたスリーはリングに射抜いた。

 

 

花月 107

桐皇 106

 

 

『うぉーっ!!! ここでスリーで返しやがった!!!』

 

「…てめえ」

 

スリーを決めた大地に振り返る青峰。そして気付いた。

 

「負けられません。2度も届かなかったんです。これが最後。絶対に勝つんです」

 

「…ハハッ! そう来たかよ。そうでなくちゃ、面白くねえ」

 

そう宣言する大地を見て、青峰は不敵に笑った。

 

 

――大地が、ゾーンの扉を開いた。

 

 

「俺をスクリーンに使いやがって」

 

「すみません。事前に知らせると悟られると思ったので…」

 

壁に使われた空は、唇を尖らせながら文句を言うと、大地は苦笑しながら謝った。

 

「綾瀬、ようやくかいな」

 

駆け寄った天野。大地の変化に気付き、声をかける。

 

「待ちかねたで! これで――」

 

「…残念ですが、私では青峰さんには敵いません」

 

希望の光が見えた事に喜ぶ天野だったが、大地はそれを遮るようにそう宣告した。

 

「嘘やろ…、ゾーンに入ったんやろ?」

 

「ゾーンに入ったからこそ、分かってしまうんです。私の特性は青峰さん特性とは相性が悪いです。恐らく、まともにぶつかり合えば勝ち目はありません」

 

ゾーンに入った事で冷静に戦力差を分析出来てしまう為、結果が見えてしまう。

 

「ほなら、どないすんねん」

 

この大地の言葉に頭を抱える天野。

 

「心配いりません。あくまでも私が青峰さんに敵わないと言うだけです。例え敵わなくとも、試合は譲りません。……空」

 

気落ちする天野に対して笑みを浮かべる大地。その後、空に振り返った。

 

「あなたの力を貸して下さい。あなたと2人なら、青峰さんと戦えます」

 

「……フッ、良いぜ、全力でフォローしてやるぜ」

 

頼られた空は満足そうに頷いたのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

第4Qが始まって3分。

 

1度ベンチに下がった青峰はベンチで力を蓄え、ゾーンの扉を開いてコートに戻り、花月を圧倒した。

 

遂には逆転を許した花月。その時、大地がゾーンの扉を開いた。

 

3度目となる花月と桐皇の激闘。遂に、クライマックスへと突入するのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





いやー、1回目が大した事なかったんで、油断していたら、打った翌日に高熱、頭痛、倦怠感に襲われ、ほぼ1日中ダウンしました。翌日はそれが嘘だったかのように快調しました…(;^ω^)

正直、また打ったらまたあれが待ってるかと思うと、次回が怖いです…(>_<)

感想アドバイスお待ちしております。

それではまた!
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