黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

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投稿します!

2ヶ月ぶりの投稿、お待たせいたしました…(;^ω^)

それではどうぞ!



第179Q~ロースコアゲーム~

 

 

 

第1Q、残り6分55秒

 

 

花月 5

洛山 5

 

 

タイムアウトが終わり、両チームの選手達がコートへと戻ってくる。花月、洛山共に選手交代はなし。

 

「よっしゃ行くぞ!!!」

 

『おう!!!』

 

空が檄を飛ばし、選手達がそれに応える。

 

「…」

 

審判からボールを受け取った生嶋。生嶋が空にパスを出し、試合が再開される。

 

 

『待ってました!!!』

 

試合開始と同時に待ちかねた観客が声を上げた。

 

「…っと」

 

ボールを持った空が思わず声を上げる。

 

「…っ」

 

注目の先は大地。

 

「(共に拮抗しているこの状況…、流れを渡さない為にもこいつだけには…!)」

 

「(最悪7番(天野)にやられても構わない。ここでエースのこいつ(大地)だけには得点させん!)」

 

大地に対し、三村と四条がべったりマークに付いていた。

 

 

「…っ、やはりですが、綾瀬君は空けてきませんね」

 

ベンチの姫川が表情を険しくする。この状況でエースの大地によって得点を取られれば流れが変わる可能性があるからだ。

 

「おいおい、あれじゃ得点どころかボールすら掴めねえぞ…、どうするんだよ!?」

 

流れに乗る為にエースの1発が欲しいこの状況。しかし得点どころかパスを出す事すら困難なこの状況に菅野がぼやく。

 

「監督!」

 

思わず竜崎が上杉に声をかける。

 

「狼狽えるな」

 

『っ!?』

 

浮足立つベンチの選手達に向けて上杉が静かに…それでいて良く通る声で窘める。

 

「問題ない。あの2人ならばな」

 

そう言って、腕を胸の前に組みながらコートに注目したのだった。

 

 

「…」

 

ボールを持ってゲームメイクをする空。

 

「…」

 

そんな空の前に赤司が立ち、ディフェンスをしている。

 

『スゲーディフェンス…あれじゃ突破もシュートも難しい…』

 

『頼みのエースにもパスが出せない。せっかくタイムアウトを取っても八方塞か…』

 

観客にも今の状況は充分に伝わり、ちらほら声が上がる。

 

「…」

 

ボールを掴んで数秒、空と赤司が睨み合いが続く。空がいつ、どのような動きを見せるかこの試合を見守る全ての者が注目を集めている。しかし次の瞬間、空が動いた。

 

 

――ピッ!!!

 

 

突如として空が矢のようなパスを出した。ボールの先は…。

 

『っ!?』

 

ここで洛山の選手達が同時に目を見開く。ボールは大地に渡った。2人のマークを振り切ろうと動いた大地。その動きに合わせるかのように空がパスを出したのだ。

 

 

「っしゃぁっ!!! ボールさえ持っちまえばこっちのもんだぜ!」

 

無事、大地にボールが渡った事で拳を握って喜びを露にする菅野。

 

「…喜んでる所になんですが…」

 

「あっ?」

 

ボールが無事、大地の手に渡ったが、竜崎は表情を険しくしている。

 

「三村さんにしても四条さんにしても実力はあの五将にも引けを取りません。むしろ、長年同じチームでプレーしてだけにあの2人のダブルチームは五将の2人を同時に相手にする事以上に困難かもしれません」

 

「っ!?」

 

懸念を口にする竜崎。それを聞いて表情を強張らせる菅野。

 

「如何に綾瀬先輩と言えど、突破出来るんですかね…」

 

 

「(…ちっ、ボールを持たせちまったか。だが…!)」

 

「(ここを止めれば同じ事。夏からレベルアップしたのはお前だけじゃない。止めてやる!)」

 

気持ちを切り替え、ディフェンスに集中する三村と四条。

 

「…」

 

右足を小刻みに動かし、ジャブステップを踏みながら牽制する大地。

 

 

「三村君に四条君。ディフェンスだけならあの五将に匹敵…三村君はそれ以上かも。綾瀬君と言えど、一筋縄じゃ…」

 

2人の詳細なデータを持つ桃井がコート上の大地に注目する。

 

「…ハァ。ズレた事言ってんじゃねえぞさつき」

 

隣に座っていた青峰がやれやれと言った表情で後頭部を掻く。

 

「仮にも俺や黄瀬、紫原と張り合った奴だぞ。今更五将レベルでどうにかなる訳ねえだろ」

 

 

「(私にはスピードはあれど空のような一瞬で相手を置き去りに出来るようなダッシュ力はありません。それはアメリカ、そしてキセキの世代を相手にして身を以て知りました。ならば!)」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

ここで大地が一気に加速。仕掛ける。

 

「(来た! タイミングはピッタリ、見えているぞ!)」

 

タイミングを計っていた三村は大地が仕掛けるタイミングを読み切り、ドライブと同時に大地を追いかける。

 

 

――キュッキュッ!!!

 

 

直後に一瞬でブレーキ、急停止をする。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

そのまま高速でバックステップで先程仕掛けた位置より後ろまで下がる。

 

「(…っ、あの勢いを一瞬で…! 相変わらずデタラメな奴だ。だが、分かっていれば止められる!)」

 

急停止からのバックステップを読み切った四条は下がる大地に対して距離を詰める。

 

 

――スッ…。

 

 

バックステップで距離を取った後、すぐさまボールを掴んだ大地はステップバックで更に距離を空ける。

 

「「っ!?」」

 

ステップバックを踏んだ足でそのまま後ろに飛びフェイダウェイで…しかもクイックリリースでボールを放った。

 

『っ!?』

 

洛山の選手及び観客全てがボールの行方に注目する。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

ボールはリングの中心を的確に射抜いた。

 

 

花月 7

洛山 5

 

 

『うぉぉぉぉぉーーーーっ!!!』

 

『出た! 綾瀬の代名詞、必殺の高速バックステップからの片足フェイダウェイ!』

 

『あんなの止められっこねえよ!?』

 

ダブルチームから得点を決めた大地に対して歓声が上がる。

 

「さっすが。何度見ても鳥肌が立つ技だ」

 

大地に駆け寄った空がハイタッチを交わす。

 

「私にはあなたのような加速力はありませんからね。それでも相手をかわして点を取る為には試行錯誤するしかないのですよ」

 

苦笑しながら空に言う大地。

 

「嫌味か? 俺にはお前程器用さはねえから自分の武器を磨いて最大限生かすしかねえんだよ」

 

同じく苦笑する空。

 

「フフッ、それこそ嫌味ですよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「凄い…」

 

今のプレーを見た桃井はただただ感嘆していた。

 

「ほう、今のを見る限り、しっかり完成させてきたみてーだな」

 

今の一連のプレーを見た青峰がそう断言する。

 

「NBAを席巻した片足フェイダウェイ。本家とは仕様が違うけどそれでも…」

 

本家のは213㎝と言う高身長から繰り出し、ブロックを届かせない究極の技。だが、本家程身長がない大地は事前に高速のドライブとそこからバックステップを組み込み、更にクイックリリースで放つ事でブロックを間に合わせない技となっていた。

 

「今の…」

 

「あぁ。読みが外れたとかフェイクにかかったとかそんな話じゃねえ。分かっていても止められなかった。あいつらじゃ、もう止められねえ」

 

無情な宣告を青峰はしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「「…っ」」

 

拳をきつく握り、悔しさを露にする三村と四条。

 

この2人が今日の試合で与えられた仕事の1つは大地を止める事。これまで徹底マークでボールを掴ませない事には成功していたが…。

 

「まさか、今ので心が折れた訳ではあるまいな」

 

そんな2人に赤司が声を掛ける。

 

「今のお前達であれを止めるのは至難の業だ。…諦めるか?」

 

「…ハッ! 冗談きついぜ赤司。今更こんなんで心が折れる程、俺達は柔じゃねえ」

 

「例えあいつ(大地)が俺達より上でも、試合だけは譲らねえ!」

 

赤司の問いに、三村は鼻で一笑し、四条は強気に答えた。

 

「それでいい。…オフェンスだ。取り返すぞ」

 

『おう!!!』

 

赤司の檄に選手達が応え、洛山のオフェンスに切り替わる。

 

 

「71番だ!」

 

ボールを運んだ赤司がナンバーコールをし、パスを出す。

 

 

―ピッ!!!

 

 

そこから洛山選手達が縦横無尽に動き回り、ボールを掴んでは即座に矢のようなパスを出し、高速のパスワークで花月をかく乱していく。

 

「っ!?」

 

シュートクロックが残り5秒となった所でローポストに立っていた五河がアウトサイドへと向かって行った。

 

 

――ガシィィィッ!!!

 

 

追いかけようとした松永だったが、四条のスクリーンに捕まってしまう。

 

「よし」

 

左アウトサイド付近でボールを掴んだ五河はすぐさまスリーを放つ。

 

「…ちっ」

 

すかさず空がチェックに向かう。

 

「遅い!」

 

しかし距離があった上に20㎝の身長差があった為、ブロックが間に合わず、打たれてしまう。

 

 

――ガシュッ!!!

 

 

ボールはリングを擦りながらも潜り抜けた。

 

 

花月 7

洛山 8

 

 

『センターがスリーを決めた!』

 

センタープレーヤーのスリーに沸く観客。

 

「(危ねえ、あの距離を一瞬で…しかもあの身長であの高さ、侮れねえ…)」

 

スリーを決めた五河だったが、離れた距離を一瞬で潰した空のスピードと身長差を覆しかねないジャンプ力に思わず僅かに手元を狂わした。結果入ったが肝を冷やしていた。

 

「…ジェネラリストのいやらしい所が出よったで」

 

パス、ドリブル、シュート。果てはスリーさえも打ててしまう万能選手を有する洛山。その真価を改めて目の当たりにし、眉を顰める天野。

 

「今のは仕方ありません、切り替えましょう」

 

大地の言葉で気持ちを切り替え、オフェンスを開始する。

 

「…」

 

「…」

 

ゆっくりボールを運ぶ空。その目の前にはやはり赤司。

 

「「…っ!?」」

 

ダブルチームを受ける大地が先程同様、急な方向転換からのダッシュでダブルチームを引き剥がす。だが…。

 

「…」

 

先程とは違い、空は大地にパスを出さない。

 

「? 呼吸が合わなかったか?」

 

一瞬ノーマークとなった大地にパスを出さなかった空を見て首を傾げる菅野。

 

「…いえ、出さなかったのではなく、出せなかったんです」

 

一連を動きを見ていた姫川が口を開く。

 

「…ふん」

 

思わず鼻を鳴らす空。

 

「さすがは赤司って所か…」

 

青峰が呟く。

 

ダブルチームを引き剥がした大地。しかしその瞬間、赤司がパスコースを塞ぐ気配を出した為、空は大地にパスを出せなかった。もし出していれば赤司によってカットされていただろう。

 

「(たった1本で対応してきやがったか。仕方ねえ…)」

 

大地へのパスを諦め、左アウトサイドに展開している生嶋にパスを出した。

 

「…っ!」

 

ボールを受けた生嶋はすぐさまスリーの体勢に入る。

 

「お前には打たせん!」

 

打たせないと二宮がすぐさまチェックに入る。

 

 

――ボムッ!!!

 

 

しかし生嶋は打たず、中へとボールを入れる。

 

「よし、行くぞ!」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

ローポストで五河を背負う形でボールを受け取った松永がポストアップで五河を押し込み始める。

 

「…っ、2度も同じ手は喰わんぞ!」

 

腰を落として松永のポストアップに耐える五河。

 

「(まだだ! 恐れるな! もっと力強く…!)」

 

背後に立つ五河を押し込む為に松永が更なるアタックを仕掛ける。

 

 

――バシィィィッ!!!

 

 

「っ!?」

 

しかしその瞬間、松永がキープするボールが叩かれる。

 

「時間を掛け過ぎだぜ」

 

ボールを叩いたのは四条。松永にボールが渡るや否やダブルチームを解いてすかさず松永の持つボールを奪いに向かっていたのだ。

 

「よし、速攻!」

 

ルーズボールを掴んだ二宮がそう叫び、ドリブルを開始する。

 

『うわー! ここでのターンオーバーはきつい!』

 

花月びいきの観客が頭を抱える。

 

「くそっ、スマン!」

 

ボールを奪われた松永がディフェンスに戻りながら謝る。

 

「そんなん後でええ! 今はディフェンスや!」

 

そんな松永を窘めながらディフェンスに戻る天野。

 

「…っ!?」

 

「みすみす速攻なんざ決めさせねえよ」

 

速攻に走る二宮。いち早くディフェンスに戻った空が待ち受ける。

 

「(このまま仕掛けるか、それとも…)」

 

現時点でディフェンスに戻れているのは空のみ。このまま得点を狙いに行くかどうか思考する二宮。

 

「戻せ、秀平!」

 

後ろから赤司が指示を出す。

 

「…くっ!」

 

悔しそうな表情をしながら二宮。このまま仕掛けても点は取れないと赤司は判断したのだだろう。渋々後ろを走る赤司にボールを戻した。

 

「…」

 

ボールを受け取った赤司は足を止め、ゆっくりボールを運び始めた。

 

「1本、止めるぞ!」

 

花月の選手全員がディフェンスに戻ると、空が声を出し、鼓舞する。

 

「42番だ!」

 

ナンバーコールと同時に赤司がパスを出す。そこから洛山の選手達が縦横無尽に入れ代わり立ち代わり走り回り、ボールを受け取っては即座にパスを繰り返し、花月のディフェンスを乱していく。

 

「ふん!」

 

「っ!?」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

シュートクロックが残り10秒を切った所でローポストでボールを受け取った四条が背中で天野を押し込み始める。

 

「アホかい、この程度で押し込まれる程柔ちゃうわ!」

 

天野は身体を張って四条の侵入を阻止する。

 

 

――スッ…。

 

 

ある程度、ポストアップでアタックをした後、四条はボールをハイポスト放る。

 

「ナイスパス!」

 

そこには三村が走り込んでおり、ボールを掴むのと同時にすぐさまシュート体勢に入った。

 

「今度は決めさせねえぞ!」

 

そこへ一気に距離を詰めた空がブロックに飛び、シュートコースを塞いだ。

 

「(嘘だろ!? 後から飛んだ俺より高く――)くそっ…!」

 

完全にシュートコースを空に塞がれてしまい、三村はシュートを中断し、逆サイドに走り込んだ二宮にパスを出した。

 

「残念♪」

 

 

――バシィィィッ!!!

 

 

「…あっ!?」

 

したり顔の空。出されたパスはパスコースに割り込んだ大地によってスティールされてしまう。

 

「よし、速攻!」

 

ボールを奪った大地はそのまま速攻に駆け上がった。

 

「…っ」

 

そのままフロントコートまで駆け上がった大地。その大地の前に赤司が立ち塞がる。

 

「大地、ストップ!」

 

そんな大地に後ろから空が制止をかける。

 

「……分かりました」

 

それを聞き、大地は足を止め、後ろの空にボールを戻した。

 

「…」

 

ボールを受け取った空はゆっくりドリブルをしながらゲームメイクを始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

試合は双方共に時間を使いながら攻める展開となった。花月は空、洛山は赤司がゲームを組み立て、オフェンスに臨んだ。

 

しかしこの試合、双方共にディフェンスが光る展開となった。

 

 

――バシィィィッ!!!

 

 

花月は空と大地が外全域をカバーし、他のメンバーがインサイドに注力する事で洛山の得点を抑え…。

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

洛山は赤司が的確に指示を飛ばし、他の4人がそれぞれのマークする選手を抑える。

 

 

第1Q、残り14秒

 

 

花月 12

洛山 15

 

 

試合は両チーム共に得点が伸び悩み、ロースコアゲームの様相を見せていた。

 

『点が伸びねえ…!』

 

『やっぱりこうなったか…』

 

観客もこの展開を一部予想しつつも驚いていた。

 

花月は速い展開を得意とし、機動力を生かしたオフェンス特化のチーム。自ずと試合は点の取り合いの展開になりやすく、実力が近いチームとぶつかると毎回100点ゲームになる。しかし、ここまでの展開は100点ペースを遙かに下回っている。

 

 

「ま、これは赤司の思惑通りだな」

 

「そうなの?」

 

青峰の言葉に桃井が聞き返す。

 

「素人目には分かんねえだろうが、赤司が低いスコアになるように持って行ってんだよ」

 

「へぇー、けど、花月を相手にするなら正解かも」

 

桃井は青峰の言葉に頷きながら自論を口にする。

 

「神城君と綾瀬君を筆頭に花月は運動量が多くて試合終盤になるにつれて強いからそれまでに点差を付けようとつい得点を取りに行きがちなるけど、それは結果として花月のペースに引き摺られる事になっちゃうから」

 

ディフェンス特化型の陽泉でさえ花月のペースにハマり、結果として敗北を喫することとなった。過去のキセキ世代を擁する相手の試合を振り返っても、ほとんど花月のペースに巻き込まれ、敗北しているのだ。

 

「意図的に遅い展開に持って行けるなら、それは花月にとってもっとも有効な策だと思う」

 

「長い司令塔のキャリアを持つ赤司だからこそ出来る事だ。…花月はここまでどうにか隙を見つけて食らいついちゃいるが、パスもドリブルもシュートもそれなりに出来る奴を揃えてオフェンスパターン多い洛山相手に今の展開が続けば直にじわじわ点差は開いていくのが目に見えてんな」

 

青峰は今の展開は花月に不利と予想したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「さて…」

 

ゆっくりボールを運ぶ空。

 

「(こうして改めてやり合って見て分かる。赤司のゲームメイクはスゲー、何とか速い展開に持って行こうとしたが、どうにも上手く行かねえ…)」

 

ゆっくり時間をかけて攻めるオフェンスにやり辛さを覚え、何とかペースを変えようと試行錯誤したが、全て上手く行っていない。

 

「(最初はまあアメリカでの特訓の成果を試す意味でも悪くなかったが、さすがに飽きて来たな…)」

 

そろそろこの遅い展開に痺れを切らし始める空。

 

「(……残り10秒か…、)」

 

残り時間を横目で確認した空。

 

 

――スッ…。

 

 

空が左手を上げて人差し指を立てると、立てた指を左右に振った。すると、その合図に応じて他の花月の選手達が動き始めた。

 

『なっ…!?』

 

『なにぃぃぃぃっ!!!』

 

次の瞬間、観客席が驚愕に包まれた。

 

 

「うっそ…!」

 

これを見て桃井も口に手を当てながら驚く。

 

「…相変わらず、あいつはとんでもねえ事をしやがる」

 

青峰は苦笑していた。

 

 

スリーポイントラインの外側のトップの位置に立っている空。他の4人はそれぞれ左右に広がって中央にスペースを作った。即ちこれは…。

 

「アイソレーション…!」

 

動いた生嶋を追った二宮が呟く。

 

「…また何か企んでいるのか?」

 

空の指示からの選手達の動きを見て赤司が空に尋ねる。

 

「企んでるも何も、見たまんまだ」

 

そんな赤司に対して淡々と返す。

 

「ここまでのあんたのペースと型にハメられてストレス溜まってたからな。第1Q最後のオフェンスは小細工なし。真っ向勝負だ」

 

不敵に笑う空。

 

「この僕を相手にか? その決断、高く付くぞ」

 

「百も承知だ。元よりあんたら相手に危険な橋の1つや2つ渡れずに勝てる相手だと思ってねえ」

 

「……フッ、面白い。ならば渡ってみろ。渡れるものならな」

 

「渡ってやるさ」

 

不敵に笑う赤司。空は真剣な表情で告げるのだった。

 

「…」

 

「…」

 

刻一刻と第1Q終了の時間が近付く中、互いに集中力を高めていく空と赤司。

 

『(…ゴクリ)』

 

2人の真剣勝負の前に静まり返る観客達。

 

「(バカめ、赤司を相手に1ON1…しかも、アイソレーションでだと? 無謀にも程があるぜ)」

 

「(エンペラーアイがある赤司が抜かれる訳がねえ!)」

 

攻守において有効である相手の動きの未来が読めるエンペラーアイを持つ赤司。そんな赤司の勝利を信じてやまない四条と五河。

 

「(神城の事だ、何か企んでる可能性もある。だがもし本当に仕掛けてきたならカウンターで得点を奪うまで!)」

 

空の裏を探りつつ速攻のタイミングを窺う三村。

 

「…」

 

残り時間が5秒になろうとしたその時!

 

 

――ダムッ!!!

 

 

空が動く。クロスオーバーでボールを右から左へと切り返し、仕掛ける。

 

 

『動いた!』

 

『高速のクロスオーバー!』

 

「……いや」

 

2人の勝負が始まり、ざわめく観客。しかしそんな中1人ボソリと呟く青峰。

 

 

「(本命は直後のクロスオーバー。…ここだ!)」

 

エンペラーアイで先の動きを読んだ赤司が1発目のクロスオーバーで左手に収まったボールに手を伸ばす。

 

「…っ」

 

グングンと迫る赤司の手。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

『馬鹿かこのクソザル』

 

『あっ!?』

 

アメリカに留学していた時の事。ナッシュが空に対して悪態を吐く。

 

『何がトップクラスのスピードだ。だからてめえはサルなんだよ』

 

『んだとてめえ!』

 

あまりのナッシュの物言いに空が激昂する。

 

『身長がねえ上に大してテクニックもねえてめえじゃ『トップクラスのスピード』じゃ意味がねえんだよ』

 

呆れ顔で告げるナッシュ。

 

『もし、この先ここ(アメリカ)でやって行こうなんざバカで無謀な事考えてんだったら、それじゃ無理だ』

 

『…じゃあどうすりゃ良いんだよ?』

 

『トップクラスじゃねえ、トップ(頂点)に立つんだよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

――ダムッ!!!

 

 

「っ!?」

 

空が左から右へ再度高速で切り返すと、赤司の伸ばした手が空を切った。

 

『っ!?』

 

この結果に洛山の選手達も驚愕する。赤司を振り切った直後にボールを掴み、シュート体勢に入った空に対し、慌ててブロックに向かうも間に合わず…。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

ボールはリングを潜り抜けた。

 

 

花月 14

洛山 15

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

同時に第1Q終了のブザーが鳴った。

 

『…』

 

リングを潜り抜けたボールが弾む音が響き渡るコート。

 

『……おっ――』

 

『おぉぉぉぉぉぉーーーっ!!!』

 

1人が歓声を上げたのを皮切りに、観客達が大歓声を上げ、コート上は熱気に包まれた。

 

「…勝ち!」

 

拳を握って勝利をアピールする空。

 

「…」

 

そんな空に対して一瞥くれる赤司。

 

「うそ…だろ…」

 

この結果を目の前で見ていたにも関わらず信じる事が出来ない二宮。

 

「…な、なあ赤司、今のはわざと抜かせたん……だよな?」

 

傍まで歩み寄った四条が恐る恐る尋ねる。

 

「……そう見えたか?」

 

この問いに、赤司は淡々とそう返した。

 

「…っ!?」

 

その答えに顔を引き攣らせる四条。

 

見えなかったのだ。そもそも、この状況で空にわざと抜かせて得点を与えてもみすみす相手に流れと勢いを与えてしまうだけ。抜かせる意味がない。

 

「インターバルだ。ベンチに戻るぞ。時間を無駄にするな」

 

そう集まった4人に告げた赤司は洛山ベンチへと向かっていく。

 

『…っ』

 

促された4人は軽く動揺しつつも赤司の後に続いた。

 

「…」

 

ベンチに向かう最中、赤司がチラリと空の方に視線を向ける。

 

「…」

 

そこには同じくちょうどこちらへと視線を向けていた空と視線が合った。

 

「……フッ」

 

そんな空の姿を見た僅かに笑みを浮かべた赤司。

 

「…」

 

そんな赤司を見た空は何か考え込みながらベンチへと戻っていったのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

第1Q終了のブザーが鳴り、試合の4分の1が終わった。

 

試合は互いに時間をかけたオフェンスで試合を運び、互いのディフェンスが光った為、互いにスコアが伸びないロースコアゲームの様相を見せていた。

 

そんな第1Q最後の花月のオフェンス。空がアイソレーションを指示し、赤司と真っ向勝負の1ON1を挑んだ。

 

無謀とも言えるこの勝負。しかし、軍配が上がったのは空だった。

 

勝負を制し、意気揚々とベンチに戻る花月の選手達に対し、洛山の選手達は僅かに曇りを見せながら戻っていく。

 

しかし、空と赤司の表情だけはどこか対照的なのであった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





いやー長らくお待たせして申し訳ありません…m(_ _)m

言い訳をさせていただきますと、以前に報告したネタ不足もそうなんですが、4月に入ってリアルの仕事で異動となり、その準備やら異動先での業務やらを覚えるので時間を取られ、投稿出来ませんでしたorz

とりあえずネタが集まり、時間にある程度余裕が出来たので満を持して投稿出来る事となりました。

ただ、依然としてネタ不足には変わらないので、次、いつ投稿出来るかは未定です…(;^ω^)

必ず早めに投稿出来るよう努めますので、こんな二次でもお待ちいただけると幸いです…m(_ _)m

感想アドバイスお待ちしております。

それではまた!
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