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新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします…m(_ _)m
それではどうぞ!
試合終了
花月 101
洛山 100
大地の放ったスリーが決まり、両校の激闘は、花月の勝利で幕を閉じた。
『花月が勝った!!!』
『花月が夏のリベンジを果たしたぞ!!!』
『最強洛山を、花月が破った!!!』
この結末に、観客は大盛り上がりし、興奮している。
「うおぉぉぉぉっ!!!」
「勝ったぁっ!!!」
菅野と竜崎が抱き合いながら喜びを分かち合っている。
「やりましたよ、帆足先輩!」
「ヒック…ヒック…! よがっだ…!」
歓喜の表情で帆足の肩を叩く室井。涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら帆足は勝利を喜んだ。
「きゃぁぁっ!!! 勝った! 勝ったよ姫ちゃん!!!」
「…うん! 良かった…!」
大興奮で姫川に抱き着く相川。対する姫川は薄っすら涙を浮かべながら喜びを噛みしめた。
「…よし。よくやった」
ベンチに腰掛けたままの上杉。両拳を握りしめながらポツリと選手達を労ったのだった。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
「やった…!」
コート上では、生嶋が両拳を握りしめながら勝利を喜び…。
「よーし!!!」
松永はガッツポーズをしながら喜びを露にした。
夏の敗戦。試合後に自分達の責任だと自らを責めた2人。その雪辱を果たせた喜びもあり、ひと際、喜びを露にしていた。
「はぁー…、何とか勝ったな」
深く溜息を吐く天野。勝利の喜びより、安堵の方が勝り、その表情は安心の表情であった。
「そうですね」
大地も同様であり、薄っすらと笑みを浮かべているが、それは勝利の笑みではなく、安堵の笑みであった。
「……空?」
ここで、大地は空に視線を移したのだった…。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
「…」
茫然とする二宮。
「……くそっ!」
コートに両膝を突きながら床を強く叩き、悔しさを露にする三村。
「くっ…!」
両膝に手を突き、涙を流す四条。
「負けた…」
茫然とする五河。
それぞれが、負けた事を痛感し、悔しさを露にしていた。
「…」
赤司は腰に手を当てながら両目を瞑り、天を仰いでいた。
「届かなかった…か…」
ポツリと呟き、自身が負けた事実を噛みしめたのだった…。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
『101対100で、花月の勝ち! 礼!』
『ありがとうございました!!!』
センターサークル内に集まった両校の選手達が整列し、挨拶を交わした。
「俺達の負けだ。…負けるなよ」
「はい! ありがとうございました!」
生嶋と二宮が握手を交わす。
「俺達に勝ったんだ、絶対優勝しろよ」
「もちろんです。ありがとうございました」
大地と三村が握手を交わす。
「悔しいが、俺達の負けだ。…勝てよ」
「当然や」
天野と四条が握手を交わす。
「夏の時とは見違える程、強くなっていた。この調子で優勝を掴み取ってくれ」
「はい。ありがとうございました!!!」
松永と五河が握手を交わした。
「…」
「…」
空と赤司が対峙している。両者共、無言で見つめ合っている。
「……随分と、不満そうな顔をしているな」
先に口を開いたのは赤司。試合に勝利したはずの空。その顔は不満そのもので、とても勝利した者の顔ではない。
「…試合には確かに勝った。だが、正直、あんたに勝ったとは思えねえ」
不満顔の理由を空が語る。スコア上では勝ったが、試合内容……個人の戦い、司令塔としては赤司が上回っていると思っている為、空は試合の勝利を素直に喜べないでいるのだ。
「試合の勝利は司令塔の勝利と言っても過言ではない。司令塔としても、紛れもなくお前の勝ちだよ」
そんな空に対し、赤司は苦笑しながら告げる。
「…」
その言葉を聞いても納得しない空。
「頑固な男だ。それ以上は俺を…、何より自分自身を侮辱するのと同じだ」
「…だー! 分かったよ。今日の所は俺の勝ちって事にしといてやるよ」
窘めるように言い放った赤司の言葉に、空は渋々納得したのだった。
「何はともあれ、これで1勝1敗だ」
「? 1勝2敗だろう?」
空の言葉に赤司が問いかける。
花月と洛山は空が入学してから3試合行われており、昨年の夏に花月が勝利し、今年の夏は洛山。今日の試合での花月の勝利。
「去年の夏のはノーカンだ。あれは三杉さんと堀田さんの力みたいなものだからな。だから1勝1敗だ。言っておくが、ここは譲らねえぞ」
「…フッ、分かったよ」
睨み付けながら言う空を見て、赤司は苦笑しながら了承した。
「また何処かでやろうぜ。そして次も勝つ。試合でも…、司令塔としてでもな」
そう言って、空は右手を差し出した。
「もちろんだ。次は負けない。司令塔としても…、試合でもだ」
差し出された右手を握り、握手を交わした。
こうして、健闘を称え合った2人。ベンチへと向かって行く赤司。
「…なあ、もう1人のあんたは――」
背中から赤司に尋ねる空。
「……最後に君と最高の戦いが出来て、満足していったよ」
赤司は立ち止まり、背中を向けたまま答えた。
「……そうか」
その言葉の真意を読み取った空は、ただただそう返した。
「負けるなよ、神城」
「言われるまでもねえよ。…あんたとやりあえて良かった。ありがとうございました、
「…少しは年長者を敬えるようになったんだな」
皮肉交じりに告げる赤司。
「俺を何だと思ってるんだよ」
苦笑しながら返す空。
「フッ」
僅かに笑みを浮かべると、赤司は改めてベンチへと向かったのだった。
「…ああ負けねえよ。このまま頂点まで突き進んでやる」
赤司の背中に誓うように告げたのだった。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
洛山ベンチ。試合に出場した5人がベンチに戻って来る。
『…』
敗戦直後のベンチ。試合に出場した選手、控え問わず、表情は暗く、誰も口を開かない。
「今日の試合。負けた責任は全て俺にある」
最初に口を開いたのは赤司だった。
「俺が最後、オーバータイムを選んだ事が敗因の全てだ」
敗戦の責任を、赤司が全て引き受ける発言をした。
「お前1人の責任の訳がないだろ!」
その言葉に最初に反論したのは二宮。
「お前がいなきゃ、ここまで競る事も出来なかった」
「俺だって不甲斐ないプレーばかりだった」
「お前にそれを言われちゃ、ダブルチームでもまともに綾瀬を止められなかった俺なんてもっと立場がない」
「そうだ。お前の1人の責任じゃない」
二宮に続くように三村、四条、五河が続けた。他の選手達も同意見であり、同様の表情をしていた。
「皆の言う通りだ」
対戦相手の監督である、上杉との挨拶を済ませ、話を一部始終聞いていた白金がやってきた。
「例え、チームの主将であろうと、司令塔であろうと、お前1人が敗戦を責任を背負う等、烏滸がましいにも程があるぞ」
「…っ」
やや咎めるような白金の言葉に、赤司はバツの悪い表情をする。
「今日の試合の敗戦の責任は、全て監督である私にある」
赤司の前に立った白金がそう口にする。
「本来、このような言葉は好ましくないのだが、今日のお前達は強かった。花月はもちろん、今大会に参加しているどのチームより…、私がこの洛山高校の監督に就任してから見て来た中でどの代よりもだ」
『…』
「私がそんなお前達のポテンシャルを生かす事が出来なかった。故に、責任は全てこの私にある。…だから胸を張れ。お前達は、最高のプレーをしたのだ」
諭すように、白金は選手達に向けて言ったのだった。
「…っ、…はい…!」
その言葉に、赤司はその目に涙を浮かべながら返事をしたのだった。
「まだお前達の仕事は終わっていない。お前達の背中の後押しをしてくれた部員や観客達への挨拶が残っているぞ」
「…はい! 行くぞ!」
『おう!!!』
白金に促され、赤司の号令と同時に試合に出場した選手及びベンチに座っていた選手達が観客席へ駆け寄り、横一列に並んだ。
「応援、ありがとうございました!」
『ありがとうございました!!!』
赤司の声に続き、選手達が挨拶をし、頭を下げた。
『最高の試合だったぞ!』
『ナイスファイト!!!』
『感動する試合をありがとう!!!』
洛山の選手達に対し、観客席から惜しみない拍手と声援が贈られた。
『…っ』
暖かい拍手と声援を受け、選手達の瞳から再び涙が溢れだした。その拍手と声援を受けながら、洛山の選手達はコートから去っていった。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
『…』
コートのあるフロアから通用口を歩く洛山の選手達。
「赤司。今言う事じゃないかもしれないが…」
歩きながら、ふと、四条が口を開く。
「俺はな、
「…」
「同じ世代に、何をどうしようと届かない化け物がいて、どんなに頑張ってもスタメンは奪えない。どんなに結果を出しても評価をされない、見向きもされない。どうして、あんな化け物達と同じ世代に生まれちまったんだって」
「…」
「だが、今は感謝してる。俺は、お前と…
「同感だな。いつの間にか、恨みつらみなんかなくなって、夢中でバスケしてたな」
同調するように二宮が言う。
「ありがとな。お陰様で、張り合いのあるバスケ人生だったぜ」
笑みを浮かべながら三村。
「今までありがとう。今度は敵か、それとも味方かは分からんが、またバスケをしよう」
中学時代から今に至るまで、共に戦った4人の選手達が、赤司に感謝の言葉を述べた。
「…」
その言葉を胸に刻む赤司。
「…中学で、最強のチームメイトを得た」
『…』
「洛山に来て、頼りになるチームメイトを得た」
『…』
「…そして、最高の仲間を得た」
『…っ』
「ありがとう。共に長年、戦ってくれた事、研鑽を積んだ事、感謝の言葉しかない。…ありがとう」
赤司は、涙を流しながら、戦友達に感謝の言葉を贈ったのだった。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
激闘を終えた両チームがコートを去った。それでも尚、拍手や声援が治まる事はなかった。
「凄い試合だったね」
観客席の桃井が青峰に対して呟く。
「…」
その感想に対し、青峰は特に答えなかった。
「試合の勝敗を分けたのって、やっぱり――」
「――ああ。あのオーバータイムだ」
桃井の言葉を割り込むように青峰が答える。
「赤司はカウンターのリスクを恐れて敢えてシュートを打たなかった。だが、もし打ってりゃ決まってたかもしれねえ。決まらずとも、リバウンドを抑えられれば勝っていた。仮にリバウンドボールを抑えられても、シュートを放ってからボールを確保するまでに1秒、場合によっては2秒は時間を浪費出来てただろうからな」
「…」
「最後のタイムアウトで、残り5秒を使って延長の策と逆転の策の2つを用意出来た花月が最後に洛山を上回った」
ラスト5秒。赤司から引き離した空にボールを掴ませた時点で花月の勝利はほぼ確定していた。仮に最後、赤司が空のチェックに向かわなかったら空がそのまま決めて延長戦。余力を残す花月が押し切っていたからだ。
「だがこんなのものは、ただの結果論だ。試合が終わった後のたらればに、毛程の価値もありゃしねえよ」
青峰はそう吐き捨てた。…まるでそれは、半ば自分に言い聞かすかのように。
「今日勝った花月の次の対戦相手は、これから始まる第2試合の勝者…」
コートに視線を向ける桃井。コート上では、多岐川東高校と田加良高校の選手達がそれぞれベンチに集まっていた。
「どっちが勝ち上がろうが、今の花月には同じだろ。…くぁ、さつきー、この次の試合が始まったら起こしてくれ」
第2試合の内容や結末には一切興味ない青峰。眠たそうに欠伸をすると、持っていた雑誌を広げて顔を覆い、寝始めた。
「もう! 大ちゃんたら!」
そんな青峰にプンスカ怒る桃井であった。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
――キュッキュッ!!!
第2試合が始まり、コート上では多岐川東と田加良の選手達がぶつかり合っている。
第3Q、残り6分16秒
多岐川東 32
田加良 38
現在、6点差で多岐川東がリードしている。
「Zzz…」
「…」
横で寝息を立てる青峰を余所に、桃井は試合を観戦している。
「(どっちもスコアが伸び悩んでる。この調子だと、さっきの試合みたいにならないかも…)」
先の花月と洛山の試合は、序盤こそロースコアゲームだったが、中盤からペースが上がり、最後は両チーム100点の大台に乗せるまで得点を重ねていた。今現在、コートで行われている多岐川東と田加良の試合はそうはならないと桃井は予想する。その根拠は…。
――ガン!!!
両校共、試合のペースが速くないのに加え、とにかくリングに嫌われる場面が多く見受けられる事が要因である。プロの試合でも、シュートが決まらず、スコアが伸び悩む事はままある事であり、学生バスケなら尚の事である。
「…」
試合を見つめる桃井だったが、会場のとある空気の変化を感じ取っていた。
――会場の熱が引いている。
眼に見えて会場の熱が冷めているのだ。もちろん、盛り上がっていない訳ではない。多岐川東にしても、田加良にしても、全国で戦うのに相応しい実力を兼ね備えている。だがやはり、キセキを擁するチーム同士が激突する試合に比べると、どうしても盛り上がりが欠けてしまう。
キセキの世代が現れて以来、バスケ人気が高まった。そのキセキの世代を打倒出来る誠凛や花月が続けて現れた事で更に加速した。キセキを冠する者達の、素人玄人問わず、プロと同等がそれ以上に見る者を圧倒あるいは魅了していた。
だが、その影で弊害も生んでいた。その弊害を受けたのは、キセキを冠する者のいないチームである。
――キセキなくして栄光はあり得ない。
この3年間で言われてきた言葉だ。キセキと言う、個で試合の流れどころか勝敗をも容易に変えてしまう存在。そんな存在に対抗出来るのは同じキセキを冠する者だけであり、それ以外の者では二人掛かり、はたまた三人掛かりでも止めらない。チーム全体の戦略すら無にしてしまう。
その為、キセキを冠する者のいないチームにとって、如何にキセキを擁するチームに当たらないかが全てであり、当たれば事実上の敗北である。
そしてこの会場の空気。先程の花月と洛山の試合に比べ、目に見えて盛り上がりの欠ける試合。どちらが勝とうと、次の花月に負ける事が予想出来る両チーム。キセキを擁する選手がいない者同士の試合で近年見られる光景。先程の試合の感想を語り合う者。スマートフォンを操作する者。食事やトイレ休憩の為に席を離れる者。キセキ人気に釣られて試合会場に来た者達の行動が多々見られる。
もちろん、両チームに対して歓声や声援を贈る者達も当然いる。むしろそちらの方が多いのだが、どうしても先の者達の方が目立ってしまい、その者達に影響されて熱が冷めてしまうのだ。
「(…やり辛いだろうなぁ)」
試合を観戦している桃井は、胸中で同情したのだった。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
――ガン!!!
コート上では、胡桃沢の放ったスリーがリングに嫌われた。
「…っ」
思わず表情を歪める胡桃沢。普段なら高確率で決めていたポジションからのスリーが今日は決まらない。
「(…ったく、嫌な空気だ)」
思わず胸中で毒づく胡桃沢。
会場の空気を一番に感じ取っているのは試合を行っている選手達であり、それがプレーにも顕著に表れていた。期待も関心もない。それがもろに伝わり、調子を下げる要因となっているのだ。
――ガン!!!
リバウンドを多岐川東が抑え、カウンター。多岐川東の主将であり、スコアラーでもある若林が強引に切り込み、強引に打ちにいったが、激しいブロックに阻まれ、決まらず。
「…っ」
影響を受けているのは多岐川東も同様であり、やはり何処か調子に乗り切れていない様子であった。
「(…ふぅ、この空気、何度体験しても慣れないな)」
袖で汗を拭いながら胸中で愚痴る若林。
昨年時から全国の舞台での試合出場経験のある若林。この試合の空気は過去にも経験済みだが、未だ慣れる事はない。
『…っ』
会場を覆う独特の空気を身に浴びて各自、苦々しい表情をする多岐川東、田加良の両選手達。
『たーきかわ!!! たーきかわ!!!』
『たーかーら!!! たーかーら!!!』
その時、会場の一角から一際大きな応援の言葉が上がり始めた。それは、両チームのベンチ入り出来なかった選手達及びその関係者達の一角だ。コートで試合している者達を鼓舞しようと、声を張り上げて応援していた。
『…っ!?』
その応援を一身に受け、思わずその一角に視線を向ける両校の選手達。そして思い出す。自分達は、コートはおろか、ベンチ入りも出来なかった者達の代表で試合に出ている事に。全国出場を果たせなかった県の代表チームとしてコートに立っている事に。それだけではなく、ここまで戦った全国の猛者達の無念と想いを背負っている事に…。
『…っ!』
次の瞬間、選手達の表情が変わった。
あらゆる無念と想いを背中に背負っている事を自覚した選手達。ここから、試合の流れが変わったのだった。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
――ザシュッ!!!
多岐川東の主将、若林のジャンプシュートが決まる。
「しゃぁっ!!!」
拳を握る若林。
――ザシュッ!!!
変わって田加良のオフェンス。主将胡桃沢の得意ポジションからのスリーが決まる。
「よーし!!!」
チームメイトとハイタッチを交わす胡桃沢。
第4Q、残り5分14秒
多岐川東 61
田加良 60
試合は激しい点の取り合いに変わっていた。
「(試合の空気が変わった…)」
これまでの停滞していた空気から一転、試合は目まぐるしく動いていた。
『おぉぉぉぉー--っ!!!』
選手達の熱を浴びてか、これまで関心のなかった観客達も試合に熱中し始めていた。
「…あん? 試合終わったのか?」
その空気を受けてか、青峰が顔から雑誌を取りながら起き始めた。
試合は両チームの主将を中心に、がむしゃらに勝利に向けてプレーしていた。
「1本! 絶対に決めるぞ!!!」
『おう!!!』
「ディフェンス! 死んでも止めるぞ!!!」
『おう!!!』
両主将の檄に、それぞれの選手達が応える。
…多岐川東。高知県の雄であり、全国常連の強豪校。ここ3年、成績だけなら一部のキセキを擁するチームを上回る。くじ運が良かっただけと揶揄される事もあるが、それでもキセキを擁するチーム以外なら勝ち切れるだけの強さがあるチーム。
…田加良高校。佐賀県の古豪であり、過去に全国出場実績のあるチーム。今年は佐賀県ナンバーワンシューターの胡桃沢を中心に、190㎝越えの選手4人を従えた陽泉に次ぐ強力のインサイドを誇る史上最強の布陣。
共に実力は全国出場するに恥じないチームであり、この時代でなければ全国の頂点に立てたかもしれないチーム同士。
「(負けねえ! 何が何でも!!!)」
「(勝つ! 花月と戦うのは俺達だ!!!)」
主将同士のマッチアップ。それぞれの意地がぶつかり合う。
…キセキを擁するチームが相手なら負けても悔しさは残っても何処か諦めも付く。だが、今現在の相手は条件は互いに同じ。それ故、絶対に負けたくない相手。
「おぉっ!!!」
――バキャァァァッ!!!
若林の個人技からのダンクが炸裂すると…。
「フッ」
――ザシュッ!!!
お返しとばかりに胡桃沢のスリーが決まる。
『おぉぉぉぉー--っ!!!』
互いの全てを賭けた者同士のぶつかり合い。キセキを冠する者達のように派手さや美しさはないが、泥臭くとも勝利に向かってがむしゃらに邁進するその姿は、いつしか観客達の心を掴んでいった。そして…。
第4Q、残り9秒
多岐川東 74
田加良 75
残り時間は僅か。多岐川東のオフェンス。決めれば多岐川東が…、止めれば田加良の勝利である。
「はぁっ!!!」
中へ切り込んだ若林がハイポストのポジションでジャンプシュートを放つ。
『決めろぉっ!!!』
ベンチ及び観客席から願いを込めた魂の叫びが放たれる。
「させるかぁぁぁっ!!!」
それを阻止しようと胡桃沢が執念のブロックに飛ぶ。
リングに放たれるボール。勝敗を占うシュートがリングに向かって行く。
『…っ!』
そのボールの行方に、会場中の注目が集まる。
――ガン!!!
しかし、ボールはリングに嫌われてしまう。
「「まだだ!!! リバウンド、抑えろ!!!」」
両チームの主将から指示が飛ぶ。
『おぉっ!!!』
弾かれたボールに対し、ゴール下で集まる選手達が一斉に飛び付く。まだ試合終了のブザーは鳴っていない。多岐川東がこれを抑えればまだ逆転のチャンスは残っている。
――バシィィィィッ!!!
激しく身体をぶつけ合い、リバウンドを抑えたのは……田加良高校。
多岐川東の選手達がボールを奪おうとリバウンドを抑えた選手に群がる。だが、決してボールは渡すまいと田加良の選手は抗う。そして…。
『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』
ここで試合終了のブザーが鳴った。
試合終了
多岐川東 74
田加良 75
準決勝の2つ目の席に駒を進めたのは、田加良高校。試合の勝敗はリバウンドであり、全国で指折りのインサイドを誇る田加良高校が勝利を手繰り寄せた。
『75対74で、田加良高校の勝ち。礼!』
『ありがとうございました!!!』
健闘を称え合った両校が整列し、互いに挨拶を交わした。
「強かったぜ。言っとくが、準決勝、負けて当然の試合なんかしやがったらぶっ殺すからな」
「当たり前だ。俺達はまだ優勝を諦めた訳じゃねえんだからな」
互いにきつく握手を交わした。
『応援、ありがとうございました!!!』
自身の背中の後押しをしてくれた観客達に挨拶をする多岐川東の選手達。
「行くぞ。前座の俺達がいつまでもコートに居座るな」
自嘲気味に皮肉を交わすように指示を出す若林。
『良い試合だったぞ!!!』
『胸を張れ!!!』
『来年もまた来いよ!!!』
コートを去る直前、観客達から盛大にエールを贈られる多岐川東の選手達。
『…っ』
そのエールを受け、多岐川東の選手達は涙を流しながらコートを去っていった。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
「良い試合だったね」
桃井がこの試合の感想を漏らす。
「…ふん。どうせ次で負けんだから興味ねえよ」
毒づく青峰だったが、今の試合の熱気に当てられたのか、何処か身体を疼かせていた。
「それより次だ」
「うん。海常と陽泉。きーちゃんとムッ君の対決」
続く第3試合。これから始まるのはキセキの世代、黄瀬が率いる海常高校と、紫原を擁する陽泉高校の試合。
「どっちが勝つかな? 去年は陽泉が勝ったけど…」
昨年の冬にも激突した両校。その時は陽泉勝利で終わった。
「去年はチームメイトに足を引っ張られて負けた感じだったからな。…まっ、黄瀬もただで負けなかったが…」
海常は、洛山に及ばなかったものの、黄瀬は紫原に傷跡を残しており、それが原因となり、陽泉は洛山に敗北した。
「戦力的にはほぼ互角だな。鍵になんのは、黄瀬と紫原。後は、あの2人だな」
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
「ヤット試合ダヨ!」
陽泉のベンチにて、まだかまだかとはしゃぐアンリの姿が。
「アンリは相変わらずだな」
「ハハッ」
そんな姿に苦笑する永野と微笑ましく笑う渡辺。
「♪…♪」
ベンチに座ってボールを回しながら指の感触を確かめる木下。
「…」
その横で、紫原はタオルを頭に被りながら集中力を高めていた。
「そのままで良いから全員、話を聞け」
監督の荒木が注目を集める。
「相手は海常。言うまでもなく、強敵だ」
『…』
「スタメン、試合プラン共に変更はない。全身全霊を以て叩き潰せ」
『はい!!!』
荒木の指示に、選手達は大声で応えたのだった。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
「良い試合じゃったのう。互いに意地をぶつけ合った本気のぶつかり合い、ワシらそうありたいものじゃ」
海常ベンチ…。多岐川東対田加良の試合の終盤を見ており、その熱に三枝も当てられていた。
「あんな試合見せらちゃ、熱くならなきゃ嘘だ」
「同感だな」
同様に小牧と末広もその熱に浮かされていた。
「…っ、…っ、…ふぅ」
その横で、氏原が屈伸運動をしながら身体を解していた。
「全員、こっちに注目しろ」
海常の監督である武内がベンチの前に立つ。
「今日の試合はこれまでとは違う。…まぁ、今更儂が言う事でもないがな」
『…』
「スタメンと作戦は前日のミーティングで決めた通り、変更はない。…三枝」
「ういッス!」
「作戦通り、紫原はお前に任せる。この試合の勝利の鍵は、お前にあると言っても過言ではない。…やれるな?」
視線を三枝に向け、尋ねる武内。
「ハッハッハッ! 当然じゃとも! 儂が陽泉諸共しごうしちゃるわい!」
拳をパチンと鳴らしながら三枝は返した。
「フッ、愚問だったな。では行くぞ。同じ相手に負けはいらん。行って来い!!!」
『おう!!!』
武内の檄に、選手達は応えたのだった…。
※ ※ ※
激闘の第1試合、白熱の第2試合が終わり、遂に注目の第3試合がやってきた。
互いにキセキの世代を擁する海常と陽泉。
更にそのキセキの世代に追随する実力を誇る選手をも擁している。
この両校による、ベスト4を賭けた試合が、今始まる……。
続く
と言う訳で、2023年1本目の投稿です。
第2試合を半ばダイジェストでお送りしました。書きたい事を入れ込んだら思ったより長くなりましたが…(;^ω^)
次話から海常と陽泉の試合。大まかな展開は決めている者の、細かな試合描写がまだ練り込めていません。可能な限り早く投稿出来るように致します…m(_ _)m
感想アドバイスお待ちしております。
それではまた!