黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

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投稿します!

とうとう、花粉症のシーズンが来てしまったorz

目の痒み、鼻水、くしゃみと戦うか、薬の副作用で猛烈な眠気と倦怠感と戦うか、選ばなきゃならないとは…(>_<)

それではどうぞ!



第191Q~限界ギリギリの…~

 

 

 

『…』

 

コートへと続く通路を歩く選手達。

 

「行くわよ。今日の試合はこれまでとは違うわ。全員、もう1度気を引き締めなさい!」

 

先頭を歩く監督であるリコが後ろの選手達に向けて喝を入れる。

 

通路を歩いているのは誠凛の選手達。迫る目の前の試合の為にコートへと向かっていた。

 

「へいへい、昨日から耳が痛くなるほど聞いたっつうの」

 

そんなリコの喝に小指で耳の穴をほじりながらげんなりした表情で返事をする池永。

 

「てめえが1番心配なんだよ」

 

「いって!」

 

そんな池永の後頭部を叩く火神。

 

「…」

 

「…っ」

 

淡々と歩きながら集中力を高める新海と、緊張の面持ちで足を進めている田仲。

 

誠凛は今日の第4試合、鳳舞高校と対戦する。鳳舞高校は元キセキの世代、灰崎祥吾を擁する新設校であり、その他にも諸事情でバスケを続ける事が出来なくなった選手や、ワンマンチームで日の目を浴びる事の出来ない選手を集めて結成されたチームであり、創部2年、公式戦初参加で全国出場を果たしたチームである。

 

ここまでは危なげなく勝ち上がってきた誠凛高校であるが、準々決勝にて、全国でも指折りのチームとぶつかる事もあり、緊張感を高めている。

 

 

――おぉぉぉぉー--っ!!!

 

 

その時、通路の先、コートのあるフロアから観客の大歓声が漏れ響いた。

 

「盛り上がってますね…」

 

歩みを進めると共に徐々にボリュームが大きくなる歓声を聞いて朝日奈がポツリと呟く。

 

「海常と陽泉の試合だよな…」

 

「黄瀬と紫原のぶつかり合いか。どっちが上なんだろ?」

 

「他にも海常には三枝、陽泉にはアンリって、キセキの世代に匹敵する選手をそれぞれ擁してるんだよな」

 

降旗、河原、福田が予想とも感想とも取れる話をしている。

 

「…」

 

黒子は言葉を発せず、何やら思案している。

 

「あんた達、これから試合だって言ってるでしょ?」

 

そんな4人を窘めるリコ。

 

「(…けど、気になるのも無理ないわね。私も正直気になるし)」

 

今日の試合、勝てばいずれかと翌日に戦う為、リコも本音では気になっていた。

 

誠凛選手達は、各々思案しながらコートのあるフロアへと足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

『おぉぉぉぉー--っ!!!』

 

 

通路を抜けると、会場の大歓声に込められた熱気が誠凛の選手達の肌をビリビリと震わせた。

 

 

第4Q、残り4分21秒

 

 

海常 58

陽泉 60

 

 

「…点差はほとんどねえな」

 

電光掲示板を見て、僅か2点差で陽泉がリードしている事を確認する火神。

 

「…」

 

黒子も一瞬、電光掲示板に視線を向けた後、すぐさまコートへと視線を戻した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

――ガシィィィッ!!!

 

 

ローポストでボールを受けた三枝が後方に立つ紫原に背中をぶつける。

 

「…っ」

 

その衝撃に僅かに歯を食い縛るも、ポストアップに耐え、その場で押し止める紫原。

 

「…むん!」

 

ボールを掴んで素早くフロントターンで反転、フックシュートの体勢に入る。

 

「っ!? この…!」

 

 

――チッ…。

 

 

ブロックに向かう紫原。先のドリームシェイクで翻弄された事もあり、僅かに反応が遅れるも、指先にボールが触れる。

 

 

――ガン!!!

 

 

紫原のブロックが功を奏し、ボールはリングに弾かれる。

 

「…ちぃっ!」

 

決め切れず、悔しがる三枝。

 

「任せるッス!」

 

 

――ポン…。

 

 

弾かれたボールに黄瀬が飛び込み、タップで押し込んだ。

 

 

海常 60

陽泉 60

 

 

『よーし!!!』

 

黄瀬のリカバリーに、海常ベンチの選手達が立ち上がりながら拳を握る。

 

 

 

――ダムッ!!!

 

 

代わって陽泉のオフェンス。右45度、得意のポジションでボールを受けたアンリがドライブを仕掛ける。

 

「…っ」

 

このドライブに黄瀬は対応、遅れずにピッタリと付いていく。

 

 

――キュッキュッ!!!

 

 

直後に急停止し、そこからボールを掴んでターンアラウンドで反転。すぐさまフェイダウェイで後方に飛びながらシュート体勢に入る。

 

「…っ、おぉっ!」

 

 

――チッ…。

 

 

逃げるようにジャンプシュートを放つアンリ。ブロックに飛んだ黄瀬が手を伸ばすと、指先に僅かにボールが触れた。

 

 

――ガン!!!

 

 

その甲斐もあり、ボールはリングに嫌われる。

 

「…よし! リバ――」

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

ゴール下でポジション取りに現れた末広がリバウンドを抑えようとしたその時、誰よりも先に紫原がボールを空中で掴み、そのままリングに叩きこんだ。

 

 

海常 60

陽泉 62

 

 

『よっしゃー!!!』

 

リバウンドダンクを叩き込んだ紫原。陽泉ベンチの選手達が立ち上がった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

一進一退、両校一歩も引かない試合展開…。

 

「ぬおぉぉぉっ!!!」

 

ポストアップでゴール下まで押し込もうとする紫原。対して三枝は雄叫びを上げながらその場で押し止める。

 

「(…っ!? こいつ…!?)」

 

渾身の力で背中をぶつける紫原だったが、押し込む事が出来なかった。

 

 

『紫原が押し込めない!?』

 

『パワーなら紫原が上なのに…!』

 

『もう三枝の体力だって限界なはずなのに何処にあんな力が!?』

 

規格外のパワーで仕掛ける紫原のポストアップを押し返す三枝を見て驚きを隠せない観客達。

 

「…っ、ベルセルク? けど、あれは…」

 

桃井が三枝を見てある考えに辿り着く。

 

…モードベルセルク。

 

試合中に突如として力任せのプレースタイルに切り替わった三枝を指す相称。しかし、このプレースタイルは身体能力が増す代わりに視野が狭くなる上に熱くなりやすく、繊細なテクニックが出来なくなるデメリットもある。

 

しかし、ここまでの三枝は試合当初からのテクニックも健在で、周りも見えており、とてもではないが熱くなり過ぎている様子もない。

 

「確かに、あのモードは一長一短だ。夏の花月との試合ではまさにその欠点を突かれる形となった」

 

海常ベンチの武内が胸の前で腕を組みながら喋り出す。

 

「その失敗と敗戦を経て、三枝は普段の状態のままあのモードを融合させる事が出来るようなった。だから儂は、紫原を三枝1人に任せたのだ」

 

 

「紫原! もうすぐ3秒だ!」

 

オーバータイムが迫り、永野が声を出す。

 

「…くそっ!」

 

悔しがりながら仕方なくボールを永野に戻す。

 

 

『ビビーーーーーーー!!!』

 

 

『24秒、オーバータイム!!!』

 

このオフェンスでは陽泉は攻めきれず、オーバータイムとなった。

 

 

オーバータイムにより、オフェンスが切り替わり、海常のオフェンス。早々に黄瀬にボールを託す。

 

 

――ダムッ…ダムッ…!!!

 

 

持ち前のテクニックで目の前のアンリを抜きにかかる黄瀬。

 

「(…テクニックデハ勝負ニナラナイ。読ミ合イデモ勝テナイ。ダッタラ、何モ考エズニ集中シテ食ライツク!)」

 

考える事を止め、ただただ自身の身体能力のみで食らいつくアンリ。

 

「…っ」

 

揺さぶりをかける黄瀬だったが、アンリの無心の策が功を奏し、抜き切れずにいた。

 

 

「…あの黄瀬が攻めあぐねとるな」

 

揺さぶりをかけてはいるが、一向にアンリを抜きにかからない黄瀬を見て天野が呟く。

 

「…っ、スゲー気迫だ。もしかしてよう、アンリの奴、ゾーンに入ってんのか?」

 

黄瀬を躊躇わせるアンリに菅野が思わず口にする。

 

「いえ、あの感じはゾーンに入ってる訳じゃないですね。…ですが、ゾーン並に集中はしてますね」

 

ゾーンは否定するも、集中力の高さを指摘する空。

 

「…なるほど、あれは仕掛け辛いですね」

 

アンリのディフェンスを見て、大地がポツリと感想を述べた。

 

「彼は読み合いを捨て、相手の動きを見て食らいつくディフェンスに切り替えたようです」

 

「空坊がよくやるやつやな。けど、あれはアホみたいなスピードと反射速度がある空坊やから出来る芸当ちゃうんか?」

 

「確かに、アンリさんには空程の反射速度はありません。ですが、彼には空より身長がありますし、何より、驚異的なアジリティーに跳躍力、それにバネがあります。それで補っているのでしょう」

 

天野の疑問に大地が答えていく。

 

「充分にマークを引き剥がすか、しっかり崩せないとたちまち距離を詰められてしまいますから迂闊にシュート体勢に入れません。…もっとも、空の場合は引き剥がそうとも崩そうともすぐに詰めてきますが」

 

皮肉交じりの苦笑をしながら空に視線を向ける大地だった。

 

 

「…」

 

アンリの身体能力を押し出したディフェンスに苦戦する黄瀬。

 

「(埒が明かないッスね。…だったら!)」

 

意を決してボールを掴む黄瀬。

 

 

――スッ…。

 

 

すると同時に、黄瀬とアンリとの間にスペースが出来る。

 

 

「あれって、日向先輩の不可侵のシュート(バリアジャンパー)!?」

 

見覚えのある技に誠凛の降旗が思わず声を上げる。

 

 

――不可侵のシュート(バリアジャンパー)…。

 

 

誠凛の前主将、日向順平の得意技であり、重心移動を利用して自身とディフェンスとの間にスペースを作り、シュートチャンスを作り出す技。

 

「ッ!?」

 

驚愕の表情のアンリ。

 

瞬発力が特別ある訳ではない日向でも脅威であるこの技、黄瀬が使えばより破壊力が増す。アンリとの間にスペースが出来た事で黄瀬はシュート体勢に入る。

 

「…ッ、オォォォォォッ!!!」

 

しかし、アンリは雄叫びと共に生まれた距離を潰し、ブロックに飛ぶ。

 

「っ!?」

 

持ち前のアジリティーとバネでアンリに一瞬で距離を潰され、シュートコースを塞がれた黄瀬。

 

「…っ」

 

完全にシュートコースを塞がれた黄瀬はやむを得ず、パスに切り替えた。

 

 

『ビビーーーーーーーッ!!!』

 

 

『24秒、オーバータイム!!!』

 

結局、海常は決め切れず、オーバータイムとなってしまう。

 

 

『うわー! 攻撃失敗!』

 

『どっちも譲らねえ!』

 

互いに得点を許さない強固なディフェンスに観客は思わず溜息。

 

「スゲー、キセキの世代と互角やり合ってる…!」

 

三枝とアンリがそれぞれ紫原と黄瀬の攻撃を止めた事を驚く福田。

 

「……いや」

 

その言葉に、火神は眉を顰めながら否定する。

 

 

 

――キュッキュッ!!!

 

 

紫原がスピンムーブで三枝の背後に抜ける。

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

「がっ!!!」

 

そのままボールを掴み、回転しながらリングに向かって飛び、ブロックに来た三枝を吹き飛ばしながらボールをリングに叩きつけた。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

海常のオフェンス。ボールを受けた黄瀬が仕掛ける。

 

「…ッ!」

 

即座にアンリが黄瀬を追いかける。

 

 

――キュッキュッ!!!

 

 

仕掛けた直後に黄瀬が急停止。ボールを掴んで後方にステップバック。ステップバックを踏んだ足で後方に飛びながらシュート体勢に入った。

 

「…クッ!」

 

すぐさま距離を詰めるアンリだったが…。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

クイックリリースで放たれたフェイダウェイシュート。アンリの伸ばした手は間に合わず、放たれたボールがリングを潜り抜けた。

 

 

「確かに、三枝もアンリもキセキの世代相手に健闘してる。…だが、それでも黄瀬と紫原には届かねえ」

 

火神が鋭い視線をコートに贈る。

 

「高校進学直後のキセキの世代だったら、まだ付け入る隙はあったかもしれないけど、キャリアを積んで、名実共にチームを背負っている今の彼ら相手では、同格の選手でなければ張り合えない」

 

リコも火神の言葉に賛同する。

 

「どっちも1歩も引かない。この試合、どっちが勝つんだろう…」

 

純粋な疑問を投げかける田仲。

 

「…」

 

リコは顎に手を当て、暫し考えた後…。

 

「正直、こればっかりは、試合が終わってみるまで分からないわ」

 

答えは出ず、すぐ先に出る結果に答えを委ねたのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

その後も海常、陽泉共に1歩も引かない試合展開のまま、試合は終盤まで進んだ。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

小牧がスリーポイントラインのやや内側でジャンプシュートを決めた。

 

 

第4Q、残り16秒。

 

 

海常 70

陽泉 70

 

 

「いいぞ小牧!」

 

「うす! キャプテンもナイスパスです」

 

得点を決めた小牧に対し、氏原が肩を叩きながら労う。小牧は黄瀬に対し、親指を立てる。

 

黄瀬がアンリを抜きさり、そのまま切り込んで紫原をギリギリまで引き付けてから小牧にパスを出し、そのパスを受けた小牧がそれを確実に決めたのだ。

 

「ディフェンスだ! 全員、力を振り絞れ!」

 

ベンチの武内が立ち上がり、大声で選手達に檄を飛ばした。

 

「…っ!」

 

「…っ!」

 

ボールを運ぶ永野に対し、小牧が激しくプレッシャーをかける。

 

『…っ!』

 

他の選手達も、疲労が溜まっている身体を奮い立たせ、動き回る。

 

この陽泉のオフェンスを止める事が出来なければ海常の負けはほぼ決定する。その為、集中力を最大にしてそれぞれ当たっている。

 

「(行って下さい!)」

 

その時、渡辺がスクリーンに向かい、永野に合図を出す。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

「(サンキュー渡辺!)」

 

「っ!?」

 

中に切り込む永野。小牧はスクリーンに捕まってしまう。

 

「くそっ!」

 

すかさず末広がヘルプに飛び出す。

 

 

――スッ…。

 

 

切り込んだ永野は末広に駆け寄られる前に外にパスを出す。

 

「っし!」

 

スリーポイントラインの外側に展開していた木下にボールが渡る。

 

「させっか!」

 

スリー阻止の為、氏原がすぐさま木下との距離を詰める。

 

 

――ボムッ!!!

 

 

氏原がやってくると、木下はボールを弾ませながら中にボールを入れた。

 

 

『来た!!!』

 

観客が騒めき立つ。

 

 

ボールはローポストに立っていた紫原の手に渡る。

 

「(まずい!?)」

 

黄瀬が慌てて紫原のチェックに向かう。

 

「ぜぇ…ぜぇ…!」

 

紫原には三枝が付いてはいるが、もはや限界ギリギリ…いや、超えている。そんな三枝では紫原は防げない。

 

「(…チラリ)」

 

その時、紫原がチラリとアンリに視線を向ける。

 

「っ!?」

 

これに、黄瀬が僅かに足を止めてしまう。ここでフリーにしたアンリにパスを出されてしまえばいくら黄瀬でも間に合わない。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

しかし、紫原は直後にスピンムーブで三枝の背後に抜けた。

 

「(しまった!?)」

 

ここで黄瀬は自身の失態に気付いた。

 

紫原の性格を考えれば、試合最終版、それも試合を決定付ける場面でパスを出す事はあり得ない。普段の黄瀬であれば気付いていただろうが、疲労が溜まっているこの局面で判断能力が落ちていたのか、紫原の視線にフェイクに反応してしまい、足を止めてしまった。

 

 

『うわー! もう紫原は止められない、決まった!!!』

 

観客も陽泉の勝利を確信する。

 

 

ボールを掴んだ紫原が回転しながらリングに向かって飛ぶ。

 

「…っ! 決めさせるかい!!!」

 

三枝が反転、ブロックに向かう。

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

新型の破壊の鉄槌(トールハンマー)…。紫原の右手と三枝の左手がボールを挟んでぶつかり合う。

 

「っ!?」

 

やはり、紫原のパワーが上回っており、徐々にリングの方へボールが押されていく。

 

「(…これを決められたら終いじゃ! 何としてでもこのダンクを止めるんじゃ!)」

 

全身から力をかき集める三枝。

 

「(捻りだすんじゃ、例え、チームに在籍した日数は少なくとも、試合に賭ける思いは同じ! 動けんようなってもええ! 最後の1滴まで力を捻り出すんじゃ!)」

 

紫原に振れていた均衡が止まる。

 

「おぉぉぉぉー--っ!!!」

 

 

――バチィン!!!

 

 

「っ!?」

 

雄叫びを上げながらブロックに伸ばした左手に力を集約、絞り出した三枝。ボールは紫原の手から零れ落ちた。

 

 

――ガン!!!

 

 

零れたボールはリングに弾かれた。

 

「「リバウンド!!!」」

 

両ベンチの監督、武内と荒木が声を張り上げる。

 

「…っ」

 

「ちぃっ!」

 

リバウンド争いを始めた末広と渡辺。ポジション争いは体格に勝る渡辺に軍配が上がる。

 

「「…っ!」」

 

両者、弾かれたボールに向かって飛ぶ。やはり、絶好のポジションを取った渡辺の方がボールに近く、ボールに両手を伸ばす。

 

「(ここを取られたお終いだ! 何としてでも…!)…おぉっ!!!」

 

 

――ポン…。

 

 

「っ!?」

 

ボールが渡辺の両手に収まるより先に、末広は右手を伸ばしボールに触れ、チップアウト。ボールは別の所へ飛んでいく。

 

「ナイス一也! キャプテン!」

 

ルーズボールを抑えた小牧はすぐさま前線へ縦パス。

 

「みんな最高ッスよ!」

 

そこには、既に速攻に走っていた黄瀬の姿があった。

 

『っ!?』

 

まさかのターンオーバー。速攻に走る黄瀬にボールが渡り、陽泉の選手達の目が見開かれる。オフェンスに参加していた陽泉の選手達は誰もディフェンスに戻れていない。

 

『よっしゃー!!!』

 

残り時間3秒。ノーマークで黄瀬にボールが渡り、先程、紫原にボールが渡った際に絶望していた海常の選手達の表情が歓喜に変わる。

 

 

『起死回生のブロック!!!』

 

『まさかの逆転劇だ!!!』

 

ジェットコースターの二転三転する展開に観客のボルテージはこの日最高潮に。

 

 

「ぜぇ…ぜぇ…!」

 

誰もが今度こそ雌雄を決したと思われたその時、1つの影が黄瀬の横に並ぶ。

 

 

『アンリだぁっ!!!』

 

陽泉で1人、ディフェンスに戻り、黄瀬の背中を捉えたアンリに観客が一部、立ち上がりながら声を上げる。

 

 

「決メサセナイ! 絶対ニ止メル!!!」

 

決意を露にするアンリ。

 

「悪いけど、これで終わりッスよ!」

 

ボールを掴んだ黄瀬がリングに向かって飛ぶ。

 

「オォッ!!!」

 

すぐさまアンリもブロックに飛ぶ。

 

 

――ガシィィィッ!!!

 

 

空中で2人の身体が交錯する。

 

 

『ピピーーーーーーーーー!!!』

 

 

同時に審判が笛を吹いた。

 

「…っ!」

 

バランスを崩しながらも黄瀬はリングにボールを放った。

 

「グッ!」

 

アンリはバランスを立て直す事が出来ず、そのままコートに倒れ込んでしまう。

 

 

――バス!!!

 

 

黄瀬が放ったボールは、バックボードに当たりながらリングを潜り抜けた。

 

「やった! 勝った!!!」

 

海常ベンチの選手達が勝利の声を上げる。

 

 

『ピピピピピピピ!!!』

 

 

しかしここで、審判が激しく笛を吹く。審判が口から笛を下ろすと…。

 

『オフェンス、チャージング、青4番(黄瀬)! ノーカウント!!!』

 

『……なっ!?』

 

「マジすか!?」

 

この審判の判定に、海常選手達は勿論、得点を決めた黄瀬すらも驚愕した。誰もがアンリのディフェンスファール、海常の逆転を確信していたからだ。

 

 

『うわぁぁぁぁぁぁぁ!!! まさかのオフェンスファール!?』

 

観客が頭を抱える。

 

 

「…ハハッ! ヤッタ…!」

 

コートに倒れ込んだアンリはそのままの体勢で拳を握りながら喜びを露にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

結局、海常の得点はコールされず、試合が再開。同時に第4Q終了のブザーが鳴った。

 

 

『決着付かず!!!』

 

『延長戦に突入だ!!!』

 

 

40分の激闘が終えたが、試合の勝敗を付ける事が出来なかった。

 

 

第4Q終了

 

 

海常 70

陽泉 70

 

 

『…っ』

 

疲労が色濃く出る両チームの選手達。各々のベンチへと戻っていく。

 

 

「延長、ですか…」

 

ポツリと呟く大地。

 

「しかし、さっきのファール…」

 

「きわどい所だな。アンリが後僅かでも戻るのが遅かったらディフェンスファールだっただろう」

 

空の呟きに、上杉が私見を述べた。

 

「まさかの延長かいな。夏に経験したから俺もよー分かるけど、両チームとも辛いやろな」

 

夏の準々決勝での延長戦を思い出す天野。

 

「ああ。そして――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

海常ベンチ…。

 

「三枝、最後のブロック、見事だった。おかげで儂ら救われた」

 

起死回生ブロックでチームを救った三枝に感謝の言葉を贈る武内。

 

「…じゃが、ここまでだ。交代させる。異論は認めん」

 

「仕方ないのう…。この様じゃからのう」

 

タオルを頭から被りながら力無く答える三枝。ベンチに戻る際も末広に肩を借りてようやく辿り着けた程であり、先程のブロックの後も立ち上がる事が出来なかったのだ。

 

「空いたセンターには末広が入れ。代わりにコートには小平、入れ」

 

「はい!」

 

交代を指名された選手がジャージを脱いでユニフォーム姿となった。

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

インターバルが終了し、延長戦開始のブザーが鳴った。

 

「あと一息じゃ。辛いのは向こうも同じ。今までの練習を思い出せば勝てる。行って来い!!!」

 

『はい!!!』

 

武内の檄に応え、選手達はコートへと向かって行く。

 

「…涼太、スマンのう」

 

「? …何の事ッスか?」

 

謝罪の言葉を黄瀬に言う三枝。黄瀬も何の事か分からず、キョトンとする。

 

「最後までコートに立つとほざいておいて、この様じゃ。我ながら情けない! ホントなら張ってでも試合に出たいが、迷惑かけるだけじゃからのう。…ホントにスマン!」

 

無念の表情で黄瀬に頭を下げる三枝。対して黄瀬はニコリと笑い。

 

「情けなくなんかないッスよ。むしろ、感謝の言葉しかないッス。あの紫原っちをここまでよく抑えてくれたッス。海常に来てくれて、ありがとうッス」

 

「…っ、涼太…!」

 

その言葉に、三枝は思わず歓喜しそうになった。

 

「今度は俺の番ッス。後は――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

陽泉ベンチ…。

 

「水分補給、栄養補給はしっかり摂れ。各自、返事はいい。ゆっくり呼吸を整えながら私の指示に耳を傾けろ」

 

選手達に指示を飛ばしていく荒木。

 

「…アンリ、交代だ。最後のブロックは見事だった。おかげで延長戦に繋げる事が出来た。…だが、ここまでだ」

 

「…ウン。ショウガナイネ」

 

無念の想いながら、自身の交代を受け入れたアンリ。

 

それから荒木は選手達に延長戦を戦う為の指示を出していく。

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

そして、2分のインターバルは終了する。

 

「私は延長戦を戦えないようなやわな鍛え方をお前達にはしていない。後もう少しだ。蹴散らしてこい!」

 

『はい!!!』

 

荒木が檄と共に選手達は送り出した。

 

「…アツシ」

 

「んー?」

 

コートに選手達が向かう中、アンリが紫原を呼び止める。

 

「…ゴメン。モット試合ニ出タイケド、モウ身体動カナイ。後ハ任セルヨ」

 

自身の想いを紫原に託すアンリ。

 

「アンリちんは最後の俺のミスを帳消しにしてくれたし、それに面倒な黄瀬ちんも相手も引き受けてくれたし、充分だよ。…ねー、まさこち…」

 

荒木を呼ぼうとした紫原だったが、無言で竹刀を構える荒木を前に途中で言葉を止める。荒木は竹刀をそっと下げると、代わりにヘアゴムを紫原に渡す。紫原は後ろの髪を束ね、渡されたヘアゴムで纏めると…。

 

「結構、楽させてもらったからねー。後は任せてよー。ここからは――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――俺がやる!」

 

「――俺に任せてー」

 

2人は、ゾーンの扉を開いたのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

40分の激闘を終えた海常と陽泉…。

 

それでも決着を付ける事が出来ず、延長戦に突入する。

 

両チーム、それぞれのキーマンがベンチへと下がっていく。

 

試合は、両チームのキセキに、託され、そして、激突するのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





終わらなかったかー…(>_<)

短く纏めきれず、ダラダラ長文、長引かせる悪い癖が出てしまったorz

何か、話の切れ目でコートあるいはコートが一望出来る選手達を書いて時間を飛ばすのが自分の中であるあるになってきた。上手い人はもっといい演出で落とし込めるんだろうなぁ…(;^ω^)

感想アドバイスお待ちしております。

それではまた!
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