黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

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第20Q~決着~

 

 

 

『おぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!』

 

観客の大歓声が上がる。

 

大地が帝光中のペイントエリアへと切り込む。それに合わせて帝光中が大地の包囲にかかる。

 

「ふっ!」

 

そこで大地が完全に包囲する前に高速のバックステップで包囲網から脱出。帝光の選手達を置き去りにする。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

マーカーをかわした大地がミドルシュートを決める。

 

「っし!」

 

大地は静かにガッツポーズを取る。

 

 

帝光中リスタート。

 

フロントエリアまでボールを進めると高速のパスが繰り広げられる。24秒をきっかり使い、チャンスを窺い…。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

星南中の2-3ゾーンを崩し、ミスマッチを突いて帝光中が得点を加える。

 

 

再び星南中の攻撃。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

空が高速のドライブで帝光中のゾーンに侵入。それに合わせて空の包囲網が作られる。

 

「こんなもん!」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

ダックイン…上体を限りなく下げながら包囲網の隙間を抜け…。

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

ヘルプが来る前にダンクを叩きこむ。

 

 

帝光中の高速のパス。

 

巧みにゾーンをかきまわし…。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

池永が森崎をかわし、ゴール下を沈める。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

大地が切り込み、相手ゾーンを突破する。

 

「「ここは行かせねぇ!」」

 

大地がレイアップに行くと、河野と池永がそれをブロックしにやってくる。

 

190㎝の2枚の壁が大地を阻む。

 

 

――スッ…。

 

 

「「っ!?」」

 

大地がボールを下げ、空中で2人をかわす。

 

 

――バス!!!

 

 

ダブルクラッチで得点を決める。

 

第4Qが始まると、これまで以上の点の取り合いが始まる。

 

星南は空と大地が持ち前のテクニックで得点を重ねていき、帝光は第4Qから見せ始めた高速のパス回しによる連携で得点を重ねる。

 

試合は一気にヒートアップする。

 

『帝ー光!!! 帝ー光!!!』

 

『星ー南!!! 星ー南!!!』

 

先程まで星南に声援が偏っていたのだが、今ではどちらにも等しい声援が送られている。

 

ここ3年間、全中の決勝は帝光中が一方的な試合で制しており、他者を全く寄せ付けない試合結果であった。だが、今年は地域予選から全中決勝まで勝ち上がった学校同士。まさにファイナルに相応しい試合展開である。

 

バスケは、ワンサイドゲームよりも、クロスゲーム…接戦の方が遥かに盛り上がる。

 

観客のボルテージは今年の全中大会の中で1番最高潮に達している。

 

試合は星南が1点差まで詰めると、帝光が3点差に戻す。第4Q最初の帝光の連続ゴールから後はこの繰り返しであった。

 

 

第4Q、残り37秒。

 

星南 80

帝光 81

 

遂に第4Q残り1分を切る。

 

「1本! ここ、決めるぞ!」

 

帝光ボール。新海がゲームメイクを始める。

 

「(ここを決めることができれば勝てる。だからこの1本は何としてでも…!)」

 

新海がパスを回す。それと同時に帝光が動き始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「(来た!)」

 

新海がパスを出し、帝光が動き始める。高速のパス回しが始まる。

 

「(ここを止めないとタイムリミットだ。ここは絶対に死守だ)」

 

空は全神経を集中させ、この試合1番の集中力を見せる。

 

「(これだけの組織的なパス回し…確実に決められたパスルートがあるはずです)」

 

大地も同様に頭を研ぎ澄ませ、集中する。

 

ボールが動き回る中、空と大地はボールを奪うべく、ポジションを変えていく。

 

「(帝光は時間をたっぷり使ってくるはず。ならば、残り20秒切ったところからが勝負)」

 

空がフリーの選手を作らせないようにしながら頭を働かせる。

 

「(第4Qから見てきたこのオフェンス。だいぶパスルートが見えてきました)」

 

大地がボールと帝光選手の動きに気を配りながらスティールのチャンスを窺う。

 

帝光のパス回しは、決してその場のアドリブでボールを回しているのではなく、あらかじめ決められたパスルートでボールを回している。

 

それさえ的確に読めればボールは奪える。それが空と大地の考えだ。

 

28秒…27秒…。

 

時計は刻一刻と終了へと近づいている。

 

帝光は慌ててシュートを打ちにいかず、時間いっぱい使って確実に得点を奪うべくボールを回しながらチャンスを窺う。

 

24秒…23秒…。

 

勝敗を左右するこの1本。

 

『ゴクッ…』

 

観客も固唾を飲んで試合を見守っている。

 

21秒…20秒!

 

帝光が動きを見せ始める。

 

「(今まで見てきたパターンから考えて、ここで点を決めてくるのは…)」

 

大地が過去のパスルートを瞬時に思いだし、最後のパスターゲットにあたりを付けていく。そして、導き出した答えは…。

 

「(6番…池永です!)」

 

大地がボールを持っている新海と池永の間に動き出す。

 

「…そう来ると思ったよ」

 

大地の動きを見て新海がニヤリと笑う。

 

帝光のパスは空と大地の読み通り、決められたパスルートが存在する。それぞれが決められたポジションに動き、決められたところにパスを出す。

 

これまで行っていたパスのパターンをパターンAとする。これまでの法則通りならここで決めてくるのは池永である。だが、新海は最後の最後でパターンBにパスルートを変更した。

 

新海がゲームメイクを始める際、指を1本立ててゲームメイクを開始したのだが、その際、いつもより手の高さを低くした。これが、パターンBの変更のサイン。他の4人も即座に新海の意図を理解したポジション取りとパス回しをした。

 

最終的な狙いは、マークを外した池永ではなく、池永の逆サイドの3Pラインの外側で同じくマークを外していた沼津。

 

新海は池永にパスを途中で中断し、沼津へのパスへと切り替える。

 

『っ!?』

 

これには星南選手達も完全に虚を突かれる形となった。

 

ここで2点を決めれば99%帝光の勝利が確定する。だが、1%だが可能性は残る。しかし、ここでスリーを決めて点差を4点とすれば、残り時間を考えても帝光の勝利が100%確定する。

 

ボールが沼津の手に納まる。

 

この状況下によるスリー。勝敗を決するスリー。当然、かかるプレッシャーは並みではない。

 

「(決めるよ。ここで決めるために練習してきたんだ。それに、プレッシャーなんて、この帝光中のスタメン選ばれたことで常に感じてきたんだ。今更そんなものなんてないよ!)」

 

沼津が深く腰を落とし、スリーの体勢に入る。充分に指先からボールに力を伝える。

 

「(指のかかりがいい。これは入る!)」

 

沼津はこのスリーが入ることを確信する。そして、ボールは指先から放たれる――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――チッ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『っ!?』

 

今度は帝光が驚愕することとなった。

 

完全に星南の裏をかいたパス。決まると確信していた。だが、これを阻止したのは…。

 

『うおおぉぉぉーーーーっ!!!!』

 

『神城だぁぁーーーーーっ!!!!』

 

ボールに触れたのは、他の4人が虚を突かれた中、ただ1人、沼津に向かった空。

 

「バカな!?」

 

これには新海も同様を隠せない。最後の最後の一撃で変えたパターン。読みようがあるはずがなかったからだ。

 

空も、新海がパスを出す直前までは池永にパスが来ると予想していた。だが、その直前、空の中で嫌な予感がした。ただの直感であるが、嫌なものを感じた。ここで、今一度周りを見渡すと、池永の他にもう1人、フリーになっている。沼津を見つける。

 

池永の方には大地が向かっているのが見えたため、空は脇目を振らず、沼津の方へと向かった。結果、これが功を奏する形となった。

 

「(けど! …俺がボールを持った時は完全フリーだった! どんなスピードしてんだよこいつ!)」

 

空の反応の速さとスピード。そして瞬発力。これにより、ギリギリボールに追いつかせた。

 

「リバウンド!」

 

空は外れるのを確信して叫ぶ。

 

池永はゴール下から離れており、河野もハイポストに立っていたため、リバウンド争いは田仲と水内。

 

ガッシィィッ! と、身体をぶつけ合う両者。

 

「(こいつは確かに上手い。けど、パワーはそれほどでもないし、身長も俺と変わらない。それにスクリーンアウトも大して上手くない!)」

 

田仲は水内の前に出てベストなポジションを確保する。水内も田仲の前に出てリバウンドを制しようとするが、田仲がそれをさせない。

 

単純な1ON1なら水内が制するであろう。だが、ゴール下でのリバウンド争いなら、生粋のセンターである田仲が負けるどおりはない。

 

 

――ガン!!!

 

 

ボールはリングに当たり、外れる。

 

「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーっ!!!」」

 

田仲、水内が同時に跳ぶ。ボールを確保したのは……。

 

「よおーーーしっ!!!」

 

「っ!?」

 

ポジション争いで勝利した田仲。

 

「田仲ぁっ! 来い!」

 

声を出すのは速攻に走っていた空。

 

田仲は一気に前線にロングパスを出す。

 

「よし!」

 

ボールを受け取った空はドリブルを始める。

 

「行かせない!」

 

それを新海が阻む。

 

「(止める! ここはファールしてでも…!)」

 

「…」

 

空は一旦停止し、クロスオーバーで新海の左側を抜けようとする。

 

「ぐっ! まだ…まだぁっ!」

 

新海は何とか踏ん張ってそれについていこうとする。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

「っ!?」

 

だが、空はそんな新海を見越してか、バックロールターンでかわす。

 

そのままゴールへと進行していく空。

 

「ここは行かせん!」

 

「絶対止める!」

 

空が新海を抜くためにスピードを緩めた隙にディフェンスに戻っていた池永と河野。

 

「ここで決めなきゃ、男じゃねぇ!」

 

空は構わず突っ込んでいく。

 

『頼むーーーっ!!! 決めてくれぇっ!!!』

 

他の星南選手達の決死の声が飛ぶ。

 

空がペイントエリアまで侵入する。そして、跳躍する。

 

当然、池永と河野もブロックに飛ぶ。

 

「「っ!?」」

 

池永と河野は目を見開く。空は真上ではなく、やや後方にジャンプしていた。それだけではなく、通常のジャンプショット体勢ではなく、ボールを右手だけで持っている。

 

「俺のとっておきだ。もらっていけ」

 

空はそのままボールをふわりと浮かせるようにボールを右手から放った。ボールは2人のブロックの僅か上を綺麗な放物線を描くように通過していく。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

そしてボールは綺麗にリングを通過していく。

 

空はガッツポーズをしてリングに背を向ける。

 

『おぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーっ!!!!』

 

『逆転だぁぁぁぁぁぁぁーーーーっ!!!!』

 

観客から大歓声が沸き起こる。

 

 

星南 82

帝光 81

 

 

「今のは…ティアドロップ…」

 

今空が見せたのは、NBAなどで主にガード選手が使う、相手ブロックをかわし無効化するシュート。別の名をフローターとも呼ばれるショットである。

 

「あいつ…、あんなものまで打てんのかよ…!」

 

池永は身体をワナワナと震わせる。

 

残り時間13秒。ついに星南が点差をひっくり返す。

 

「いいんですか? あれ、対キセキの世代用に練習していた技でしょう?」

 

ディフェンスに戻りながら大地が空に尋ねる。

 

キセキの世代は赤司を除いて全員が10㎝以上も身長が高い。跳躍力がある空であってもその差は覆せない。それを補う武器の1つとして見に付けたのがこのフローター。

 

「構わねぇよ。ここで見られて通じない程度の代物だったらどのみち通用はしないだろうからな。それに、出し惜しみしている局面でもなかったしな」

 

最後の池永と河野の気迫は凄まじいものがあり、生半可なことでは突破できなかったと空はあの時感じていた。

 

「ラスト1本! 止めんぞ!!!!」

 

『おぅ!!!』

 

ディフェンスに戻り、全員に気合を入れる空。それに応える4人。

 

 

「くそ! …くそ!」

 

池永が悔しさと焦りを思わせる表情で切り込んでくる。

 

「お前らなんかに…お前らなんかにぃっ!」

 

ボールを掴み、リング目掛けて跳躍する。

 

「こんなところでぇっ! 俺は負けられねぇんだよぉぉぉっ! これで終わりだぁぁぁっ!!!」

 

咆哮を上げながらボールをリングへと叩きこもうとする。

 

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

 

そのダンクを大地が阻む。

 

「記録も王朝も、いつかは終わりが来るものです。それが今なんですよ!」

 

大地がボールに力を込める。

 

「おぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

 

 

 

――バチィン!!!

 

 

 

ボールはリングに叩きこまれることなく弾き飛ばされていく。

 

「ナイスだぜ!」

 

こぼれたボールを空が拾い、そのまま速攻を開始する。

 

「止める!」

 

「行かせねぇ!」

 

水内と沼津がその速攻を阻むべく空の前に立ちはだかる。

 

「通させてもらうぜ」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

水内をレッグスルーでかわし、沼津をビハインドバックで抜き去ってそのままフロントコートに侵入していく。

 

「そこまでだぁっ!!!」

 

3Pライン僅か内側まで来たところで新海がディフェンスに戻り、空の進行を阻む。

 

「まだだ…まだ終わってねぇぇぇぇぇぇっ!!!」

 

新海のこの試合一番の気迫。

 

「これでトドメと行くぜ」

 

空は停止し、僅か後方にジャンプし、ボールをリングに投げつけた。新海はそれを防げず、見送る。

 

「(シュート? …違う…これは…!)」

 

それと同時に2人の横を高速で何者かが駆け抜ける。

 

「最後、任せたぜ」

 

「任されましたよ!」

 

その正体は大地。

 

大地は2人の横を駆け抜け、ジャンプしてボールを掴む。そして……。

 

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

 

空中で掴んでそのままリングに叩き付けた。

 

『うおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!』

 

沸き上がる歓声。

 

「リスタートだぁぁぁぁぁっ!!! 早くしろぉぉぉぉっ!!!」

 

新海が決死の声を上げる。大地が決めた後に送れて戻ってきた河野がボールを拾う。素早くリスタートするべく新海にボールを渡そうとしたその時!

 

 

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

 

 

試合終了…タイムアップを告げるブザーが鳴り響く。

 

空と大地がそっと拳を上へと突き上げる。

 

 

 

――おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!

 

 

 

 

全中大会決勝戦。その長い戦い試合が今……終結した……。

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

 

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