黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

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投稿します!

まず最初に、いろいろ申し訳ない…(;^ω^)

それではどうぞ!



第199Q~最後の椅子~

 

 

 

第1Q終了

 

 

誠凛  8

海常 24

 

 

誠凛高校

 

 

4番PF:火神大我  194㎝

 

9番PG:新海輝靖  183㎝

 

10番SG:朝日奈大悟  185㎝

 

11番SF:池永良雄   193㎝

 

12番 C:田仲潤    192㎝

 

 

海常高校

 

 

4番SF:黄瀬涼太 193㎝

 

5番SG:氏原晴喜 182㎝

 

8番PG:小牧拓馬 178㎝

 

10番PF:末広一也 194㎝

 

12番 C:三枝海  199㎝

 

 

 

「16点差…!」

 

反省会終了と同時に誠凛対海常戦を見に観客席まで走った空。第1Q終了時点でもう16点も開いている事に驚く。

 

「さて……いた」

 

空は、既にこの試合のスカウティングに来ている姫川の姿を探し、見つける。

 

「状況は?」

 

姫川の隣に座った空が状況を尋ねる。

 

「ティップオフと同時に海常が仕掛けたわ。黄瀬さんのパーフェクトコピーで一気に先手を取ったの」

 

尋ねられた姫川が記録を付けていたノートを空に渡す。

 

「……黄瀬さんがパーフェクトコピーを使用した時間は?」

 

「およそ4分よ」

 

ノートを見ながら空が質問をし、姫川が答える。

 

「…4分か、…ありがと」

 

受け取ったノートに目を通し終えると、空はノートを返す。

 

「何か気にかかる事でもあった?」

 

「…ん、少しな」

 

姫川の言葉に空は僅かに言葉を濁した後、視線をコートに移したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

第2Qが始まると…。

 

「っ!?」

 

ボールを運ぶ新海に対し、小牧が激しくプレッシャーをかける。

 

「(…っ、まるで終盤の勝負所のような当たりだ…!)」

 

身体と身体がぶつかり合う音が聞こえてきそうな程の小牧のディフェンス。新海は思わずボールを止めてしまう。

 

「おらぁ!」

 

「…くっ!」

 

隙あらばボールに手を伸ばし、奪いにいく小牧。新海は必死にボールを奪われまいと死守する。

 

「新海!」

 

「…っ! 頼む!」

 

右ウィングの位置で朝日奈がボールを要求し、すかさず朝日奈にパスを出す。

 

「…ちっ」

 

パスを受けた朝日奈がすぐさまスリーの大勢に入ると、氏原が距離を詰め、チェックに入る。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

「っ!?」

 

氏原がシュートチェックに来ると、朝日奈はスリーを中断。ドリブルで切り込み、氏原を抜きながら中に切り込む。

 

「させるか!」

 

これを見た末広がヘルプに飛び出し、距離を詰める。

 

 

――ボムッ!!!

 

 

中に切り込んだの同時にボールを掴み、視線をリングに向けると、ボールを末広の足元を弾ませながらさらに中へとパスを出す。

 

「ナイスパス!」

 

ゴール下でパスを受けた田仲は同時にリングに振り向きながら飛び、シュートを放つ。

 

 

――バシィィィッ!!!

 

 

「ふん!」

 

「っ!?」

 

しかし、ボールをリリースするのと同時に三枝にボールを叩き落とされる。

 

「ナイス海さん。…速攻!」

 

ルーズボールを拾った小牧がそのままフロントコートに駆け上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

第2Qに入っても、海常の勢いは止まらなかった。

 

 

――ダムッ…ダムッ!!!

 

 

小牧が得意のキラークロスオーバーで新海を抜きさり…。

 

 

――ピッ!

 

 

ディフェンスを引き付けて外へとパス。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

外でボールを受けた氏原が得意のツーハンドリリースでスリーを決めた。

 

 

第2Q残り4分47秒

 

 

誠凛 14

海常 34

 

 

「っしゃぁっ!!!」

 

スリーを決めた氏原がガッツポーズ。

 

 

『ここでスリー!!!』

 

『もう20点差だ!!!』

 

『海常つえー! これはもう決まったか!?』

 

確実に開いていく点差。観客達がざわつき始める。

 

 

「…」

 

試合を頬杖を突きながら観戦する空。

 

花月(うち)と同じ、オフェンス重視の桐皇。その対局のディフェンス重視の陽泉。攻守のバランスが取れている洛山と秀徳。今年の海常は多少、オフェンスに比重は傾いているけど、攻守のバランスが取れたチーム。対して誠凛は、オフェンス重視のチーム」

 

「…」

 

「両チームの力の差はさほどないはず。にもかかわらず、この第2Qでこの点差…」

 

広がる点差を目の当たりにし、驚きを隠せない姫川。

 

「試合開始直後の黄瀬さんのパーフェクトコピーによる奇襲もあるんだろうが、要因は2つ。1つは海兄だな」

 

空は視線を三枝に向ける。

 

「海兄がインサイドを制してるのがデカい。紫原とやり合える身体能力に、あのテクニック。田仲の奴も頑張ってるが、正直、分が悪い」

 

センターである三枝をマッチアップするのは同じポジションである田仲。格上相手のマッチアップにかなり苦戦している。

 

「もう1つは、運動量だな」

 

続いて、2つ目の要因を口にする。

 

「私も同感よ。海常は相手へのチェック、抜かれた後のヘルプがとにかく速い。まるで試合終盤の勝負所を思わせる動きと集中力だわ」

 

海常は、とにかくシュートチャンスを与えないよう、素早いチェックとヘルプを心掛けている。それが功を奏し、失点を僅か14点に抑えている。

 

「この調子を最後(・・)まで維持出来れば、このまま海常が押し切れるけれど…」

 

歯切れの悪い姫川。

 

「ああ、最後までもつわけがねえ」

 

空が断言する。

 

「私もそう思うわ。今の海常は、スタートと同時にスパートをかけているようなハイペース。こんなペースを開始から終了まで維持出来るのはあなたと綾瀬君くらいだわ」

 

姫川も頷く。

 

「どうして海常は、こんな無茶な作戦を取ったのかしら?」

 

その疑問に姫川は行き着いた。

 

昨年時、花月も、スタミナ度外視、運動量任せのラン&ガンで勝負を仕掛けたが、それは、チームの熟練度と個々の能力で花月がキセキの世代を擁するチームを相手に対等に戦い、勝利するにはこれしかなかったからだ。実行に至れた背景には、空と大地と言う膨大なスタミナを持った選手がいた事と、そこに至るまでに上杉が殺人的な練習を選手達にこなさせて実行出来るだけの下地を仕込んでいたからだ。

 

「まあ、無茶をしてでも点差を付けておきたかった何かがあるんだろ」

 

「何か…」

 

空の言葉を聞き、その何かを考える姫川だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「…よし!」

 

スリーが決まり、拳を握るベンチにて試合を見守っている武内。

 

「(ここまでは予定通りだ。しかし…)」

 

視線を相手ベンチに座るリコに向ける。

 

「(点差はジワジワ広がり、もう20点だ。なのに何故動かない…)」

 

リコが何も動きを見せない事に疑問を覚える武内。

 

ここまでリコは、タイムアウトはおろか、選手交代すらせず、ただベンチに座って試合を見守っているだけであった。

 

「(例え、こっちの狙いに気付いていようと、そうでなかろうと、今の状況は誠凛にとって良くはない。それが分からないと言う事もないはず。では何故…)」

 

事前のプラン通り試合が進んでいる。にも関わらず、一向に動きを見せないリコに、武内は不気味な何かを感じるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

『ビ―――――――――――!!!』

 

 

第2Q終了のブザーが鳴る。

 

 

第2Q終了

 

 

誠凛 20

海常 44

 

 

『海常強い!!!』

 

『試合の半分が終わった時点で点差24点! これはもう決まっただろ!!!』

 

『誠凛どうした!? 相手になってないぞ!』

 

第2Q終了時点でのこの点差に、観客達は驚きの声や、果ては誠凛への野次等、飛ばす者も現れた。

 

 

「この第2Qで点差が24点にまで開いたわね」

 

スコアブックを纏めながら呟く姫川。

 

「…」

 

空は特に感想を口にする事もなく、コートを見つめている。

 

「(あの後も、一見すると海常が押せ押せのムードに見えたが、点差は4点しか広がってねえ)」

 

第2Qが半分過ぎた時に点差を20点に広げた海常。その後も激しく攻め立てていたが、第2Q終了時点で広げられた点差は4点。誠凛も要所要所できっちり得点を決めていた。

 

「(それに…)」

 

視線を、控室へと向かう両チームの選手達にそれぞれ移す。

 

『ハァ…ハァ…!』

 

海常の選手達は、かなり呼吸を荒げていた。まるで、もうひと試合終えた後のように。

 

『…ふぅ』

 

対して、誠凛の選手達は、ある程度の消耗は見られるも海常程深刻ではなく、表情も点差程、深刻には見えない。

 

「この第2Qで分かった事もあるわ。海常が異常なハイペースで無理に点差を広げに来たのは――」

 

「――ああ。昨日の陽泉との試合の影響を引きずっているからだ」

 

姫川の言葉に被せるように空が口にする。

 

昨日、陽泉と激闘を繰り広げた海常。試合は40分では決着は付かず、延長戦の末、紙一重で海常が競り勝った。試合は両者死力を尽くしたせ末の決着。昨日の今日で影響がない訳がない。

 

「コンディションが悪い状況では当然、パフォーマンス能力は落ちる。それだけではなく、それを補おうと余計にスタミナはさらに消耗する。そんな状況で真正面から挑めば終盤にひっくり返されてしまう。だから海常は、スタミナがある内に仕掛けて点差を広げに来た。終盤に逃げ切れるだけの点差を付ける為に…」

 

ひとたび、逆転を許してしまえば海常に勝ち目はない。その為、海常には逃げ切るだけの点差が必要だった。

 

「誠凛もそれが分かってたから、徹底した攻め方をした」

 

「あら、気付いていたのね」

 

「そりゃ、あれだけ露骨だったらな」

 

姫川の指摘に、空が苦笑。

 

誠凛は、とにかくオフェンスではポストアップを中心に組み立てた。フィジカルにおいては、センターのポジションを除いたポジションで誠凛に分がある。身体を張る必要があるポストアップのディフェンスはとにかくスタミナを消耗する上、押し込まれてしまえば他の選手はヘルプに向かわずを得ず、他の選手のスタミナも奪える。

 

「…とは言え、誠凛の監督のリコさんが何も動きを見せなかったのは気になるわね」

 

「それは俺も思った。仕込みはしたにしても点差は24点だ。足が止まるであろう後半戦に逆転を狙うにしても、海常から24点の点差をひっくり返すのは容易じゃねえ。タイムアウトは相手を休ませる事になるから使わなかったにしても、選手を入れ替えてテコ入れしても良さそうな気もしたんだけどな」

 

ここまで、リコは動きと言う動きをほぼほぼ見せず、ベンチで試合を見守っていた。普段の海常であれば、24と言う点差は絶望的。選手を入れ替えるなどして、もっと点差を抑える策を取るべきだったのではと空が口にする。

 

「何にせよ、ここからだな。誠凛はこの点差をひっくり返さなきゃならねえし、海常は、この点差を守り切らなきゃならねえ」

 

「誠凛と海常、どちらに言えるのは、無策では逆転は出来ないし、点差を守り切る事も出来ない。何かしらの策を講じなければ…」

 

そう2人は結論付けた。

 

「(けどまあ、最大の切り札(・・・・・・)を残してる誠凛が有利なのは否めないか。海常の表情を見るに、もっと点差を付けておきたかったんだろうけど…)」

 

空は、誠凛選手達の1人、一際影の薄い(・・・・・・)、1人の選手に視線を向けたのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

第3Qが始まると…。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

「…っ」

 

表情を顰める黄瀬。ハイポストでパスを受けた火神が、背中に張り付く黄瀬に対し、ポストアップを仕掛けたのだ。

 

「…随分と、つまらないバスケをするようになったッスね」

 

「…あっ?」

 

突然話しかけられ、怪訝そうな表情で返事をする火神。

 

「こんなの、火神っちがやりたいバスケじゃないんじゃないッスか? 例えこれでこの試合勝ったとして、火神っちは嬉しいんスか? 火神っちの先輩達は満足してくれるんスか?」

 

「…」

 

「もっと、互いに真正面からやり合わないッスか? それとも、自信がないんスか?」

 

嘲笑するような表情で提案する黄瀬。

 

「…お前に言う事ももっともだ。正直、気持ちの良いバスケじゃねえし、窮屈で仕方がねえ。良いぜ、やってやるよ。…って、言いてえ所だけどよ」

 

火神が表情を改める。

 

「生憎と、今の俺はチームを背負ってるんでな。俺が気持ちよくバスケをする事より、チームを勝たせてえ。だから、お前の挑発(・・・・・)には乗ってやれねえな。今のお前なら、俺と同じ立場(・・・・・・)のお前なら、分かるだろ?」

 

「っ!?」

 

その言葉に、黄瀬はギクリとする。

 

 

――キュッキュッ!!!

 

 

直後に火神をボールを止め、後ろに飛びながらジャンプシュートの体勢に入った。

 

「…っ」

 

これを見てブロックに飛んだ黄瀬だったが…。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

ブロックが間に合わず、ジャンプシュートを決められてしまう。

 

「っしゃ!」

 

得点を決め、拳を握る火神。

 

「……ふぅ」

 

深く溜息を吐く黄瀬。

 

「(去年までのエース(・・・)の火神っちだったら、挑発だって分かってても乗ってくれたと思うけど、キャプテン(・・・・・)である今の火神っちは乗ってくれないッスか…)」

 

エースとキャプテン。チームにおいての背負い方が違う事は、去年まではエースであり、今はキャプテンである黄瀬も痛い程理解している。互いに、悔しい思いもしているのだから猶更である。

 

「…これは、いよいよしんどくなりそうっスね」

 

誰にも聞こえないように黄瀬は呟いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

――ダムッ…ダムッ!!!

 

 

ボールを運ぶ小牧がダブルクロスオーバーで新海に抜きにかかる。

 

「…甘い!」

 

「っ!?」

 

2回の切り返しに反応した新海が腕を広げて進行を阻む。

 

「(慣れてきた事にも加え、スピードとキレがだいぶ落ちて来た。だいぶスタミナが削られたみたいだな。…なら、一気に仕掛ける!)」

 

「…くっ!」

 

ここで距離を一気に詰め、激しくプレッシャーをかけるようにディフェンスに入る新海。小牧はボールを死守する為にボールを止めてしまう。

 

「くそっ、頼む!」

 

ボールを狙う新海の手をかわしながら小牧はハイポストに立つ末広にパスを出す。

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

「っ!?」

 

「残念無念ってなぁ!」

 

末広の手にボールが収まる直前、池永がパスコースに手を伸ばし、スティールする。

 

「ナイスカット。…来い!」

 

「おらよ!」

 

パスと同時に前へと走っていた新海。その新海に池永が縦パスを出す。

 

「行かせるか!」

 

フロントコートに入り、スリーポイントライン目前で氏原が追い付き、新海の前に立ち塞がる。

 

「…っと」

 

新海は足を止め…。

 

 

――スッ…。

 

 

ボールを横へと放った。

 

「ナイスパース!」

 

そこへ、池永が走り込み、ボールを掴むとそのまま中へと切り込み…。

 

「おらぁ!」

 

フリースローラインを越えた所でボールを掴み、リングに向かって飛んだ。

 

「調子に乗るな、小僧ぉっ!!!」

 

そこへ、三枝がブロックに現れ、新海の掲げたボールを狙う。

 

「来てんだろ? 分かってんだよ!」

 

 

――スッ…。

 

 

ここで池永はボールを下げ、三枝のブロックをかわす。

 

「っ!?」

 

 

――バス!!!

 

 

三枝のブロックを潜り抜けた所で再度ボールを上げ、バックボードに当てながらリバースレイアップを放ち、決めた。

 

「こちとら、毎日火神を相手にしてんだ。この程度の事でおたおたしねえよ」

 

不敵に笑う池永。

 

「…ちぃっ」

 

思わず舌打ちをする三枝。

 

 

「むぅ…」

 

海常ベンチの武内が思わず唸り声を上げる。

 

第3Qに入り、やはり点差は縮まっていく。これは予想の範囲内であるのだが…。

 

「(点差が縮まるペースが予想以上に速い。選手達の足取りも重い。前半戦に想定以上にスタミナを削られてしまったか…)」

 

目に見えて海常の選手達の消耗が著しい。点差を犠牲に誠凛が仕掛けた消耗作戦がボディブローのようにジワジワと確実に選手達に浸食していた。

 

「(もっと点差を付けていれば話は違っていただろうが、今のままでは間違いなく逃げ切る事など出来ん)」

 

逃げ切りを図る為に無茶を承知でパーフェクトコピーを始めとした、ハイペースとも言えるスタートダッシュで点差を付けた海常。だが、やはり誠凛を相手には想定通りには行かない。

 

「(やはり、逃げ切るには守るのではなく、攻めるしかない。…黄瀬に負担をかける事になるが、やむを得ないか…)」

 

武内が立ち上がり、1歩前に出ると、黄瀬にサインを出す。

 

『(…コクッ)』

 

サインを受け取った選手達が頷き、実行に移す。

 

「1本、行くッスよ!」

 

黄瀬が指を立て、ボール運びを始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「あれは…!」

 

「秀徳戦に見せたフォーメーションか」

 

海常が動きを見せ、それに緑間と青峰が反応する。

 

3回戦で、海常と秀徳がぶつかった折に見せたチーム戦術。もともとは秀徳が実行した戦術であり、緑間のシュート力、テクニック、存在感をまんべんなく生かした戦術である。海常はこれに対抗する為、即席でその戦術を真似ていた。

 

「即席で見せた秀徳戦でもそれなりに形にはなってはいた。あれから時間もあった事も考えれば、さらにマシなものに仕上がってはいるだろうな」

 

「…」

 

ボールを運ぶ黄瀬を見つめる青峰。緑間は、苦労したチーム戦術をあっさり真似た黄瀬を、複雑な表情で見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「おぉっ!」

 

黄瀬が中に切り込み、そのまま突き進む。

 

 

――スッ…。

 

 

マークが集まった所でパスを出す。

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

自身にマークを引き付けた事でフリーとなった三枝がボースハンドダンクをリングに叩きつけた。

 

「よーし!」

 

黄瀬と三枝がハイタッチを交わす。

 

第3Q半ばに実行した黄瀬をハンドラーに据えたチーム戦術により、均衡を保ち始めた。このまま点差を維持したい。

 

 

――ピッ!

 

 

誠凛のオフェンス。池永がスリーを放つ。

 

『っ!?』

 

「俺には外があるんだぜ!」

 

フリーでパスを受けた池永がすかさずスリーを打った。

 

「しまった!」

 

池永をマークする末広。無警戒でスリーを打たせてしまい、思わず声を上げる。

 

 

――ガン!!!

 

 

「んが!」

 

しかし、そのスリーはリングに嫌われる。

 

『…っ』

 

外れた事でほっと胸を撫で下ろす海常の選手達。

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

「決めろバカ野郎!」

 

外れたボールを火神がそのままリングに押し込んだ。

 

 

『おぉぉぉぉー--っ!!!』

 

 

「こういう時に決められきゃ意味ねえだろ」

 

「いって! うるせー!」

 

池永の頭を叩く火神。文句を言いながら池永はディフェンスに戻っていった。

 

『…っ』

 

表情を曇らせる海常の選手達。現状、このチーム戦術は機能している。にも関わらず、点差を維持するのが現状精一杯。気を抜けば今のように手痛い1本を決められてしまう。

 

「…ふぅ、全国優勝の壁は、高いッスね」

 

汗を拭いながら、黄瀬もぼやくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

『ビ―――――――――――!!!』

 

 

第3Q、終了のブザーが鳴る。

 

 

誠凛 46

海常 56

 

 

第3Qが始まってから誠凛の逆襲が始まり、点差は10点にまで縮まっていた。

 

「よっしゃ! 行けるぞ!」

 

ベンチで自らを鼓舞するように叫ぶ池永。

 

この第3Qで点差を14点も縮めた誠凛の士気は高い。

 

『ぜぇ…ぜぇ…!』

 

対して、海常の選手達の消耗は大きく。とてもリードしているチームの様子ではなかった。

 

「…っ」

 

思わず頭を抱えたくなる武内。

 

昨日の陽泉戦で消耗し過ぎた海常。対して、苦戦はしたものの、主力の2年生を半ば休ませていた誠凛。最悪のコンディションの中、それでも勝つ為にはこの作戦しかなかった。

 

「…」

 

くじ運が悪かったと言う他ない。海常と誠凛の組み合わせが逆であったなら、また違った結果であっただろう。

 

「良い感じッスよ!」

 

そんな中、黄瀬が声を上げる。

 

「後10分ッス。後10分頑張れば俺達の勝ちッス。最後の1滴まで振り絞るッスよ!」

 

努めて明るく振舞う黄瀬。

 

消耗具合であれば、先の陽泉戦から鑑みても、黄瀬が1番消耗している事は想像が付く。それでもチームの勝利の為、それを隠してチームを鼓舞している。

 

「ハッハッハッ、その通りじゃ! 残り10分。誠凛に目にもの見せてやるかのう!」

 

その黄瀬の鼓舞に、三枝が乗っかるように応える。

 

「辛いの相手だって同じだ。…いや、リードされてる分、精神的には誠凛だって辛いんだ。俺達の底力、見せてやろうぜ!」

 

『おう!!!』

 

最後に氏原が声を上げ、海常は士気を高揚させたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

第4Qが始まる。第3Qを様子から見て、誠凛がすぐに背中を捉える。誰もがそう予想していた。

 

「おぉっ!」

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

「「っ!?」」

 

三枝が田仲と池永を押しのけ、オフェンスリバウンドを制する。

 

「リョータ!」

 

リバウンドを制し、着地した三枝がコーナーに展開していた黄瀬にパスを出す。

 

「ちっ!」

 

慌てて火神がチェックに向かう。

 

 

――ピッ!

 

 

しかし、黄瀬はスリーを打たず、横へとパスを出す。

 

「ナイスパス黄瀬!」

 

そのボールをウィングの位置に立つ氏原が掴む。

 

「あっ!?」

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

朝日奈が声を上げた時には既に遅く、氏原がスリーを決めた。

 

 

第4Q、残り5分18秒

 

 

誠凛 56

海常 66

 

 

試合終盤。未だ、海常がリードを保っていた。

 

「ナイッシュー氏原さん!」

 

小牧が氏原に駆け寄りハイタッチを交わす。

 

海常が気力を振り絞り、点差を維持していた。

 

「…ちっ」

 

舌打ちをする池永。先程までは楽観視していた池永にも焦りの色が見え始めた。海常が消耗している事は間違いない。もはや限界寸前…いや、もう限界はとうに超えているはず。にもかかわらず、海常は逆転はおろか、点差を縮める事も許さない。

 

『…っ』

 

一向に縮まらない点差に、池永だけではなく、他の選手達にも焦りの色が出る。点差は未だ二桁。どうにか流れを掴み、一気に逆転したい。

 

 

『ビビーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

その時、オフィシャルテーブルからブザーが鳴る。

 

『メンバーチェンジ、(誠凛)!』

 

オフィシャルテーブル内の掲示板に、交代を告げられた背番号10、朝日奈と、コート入りをする背番号8が表示される。

 

「待たせてしまったわね」

 

「はい。待ちくたびれました」

 

オフィシャルテーブルにて、リコに声を掛けられ、返事をしながら自身のリストバンドを手首に通す。

 

「機は熟したわ。行ってきなさい!」

 

「はい!」

 

背中を叩いて発破をかけるリコ。その発破に応え、背番号8番。幻のシックスマン、黒子テツヤがコートに足を踏み入れた。

 

 

OUT 朝日奈

 

IN  黒子

 

 

「頼みます」

 

「任せて下さい」

 

コートを出る際、交代を告げられた黒子と朝日奈がハイタッチを交わす。

 

「待ってましたよ黒子さーん!」

 

歓喜の表情の池永。

 

「大一番だ。頼んだぜ」

 

「はい、任せて下さい」

 

火神の言葉に応える黒子。そして、試合は再開される。

 

 

「…」

 

ボールを運ぶ新海。先程までは動揺が見られたが、黒子が入った事で落ち着きを取り戻している。

 

「ようやく来たッスね、黒子っち。けど、無駄ッスよ。黒子っちが入っても、何も変わらない。黒子っち対策はある。それに、黒子っちは――」

 

「それはどうかな? お前は改めて味わう事になるぜ。黒子の恐ろしさをな」

 

そう言って、火神は不敵に笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

『ビ―――――――――――!!!』

 

 

試合終了のブザーが鳴り響く。

 

『…』

 

呆然とする海常の選手達。

 

 

試合終了

 

 

誠凛 76

海常 72

 

 

「なん…なんスか、それ…」

 

それは黄瀬も同様であった。

 

「…今までの黒子っちとは違う。それにあれは――」

 

目を見開く黄瀬。

 

「これが新たな僕の姿です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

決勝への最後の椅子をかけた準決勝。

 

その最後の椅子に腰を掛けたのは、夏の覇者、誠凛高校。

 

 

 

決勝戦…

 

 

 花月高校 × 誠凛高校

 

 

 

共にキセキの世代を擁するチームを全て降したチーム。

 

そのチームが明日、頂点をかけ、ぶつかる……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





準々決勝をあれだけのボリュームと話数でお届けしておきながら、準決勝は共に1話ずつ。ホントに申し訳ないです…m(__)m

当初のプロットでは、誠凛が陽泉と海常を降し、決勝に進ませるつもりだったんですが、現誠凛の戦力で、特に陽泉をどう勝たせればいいかが思い付かず、結局海常と潰し合う形になってしまいました。夏から遡っても誠凛は半ば棚ぼた状態であり、誠凛ファンやさっと雑に終わらせる形となってしまい、海常ファンの方々には申し訳ないです…(;^ω^)

言い訳をすると、決勝へのネタバレを防ぐ為とだけ、させていただきます。

およそ、現実時間で2年前から始まった県予選及びウィンターカップも遂に決勝。プロットの骨組みは出来ているんですが、細かい装飾がまだなので、これからしっかり固めたいと思います。最後が盛り上がらない展開だけは避けたい…(T_T)

感想アドバイスお待ちしております。

それではまた!
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