投稿します!
祝、200話!!!
総数話的にはこれで201話ですが、遂に200話の大台に乗りました…(^_^)/
それではどうぞ!
試合終了
誠凛 76
海常 72
『誠凛の逆転勝ちだ!』
『まさか、キセキの世代が決勝の舞台に1人もいないとは…』
『だが…!』
『決勝戦に辿り着いた誠凛、花月共に、キセキの世代の全員を降したチーム!』
『これは盛り上がる事間違いなしだ!』
『すぐに取材に行くぞ!』
試合の撮影をしていた記者達が一斉に動き出した。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
「76対72で、誠凛高校の勝ち。礼!」
『ありがとうございました!!!』
試合が終わり、センターサークルに集まった両チームの選手達が整列をし、礼をし、それぞれ選手達が握手を交わす。
「はぁ~~! 負けちまったッス」
火神の下へ歩み寄った黄瀬が大きな溜め息を吐く。
「手放しには喜べねえよ。一昨年は怪我で、今日は、陽泉のおかげで勝てたようなもんだからな」
複雑な表情で返す火神。
「こっちも勝てると思ったんスけどね。て言うか、第4Q中盤、まさか、あそこから黒子っちにひっくり返されるとは思わなかったッスよ」
チラリと視線を火神の横に向ける。
「紙一重でした。正直、ヒヤヒヤしました」
視線を向けられた黒子が苦笑しながら言う。
「黒子っちの対策はバッチリしてきたつもりだったッスけど、…甘かったッスよ」
「このウィンターカップは僕達にとって、最後の大会です。それに、先輩達の悲願を果たす為にも、僕だけ変わらないままでいられませんから」
「なるほど…、そうッスよね」
そう言って、黄瀬は肩を竦める。
「決勝は覚悟した方が良いッスよ。強いッスよ。花月は」
右手を差し出す黄瀬。
「言われるまでもねえよ」
その差し出された右手を握る火神。
「無様に負けないでほしいッス。俺達に勝ったんスから」
「もちろんです。絶対に優勝します」
黒子とも握手を交わした。
「それじゃ2人共、また何処かで。次は負けないッスよ!」
笑顔でそう告げ、黄瀬はベンチに向かって歩いていった。
「何度戦っても、恐ろしい奴だよ黄瀬は」
「はい」
昨日の激闘の消耗を引きずり、半ばハンデを背負って戦った海常。そのハンデを突く戦いをしながら紙一重の勝利で終わったこの試合。
「これで後1つだ。次が最後、高校最後の試合だ。絶対勝とうぜ」
火神が右拳を突き出す。
「はい!」
その拳に、黒子が拳をコツンと突き合わせた。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
『…っ』
試合に敗北し、悔しさと悲しみに暮れる海常の選手達。
「…ふぅ」
一息吐いてベンチに腰掛ける黄瀬。
「…っ」
首からかけたタオルをきつく握りしめる。
「(負けた…。笠松先輩や早川先輩から託された夢を、叶えられなかった…!)」
悔しさが込み上げ、身体が震える。
海常に入学し、世話になった先輩達が目指し、しかし届かず、託された全国制覇の夢。後2つの所で届かなかった。
「…っ!」
自身の不甲斐なさから右拳を振り上げ、太腿へと叩きつける。
――スッ…。
「…っ」
振り下ろそうとした時、右手首を掴まれ、阻まれる。
「まだ終わっとらん。ワシらにはまだやる事が残っとる」
いつの間にか後ろに立っていた三枝が黄瀬の手首を掴んでいた。
「そう…ッスね…」
三枝が窘め、そっと手首から手を放すと、黄瀬は力なく拳を下ろした。
まだ試合は残っている。共に明日、同じく準決勝で敗退した田加良高校を相手に3位決定戦が行われる。だが、今となっては黄瀬に何の感慨もない。
「勝って終われるチャンスが残っとるだけ、ワシらはまだ幸運じゃ。せめて、有終の美を飾らんとな」
上を向きながらそう言葉を続ける。座ってる黄瀬からはその表情は窺い知る事は出来ない。だが、察する事は出来てしまう。
黄瀬は思い出す。2年前のウィンターカップも同じ場所で同じ相手に負けた。その時の主将である笠松は、秀徳を相手に、黄瀬を欠いた状況で皆を奮い立たせ、堂々と戦った事を…。
「…っ」
自身の頬を2回、パンパンと叩き気持ちを切り替えると共に気合いを入れ直し、立ち上がる。
「皆、まだ明日の3位決定戦が残ってる。気持ちを切り替えるッスよ。最後の試合、勝って終わりにするッスよ!」
出来るだけ明るく見えるよう、皆を鼓舞する黄瀬。
『…っ』
最後、と言う言葉に胸を詰まらせる選手達。黄瀬を始めとした3年生はこのウィンターカップが高校最後の試合となる。今日の試合に負けてしまった為、もう、次はない。
「…はい! 絶対に勝ちましょう!」
「決勝の試合を食う程の試合にしてやりますよ!」
優勝する最後のチャンスを失った3年生達。その悔しい気持ちを汲んだ次世代の小牧と末広がその檄に応える。
「その意気だ。負けたのは無念であったが、まだ終わった訳ではない。気の抜けた試合などワシが許さん。明日の試合も全力で臨むぞ」
『はい!!!』
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
「すいません! もう1枚お願いします!」
パシャパシャと焚かれるフラッシュ。現在、花月は、急遽決まった雑誌の取材を受けている。
「(まさか本当に、彼らがここまでたどり着くとは…)」
シャッターを切る記者がファインダー越しに空と大地を覗く。
2年前の全中大会決勝戦の取材の折に見つけた2人の逸材。無名の中学校に所属し、あの帝光中の4連覇を阻止し、栄光を掴んだ空と大地。あの全中決勝で2人に魅入られ、追い続けた若手の記者。2人が高校に進学した最初のインターハイで優勝を果たしたが、三杉誠也や堀田健の力によるものが大きく、空と大地に実力は懐疑的な意見が多かった。その後のウィンターカップ。三杉と堀田を欠いた花月高校の注目度は低く、誰もがキセキの世代を擁するチームには勝てないだろうと予想していた。だが、花月はその予想を覆し、秀徳を破り、桐皇を後一歩の所まで追い詰めた。翌年のインターハイでも快進撃は止まらず、陽泉、海常を打ち破り、洛山には敗退したものの、その実力を示した。そしてこのウィンターカップ。去年の冬と今年の夏に敗れた桐皇、洛山にリベンジを果たし、決勝の舞台に足を踏み入れた。
「(夢のようだ。あの時、感じた直感を信じて彼らを追って良かった…!)」
記者の注目選手が大舞台に辿り着き、感動のあまり、思わず込み上げるものを抑えるのであった。
「お疲れの所、申し訳ありません。明日は決勝を控えておりますので、インタビューは手短に致しますので」
「お気遣いあざっす」
空が返事をする。
「では、ここまでで1番印象に残ってる試合は?」
「うーん…」
質問され、顎に手を当てて考える空。
「キセキの世代がいるチームとの試合は基本そうだけど、やっぱ、今年の夏の準決勝の洛山戦と、去年の準々決勝でやった桐皇戦かな」
「…おや、勝った試合ではないのですか? 両方共負けた試合のようですが…」
以外な回答に思わず聞き返す記者。
「試合で勝たなきゃいけないのは当たり前だからね。俺の場合、どうしても、悔しい思いをした試合が印象に残っちゃうんだよね」
「なるほど…、では、次の質問です。明日の決勝戦の抱負をお聞かせください」
「もちろん勝つよ。相手にとって不足なし!」
「ありがとうございます。…次に綾瀬君。決勝の相手である誠凛高校。ズバリ、注目している選手は?」
別の記者が今度は大地に質問する。
「誠凛高校の選手は全員、優れた資質を選手ばかりですので、全員に注目しております。…ですがやはり、その中でも火神大我さんを意識してしまいますね」
誠凛の選手、全てを挙げる中、強いて火神の名を挙げる大地。
「ありがとうございます」
その後も、選手1人ずつに質問をしていく記者達。指名された各選手がその質問に答えていく。
「ありがとうございました! 今日はお疲れの中、ありがとうございます。では取材はこれで――」
「――あー、私からも質問いいかな?」
取材を終了しようとしたその時、40代程の1人の男性記者が遮るように前に出て手を上げた。
「何ですか?」
空が了承の返事をする。すると記者はニヤニヤとしながら質問を始める。
「では…、高校バスケと言えば、今やキセキの世代の名は有名だ。ですが、残念な事に、今年のウィンターカップ決勝にはそのキセキの世代が1人もいない。SNS等を見ても、『決勝でキセキの世代同士の試合が見たかった』や、『決勝は消化試合』、はたまた、『キセキの世代不在の低レベル争い』なんて声も上がってるんですが、その事についてどうお思いです? やっぱり、彼らのファンに対して引け目とか、申し訳なさとか、あったりします?」
『…っ』
ニヤニヤとしながら質問をする記者。その質問に、今まで和やかであった空気が一変し、ピリッとしたものに変わる。
「(…ハァ、やっぱりこういうのもやってきたか)」
胸中で嘆息する記者。
記者とて、全員が好意的な者ばかりではない。中にはこう言った、面白い記事=失言やゴシップと言う考えを持つ記者もおり、このような礼儀知らずな質問を投げかける記者もいる。本来ならこのような…ましてや、学生スポーツの選手に対してこのような質問をぶつける記者は淘汰されるべきなのだが、彼らの書く記事に対して一定の支持層がいるので、このような記者はいなくならず、対象の知名度が上がれば、自ずとこのような記者がやってくる機会や可能性も高くなるのだ。
「引け目とかそういうのは一切ないな。俺達は正々堂々、力の限り戦ったし、キセキの世代だってそれは同じだからな」
特に気にする事無く質問に答える空。
「ハハッ、そうだよねー。負けた彼らが悪いんだから、そんな事言われても困るよねー。全ては期待外れだった彼らが悪い。そういう事だよね?」
表情をさらにニヤニヤとさせながら質問を重ねる記者。
『…』
失礼極まりない、死闘を繰り広げたキセキの世代に対して敬意も欠片もない質問に花月の選手達も嫌悪感を覚える。
「(同業ながら、聞くに堪えないな…)」
それは件の記者も同様であった。
明らかな拡大解釈で回答を悪い方に捉えているのは明白。この記者の狙いは怒りの感情を煽ってその状態での言動を記事にするのが狙いだ。
何か助け船を出そう…、記者がそう考えていると、空が口を開く。
「期待外れかどうかは、戦った俺達はもちろん、試合を見に来ていた人には分かっているはずだから、わざわざここで答えるまでもないかな。…ところでおじさん、今回のウィンターカップの試合は見に来た事ある?」
空がその記者に逆に質問をした。
「…いえ、私は普段は日本や海外のプロリーグが専門なので…」
記者の回答を聞くと、空はニコリと笑い…。
「だったら、明日の決勝、見に来てくれよ。そこにおじさんの聞きたい答えが全部ある。試合が終わった時、さっきおじさんが言ってた、ファンってのが言ってた感想を言う奴は1人もいないはずだ。だよな? 大地」
大地の方へ視線を向けた空がウィンクをしながら尋ねる。それを受けた大地はニコリと笑い…。
「ええ。明日は私達と誠凛高校の皆さんとで最高の決勝戦をお見せいたします」
「そのうえで、俺達が勝つ!」
拳を突き出しながら空がそう締めくくった。
『おー!』
空の堂々たる言葉に記者陣から思わず感嘆の声が上がった。
「…回答、ありがとうございました」
目当ての回答は得られず、また、取材の空気も変わってしまった為、記者はつまらないと言わんばかりの顔をしながら質問を終わりにし、居心地の悪さを覚えたのか、その場から去っていった。
「それでは、以上で取材の方を終わりします。本日はお疲れの中、ありがとうございました!」
こうして、花月高校の取材が終了した。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
「ええ啖呵やったで! 見たか、あのおっさんの顔。圧巻やったで!」
記者たちが撤収作業をしている中、天野が空の首に腕を回していた。
「(本当に、大きな存在になったものだ)」
機材を片付けながら、花月の選手達の中の空と大地に視線を向ける記者。
「(…だが、きっとこれで終わりじゃない。彼らはもっと大きな存在になる。日本のバスケを変えてしまう程に…)」
そんな期待を抱いた記者は、おもむろにカメラを構え、2人の姿をシャッターに収めたのだった…。
※ ※ ※
「さあ、決勝戦に向けてのミーティングを始めるわよ!」
リコが胸の前で腕を組みながら告げる。
準決勝が終わり、外は既に日が沈んだ時分。誠凛高校の監督、選手達が火神が住んでいる住居に集合した。
「まずは、今日はお疲れ様! 皆、よくやってくれたわ!」
リコが無事、海常に勝利した選手達に労いの言葉を贈った。
「ホントお疲れだぜ。監督はえっらそうにベンチ踏ん反り返ってたけど、黒子さん出てなきゃマジでやばかったじゃねえかよ」
唇を尖らせながら池永が抗議の声を上げる。
「あのね、監督の私がベンチでオロオロしてたらそれこそ問題でしょ。例えどんな状況でも堂々している事で相手にプレッシャーを与えられる事もあるのよ」
「へーへーそうですかー」
リコの返事に池永は小指で耳を掃除しながら聞き流していた。
「…監督、そろそろ本題に入らないッスか?」
「…そうね。それじゃ、始めるわよ」
話が脱線しそうになっている気配を察した火神が口を挟み、DVDプレーヤーを操作する。
『おぉぉぉぉー--っ!!!』
DVDが再生させると、そこには花月の試合が映し出された。
「1人1人スカウティングしていくわよ。まずはシューティングガード、生嶋奏」
――ザシュッ!!!
映像では、生嶋から放たれたスリーがリングを潜り抜けた。
「彼の武器は何と言っても、正確無比のスリーよ」
「…凄い、何でバランスも乱れてリズムもバラバラなのに外れないんだ…」
リングの中心を的確に射抜いたスリーに引き攣りながら驚く福田。
「それには同意ね。ブロックをかわす為にタイミングやリズムをずらしたり、後ろや斜め横に飛んだりもするわ。それでも外れる気配が微塵もない。彼のスリーは精度だけなら緑間君並かそれ以上。つまり、打たれた終わり。そう考えるべきよ」
「スリーは確かにすげえけど、ディフェンスは大した事ねえな。身体能力も高くねえし、狙い目じゃね?」
思った感想を口にする池永。
「一理あるわ。花月が想定通りのスタメンで来た場合、
ここでリコは当日、生嶋をマークする事になる朝日奈を呼ぶ。
「序盤は朝日奈君にボールを回していくわ。得意のプレーでガンガン攻め立ててちょうだい」
「はい」
「ディフェンスでも、とにかくスリーを最優先に止めてちょうだい。最悪、中に侵入されても構わないから。皆も、スクリーンの声掛けを忘れないように。いいわね」
『はい!』
「次に、センター、松永透」
――バス!!!
映像では松永がローポストからステップで相手を翻弄してゴール下に侵入し、決める。
「彼の特徴はとにかく、プレーの幅が広い事よ」
映像では、松永がローポストから離れ、相手と向き合う形でボールを受け取り、ジャブステップを踏んで相手を崩した後、相手を抜きさった。
「鉄平の話じゃ、もともとはスモールフォワードだったみたいだし、県予選でも、スモールフォワードで起用が多かったみたいだから、センター以外の動きもこなせるわ」
「…」
松永の動きを、明日、マッチアップする事になる田仲が注意深く観察する。
「田仲君。明日はゴール下以外でディフェンスをする機会が増えるわよ。今日の試合を思い出して。彼の動きは三枝君と似ているから、今日の経験を生かしてちょうだい」
「はい!」
「次に、パワーフォワード、天野幸次」
――バシィィィッ!!!
映像で、天野がリバウンドを制している。
「彼は典型的なロールプレーヤーよ。オフェンスではスクリーンを駆使して味方をフリーにしたり、中からパスを中継してボールを回していくのが基本運用ね。もちろん、得点能力がないわけじゃないから、その点は注意して」
『…』
「けど、彼が1番真価を発揮するのはディフェンスとリバウンドよ。ディフェンスでは、1ON1でまともに得点出来たのはキセキの世代と無冠の五将、後は、氷室君と三枝君ぐらい。あの青峰君も、エンジンがかかる前と言え、ある程度、止められているわ。後は、リバウンド」
天野がゴール下でスクリーンアウトで絶好のポジションを確保し、リバウンドボールを掴み取っている。
「とにかくオフェンス・ディフェンス問わず、リバウンドを取りまくるわ。1試合平均、14.3のリバウンド数から分かるように、花月のアキレス腱的な存在よ」
「じゅ、14.3…」
その数字に福田の表情が引き攣る。
「彼と純粋なリバウンド勝負をしてリバウンドを奪えたのは紫原君と三枝君だけ。まともにリバウンド勝負をしたらうちの方が分が悪いわ」
『…っ』
ゴクリと喉を鳴らす音が響く。
リバウンドは試合の勝敗にも直結する重要なもの。リバウンドを制されると当然、不利になる事は必然。
「…どうすれば」
思わず降旗の口から弱気な口調で尋ねる。
「勝負しなければいいのよ」
「…えっ?」
リコの口から出た言葉に、河原から驚きの声が上がる。
「リバウンドになったら、とにかく彼を抑え込んで飛ばせない事だけに力を注いで、他でリバウンドを奪い取ればいいのよ。天野君とリバウンド勝負をする事になったら、ボールは無視してフルフロントで天野君をゴール下から追い出しなさい」
そう言って、リコはリモコンを操作する。
「控えの選手もなかなか粒揃いよ」
リモコンの早送りを止める。
「竜崎大成君、主に、神城君のバックアップのポイントガードする事が役割だけど、
再びリモコンを操作するリコ。
「次に、室井総司君。花月のバックアップセンターよ。彼の特徴はとにかくその規格外の身体能力よ。パワーはあの紫原君のポストアップに耐えられる程、スピードもジャンプ力あり、スタミナも豊富。元陸上選手なだけあって、身体能力だけならキセキの世代と同等以上に張り合えるレベルよ。バスケキャリアが短いからボールを持ったプレーは拙いけど、ボールを持たないプレーの質はもう全国レベル。ゴール下が主な主戦場だから、決して油断しないように」
解説を終え、リモコンを操作。
「後は、菅野肇君は、ドライブ技術に長けたチームのムードメーカー的存在。帆足大典君は味方にスクリーンをかけてフリーの選手を生み出し、自らは外からスリーで決める。去年までは正直、スタメン頼りのチームである事が否めなかったけど、今年の花月は、コート上でしっかり役割を担える選手が揃っているわ」
控えの選手の解説をしたリコ。
「さて、ここからがメインディッシュよ」
ニコリと笑みを浮かべたリコ。
「メインディッシュの1人、スモールフォワード、綾瀬大地」
――ザシュッ!!!
映像では、大地がフェイダウェイでディフェンスをかわしながら得点を決めている。
「彼の武器は何と言っても、青峰君相当のスピードと、そのスピードの勢いを一瞬で殺してしまう強靭な足腰にドライブと変わらないスピードで行えるバックステップ。前後の緩急で相手を揺さぶってくるわ」
「…っ、マジでどんな足腰してんだ。普通、あのスピードでドライブしたら一瞬で止まれないぞ」
映像に注目ている朝日奈が引き攣りながら呟く。
「仮に止まれても足腰を痛めるだけよ。現に、夏に彼の技を盗もうとした灰崎君も痛めていたし、黄瀬君もコピーを避けていたぐらいだしね」
リコが続けて解説する。
「とにかく彼の強靭な足腰で行われる前後の緩急が厄介極まりないわ。それこそ、キセキの世代でさえ出し抜ける程の代物なのだから」
驚異的なスピード。そのスピードから繰り出される前後の緩急。左右や上下の動きはバスケでは珍しくないが、前後の動きは、ステップバックなどでシュートスペースを創り出す為に用いられる事があるが、それでも高校生レベルではなかなかお目にかかれるものではない。
「以前は前後の緩急を駆使したスラッシャータイプの選手だったけど、陽泉戦の途中からスリーも積極的に打つようになったわ。緑間君のようにクイックリリースで打って来るし、後はバックステップとステップバックを踏んだ足での片足でのフェイダウェイで打ってきたり、スリーポイントラインから2m離れた所からでも決めた事もある。もともと資質はあったけど、今年の陽泉戦の途中から本格的に
テレビ画面に、青峰をかわして決める大地の姿が映る。
「…火神君。綾瀬君のあなたに任せるわよ」
「うす。任せて下さい。って訳だから、我慢しろよ池永」
「わーったよ。いちいち聞くんじゃねえよ」
リコに大地に相手を託された火神。不満そうな表情の池永に釘を刺しながら返事をする。
「最後に、ポイントガード、神城空」
――ダムッ!!!
映像では、空が一瞬の加速で相手を置き去りにする程のスピードで一瞬で相手を抜きさる。
「…はえーな。映像からでも分かる。あのスピードと加速力はマジで青峰以上だ」
青峰と何度も対戦経験がある火神がそう評価した。
「花月のオフェンスは神城君が起点となるわ。神城君が中に切り込み、とにかく得点を決めまくる。自身にマークが集まればそこからパスが出される。…去年までは正直、パスが出せるスコアラーって言う印象だったけど、今では一流のポイントガードて称しても差し支えないわ。それこそ、あの赤司君とナンバーワンポイントガードを争える程に…」
『…っ』
リコの評価に対し、異論や反論する者はいない。
「…新海君」
ここでリコが新海の名を呼ぶ。
「火神君が綾瀬君の相手をする以上、神城君の相手は基本、あなたがする事になるわ。いざとなったら池永君とダブルチームで当たらせるけど、それは本当にどうしようもなかったらよ。…やれるわね?」
キーマンである空の相手を一任された新海。リコの口調も自ずと重いものとなる。
「任せて下さい。止めて見せます」
はっきりと、それでいて力強い口調で新海は返事をした。
「止められなきゃ俺が代わってやるよ」
「余計なお世話だ」
茶々を入れる池永に対し、強めに断る新海。
「花月はオフェンス特化のチームである事は間違いないけど、ディフェンスも脅威よ。先の天野君もそうだけど、何より脅威なのは…」
映像では、スクリーンを使って生嶋のマークを引き剥がした相手選手がスリーを打とうとシュート体勢に入る。すると空が一瞬で距離を詰め、シュートコースを塞いでしまった。
『…っ』
シュートコースを塞がれた相手選手だったが、すぐに空が外したマークの選手がボールを貰いに行き、そこへのパスに切り替える。
――バチィィィッ!!!
しかし、そのパスも、パスコースに割り込んだ大地によってスティールされてしまう。
「これよ。花月はとにかく神城君と綾瀬君のヘルプが速いのよ。もたもたシュート体勢を作っていたらあっと言う間に2人が飛んでくるわよ」
その言葉に偽りはなく、空と大地が目まぐるしく動いて相手のシュートチャンスを潰していく。
「後の脅威は速攻。相手のワンマン速攻は大抵、この2人が追い付いてしまうから通用しない。対して、相手側の速攻はこの2人のいずれかに走られたら正直、止めようがないわ。…つまり、花月には速攻が通じず、かつ、速攻に走られたら終わり。そして、この2人はこれだけの動きを1試合まるまる続けるだけのスタミナを擁しているわ」
『…っ』
誠凛選手達、全員の表情が曇る。ただでさえ、運動量が豊富なだけで厄介なのに、それを行うのがチームのキーマン、司令塔とエースなのだから。
「となると、明日の試合は今日の試合で海常がやったように、先行逃げ切りを図った方がいいって事ですか?」
降旗がおずおずと手を上げ、尋ねる。
スタミナが豊富と言う事は、疲労が溜まる終盤に強いと言う意味でもある。それまでに逃げ切るだけの点差を稼ぐ。と言うのが降旗の考え。
「…いえ、それはむしろ悪手よ」
しかし、リコはその提案を退ける。
「点を取りに行くと言う事はつまり、花月のペースで戦うと言う事でもあるわ。これまで、キセキの世代を擁するチームのほとんどが花月のペースに付き合わされて敗北したわ。つまり、花月とがむしゃらに点の取り合いをするのは危険よ」
秀徳を始めとして、海常も陽泉も花月のペースに付き合わされ、敗北した。桐皇は去年の冬こそ勝利したが、今大会でリベンジを果たされた。洛山も序盤こそ洛山のペースで戦い、翻弄したが、最後には花月のペースで戦って敗北した。
「うちも花月と同じ、オフェンス重視のチームではあるけれど、花月と違って人ではなくボールを動かすチーム。ハイペースの花月と同じ土俵で戦うのは危険よ。もちろん、点は取りにいくけど、それはあくまでもこちらのペースでの話。理想はこっちのペースに引き摺り込む事よ」
試合の基本方針をするリコ。それから更にミーティングは続く。
「具体的な話はこんな所ね。ここから更に花月の選手の深堀をしていくわ。…皆、試合後に疲れている所に申し訳ないけど、もう少し付き合ってちょうだい。皆も分かっているとは思うけど、花月はそれだけの相手なのよ。何と言っても、あのキセキの世代を擁するチーム、全てに勝っているのだから」
今や、高校バスケの代名詞とも言えるキセキの世代。花月は誠凛以外でそれを成し遂げた唯一の相手。
『…』
リコのお願いに、文句を言う者は誠凛の選手の中には1人もいなかった。
その後も、決勝に備えて、対花月のスカウティングは続いたのだった…。
続く
いやはやまさかの200話目に突入しましたよ…(>_<)
当初はここまでの長丁場になるとは思いませんでした。継続は力なりで文章力がアップしないのがあれですが…(;^ω^)
話は誠凛のミーティングだけで終わりましたが、花月もこの話でするとえらく長くなりそうだったので一旦切りました。次話でする予定ですが、もしかしたらカットするかも…((+_+))
当初のプロットでは、誠凛に陽泉と海常を撃破して決勝の辿り着かせる予定だったんですが、現誠凛のメンバーで、特に陽泉を、違和感なく勝つ試合内容が浮かばなかったんですよね…(;^ω^)
原作では途中でベンチに下がりはしましたが木吉がいましたし、マジでどうすればいいのか分からなかった。決勝の隠し玉をここで出す訳にも行かなかったので、泣く泣く海常と潰し合いをする結果となりました。正直、漁夫の利的な面も否めない事と思いますが、原作でもラスボスの洛山は秀徳しか戦ってませんし、誠凛は海常にプラスして灰崎のいる鳳舞とも試合してるので、…まあいっかっと…(>_<)
さてさて、これから決勝戦ですが、決勝が1番盛り上がらなかったと言う結果にならないようにしないと行きませんね。っと言うか、マジでなりそうで今からビクビクしています…(T_T)
…さあ、ネタ集めしますか!!!
感想アドバイスお待ちしております。
それではまた!