黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

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投稿します!

梅雨真っ最中ですが、晴れの日はもはや夏ですなー…(;^ω^)

それではどうぞ!



第202Q~開幕勝負~

 

 

 

「遂に始まるね」

 

試合開始目前、青峰と並んで座る桃井が声を掛ける。

 

「…」

 

青峰は返事をせず、ただただ視線をこれから冬の覇者を賭けて戦うコート上の選手達に向けていた。

 

「誠凛と花月、共に俺達を倒したチーム同士の試合だ。興味は尽きないな」

 

「別に、どっちが勝っても興味ないしー」

 

「行儀が悪いのだよ。駄菓子を食べ散らかすな」

 

その周囲には、赤司、紫原、緑間と、キセキの世代の3人の姿もあった。

 

 

『見ろよ、キセキの世代だぜ』

 

『うわマジだ。オーラ半端ねえ…!』

 

キセキの世代が集まった一角は一際異彩なオーラを放っており、周囲の観客達がざわついていた。

 

 

「…何でお前らと試合見なきゃなんねえんだよ」

 

「仕方がないだろ。何処も席は埋まっているのだからな」

 

観客達の視線を感じ取った青峰が顔を顰めると、緑間が溜息を吐きながら返した。

 

コート上では、センターサークル内に整列する。

 

「…皮肉なものだな」

 

間もなくティップオフ。その時、緑間がコートを見つめながら呟く。

 

「俺達、キセキの世代と呼ばれた者達がそれぞれ高校に進学した時、優勝するのは俺達のいる高校のどれかだと言われていた。だが、その集大成となる高校最後の大会の決勝の舞台に、誰1人として立っていない」

 

10年に1人の逸材と呼ばれたキセキの世代。キセキの世代を擁したチームは全て、優勝候補と評された。それ故、その自分達がこの決勝のコートの上に立っていない事に対し、自嘲気味に皮肉った緑間。

 

「今、決勝の舞台、たった1つの優勝の席を争っているのは、キセキの世代(俺達)を倒した俺達とは違う道、違う代から現れた新たなキセキ」

 

赤司がその後に続く。

 

「…どっちが勝つかな?」

 

詳細なデータを持つ桃井であっても、試合の結果予想までは出来ず、尋ねる。

 

「さあな。だが、有利なのは花月だろうな」

 

桃井の質問に、青峰が答える。

 

「司令塔とスコアラーに俺達と同格の2人がいる上、こいつらは終盤は特につえー。それにリバウンドもつえーからな。高さとフィジカル面で有利って言っても、曲がりなりにも陽泉に勝った花月が相手じゃ、大してアドバンテージにならねえだろうからな。ある程度は拮抗出来ても、終盤にトドメ刺されて終わりだ」

 

『…』

 

青峰に予想に、異論を挟む者はいない。

 

「…だがまあ、これは、テツがいなければ(・・・・・・・・)、の話だ」

 

その後にそう補足を加えた。

 

「誠凛がこの予想をひっくり返すとするなら、必ずテツがカギになる」

 

そう断言した。

 

「そう言えば、今日もテツ君はベンチスタートだね」

 

誠凛のベンチに座る黒子に視線を向ける桃井。

 

「当然の選択だろう。本来、黒子はスタメンで起用するより、流れを変える為にシックスマンとして起用するのが1番、黒子を生かせるからね。黒子をスタメンで使わざるを得なかった去年と違い、今年は主力が充分に育っているのだから無理にスタメンで起用する必要はない」

 

「なるほど…」

 

赤司の解説に納得する桃井。

 

「…これが大きな理由だろう。もっとも、今の黒子は起用するべきではない(・・・・・・・・・・・・・・・)けどね」

 

「…えっ? それってどういう――」

 

「――始まるぞ」

 

赤司の最後の言葉の理由が分からず、尋ねようとした桃井だったが、緑間の言葉で視線をコートへと戻した。コート上では、既に整列を終えた両選手達がジャンパーを残して散らばり、まさに試合が開始されようとしていた。

 

ジャンパーを務めるのは、花月は松永、誠凛は火神。審判は2人の間に立ち、交互に見据えた後にボールを構え、2人の頭上に高く放った…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「「…っ」」

 

ティップオフと同時にボールへと飛び付く2人。

 

 

――バシィィィッ!!!

 

 

ボールが最高点に達したの同時にボールが叩かれる。

 

「(くっ、高い!)」

 

ジャンプボールを制したのは火神。松永の遙か上でボールを叩いた。

 

「よし!」

 

新海がボールを掴み、誠凛ボールで試合が開始される。

 

「こっちだ、寄越せ!」

 

既に前へ走っていた池永がボールを要求。新海がボールを右手構えて振りかぶる。

 

「させっかよ」

 

その直前、空がパスコースを塞ぐように手を伸ばす。

 

「やはり来たか、大した反射速度だ」

 

そう言って、新海は振りかぶったボールを左手で抑え、パスを中断。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

「だが、その反射速度が命取りだ!」

 

直後にドリブル。空の脇の下からドリブル、後ろへと抜ける。

 

「ちっ」

 

咄嗟の行動が裏目に出て、思わず舌打ちをする空。

 

「行け!」

 

空の抜きさると、改めて前走る池永の縦パスを出す。

 

「ナイスパース!」

 

ボールを抑えると、そのままドリブルを開始し、フリースローラインを越えた所でボールを掴む。

 

「おらぁ!」

 

そのままリングに向かって飛ぶ。

 

「させませんよ!」

 

池永がリングに向かって踏み切るのと同時に追い付いた大地が池永とリングの間に割り込むようにブロックに飛んだ。

 

「あーはいはい、来てるだろうと思ってたよ」

 

リングに向かっていた池永はダンクを中断し、ボールを頭上にふわりと浮かせるように放った。

 

「開幕1発目は譲ってやるよ」

 

ニヤリを笑う池永。

 

「っ!?」

 

大地が目を見開く。そこには…。

 

 

――バチィッ!!!

 

 

池永が放ったボールを後ろから新たに現れた選手が右手で掴み取った。

 

 

『火神だ!』

 

『もう追いついた!』

 

ざわつく観客。

 

 

そこに現れたのは火神。池永がトスするように放ったボールを右手で掴み取った。高さもタイミングも充分。後はボールをリングに振り下ろすだけ。しかし…

 

「まだだぁっ!!!」

 

咆哮と共にまた新たに現れた選手が火神とリングの間に割り込むようにブロックに現れた。

 

 

『神城!?』

 

『今度は神城だ!』

 

『マジか!? あそこからもう追いついたのかよ!?』

 

驚きの声を上げる観客。空は先程、新海の縦パスのフェイクにかかって飛ばされてしまっていた為、普通なら追い付けるはずがない。しかし、空のスピードはそんな常識は通用しない。

 

 

「……っ!?」

 

ブロックに飛び、アリウープを阻止を計った空だったが、次の瞬間、その表情が驚愕に染まる。

 

「(うっそだろ!? いつまで飛んでやがるんだ!?)」

 

火神より後に飛んだ空。しかし、先に落下を始めたのは空だった。

 

「(言葉は理解出来てもいまいちピンとこなかったが、実際味わえば嫌でも分かる。これが、エアウォーク!!!)」

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

リングの目前から障害物()がいなくなり、火神は右手で掴んだボールをリングへと振り下ろした。

 

 

花月 0

誠凛 2

 

 

『うぉぉぉぉぉーーーっ!!!』

 

『いきなりアリウープキタァァァァァーーーーッ!!!』

 

決勝戦、最初の得点。その1発目が豪快なアリウープ。観客が割れんばかりの歓声に包まれた。

 

 

「ナイスキャプテン!」

 

「次は俺だからな」

 

新海と池永とハイタッチを交わす火神。

 

「挨拶代わりだぜ」

 

ディフェンスに戻る途中、空とすれ違い様に火神がニヤリとしながら呟く。

 

「…ハッ! おもしれー…!」

 

その言葉に、空は不敵な笑みを浮かべたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「よし!」

 

火神のアリウープによって先制点を取り、拳を握るベンチのリコ。

 

「文句なし、100点満点の奇襲よ!」

 

大満足のリコ。

 

「次は…」

 

視線を火神から空へと移す。

 

「花月の調子は、良くも悪くも神城君に引っ張られる傾向がある。決勝の大舞台で最初に派手な1本を決められてどう出るか…」

 

同じように派手な1本で決め返すか、それとも慎重に時間を掛けて確実に決め返してくるか…。

 

「最初のディフェンス。相手の出方と結果次第では、この試合の行く末を左右するかもしれないわよ」

 

リコは次の1本の行く末に集中したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「…」

 

ボールを受け取った空はゆっくりとボールを運ぶ。

 

「(来たな…!)」

 

フロントコートまでボールを運ぶと、待ち受けるのは新海。新海は空の前に立ち塞がると、気合いを入れる。

 

誠凛のディフェンスは、空に新海、生嶋に朝日奈、大地に火神、天野に池永、松永に田仲のマンツーマンディフェンス。

 

「(集中だ。(こいつ)は今やキセキの世代(先輩達)と対等にやり合える選手。俺より遙かに格上。少しでも気を抜けば即抜かれる…!)」

 

両腕を広げ、腰を落とし、息を深く吐きながら空の一挙手一投足に注視する。

 

「(こいつのプレーは全中決勝(あの日)以降、試合の度に何度も何度も見直した。動きや癖、タイミングの全てが正確に読み取れるように…)」

 

通過点に過ぎなかった中学最後の全中大会。その認識が、全中を落とし、その後の自分のキャリアと後輩達に影響を与える事になった。

 

「(俺の役目はこいつを止める事。スタミナなんて考えない。俺の全身全霊を以てこいつを止める!)」

 

鋭い目付きで空を睨み付ける新海。

 

「(…へぇ)」

 

新海からの決死の気迫がボールをキープする空にも伝わり、思わず胸中で感嘆の声を上げる。

 

 

――ダムッ…ダムッ…。

 

 

「(チェンジオブペース、仕掛けるのは――)」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

「(3つ目!)」

 

立ち止まってから3度目で仕掛けると読んだ新海。読み通り、空は仕掛け、新海は先回りするような形で腕を広げ、空の進路を塞ぐ。

 

「…っと」

 

仕掛け先を先回りで待ち構えられ、思わず声を上げる空。

 

「(次は…、クロスオーバーで切り返す!)」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

「っ!?」

 

次の読みも当たり、クロスオーバーでの切り返しを読まれ、目を見開く空。

 

「(読み通り…! タイミングも、事前の研究結果と実物の齟齬もない、行ける!)」

 

今日この日の為に研究に研究を重ねた空のプレー。空の動きを読み切り、先回り出来た事で、新海は手応えを感じた。

 

「…」

 

空は下がり、1度立て直しを図る。

 

「くー!」

 

ここで、エンドライン近くの右アウトサイドに展開していた生嶋がボールを貰いに後ろへと下がってくる。

 

「…ちっ」

 

空は軽く舌打ちをし、身体を僅かに生嶋の方へ向けると、パスを出した。

 

「っ!?」

 

次の瞬間、新海の目が大きく見開かれる。ボールは生嶋にではなく、新海の顔の僅か横スレスレを高速で通り抜けたからだ。

 

 

――バチィッ!!!

 

 

放たれたボールは矢のように一直線に斬り裂き、ゴール下にポジション取りをしていた松永の手に渡る。

 

「…えっ?」

 

自身の横を通り抜けたパスに反応出来なかった田仲が、茫然と声を上げ、振り返る。

 

 

――バス!!!

 

 

その時には松永がゴール下から得点を決めていた。

 

 

花月 2

誠凛 2

 

 

『うおぉぉぉぉっ!!! スゲーパスが来た!!!』

 

スリーポイントラインの外側から一気にゴール下まで通されたパスに驚きの声を上げる観客達。

 

 

「お返し」

 

不敵に笑いながら火神を指差し、空はディフェンスに戻っていく。

 

「…ごめん」

 

自身のマークを外してしまった責任を感じて謝る田仲。

 

「いや、今のは俺の責任だ」

 

そんな田仲をフォローを入れる新海。

 

「ドンマイ、田仲今のはしょうがねえ、切り替えろ」

 

続けて歩み寄った火神が田仲を励ます。

 

「新海」

 

「…はい」

 

試合の行く末を左右する最初のディフェンス。止める事が出来れば流れを掴めたかもしれない。それが出来なかった責任を感じ、叱責を覚悟する新海。

 

「上出来だ」

 

「…えっ?」

 

しかし、火神の口から放たれた言葉は、叱責ではなく、称賛だった。

 

「いや、俺、パスを許して――」

 

「だが、抜かせなかった。神城相手にそれが出来れば充分だ」

 

そう言って、ポンっと肩を叩いた。

 

「オフェンスだ。ゲームメイク、頼むぞ」

 

火神はフロントコートへと走っていった。

 

「火神さん…、よし!」

 

気落ちしていた新海だったが、火神の言葉で立ち直り、気持ちが切り替わる。

 

「新海」

 

スローワーとなった田仲が新海にパスを出す。

 

「…行くぞ」

 

新海はボールを運びを始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「おっしゃ来い!」

 

フロントコートまでボールを進めると、空が待ち受ける。

 

「…」

 

慎重にボールを運ぶ新海。空は付かず離れずの距離でディフェンスをしている。

 

「(さて、どう来るか…)」

 

新海のゲームメイクの予測を立てる空。

 

 

――ピッ!

 

 

ここで、新海はパスを選択。ボールは、ハイポストに立った朝日奈に。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

「…くっ!」

 

リングに背を向け、生嶋を背負う形でボールを受けた朝日奈はポストアップで生嶋を押し込みにかかる。

 

「やっぱり狙ってきよったか!」

 

天野が声を上げる。

 

生嶋は線が細く、激しいフィジカルコンタクトを得意としない。対して、中学までパワーフォワードのポジションを務めていた朝日奈にとって、ポストアップは得意な部類に入る。生嶋とのパワーのミスマッチを突いたオフェンス。事前のミーティングでも想定されていた。

 

 

――ダムッ…ダムッ!!!

 

 

パワーの差に加え、不慣れなポストアップのディフェンスに、生嶋はみるみる押し込まれていく。ローポスト付近まで押し込んだ所で朝日奈はボールを掴み、フックシュートの体勢に入った。

 

「させん!」

 

ここでヘルプに飛び出した松永がブロックに飛び、シュートコースを塞ぐ。

 

「…」

 

朝日奈は松永がブロックに来ると、振りかぶったボールをリングにではなく、僅か横へと落とした。そこへ走り込んだ新海がボールを掴む。

 

「打たせねえ!」

 

すかさず目の前に空が回り込む。

 

「残念だったな」

 

ボールを掴むのと同時に新海がノールックビハインドパス。ボールはコートの右隅に移動した火神の下へ。

 

「…っ、させません!」

 

スリーを警戒した大地がすぐさま距離を詰める。

 

 

――ピッ!

 

 

しかし、火神はスリーを打たず、ボールをキャッチしてすぐにボールを左方向へと放った。

 

「ナイスパース!」

 

ボールは、右アウトサイド45度、ウィングの位置に移動していた池永へ。

 

「あかん!」

 

田仲のスクリーンに捕まっていた天野は対応出来ず。

 

「っだ! くそっ!」

 

次に近い位置にいた空が慌ててチェックに向かう。

 

「もう遅ぇ!」

 

空がブロックに来る前に池永はスリーを放った。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

放たれたスリーはリングを潜り抜けた。

 

 

花月 2

誠凛 5

 

 

「ハッハッハッ! ダンクも良いが、スリーも悪くねえな!」

 

ニヤリと笑う池永。

 

「…そういや、あいつ、外もあるんだったな」

 

基本、ダンクやダブルクラッチなど、リングに近い場所で得点が多かった印象の池永だったが、ここ2試合でスリーも打っていた事を思い出す空。

 

「ごめん、僕のせいだよね?」

 

「えーえー、あれはしゃーない。もともと想定しとったしのう」

 

謝る生嶋に対し、天野は手で制す。

 

「やはり、一筋縄では行きませんね」

 

「せやな。主力の大半は空坊や綾瀬と同じ2年生、去年は基本、ベンチ要因やったが、全員が全中経験者や。キャリアもあるしそれなりに修羅場も潜っとる」

 

大地、天野共に、誠凛の強さを痛感する。

 

「どうする?」

 

松永が尋ねる。

 

「んなもん、決まってんだろ」

 

空がニヤリとしながら視線を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

ボールを運ぶ空。

 

「…」

 

フロントコートまでボールを進めると、集中力を高めた新海が待ち受ける。

 

「気合い充分だな。それで最後までもてば良いけど」

 

「余計なお世話だ。お前こそ、パスで逃げないで、いつものように自分で仕掛けたらどうだ?」

 

互いにトラッシュトークを交わす。

 

「…ハッ! 望み通り、やってやるよ」

 

1歩足を踏み出した空。

 

「(…来るか!?)」

 

全神経を空の動きに集中させる新海。

 

「…っと、言いてえが、生憎と、俺は司令塔なんでね。その役目は、…任せるぜ」

 

 

――ピッ!

 

 

そう言って、空はパスを出した。

 

 

『おっ! まさかこれは!?』

 

『キタキタキタ!』

 

『待ってました!』

 

ボールの行き先に、観客達が胸を躍らせる。

 

 

「来たか。インターハイ前の合宿から、どれだけ強くなったか、見せてもらうぜ」

 

「…ええ、お見せします。花月を優勝させる為に今日まで精進してきた私の力を…!」

 

大地にボールが渡ると、火神が立ちはだかった。

 

『…』

 

同時に、花月の選手達が動きを見せる。

 

「なっ!?」

 

「これは…!」

 

これに、田仲と朝日奈が思わず声を上げる。左45度付近のスリーポイントライン手前でボールを持った大地。他の4人は右側へと寄ってスペースを空けたのだ。

 

「アイソレーションだと」

 

ボソリと呟く新海。

 

「…へっ!」

 

目の前の空はニヤリと笑う。

 

「調子に乗りやがって、火神は俺でも相当手こずるレベルだってのによ」

 

「せやったら楽そうやけどのう」

 

「んだとコラァ!?」

 

鼻を鳴らす池永に天野がツッコミ、それに対して池永が怒りを露にする。

 

「…」

 

「…」

 

大地はボールを小刻みに動かし、火神を牽制し、隙を窺う。

 

 

――キュッ!!!

 

 

右足を大きく踏み込み、ボールを頭上から回すように下へと降ろす。

 

「(来るか!?)」

 

ドライブを警戒した火神が僅かに下がって距離を取る。

 

 

――スッ…。

 

 

直後に大地は再びボールを頭上に掲げ、シュート体勢に入る。

 

「(ちっ、打つのか!?)」

 

慌てて火神はシュートチェックに向かう。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

しかし、これもフェイク。大地は中へと切り込んだ。

 

「(速ぇ! だが、初速は青峰程じゃねえ、追い付ける!)」

 

辛うじてブロックを踏みとどまった火神はドライブを仕掛けた大地を追いかける。

 

 

――キュキュッ!!!

 

 

直後に大地は急停止。バックステップで高速で元居た位置まで下がる。

 

「っ!?」

 

目を見開いた火神。すぐに反転して下がった大地との距離を詰める。

 

大地は直後にボールを掴み、ステップバックでさらに後ろへと下がり、ステップバックを踏んだ足でそのまま後方へと飛びながらシュート体勢に入り、ボールをリリースした。

 

「くっ!」

 

ブロックに飛び、ボールに手を伸ばした火神だったが、大地は素早くボールをリリース。火神のブロックは、紙一重でボールには届かず…。

 

 

――バス!!!

 

 

ボールはバックボードに当たりながらリングを潜り抜けた。

 

 

花月 5

誠凛 5

 

 

『おぉぉぉぉー--っ!!!』

 

『出た! 綾瀬のバックステップからの片足フェイダウェイ!!!』

 

『しかもスリー! あのクイックリリースで何で決められるんだよ!?』

 

大地の大技に観客が沸き上がる。

 

 

「良い音だったよ、ダイ!」

 

「ありがとうございます」

 

駆け寄って来た生嶋とハイタッチを交わす大地。

 

「(あのスピードのドライブを一瞬で…、それだけでも信じられねえのに、そこからそのドライブと変わらないスピードで下がってフェイダウェイとクイックリリースを組み合わせたスリー。しかも、バンクショットのおまけ付き。夏の合宿の時とはマジで別人だ…!)」

 

ディフェンスに戻る大地に視線を向ける火神。

 

「おい、火神、大丈夫なんだろうな!?」

 

火神に駆け寄る池永。

 

「たりめえだろ。俺の心配なんざ100年早えよ」

 

そんな池永をあしらう火神。

 

「(マジでキセキの世代(あいつら)並みに苦労しそうだぜ。しかも、他に同格の神城までいやがるんだからな。…とは言え)」

 

ここでフゥッと一息吐く。

 

「今更だよな。こいつらは、俺達が倒した時より強いキセキの世代と戦って勝ったんだからな」

 

夏の合宿の時のイメージが抜けてなく、認識が甘かった火神。改めて花月を強敵と再認識したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

誠凛のオフェンス…。

 

「新海、こっちだ!」

 

新海がボールを運ぶと、火神がボールを要求。

 

「もちろん、頼みます!」

 

躊躇わず、新海は火神にパスを出した。

 

 

『今度は火神だ!』

 

『やり返せ!!!』

 

火神にボールが渡ると、再び観客が沸き上がった。

 

 

「恐ろしい選手になったもんだ。そんじゃ、次は俺の番だ」

 

「止めて見せます」

 

宣言する火神。火神の前で立ち塞がる大地が答える。

 

「…」

 

「…」

 

先程の大地がしたように、火神が右足で小刻みにジャブステップを踏み、ボールを動かしながら大地を牽制する。

 

 

「曲がりなりにも綾瀬は黄瀬や青峰を止めている。正直、青峰ようなアジリティや黄瀬のようなバリエーションもない火神に綾瀬は抜けるのか…」

 

観客席の元桐皇の若松がひとつの懸念をする。

 

「…正直、平面での1ON1は5分5分って所だろうな」

 

2人の勝負をそう分析する青峰。

 

「まぁ、火神(あいつ)なら、そもそも抜く必要もねえだろうがな」

 

 

「っ!?」

 

火神は大きくステップを踏んで僅かに大地とのスペースを創ると、そこから後ろに飛びながらシュート体勢に入る。

 

「…っ」

 

それを見て大地がブロックに飛ぶが…。

 

「…くっ!」

 

懸命に手を伸ばす大地だったが、ボールにその手が届かず…。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

放たれたボールはリングを潜り抜けた。

 

 

花月 5

誠凛 7

 

 

『あっさり決め返した!!!』

 

『いつ見ても高ぇ!!!』

 

打点の高い火神のジャンプシュートに観客が沸き上がる。

 

「ほう…」

 

「火神も考えているようだな」

 

今のプレーに、青峰、緑間が頷く。

 

「どうしたのー? 別にただのフェイダウェイじゃん」

 

2人のリアクションに紫原が尋ねる。

 

「紫原からすればそうだろうが、綾瀬からすれば事情が違う」

 

2人に代わって赤司が説明を始める。

 

「火神と綾瀬の間には、身長差以上に高さのミスマッチがある。今のプレーは確実に綾瀬の脳裏に刻まれた。以降、火神がボールを持ったら常にあのフェイダウェイを警戒しなければならない」

 

「…」

 

「高さとそれを生かした技を見せつけ、楔を打つ事で主導権を奪いに来た。今後、火神からすれば攻めやすく、綾瀬からすれば守りにくくなる」

 

「ふーん、なるほど」

 

説明を受けて紫原は頷いた。

 

「最近のかがみんに良く見られるパターンだね」

 

桃井も自身のノートを見ながら補足する。

 

 

「…」

 

ディフェンスに戻る火神に視線を向ける大地。

 

「どうよ、火神さんは?」

 

そんな大地の下へ歩み寄った空が尋ねる。

 

「見ての通り、ですよ」

 

苦笑する大地。

 

「俺もさっき味わったが、あのジャンプ力はマジでヤベーな」

 

パワー、スピード、テクニックなら打てる手立てもあるし、実際どうにかしてきた。…だが、高さだけはどうにもならないのが現実。

 

「…ま、先は長いんだ。今は点取る事を考えようぜ。点さえ取れりゃ、とりあえず離される事はねえ。お前にボールを集めっから頼むぜエース」

 

拳を握ってコツンと軽く胸を叩く空。

 

「えぇ、任せて下さい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

その後も、エース対決が続く。

 

 

――キュキュッ!!!

 

 

早々にボールを受け取った大地は、ドライブと同時に急停止。重心を後ろに下げる。

 

「(バックステップか!?)」

 

火神はバックステップを警戒し、大地との距離を詰める。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

「っ!?」

 

しかし、大地は下がらず、再度発進。火神を抜きさった。

 

 

――バス!!!

 

 

そのままリングに突き進み、レイアップを決めた。

 

「っしゃぁっ! ナイス大地ぃ!!!」

 

駆け寄った空と大地がハイタッチを交わした。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

「…っ!」

 

代わって誠凛のオフェンス。ボールを掴んだ火神がジャブステップで牽制し、中にドライブで切り込む。

 

「…くっ!」

 

並走しながらディフェンスをする大地だが、火神は横の大地などお構いなしに強引に切り込む。

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

そのままゴール下まで切り込んだ火神はそのままボールを掴んでワンハンドダンクを叩き込んだ。大地もブロックに飛んだが届く事はなかった。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

大地が決めれば…。

 

 

――バス!!!

 

 

火神が決め返す。エース対決は、一進一退の様相を呈していた。

 

 

『スゲー! いきなりバチバチだ!!!』

 

『どっちも退かねえ! 勝負は互角だ!』

 

2人のエース対決に会場は興奮に包まれる。

 

 

「……いや」

 

しかし、赤司は神妙な表情で呟く。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

コート上では、大地が火神を抜きさり、中へと切り込み、ゴール下付近でボールを掴み、リングに向かって飛んだ。

 

「っ!? 大地!!!」

 

「…っ!」

 

その時、大地の耳に、空からの声が届く。大地は頭上に掲げたボールを下げた。

 

「…ちっ!」

 

すると、大地の背後から、ボールを狙った手が空を切る音と共に舌打ちが聞こえた。

 

 

――バス!!!

 

 

直後、再度ボールを掲げてリリースし、得点を決めた。

 

 

「勝負は一見互角に見えるが、現状、打つ手が見いだせない綾瀬と違い、火神は綾瀬を捉え始めている。このまま続けば、火神が勝つ」

 

赤司は2人の対決の行方をそう断言した。

 

 

「…綾瀬」

 

ディフェンスに戻る途中、天野が駆け寄って大地に声を掛けた。

 

「危のうなってきたな」

 

「…」

 

天野の問いに、大地は答えない。

 

「1番の課題はディフェンスやで。あの高さとフィジカルは、正直、どうにもならへんやろ。…マーク代わろか?」

 

マッチアップの交代を天野が提案した。天野ならば火神と身長差はほとんどなく、フィジカルにおいても差は軽微。

 

「…いや、正直、天さんでも結果は変わらないと思います」

 

その提案を、空が否定した。

 

「なら、どないすんねん?」

 

「ひとたび飛ばれたら、今の俺達に止められる手段はない。つまり、飛ぶ前(・・・)に止めなけりゃならない。つまり――」

 

そう言って空はニヤリと笑い…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

ボールを運ぶ新海。

 

「っ!?」

 

フロントコートまでボールを進めると、新海は目を見開いて驚く。自分の目の前には、空ではなく、大地が立っていたからだ。

 

「…っ」

 

新海が視線を火神の方へ向ける。そこには…。

 

「おもしれー!」

 

不敵に笑う火神。

 

「次は俺だぜ」

 

対して空は、ニヤリと笑うのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

決勝戦が始まり、早々に始まったエース対決。

 

当初は互角の勝負を演じていたが、徐々にジャンプ力とフィジカルで勝る火神が優勢になり始めた。

 

その直後、火神の前に、空が立ち塞がるのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





ネタを探しつつ投稿、いやはや、今はyoutubeのおかげもあって、ネタ探しが捗るので便利ですなぁ。…まあ、おススメの全く関係ない動画の誘惑に負けてしまうんですけどね…(>_<)

休みの日にエアコンの掃除をして、試運転がてら起動したのですが、夏の猛暑日に冷房でキンキンに冷えて部屋で昼寝。これぞ我が至高。同士はいますかね…(^_^)v

感想アドバイスお待ちしております。

それではまた!
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