黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

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投稿します!

あっつい!!!

梅雨明けはしていませんが、すっかり夏のように蒸し蒸しとしてきましたね…(;^ω^)

それではどうぞ!



第203Q~電光石火~

 

 

 

第1Q残り5分56秒

 

 

花月 11

誠凛 11

 

 

試合が開始し、早々にぶつかった両チームのエースである大地と火神。

 

2人の対決は、当初、互角の様相を見せていたが、徐々に高さとフィジカルで勝る火神が優勢となっていった。火神が大地を捉えようとしたその時、火神の前に、空が立ち塞がった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

「見ろよ、ソラが火神(4番)をマークしているぞ!」

 

観客席の一角に座る、ひと際目立っている外国人の1人が空を指差しながら声を上げる。そこに座っているのはアメリカのジャバウォックのメンバー達。前日の夜に来日し、ウィンターカップの決勝戦を見に会場まで来ていた。

 

「オイオイ、ソラじゃさらにミスマッチになっちまうんじゃねえか?」

 

「…いや、アリなんじゃないか? あの火神(4番)、シルバー並みのジャンプ力だ。他の奴がマークしてもその差は埋まらない。なら、持ち前のスピードと瞬発力でジャンプする前にカットを狙えるソラは適任かもしれない」

 

空の選択に疑問の声を上げるニック。アレンはその選択をありと判断した。

 

「つうか狭ぇーな! 何でこの国の席はこんなに狭ぇーんだよ!」

 

「シルバーがデカすぎるんだよ! つうか、席2人分も使ってんだから文句言うなよ」

 

席の小ささに文句を言うシルバーに対し、ザックが窘める。

 

「てかよ、ナッシュの奴は何処行ったんだ?」

 

姿を見かけないナッシュの姿を探してニックが周囲を見渡す。

 

「ついさっき、ドリンク買いに行くってどっか行ったぞ」

 

ザックがそう答えると…。

 

「せめてインターバルまで待てばいいのによ…」

 

自由に動き回るナッシュに呆れるニックだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「…」

 

 

――ガシャン!

 

 

自販機の前に立つ1人のアメリカ人が、ボタンを押して飲み物を取り出していた。

 

「もしやと思ったが、やはり君か」

 

取り出したペットボトルの蓋を開けようとした時、そのアメリカ人に英語で話しかける者が現れた。

 

「久しぶりだね、ナッシュ・ゴールド・Jr」

 

「…ふん。こんな所でお前に会うとはな」

 

大事な後輩達(・・・・・・)の試合だからね。見に行くのは当然さ。健も来ているよ」

 

その人物に対し、不機嫌に鼻を鳴らすナッシュ。

 

「…で、その後輩とやら試合の真っ最中だってのにわざわざ俺に何の用だ。……セイヤ・ミスギ」

 

「君の姿を見かけたのでね。最後に会ったのは、日本でのあの試合以来だ。アメリカ(向こう)では、空も世話になったようだから、その礼も兼ねてね」

 

薄く笑みを浮かべる三杉。

 

「いらねえよ。俺はお前らとはコートの上以外で会いたくもねえんだよ」

 

そう言って、飲料を一口口にしたナッシュは三杉の横を通り過ぎてその場を後にしていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

『おぉぉぉぉー--っ!!!』

 

ナッシュがコートを見渡せる観客席に戻ると、観客が大歓声を上げていた。

 

「…」

 

コートに視線を向けるナッシュ。そこには、火神をマークしている空の姿があった。

 

「…へえ、相変わらず面白い事をする奴だ」

 

隣に立った三杉が笑みを浮かべながら空に視線を向ける。

 

「付いてくんじゃねえよ」

 

「俺も席がこっちなのさ。それより、君はあのマッチアップどう見る? 試合は最初から見ていたのだろう?」

 

険しい表情をするナッシュ。三杉は気にする素振りもせず、尋ねた。

 

「知るかよ」

 

そんな三杉を無視し、ナッシュは自分の席へと戻っていった。

 

「フフッ、どうやら、相当あの空に入れ込んでいるようだな」

 

ナッシュの様子を見て、クスクスと笑う三杉。

 

「空とナッシュのバスケスタイルはこれ以上になく噛み合うだろうからな。…ま、ウマはそれ以上に合わないだろうが…」

 

三杉も自身の座っていた席に戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「監督!」

 

ベンチに座る降旗がリコに声を掛ける。

 

「…ホント、彼は大胆な行動をしてくるわね」

 

火神の前に立つ空を見て、リコが顎に手を当てる。

 

「(このマッチアップ変更の理由は明白。火神君を止める為のものであるのは間違いないのだけれど…)」

 

考えるリコ。大地よりさらに身長が低い空だが、瞬発力と反射速度は上。狙いは、火神がシュート体勢に入る前に仕留める事。

 

「…」

 

ここはそれでも火神で攻め立てるのが定石。直前、大地を止める目前まで追い詰めていたし、ここを決めれば、火神は止められないと花月に印象付ける事も出来る上、花月の生命線である空を崩す事も出来る。流れを掴む意味でも、ここは火神で攻めるべきである。

 

「…」

 

だが、リコはその選択に戸惑いが生まれていた。理由は、空が何の勝算も無しに火神のマッチアップを買ってでる訳がないだろうし、何より、一昨年のウィンターカップ序盤のシチュエーションに似ているのだ。その時も、赤司が火神のマッチアップをし、結果、火神を止めて見せた。その時は、水戸部のフォローや、日向達、頼れる先輩もいた為、最悪の事態は避けられたが、今の誠凛は、火神がチームの主将であり、大黒柱でもある。そんな火神がここで止められれば、チームに動揺が走り、流れを一気に持って行かれるリスクもある。

 

「(寄越せ新海。ここを決めれば、流れを一気に掴める!)」

 

コート上では、火神がアイコンタクトで新海にボールを要求している。

 

「…」

 

判断に踏み切れない新海がチラリとベンチのリコに視線を向ける。

 

「……よし!」

 

リコは決断し、立ち上がり、こちらを見る新海に対し、頷いて見せた。

 

「(…コクリ)」

 

それを見た新海は頷き、火神にパスを出した。

 

「良いんですか?」

 

降した選択に、降旗が心配そうに尋ねる。

 

「リスクは百も承知。けど、チャンスでもあるわ。確かに、神城君は高校入学時からとてつもない速さで成長したわ。けど、それは火神君も同じ。ここは、リスクを取るのではなく、チャンスを取るわ」

 

胸の前で腕を組みながらリコが言う。

 

「…」

 

降旗の隣で、黒子がジッと火神に視線を向けていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「っしゃ!」

 

左45度付近、アウトサイドラインの外側で火神はボールを掴んだ。

 

「来た来た、そう来なくちゃ♪」

 

希望通り、火神にボールが渡り、喜ぶ空。

 

「そんじゃ、行くぜ…!」

 

「(っ!? これは…!?)」

 

空が気合いを入れ直し、構えると、火神の顔色が変わる。

 

 

「気を付けろよ、そいつも持ってるぜ」

 

青峰がボソリと呟く。

 

「驚いたな。あの少年もタイガと同じ…。と言うか、去年の夏に見た時とはホント別人だな。あの時から才能は感じていたが、さっきの大地(6番)と言い、ジャパンもここまで逸材が次々と現れるようになったか」

 

アレックスも驚いていた。

 

 

「…」

 

「…」

 

ボールを掴んだ火神と空が対峙する。

 

「(プレッシャーはビンビン伝わるが、前に出て来る気配はねえ。やっぱりこいつの狙いは、俺が飛ぶ前にカットする事か…)」

 

空は、プレッシャーこそかけているが、距離を詰めて当たりに行く気配はない。その事で、火神は空の狙いを理解する。

 

「(確かにこいつのスピードは尋常じゃねえが、赤司のように未来が見えている訳じゃねえ。タイミングさえ外せれば、問題ねえ!)」

 

 

――スッ…。

 

 

火神は、すぐさまシュート体勢に入った。

 

「――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

時は、決勝の早朝まで遡る。

 

「おっ、いたぜ! へい、ソラ!」

 

「…ん?」

 

ホテルの近くの公園で柔軟運動をしていると、英語で空を呼ぶ声が聞こえて来た。

 

「…うおっ!? おめーら、何でここに!?」

 

空を呼んだ人物を見て、空は驚く。そこには、アメリカで一時過ごした、ジャバウォックのメンバーの5人がいたのだ。

 

「久しぶりだな!」

 

「試合、見に来たぜ!」

 

「アメリカから来てやったぜ!」

 

駆け寄った空に、ニック、ザック、アレンがハイタッチを交わしていく。

 

「ガハハハッ! わざわざクソ遠い所まで来てやったぜ。ま、俺は遊びのついでだけどよ!」

 

「いでででっ!!! 放しやがれコノヤロー!!!」

 

シルバーが空の頭を腕で決め、締め上げると、空は苦悶の声を上げながらシルバーの腕をタップする。

 

「…おい、このサル借りるぞ。シルバー、運べ」

 

「オーライ!」

 

ナッシュが唖然としている花月の選手達に一声かけると、リングのある方へと歩いて行った。

 

「いってぇーよ、いい加減、放せ筋肉ゴリラ!」

 

依然として頭を決められている空はシルバーに向かって叫ぶ。

 

「…話には聞いとったが、ホンマに仲良うなったみたいやな。夏の時はあない悪態吐いとったけど。…で、何て?」

 

「アメリカでは途中から一緒にバスケをしましたからね。…どうやら、何か指導でもするようですね。任せておいても大丈夫でしょう。…多分」

 

天野の問いに、大地は答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「いってぇな、何だってんだよ!?」

 

先程の位置から少し離れた場所に無理やり連れていかれた空。シルバーの腕を何とか外し、怒り心頭でナッシュを睨む。

 

「…ちっ、相変わらず喧しいサルだ」

 

「おい、聞こえてんぞ」

 

ボソリと呟くように愚痴ったナッシュだったが、空の耳にはしっかり聞こえており、ジトっとした視線を向ける。

 

「眼を使ったようだな」

 

「眼? ……ああ、あれか! つうか、何でお前がそれ知ってんだよ?」

 

ナッシュの言葉を聞いて暫し考え、準々決勝で洛山戦での事だと思い至る空。

 

「ナッシュは俺達と一緒にネット中継を見てたからな」

 

アレンがこっそり空に耳打ちで教える。すると空はニヤニヤし始め…。

 

「良い心がけじゃねえかよ。今ならお前なんか目じゃね――『シルバー』…いでででっ!!!」

 

言い終える前にナッシュがシルバーに命令し、シルバーが再び腕で空の頭を決める。

 

「調子に乗ってんじゃねえぞクソザル。あんな追い詰められなきゃ使えねえ眼なんざ、目の前のサル程の価値しかねえんだよ」

 

見下すかのような表情でナッシュが吐き捨てる。

 

「いちいち煽り文句入れなきゃ会話出来ねえのかてめーは。…おーいて」

 

遠慮も欠片もないナッシュの物言いに文句を言うも、決められた頭を自分の手で撫でる空。その横でシルバーはゲラゲラ笑っている。

 

「けどよ、あの日以来、使いたくても上手く行かねえんだよ。どうしようも――」

 

 

――バチィッ!!!

 

 

言い終える前にナッシュが空にボールを投げつけ、空は咄嗟にキャッチする。

 

「それを今からレクチャーしてやる。時間がねえみたいだからな。そのスッカスカの頭でしっかり理解しろよ」

 

鼻を鳴らすナッシュ。

 

「へぇ、お前が直々にねえ…」

 

短いとは言え、ナッシュと一時過ごした空からすれば、わざわざアメリカから試合を見に来るだけではなく、試合前に自分に指導するナッシュに訝しげな視線を向ける。

 

「お前のチームが負けようがどうでもいいが、何を気が狂っちまったか、てめえなんかをチームに入れちまったからな。お前が負けると俺の株まで下がるんだよ」

 

そっぽを向きながら溜息を吐くナッシュ。

 

「あーはいはい、そう言う事にして、ありがたく指導を受けてやるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

「――なっ!?」

 

頭上にボールをリフトさせようとした火神。しかし、その瞬間、空の伸ばした手がボールを捉えた。

 

「何だと!?」

 

「バカな…!?」

 

これには池永と新海を目を見開きながら驚いていた。

 

 

『なにぃぃぃぃぃっ!?』

 

『速い! あいつ、火神がシュート体勢に入ったのと同時にボールを叩きやがったぞ!?』

 

あまりの空のカットの速さに、観客からも驚きの声が上がっていた。

 

 

「(何だ今のは!? 天帝の眼(エンペラーアイ)を使った赤司並だ!)」

 

ノーフェイクでシュート体勢に入った火神。あまりの空の速さにかつて戦った赤司の姿を思い起こしていた。

 

 

「何だ、今の速さは…!」

 

「…っ!?」

 

同様に、緑間も驚愕の声を上げ、青峰も目を見開きながら前のめりになっていた。

 

「凄い…、今の、まるで赤司君みたい…」

 

桃井も驚き、横の赤司を見て感想を呟く。

 

「…」

 

赤司は無言で何かを考えながらコート上の空を見ていた。

 

「…火神が動いてから反応したにしては速過ぎる。偶然、タイミングでも合った?」

 

速過ぎる空の反応速度。紫原はそう推測する。

 

「…フッ、なるほど、どうやら、ある程度、使いこなせる(・・・・・・)ようになったみたいだな」

 

ある考えに行き着いた赤司がフッと笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「おぉっ! 空の奴、あの4番を止めたぞ!?」

 

ニックが火神を止めた空を見て興奮しながら声を上げる。

 

「…ふん」

 

同時に、ナッシュが席に戻って来る。

 

「何処行ってたんだよナッシュ?」

 

「飲み物買いに行くって言っただろ」

 

尋ねるザックに対し、ぶっきらぼうに答えるナッシュ。

 

「それよりナッシュ、ソラの奴がやりやがったぜ」

 

「ああ。見てた」

 

「あの速さ。やっぱりあの眼(・・・)を使ったんだよな?」

 

「ふん、どうやら、あのレクチャーは無駄にはならなかったみてーだな」

 

言葉を交わすナッシュとアレン。

 

「ほう! あれがおめーらが言ってた、時空神の目(クロノスアイ)って奴か」

 

シルバーが感心しながら呟く。

 

「改めて生で見るとスゲーな。まるで魔王の眼(ベリアルアイ)を使ったナッシュ並の速さだ。…っていうか、今更だけどよ、どうやってソラにあの眼を使いこなせるようにしたんだ? あれって、ナッシュの眼みたいに、自在に発動出来る代物じゃねえんだろ?」

 

ザックがナッシュに尋ねる。

 

「…要は集中力の問題だ。それが最大になんなきゃ、あの眼は発動出来ねえ。その条件を満たせるのが、ゾーンの扉を開いて、最深部にまで到達する事と、試合終盤の勝負所で追い詰められてる事だ。だから、普段は、どんなにあの眼を使おうとして発動する事はねえ」

 

『…』

 

ジャバウォックのメンバーは黙ってナッシュの解説に耳を傾ける。

 

「だが、1つだけ、瞬間的にだが、集中力を最大にする方法がある」

 

「何だよそれは?」

 

思わず聞き返すアレン。

 

「――ゾーンの強制開放だ」

 

その答えをナッシュが口にする。

 

「あれは、ゾーンに入る為に瞬間的に集中力最大に高めてトリガーを強引に引く技だ。あれを応用すれば、不完全ではあるが、1秒から2秒程度なら発動出来るはず。…今のを見た限り、その理屈は正しかったみてーだな」

 

「ゾーンの強制開放か…。あれも確か、ナッシュが教えたんだよな? そういや、今思い出したが、以前に行きつけのジムでソラをシルバーと同じリングに上げてスパーリングやらせてたが、あれも眼を使いこなす為の仕込みだったのか?」

 

空がアメリカにいた頃の事を思い出したニック。

 

「あれはただの嫌がらせだ」

 

『…』

 

はっきりとそう答えるナッシュに、他のメンバーは言葉を失う。

 

「(…まあ、あの眼の確認の意味もあったけどな)」

 

当たってはいたが、内心では頷いたナッシュであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「今のは…」

 

一部始終、プレーを見ていた三杉。

 

「ようやく戻ったか。何処に行っていた」

 

席に戻った三杉に対し、堀田が尋ねる。

 

「懐かしい顔を見かけてね。…それより、空が火神君を止めたみたいだね」

 

「ああ。あれは、勘や偶然の類のものではないだろう」

 

「だろうね」

 

堀田と話をしながら席に腰掛けた三杉。

 

「(空の奴、眼を使ったな。だが、あの眼は、容易に発動させられる類の代物ではないが……なるほど、ゾーンの強制開放を利用したか…)…フフッ」

 

思わず笑いが込み上げる三杉。

 

「(空ではその考えには行き着くまい。特殊な眼とは無縁のチームメイトや監督、姫ちゃんも同様にだ。…フフッ、ナッシュめ、随分と空を買ってるようだな)」

 

時空神の眼(クロノスアイ)を使えるよう空に施した人物に思い至り、三杉は笑みを浮かべたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「っしゃ!」

 

火神の背後に零れたボールをすかさず抑えた空はそのまま速攻に駆け上がる。

 

「くそっ! 戻れ!」

 

慌てて声を出し、空を追いかける火神。

 

『…っ!』

 

続いて誠凛の選手達も追いかけるが…。

 

「(…っ、追い付けねえ…!?)」

 

ドリブルしている空に追い付く事が出来ない火神。それどころか、むしろ距離が開いていく。

 

 

――空と大地に速攻に走られたら終わり…。

 

 

前日のミーティングでのリコの言葉を思い出す火神。その言葉を今、痛感した。

 

「らぁっ!」

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

そのままワンマン速攻を駆けた空がワンハンドダンクを叩き込んだ。

 

 

花月 13

誠凛 11

 

 

『おぉぉぉぉー--っ! ダンクキタァァァァァッ!!!』

 

 

「うし!」

 

拳を握って喜ぶ空。

 

「(出来た…! 2秒程度だが、準々決勝の終盤同様、周囲の時間がゆっくり流れた…!)」

 

火神が動きを見せた瞬間、まるで空以外の時間がスローモーションになったかのようにゆっくりと流れた。空は、コマ送りのようにゆっくりとシュート体勢に入ろうした火神のボールに手を伸ばし、捉えた。

 

「(感謝するぜ、ナッシュ(てめえ)の指導ってのが気に入らねえが、ありがとよ!)」

 

空は、観客席の一角にいる、ジャバウォックのメンバー達に向け、親指を立てた。それを見たジャバウォックのメンバー達は親指を立てて応えた。

 

「…ふん」

 

鼻を鳴らしたナッシュは親指を立て、下に向けて下ろした。

 

「(あいつはいつか殺す!)」

 

空はナッシュを睨み付けながらディフェンスへと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

誠凛のオフェンス。新海がボールを運ぶ。

 

「…っ」

 

フロントコートまでボールを運んだ新海は火神にパスを出す。

 

「…」

 

「…」

 

ボールを掴んだ火神。立ち塞がるのは再び空。

 

「(さっきの動き、まさか、準々決勝で見せた(こいつ)のあの眼か…。監督の話じゃ、赤司みてえに自由自在に使いこなせるものではないって話だったが…)」

 

自分が動いたの同時にボールを捉えたあの動きは紛れもなく眼を使ったなのだと確信する火神。

 

 

――キュキュッ!!!

 

 

小刻みにステップを踏み、ボールを動かし、牽制する火神。

 

「(だが、赤司のように未来が視えてる訳じゃねえ。どうやって眼を発動させたが知らねえが、ゾーンに入ってねえ状態じゃ、あの眼を発動出来るのは精々数秒程度のはず。フェイクやステップを駆使して呼吸とタイミングさえ外せれば――)」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

「(出し抜けるはずだ!)」

 

「っ!?」

 

再び時空神の眼(クロノスアイ)を発動させてボールを狙った空だったが、フェイクで外させてしまい、その手は空を切り、火神は空を抜きさった。

 

「おっしゃ!」

 

空を抜きさったのを見て、池永が拳を握る。

 

 

「俺の天帝の眼(エンペラーアイ)のように、未来が視えている訳ではない。1度に発動出来るのが2秒程度では、こういう事も起きる」

 

赤司が解説をする。

 

 

「(行ける! このまま突っ込んで――)」

 

 

――バシィィィッ!!!

 

 

「――なん…だと…!」

 

思わず火神が声を上げる。空を抜きさった直後、ボールを叩かれたのだ。

 

 

「だが気を付ける事だ。俺と違って、彼は即座に2撃目も来るぞ」

 

助言のように呟く赤司。

 

 

「空中ならともかく、平面じゃ好きにはさせねえぜ」

 

不敵に笑う空。

 

「(っ!? しまった、こいつにはこれもあった。アンクルブレイクに耐えられるバランス感覚を使ったスティールが…!)」

 

思わずギョッとする火神。そこには、床に背中が倒れ込みそうな態勢で腕を伸ばし、ボールを叩いた空の姿があったからだ。

 

「ええで空坊!」

 

ルーズボールを天野が拾った。

 

「天野先輩!」

 

「行ったれ!」

 

速攻を駆ける大地。天野はすかさず縦パスを出した。

 

 

――バス!!!

 

 

ボールを掴んだ大地はそのままレイアップを決めた。

 

 

花月 15

誠凛 11

 

 

『神城がまた火神を止めたぁっ!!!』

 

2度の空のスティールに観客が沸き上がる。

 

 

「うし!」

 

「ナイスカット空!」

 

空と大地がハイタッチを交わす。

 

『…っ』

 

2度も火神が止められ、言葉を失う誠凛の選手達。

 

 

誠凛のオフェンス。ボールを回していき、再び火神にボールが渡る。

 

「(例え、1撃目をかわせても、すぐさま2撃目が来る。俺1人じゃ、まともな方法じゃこいつは抜けねえ…!)」

 

目の前の空に対し、圧倒される火神。

 

「(だったら!)」

 

何かを思い付いた火神はボールを新海に戻す。同時に中へと走り込む。

 

「来い!」

 

ハイポストでボールを要求する火神。すかさず新海は火神にパスを出す。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

「…ぐっ!」

 

リングに背を向けた形でボールを掴んだ火神。背中に張り付くようにディフェンスに入る。ボールを掴んだ火神はポストアップで空を押し込み始めた。

 

「これなら、眼があってもどうにもならねえだろ」

 

「がっ! …くそっ…!」

 

必死に腰を落として踏ん張る空だったが、体格に大きな差がある空はみるみる押し込まれていく。

 

「もらった!」

 

空を押し込んだ火神はボールを掴んでフックシュートの体勢に入る。

 

ポストアップ(それ)をやられると、眼なんざ役に立たねえし、俺じゃ抑え込めねえ。…だが良いのか?」

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

「中でそんなチンタラ攻めてたら、大地(相棒)が飛んでくるぜ」

 

「っ!?」

 

ニヤリと笑う空。目を見開く火神。フックシュートを放とうする前に、大地がボールをカットした。

 

 

『綾瀬だぁっ!!!』

 

『誠凛、3連続でオフェンス失敗。これは痛い!』

 

頭を抱える観客。

 

 

「…っと」

 

ボールを拾った速攻を駆けた大地だったが、今度は新海、朝日奈、池永がいち早くディフェンスに戻っており、足を止めた。花月の選手達が攻め上がって来ると、空にボールを渡した。

 

「…」

 

「…」

 

ボールを受け取った空。目の前には新海。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

機を見て空が仕掛ける。

 

「(タイミングは予測出来ている!)」

 

空の動きとタイミングを読み切った新海は空を並走しながら追いかける。空はそれでもお構いなしに中に切り込み…。

 

 

――スッ…。

 

 

ボールを背後にトスするように放る。そこへ走り込んだ大地がボールを掴むと、そのままリングに向かって飛ぶ。

 

「させるか!」

 

そこへ、火神がブロックに現れる。

 

 

――スッ…。

 

 

しかし、大地はボールを下げ、腕を回してパスに切り替える。ボールは、アウトサイドライン手前、左側のコーナー付近に立った生嶋の手に渡る。

 

「打たせないで!」

 

「分かってます!」

 

リコの指示を出す前に動いて朝日奈がチェックに向かう。

 

 

――ボムッ!!!

 

 

しかし、生嶋はスリーを打たず、中へとボールを弾ませながら入れた。

 

 

――バチィッ!!!

 

 

中に出されたボールを、空がボールをタップするように手の平で叩き、ゴール下の松永にボールを中継した。

 

 

――バス!!!

 

 

ゴール下でボールを受けた松永がそのまま得点を決めた。

 

 

花月 17

誠凛 11

 

 

『花月連続得点!』

 

『点差が開いて来たぞ!?』

 

 

『…っ』

 

3連続攻撃の失敗によって点差が開き、表情が曇る誠凛の選手達。

 

 

「(まずい…!)」

 

危機感を抱くボールを運ぶ新海。火神が3連続で止められ、焦りを必死に隠してボールを運んでいる。

 

「(他で攻めるか? だが、何処で――)」

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

必死にゲームメイクをする新海。だがその時、自身をマークしている大地が新海のキープするボールを捉えた。

 

「っ!?」

 

考えを巡らせ過ぎて隙を作ってしまった新海は目を見開く。

 

『アウトオブバウンズ、(誠凛)!』

 

しかし、ボールはそのままサイドラインを割ってしまう。

 

「…ふぅ」

 

4連続攻撃失敗と言う、最悪の事態が免れ、胸を撫で下ろす新海。

 

「(…くそっ、綾瀬にしても、少しでも気を抜けばこれだ。これ以上、花月を調子づかせるとまずい…!)」

 

しかし、依然として攻め手が定まらない新海。このまずい流れを断たなければ、点差はさらに開いていく。序盤とは言え、これ以上点差を離されるのは避けたい。

 

「(だがどう攻める? 火神さんも止められた。他で攻めるにしても、池永も田仲も現状きつい。唯一、分があるのは朝日奈だが、ここは1番警戒されている。どうする!?)」

 

 

『ビビーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

その時、オフィシャルテーブルからブザーが鳴る。

 

『メンバーチェンジ、(誠凛)!』

 

メンバーチェンジが告げるコールがされる。交代を告げられたのは朝日奈。

 

『っ!?』

 

「…ふぅ」

 

誠凛の選手達は、コート入りする選手を見て目を見開き、火神は一息吐いた。

 

「すいません、頼みます」

 

「任せて下さい」

 

朝日奈と入れ替わりにコートに入り、その際にハイタッチを交わす。

 

「悪ぃな。俺が不甲斐ねえばかりに、こんな形で出すハメになっちまった」

 

謝る火神。

 

「火神君の責任ではありませんよ。もちろん、みんなの責任でも。相手はキセキの世代を倒した花月です。手強いのは当然です。…行きましょう」

 

そう言って、リストバンドを手首に巻いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――背番号8番、黒子テツヤが、コートに足を踏み入れた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





日中は冷房付けんと過ごせんわ…(>_<)

この二次ではホントに影が薄い原作の主人公が登場です。原作では物語の展開上、やられる場面も多々ありましたが、敵で出てきていたらホントに恐ろしそう…(;^ω^)

感想アドバイスお待ちしております。

それではまた!
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