黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

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投稿します!

アイス食い過ぎて腹壊したorz

それではどうぞ!



第205Q~光と影~

 

 

 

第1Q、残り3分2秒

 

 

花月 19

誠凛 17

 

 

花月

 

IN  竜崎

 

OUT 空

 

 

誠凛

 

IN  朝日奈 降旗

 

OUT 火神 新海

 

 

黒子の加速するパス(イグナイト)パス・廻をスティールしようとした空にアクシデントが起こり、ベンチへと下がった。それと同時に誠凛も火神と新海をベンチへと下げた。

 

「神城君、やっぱり右手が…」

 

「だがまあ、弾かれ方が不自然なまでに派手だったからな。多分、咄嗟に手を引いてただろうから、大した事にはならねえだろ」

 

心配する桃井。青峰は一連の空を見て、大事はないと判断する。

 

「誠凛はかがみんを下げちゃうなんて。新海君はまだ分かるけど…」

 

予想外の火神の交代に疑問が尽きない桃井。

 

「これから試合は激化するのは目に見えている。ただでさえ、終盤に強い神城と綾瀬がいるのだからな。幸い、誠凛は以前と違って控えの層も厚い。温存出来る時に温存しておくべきなのだよ」

 

緑間は正しい判断だとする。

 

「けど、綾瀬君のマークはどうするんだろ。かがみん以外にマーク出来る人なんて…」

 

「いないだろうな。ならば、点を取りに行く。と言う事なのだろう」

 

赤司が割り込むように解説する。

 

「それだけテツを信頼してるって事だ」

 

エースである火神不在での点取り合い。それを可能とする黒子の存在を挙げる青峰。

 

「テツ君を…、そう言えば赤司君、試合前にテツ君は、スタメンに起用すべきではないって言ったけど、それどういう意味なの?」

 

試合開始前、赤司が呟いた言葉。その時はティップオフ直前だった為、聞けなかったが、桃井は改めて尋ねる。

 

「…一昨年のウィンターカップの決勝、黒子の影の薄さがなくなった事は覚えているね?」

 

「うん。けど、あれは元に戻ったんじゃ…」

 

「ああ。その後、影に徹し、消えるドライブ(バニシングドライブ)や、幻影のシュート(ファントムシュート)と言った、目立つ技を控える事で影の薄さはある程度(・・・・)は戻ったが、完全に戻るまでには至らなかった」

 

赤司が断言する。

 

「昨年のインターハイで早々に洛山(俺達)に、ウィンターカップに関しては、出場する事すら叶わなかったのは、当時の2・3年生のモチベーションの低下、木吉鉄平が離脱した事によるインサイドの弱体化、経験不足の1年生など、原因はいくつかあるが、1番の原因は、黒子のミスディレクションの稼働時間が減少した事だ」

 

昨年の不振の要因を挙げる赤司。

 

「去年の夏に戦った時、1度試合で対戦した事や、去年まで同じチームに同系統の選手がいた事である程度、耐性があった事を差し引いても、明らかにミスディレクションの稼働時間が短かった。それは、予選で戦う機会が多かったお前達が1番理解しているはずだ」

 

「「…」」

 

赤司に尋ねられた青峰と緑間は、返事をしなかったが、それは肯定である事は誰の目から明らかだった。

 

「だからこそ、黒子はスタメン出場させるべきではないと言う訳だ」

 

「そういう理由が…なら、尚の事、かがみんを下げるべきじゃなかったんじゃないかな? 制限時間もそうだけど、いくらテツ君がいるからって、かがみん抜きで花月と点の取り合いでやり合えるとは…」

 

「桃井の懸念ももっともだ。ミスディレクションの稼働時間に関しては、桃井も知っている事だろうが、ベンチに戻せば慣れが薄まるから、第1Q終了後か、遅くとも第2Q早々にでもベンチに戻せば再び活躍させる事は可能だろう。だが、今の花月は黒子と言えど、いくら神城がいないからと言って、火神抜きで点取り合いで凌げるような相手ではない」

 

赤司はそう言い切る。

 

「俺達の知る黒子であったのならば、ね…」

 

「…えっ?」

 

続けて言った赤司の言葉に思わず声を上げる桃井。

 

「今の黒子は、俺達の知らない何かがある。俺はそう考えているよ。恐らくそれが、ここから火神抜きで花月と対等にやり合う原動力となる」

 

そう言って、赤司は試合に集中したのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「1本、大事に行こう!」

 

コートに入った降旗がボールを運び、ゲームメイクを始める。

 

『…』

 

降旗の動きに合わせ、誠凛の選手達も動き始める。

 

「(この人は確か、ディレイドオフェンスを得意とするポイントガード。リスク管理が上手い選手だが、新海さん程のテクニックや身体能力はない。だったら、強気で行く!)」

 

このマッチアップに分があると見た竜崎は強めにプレッシャーをかける。

 

「っ!?」

 

身体をぶつけるように前に出て来た竜崎に身構える降旗。

 

「(確かこの人は、帝光中出身で、全中優勝経験もある選手。俺と違って、バスケのエリート!)」

 

自分とは歩んで来た道が違う竜崎。

 

「(けど、そこまで怖さを感じない。海常の笠松さんや、秀徳の高尾、何より、キセキの世代の赤司に比べれば、怖くない…!)池永!」

 

落ち着いて降旗は池永にパスを出す。

 

「おーおー、俺にパス出すなんざ、分かってるじゃねえかフリ」

 

ボールを受け取り、満足気な池永。

 

「…」

 

そんな池永に対し、大地がディフェンスに入る。

 

メンバーチェンジに伴い、ポイントガードには降旗、パワーフォワードには朝日奈が入っている。

 

「ようやくてめえに借りが返せる時が来たぜ」

 

目の前に因縁の相手である大地がやってきて、不敵に笑う池永。

 

「今度はしっかり相手が見えているようで、何よりです」

 

対して大地は、表情を変える事無く、淡々と返す。

 

「…思い出すだけでムカッ腹が立つが、全中の時は明らかに油断と驕りが原因だ。誠凛(ここ)に来ても、結局変われなくて、チームに迷惑かけちまった」

 

表情を僅かに歪ませる池永。

 

「今は違うぜ。…まあ、てめえらにリベンジしてえ気持ちは相変わらずだが、優先すんのは、誠凛を優勝させる事だ。それが、志半ばで散っていった亡き先輩達に出来るせめてもの弔いだからな」

 

 

「死んじゃいねえぞ」

 

ツッコミを入れる観客席の日向。

 

 

「つうか、人に偉そうに説教かましてるけどよ、お前の方は俺の事、見えてんのか?」

 

「言っている意味が分かりませんね。今は、目の前のあなたに集中していますが…」

 

「フン、どうだかな…」

 

大地の返事に鼻を鳴らす池永。

 

「お前、俺に負けるなんざ露程も思ってねえだろ?」

 

「…」

 

その質問に、大地は答えない。

 

「だろうよ。てめえは優等生ぶっちゃいるが、結局の所、火神以外はその辺の石ころ程度にしか見ちゃいねえ。なら今度は、俺達がてめえらに目にモノ見せてやるよ!」

 

「(…来る!)」

 

仕掛ける気配を感じ取った大地が身構える。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

「っ!?」

 

次の瞬間、大地の目が見開かれる。

 

「何やと!?」

 

同時に天野が声を上げる。

 

「何が起こった!?」

 

アイマスクで状況が把握出来ない空が突如、沸き上がったどよめきに思わず尋ねる。

 

「綾瀬君が、抜かれた…」

 

呆然と答える姫川。

 

「…はぁ? マークしてたの池永だろ? そんな訳…」

 

火神ならいざ知らず、池永に抜かれた事が信じられない空。

 

「…くっ!」

 

すぐさま反転した大地が中に切り込んだ池永を追いかけ、すぐさま横へと並んだ。

 

「もう追いつきやがったか! キセキの世代(先輩達)も大概だが、てめえも規格外だな! だがな、先手さえ取れちまえば、こっちのモノだ!」

 

大地が追い付いたのと同時に池永はボールを掴み、頭上から外へとパスを出した。

 

「…よし」

 

外で朝日奈がボールを掴む。

 

「止めたる!」

 

朝日奈に対し、天野がすぐさま距離を詰める。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

天野が来るや否や、朝日奈はドライブで中に切り込む。

 

「フェイクもなしで抜かせ――うがっ!」

 

ドライブに対応しようとした天野だったが…。

 

「…ぐっ!」

 

田仲の張ったスクリーンに捕まってしまう。

 

「(くそっ、抜かれた綾瀬に動揺して声掛けを怠ってしまった…!)…ちぃっ!」

 

胸中で舌打ちをしながら松永がリングに迫る朝日奈に対してヘルプに飛び出す。

 

 

――スッ…。

 

 

松永が迫ってくると、横へとパス。中に走り込んでいた降旗がフリースローライン付近でボールを掴み、シュート体勢に入る。

 

「させるか!」

 

後方から追いついた竜崎がブロックに飛ぶ。しかし…。

 

「っ!?」

 

降旗は飛ばず、ボールを頭上に掲げた体勢で中断。ボールをさらに中へと入れる。

 

「ナイスパース!」

 

ゴール下でパスを受けた池永。そこからすぐさまリングに向かって飛び、右手で掴んだボールをリングに叩きつける。

 

 

――バチィィィィッ!!!

 

 

「させませんよ!」

 

しかし、ボールがリングに叩きつけられる直前、大地がブロックに現れ、ダンクを阻む。

 

「せっかくの見せ場を…!」

 

 

――バチィッ!!!

 

 

両者の手がボールを挟むようにぶつかり、挟まったボールが2人の手の間から零れる。

 

「リバウンド!」

 

降旗が指示を飛ばす。

 

『おぉっ!!!』

 

その声に反応した天野、松永、朝日奈、田仲がルーズボールに飛び付く。

 

 

――ポン…。

 

 

先にボールに触れたのか田仲。田仲が伸ばして右手がボールに触れ、そのままリングの中へと押し込まれた。

 

 

花月 19

誠凛 19

 

 

「やった!」

 

得点を決めた田仲は拳を握りながら喜ぶ。

 

「…くっ」

 

自身の武器とするリバウンドで競り負け、悔しがる天野。実際、天野は絶好のポジションを取っていた。しかし、ボールを確保しなければならなかった天野と押し込むだけでいい田仲の差によって、競り負けたのだ。

 

 

「…」

 

胸の前で両腕を組みながら考え込む空。

 

「なあ、大地が抜かれた時の様子ってどんな感じだった?」

 

「そうね…、ここからだと、反応出来てなかったと言うか、為すがまま抜かれたように見えたわ」

 

尋ねた空の横にいる姫川が様子を思い出しながら答える。

 

「(…大地が反応出来ない程のスピードとキレを池永が見せた? …いや、あり得ねえな。大地は黄瀬さんや青峰さんの動きにも付いていってた。つうか、普段、俺の動きにも対応しているんだ。その線はないな)」

 

可能性の1つを空が否定する。

 

「(だったら後は…)…大地が抜かれた時、黒子さんが何処にいたか分かるか?」

 

次に尋ねたのは黒子の所在。池永が大地を出し抜いたのは、黒子が試合に出場したからだ。ならば、黒子にその答えがあると空は考えた。

 

「黒子さん…、ごめんなさい、分からないわ」

 

黒子の位置までは把握しておらず、謝る姫川。

 

「私、分かるよ!」

 

その時、相川が話に参加する。

 

「えーっと、コートの後ろの方の……あっ、ここだよ!」

 

説明しようとした相川に、説明しやすいように姫川が普段、作戦会議に使うバスケコートを書かれたマグネット入りのボードを開くと、相川が指差す。

 

「(フロントコートの後ろの方か。…確か、大地が抜かれたのは…)」

 

アイマスクを指で伸ばしながら確認する空。相川が指差した黒子の位置と、大地が抜かれた位置を照らし合わせ、頭を巡らせる。

 

「(何か引っ掛かる所はあるが、答えが出ねえな。ただでさえ、黒子さんプレーヤーとしてはかなり異色だから、余計にだ。こういうのは俺の本分じゃねえから分かんねえよ。三杉さんや大地とかなら何か気付くんだろうが…)」

 

直感で何かは引っ掛かりを覚えはしたが、それが何なのかは掴めなかった空。

 

「相川さん、今から、他はいいからとにかく黒子さんの動きだけ見といて」

 

「分かった! 後で説明出来るようにしっかり覚えておくね!」

 

笑顔で相川は返事をした。

 

「…」

 

「(昨晩も話していたけど、神城君は余程黒子さんを警戒しているのね。だけど、今はその意味が良く分かるわ。…ごめんなさい。私も警戒していたつもりだったけど、認識が甘かったわ。この第1Qが終わるまでにからくりを解いて見せるわ)」

 

横で考えを巡らせる空を見て、姫川は胸中で再度謝罪をし、試合に集中したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「ドンマイ! 切り替えましょう!」

 

ゲームメイクを務める竜崎が落ち着かせる為に声を出す。

 

「っ!?」

 

スローワーとなった松永がボールを掴んでエンドラインに立ったその時、目の前に田仲が両手を広げて立っていた。

 

 

『まさか、ここでオールコートディフェンスか!?』

 

自陣に戻らず、それぞれ花月の選手にマンツーマンに付いた誠凛の選手を見て観客達がどよめく。

 

 

「当然! 考える時間なんて与えないわよ。好機と見たらディフェンスでもガンガン行くわよ!」

 

ニヤリと笑みを浮かべるリコ。田仲がタップで押し込んだ後、リコは即座に決断し、ベンチから立ち上がって選手達に指示を出していた。

 

「(オールコートマンツーマン…! だけど、この程度で今更動揺はしない。むしろ、望む所だ!)」

 

即座に頭を切り替えた竜崎が動き出した。それに呼応するように他の選手達も動き出した。

 

「こっちです!」

 

「頼むぞ!」

 

マークを外した竜崎がボールを受ける。

 

「(落ち着いて…、この1本を決める。その為には…ここだ!)」

 

前を向き、パスを出す。パスの先は大地。

 

 

「あーあ、そこじゃねえだろ」

 

呆れ顔で呟く青峰。

 

 

――バシィィィッ!!!

 

 

「あっ!?」

 

ボールが大地の手に渡ろうとしたその時、横から伸びて来た手にスティールされてしまう。

 

 

「火神がコートにいないこの状況で、花月にとって1番、得点確率が高いのは綾瀬だ。だが、それ故、読まれやすいのだよ」

 

「ここは、綾瀬に頼るにしても、慎重にボールを回すべきだった。生粋のポイントガードではない竜崎()に、浮足立った今の状況でその気配りを要求するのは酷な話ではあるが…」

 

緑間が解説し、赤司がさらに補足した。

 

 

「黒子!」

 

黒子がボールを奪うと、降旗がボールを要求。すかさず降旗にボールを渡した。

 

「フリ、こっちだ! パスパース!」

 

中に走り込む池永が自身を指差しながらボールを要求する。

 

「頼む!」

 

降旗は池永…ではなく、外に展開した朝日奈にパスを出した。

 

「コラァ! こっちだろ!?」

 

「(しょうがないだろ。そこはマークがきついんだから…)」

 

文句を言う池永に対し、胸中で溜息を吐いた降旗。

 

「…よし」

 

「止めたる!」

 

ボールを掴んだのと同時に静かに意気込む朝日奈と構える天野。

 

「…」

 

「…」

 

ボールを構えて機を窺う朝日奈。腰を落として朝日奈の動きに備える天野。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

一気に加速し、仕掛ける朝日奈。

 

「っ!?」

 

天野は抜きされてしまう。

 

「(天野先輩まで!?)…ちぃっ!」

 

天野が抜かれてのを見て、驚きながらも松永がヘルプに出る。

 

 

――ボムッ!!!

 

 

しかし朝日奈は、それを見計らっていたかのようにボールを弾ませながら空いた田仲にパスを出す。

 

「もらった!」

 

ボールを掴んだ田仲がすぐさまシュート体勢に入った。

 

 

――バシィィィッ!!!

 

 

「…えっ!?」

 

ボールをリリースした瞬間、横から伸びて来た手にボールが叩かれた。

 

「またてめえかよ!?」

 

ブロックしたのは大地。そんな大地に思わず悪態を吐く池永。

 

「…ふぅ」

 

着地をした大地は一息吐いた。

 

「綾瀬先輩、助かりました!」

 

ルーズボールを拾った竜崎が胸を撫で下ろしながら礼を言う。

 

「落ち着いて下さい。まだ第1Q、慌てる時間ではないですよ」

 

ニコリと笑みを浮かべながら竜崎を諭すように大地が告げる。

 

「誠凛はスローペースで攻めてきています。ですので、無理してハイペースで攻める必要はありません。ゆっくり確実にゲームを組み立てて下さい」

 

「分かりました!」

 

大地の忠告に、竜崎はこれまでのペースで攻めようとした事を反省し、ゆっくりボールを運び始めた。

 

 

「これまでは、浮足立ったりした時は、神城が落ち着かせる役割で、綾瀬はプレーで引っ張る事が多かったが、ここに来て、エースの風格が出て来たか?」

 

竜崎を落ち着かせる大地を見て、高尾は感心する。

 

 

「…相川さん、黒子さんは?」

 

「あの辺りにいたよ!」

 

姫川に尋ねられ、相川がコートの一角を指差す。

 

「(……もしかして)」

 

ここで、姫川の頭の中でこれまでの情報がパズルを組み立てるよう重なり、1つの答えに辿り着いた。

 

 

「これって…」

 

同じく答えに辿り着いた観客席の桃井。

 

「なるほど、これが新たな黒子の技か」

 

同様に答えに辿り着いた緑間が感心するように呟く。

 

「さすが黒子と言った所か。修正し切れなかった欠点(・・・・・・・・・・・)すら、武器に変えてしまうとはね」

 

「? 黒ちんが何をしたか分かったの?」

 

称賛する赤司に、未だ、理解が出来ていない紫原が尋ねる。

 

「さっきも言ったが、黒子は消えるドライブ(バニシングドライブ)や、幻影のシュート(ファントムシュート)と言った、派手な技を覚えたせいで、自らのスタイルを支える最大の長所である、影の薄さを失った。正確には、僅かな光が生まれてしまった、と言った方が正しいか」

 

「…」

 

赤司の解説に耳を傾ける紫原。

 

「その僅かな光を、黒子は自分を律して目立つプレーを控えたり、ミスディレクションのパターンを定期的に変える事でその光を消し、従来の幻の6人目(シックスマン)としてのプレーを行っていたのだが、黒子はその光を敢えて消さずに放った」

 

『…』

 

「忽然と現れた光に、どうしても一瞬、意識がそっちに向けられてしまう。その光を、ボールを受けたプレーヤーが仕掛けるタイミングに合わせてそのプレーヤーが対峙している相手に見せる事によって空白の時間を作り出し、結果、反応が僅かに遅れて抜かれてしまった」

 

「それって、ミスディレクション・オーバーフローだっけ? あれに似てるような気がするけどー」

 

似た現象を引き起こす技を思い出した紫原。

 

ミスディレクション・オーバーフローとは、黒子のミスディレクションの稼働時間が完全に切れた時、自身に視線が集まった事を利用し、特定の味方に消えるドライブ(バニシングドライブ)と同じ効果を与える黒子の最大の切り札。

 

「原理は一緒だ。だが、あくまでも僅かな光で引き付けているに過ぎないから、オーバーフローのように、消えるドライブ《バニシングドライブ》の効果を与えるまでには至らない。せいぜい、一瞬、相手の反応を遅らせる程度の代物だ。だが、問答無用で相手を後手に回らせる事が出来るから、連携を上手く絡めて駆使すれば強力な武器になりえる。何より、オーバーフローと違って、ミスディレクションの稼働時間を切れさせる都合上、試合終盤にしか使えないと言う制約もない上、1度でも使用した相手に2度とミスディレクションが通用しないと言うリスクもない。効果がなくなってもベンチに下げれば再び使えるようにもなる。オーバーフロー程の破壊力を持たない代わりに、リスクを無くし、使い勝手を良くしたのが最大のメリットだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「さすが綾瀬君、一筋縄では行かないわね」

 

大地のブロックによって得点には至らず、ぼやくリコ。

 

「去年のインターハイでの敗北、ウィンターカップ東京都予選での敗北。黒子君は誰よりも責任を感じていたわ」

 

昨年の不振。インターハイでは2回戦で洛山に敗北し、ウィンターカップに至っては、出場する事すら叶わなかった。

 

「当初、黒子君は失われた影の薄さを取り戻す術を模索していたわ。けれど、以前のような影の薄さを取り戻すまでには至らなかった」

 

1年時のインターハイの東京都予選、その決勝リーグで桐皇の敗北し、自身のバスケスタイルに限界を感じた黒子は、消えるドライブ(バニシングドライブ)を身に着け、幻影のシュート(ファントムシュート)を習得した。その結果、自身のスタイルを支える影の薄さを手放す事となってしまった。

 

「苦心しても消す事が出来なかった僅か光、黒子君はこれを逆に利用する事にしたのよ」

 

フフンとしたり顔のリコ。

 

「普段は自分から視線を逸らす為に使われるミスディレクション。僅かな時間であれば消す事が出来る光を敢えて見せる事で逆に視線を自身に引き付ける。言うなれば、これは『光のミスディレクション』よ」

 

逸らすのではなく、自身に向ける為のミスディレクション。影ではなく光。

 

「光と影を用いて仲間を援護する。これが黒子君の新しいスタイルよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

ゆっくりボールを運んだ竜崎。

 

「竜崎さん!」

 

大地が竜崎に向かって走り、自らボールを貰いに行く。

 

 

――スッ…。

 

 

大地とすれ違う直前に竜崎がボールを差し出すと、大地は受け取り、そのままドリブル。

 

「がっ! スイッチ!」

 

ボールを差し出すと同時にスクリーン役も担った竜崎。そのスクリーンに大地をマークしていた池永が捕まり、引き剥がされる。

 

「…っ!」

 

スクリーンに捕まった池永に代わり、スイッチで大地のディフェンスに入った降旗は、すぐさま距離を詰めて大地にフェイスガードで当たる。

 

「(俺の身長とジャンプ力じゃ、シュート体勢に入られたら止められない、激しく当たらないと!)」

 

身長差を鑑みて激しく当たる選択肢を取った降旗。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

しかし大地は、降旗のフェイスガードを意にも返さないかのようにドライブで抜きさる。

 

「っ!?」

 

その瞬間、大地の持つボールに1本の手が迫り来る。

 

「いいぞフリ! 行け、黒子!」

 

誠凛ベンチから声援を贈る福田の声。

 

自分の実力では大地を止める事は不可能だと考えた降旗は、スリーを阻止するのと同時にわざと黒子のいる方へ抜かせたのだ。

 

「…っ」

 

黒子が手を伸ばし、ボールを狙い打つ。黒子の手がボールに直前…。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

レッグスルーで切り返し、黒子の手をかわす。

 

「っ!?」

 

目を見開く黒子。

 

「やはり来ていましたか。切り込んだ所を狙われるのを想定して正解でした」

 

黒子のスティールを念頭に置いていた大地。その甲斐もあり、スティールを狙った黒子の手をかわす事が出来た。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

直後にボールを掴んだ大地はジャンプシュートを決めた。

 

 

花月 21

誠凛 19

 

 

「頼りになるエースやで!」

 

「どうも」

 

ハイタッチを交わす天野と大地。

 

「今のしょうがねえ、切り替えろ!」

 

火神がベンチから鼓舞する。

 

「1本、取り返そう!」

 

ボールを受け取った降旗は、落ち着きながらゆっくりとボールを運んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

その後も、互いにペースを落とした、ディレイドオフェンスで試合が進む。

 

「焦るな池永、もっとボール回して! 朝日奈と田仲ももっとフォローして!」

 

誠凛は、司令塔であり、コート上の3年生の1人である降旗が指示を飛ばしていく。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

対して花月は、大地が持ち前の個人技で誠凛ディフェンスを突破する。

 

エースである大地がその力で打開し、誠凛はチームワークで互いに足りない部分を補って戦う。両校共にディレイドオフェンスと言う事で、時間をたっぷり使って攻めた事で、互いに攻撃回数は減ったが、着実にスコアを積み上げた。

 

 

『ビ―――――――――――!!!』

 

 

そして、第1Q、最初の10分が終わった。

 

 

第1Q、終了

 

 

花月 25

誠凛 23

 

 

点差は2点。花月のリードで第1Qが終わり、両チーム、ベンチへと戻っていった。

 

「点差は2点。スコアだけ見れば互角か」

 

試合を観戦していた元海常の森山。

 

「ああ。だが、花月は誠凛のペースに付き合わされた形だからな。第2Q、神城がコートに戻れば、どうなるかは分からねえ」

 

第1Qを見て、笠松は予断は許さないと予測。

 

「誠凛も、途中から火神抜きで戦っている。花月は、神城がいないとは言え、絶対的エースである綾瀬がいてこのスコアだ。正直、ホントに予想出来ない展開だな」

 

小堀も笠松と同様、先の予想が出来ない展開と断じた。

 

 

誠凛ベンチ…。

 

「皆、良くやったわ! 早く座って、体力回復に努めなさい」

 

ベンチに戻ってきた選手達を労うリコ。

 

「黒子君、良くやってくれたわ。降旗君も、慣れないコートリーダーをさせてしまったけど、しっかりやれていたわ。グッジョブよ」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

リコに褒められた降旗は、薄っすら涙を浮かべながら歓喜した。

 

「2人はここで一旦交代よ。けど、試合から気持ちを離しちゃダメよ。火神君、新海君、行くわよ!」

 

「はい!」

 

「待ちくたびれたッスよ」

 

交代を告げられた黒子と降旗。指名を受けたのはスタメン出場していた火神と新海。

 

「ここからが本番よ。黒子君はしばらくベンチに下げなければならないから、少なくとも、第2Qでは出せないわよ。だから心して試合に臨みなさい」

 

『はい!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

『ビ―――――――――――!!!』

 

 

インターバル終了のブザーが鳴り、両チームの選手達がコートに戻って来る。

 

 

OUT 黒子 降旗

 

IN  火神 新海

 

 

スタメンに戻した誠凛。

 

「神城、やっぱり出て来たか」

 

コートに足を踏み入れた空を確認した火神。

 

「…あれ?」

 

ここで田仲がある違和感に気付く。

 

 

OUT 生嶋

 

IN  空

 

 

「竜崎が試合に出てる。下がったのは、生嶋?」

 

空の代わりの司令塔として試合に出場した竜崎。しかし、空がコートに戻っても尚、出場しており、代わりに生嶋がベンチに下がっていた。

 

「さて、ここからガンガン行くぜ」

 

ニヤリと笑う空であった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

試合の4分の1が終わった。

 

花月優勢で試合は始まり、黒子の尽力によって点差と勢いを取り戻し、シュート1本差で第1Qを終えた。

 

スタメンに戻した両チーム。

 

試合は、さらに激化していく……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





遂に夏も本格化。そしてついでに決勝も本格化してきました(笑)

この二次での時系列のおいて、昨年時は黒子はとにかく活躍出来なかったので、原作主人公の楔から解き放たれ、ラスボスとなった黒子が大暴れです…(;^ω^)

無駄に会話描写が多くて試合描写が少ない相変わらずのクオリティですが、お付き合い頂ければと…m(_ _)m

感想アドバイスお待ちしております。

それではまた!
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