黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

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投稿します!

先週に投稿するつもりが、WBCに熱中した為、投稿出来ず…(;^ω^)

それではどうぞ!



第208Q~目覚め~

 

 

 

第2Q、残り5分48秒

 

 

花月 40

誠凛 39

 

 

第2Qに入り、再び始まった両チームのエース対決。

 

 

――ダムッ…ダムッ…。

 

 

「…」

 

ゆっくりドリブルをしながら仕掛ける機会を窺う火神。

 

「…」

 

そんな火神の前に立ち塞がる大地。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

仕掛ける火神。レッグスルーでボールを右から左へと切り返す。

 

「…っ!」

 

同時に大地も火神の動きに合わせてスライドするように追いかける。

 

 

――スッ…。

 

 

直後にボールを掴んだ火神はターンで右へと反転し、シュート体勢に入る。

 

「…っ」

 

これを見て大地がブロックに飛ぶ。

 

「(私のジャンプ力ではブロックは出来ない。ならば!)」

 

「っ!?」

 

シュート体勢に入った火神の目が見開かれる。大地が手をボールではなく、火神の顔の前に翳し、視界を塞いだからだ。

 

「上手い、これなら…!」

 

咄嗟の大地の機転に歓喜の声を上げるベンチの生嶋。

 

「っ!?」

 

しかし、今度は大地の表情が驚愕に染まる。火神はジャンプシュートを放たず、リリース直前のまま、停止する。やがて、大地が先に落下を始める。

 

「(見えた!)」

 

再びリングを視界で捉え、改めてボールをリリースする。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

放たれたボールはリングを潜り抜けた。

 

 

花月 40

誠凛 41

 

 

『出た! 火神のスーパージャンプ!!!』

 

『マジでいつまで飛んでんだよ!?』

 

常軌を逸した火神の跳躍力にどよめく観客。

 

 

「…っ」

 

「ドンマイ、あれはどうしようもねえ」

 

静かに悔しがる大地を励ます空。

 

「やり返すか?」

 

「ええ、可能であればボールを下さい」

 

「あいよ」

 

そんなやり取りを交わす2人。

 

 

――ピッ!!!

 

 

ボールをフロントコートまで運んだ空が大地へとパスを出す。

 

「いいね、やる気出してくれて嬉しいぜ。…来い」

 

やり返す気配を感じ取った火神はニヤリを笑い、ディフェンスに臨む。

 

「…」

 

ボールを小刻みに動かし、右足でジャブステップを踏みながら機を窺う。

 

「…」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

大地が仕掛ける。

 

「っ!?」

 

その動きに火神は目を見開く。大地はカットインするのではなく、後ろへとバックステップで下がってスペースを作り、リングへと視線を向けたからだ。

 

「(打たれる!)」

 

火神がすかさず距離を詰める。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

しかし、大地はボールを保持してはおらず、そこから前へと急発進をした。

 

「(ロッカーモーションか!?)…ぐっ!」

 

フェイクにかかり、横を通り抜ける大地を追いかけようとしたが、バランスを崩し、思わず左手を床に付いてしまう。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

火神を抜きさるのと同時にボールを掴み、そこからジャンプシュートを決めた。

 

 

花月 42

誠凛 41

 

 

『やり返した!!!』

 

『しかもあの火神相手にアンクルブレイク決めやがった!!!』

 

直前に身体能力を見せつけた火神。その直後のオフェンス、大地はお返しとばかりに技を見せつけた。

 

「…ちっ」

 

思わず舌打ちが飛び出る火神。

 

「(スピード自体は青峰とそこまで変わらねえ。むしろ加速性能の分、青峰の方が体感で速く感じるくらいだ。…だが、こいつは高速でのバックステップと減速力の分、とにかくやりづれー…)」

 

マックススピードを一瞬で0にしてしまう大地のブレーキ性能に、ドライブのスピードと同等のスピードで行うバックステップ。一瞬でスペースを作り、スリーを打ち。スリーを阻止しようとすればそこから再度発進し、抜きさられてしまう。元々は空と同じ、スラッシャータイプの選手であったが、インターハイでの初戦で覚醒し、積極的にスリーを組み込むようになり、そのスリーも、緑間程ではないにしても、高確率で決めてくる為、無視出来ない。

 

「(第1Qで慣れたと思ったが、ここに来て凄みが増してきやがった。…マジで厄介な奴だぜ…)」

 

思わず溜息が飛び出そうになる火神であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

再び始まったエース対決は、一進一退の様相となった。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

火神が決めれば。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

大地が決め返す。両チームのエースが得点を重ねていった。

 

 

『スゲー熱いエース対決だ!!!』

 

『どっちも譲らねえ! 勝負は互角だ!』

 

大いに盛り上がる観客。

 

「…いや」

 

一部の観客の声を、赤司が否定する。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

火神が中へと切り込む。

 

「…くっ!」

 

身体を張って食らいつく大地だが、火神は強引に突き進んでいく。

 

「らぁっ!」

 

フリースローラインを越えた所でボールを掴んだ火神がリングに向かって飛ぶ。

 

「…っ!」

 

すぐさま大地もブロックに飛び、火神とリングの間に割り込むが…。

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

「ぐっ!」

 

ブロックを物ともせず、大地を弾き飛ばしながら右手のボールをリングに叩きつけた。

 

 

『ピピーーーーーーーーー!!!』

 

 

『ディフェンス、プッシング、大地(赤6番)、バスケットカウントワンスロー!』

 

ディフェンスファールがコールされ、フリースローが与えられた。

 

「やはり、フィジカルと高さの差は大きい。綾瀬とて、決して非力な訳ではないが、今の火神を相手では大きいハンデと言わざるを得ない」

 

赤司が断言する。

 

火神の代名詞である跳躍力。そして鍛え上げられたフィジカル。この2つが大地を圧倒する。

 

「去年まではジャンプ力を生かして得意の空中戦を主軸としていたが、今の火神はファールを貰って尚決めるフィジカルの強さがある。今の火神であれば、俺はもちろん、キセキの世代(お前達)であっても空中戦では分が悪いかもしれないな」

 

その場にいる3人に告げる赤司。

 

「「「…」」」

 

3人は、言い返す事はしなかったが、何処か納得しない表情をしていた。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

フリースローを確実に決め、3点プレーを成功させる。

 

 

「…」

 

花月のオフェンス、大地にボールが渡る。

 

「…」

 

当然、火神が大地の前に立ち塞がる。

 

「…」

 

大地の姿勢が前傾姿勢になる。

 

「(来るか!?)」

 

カットインを警戒した火神がドライブに対応する構えを取る。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

大地が動く。しかし…。

 

「っ!?」

 

カットインではなく、後ろへとバックステップし、火神と距離を空けた。

 

 

――スッ…。

 

 

同時にボールを掴み、ステップバックで後ろへとステップ。ステップを踏んだ足でさらに後方に飛びながらシュート体勢に入る。

 

「(しまった! スリーか!?)」

 

これを見て火神がすぐさま距離を詰め、ブロックに飛んだ。だが、クイックリリースで放った大地の方が速く、ブロックが間に合わなかった。

 

「っ!?」

 

目を見開きながらリングの方へ振り向く火神。

 

「(スリーポイントラインから2m近く離れてんだぞ!? しかも、片足フェイダウェイ。入る訳がねえ!)」

 

外れると判断した池永はリバウンドに備える。

 

『…っ』

 

他の選手達、会場の者達がこのシュートの行方に注目する。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

ボールはリングを潜り抜けた。

 

 

『なにぃぃぃーーーっ!!!』

 

『何であれが入るんだよ!?』

 

大地のビッグショットに観客が頭を抱えながら大歓声を上げる。

 

 

「マジかよ…」

 

火神も唖然としながら苦笑したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「すっご…」

 

今の大地のプレーを見た桃井が口元を両手で塞ぎながら驚く。

 

「とは言え、綱渡りなのだよ。火神がスリーの警戒を僅かに緩めたから決められたが…」

 

「あんなスリーをポンポン決められんのはそれこそ緑間くれーだろ」

 

緑間と青峰は、紙一重のプレーだと断ずる。

 

「綾瀬も調子上がって来たみたいだけど、それでも火神の方がまだ優勢っぽいねー」

 

「ああ。スピードでは綾瀬、テクニックにでも僅かに綾瀬に分があるが、…やはり、繰り返しになるが、高さとフィジカルで勝る火神の有利と言わざるを得ない」

 

再び拮抗した戦いを始めた大地と火神。それでも紫原と赤司は、火神に軍配を上げた。

 

「(この第2Qはもはや、どちらかに流れが寄る事はないだろう。しかし…)」

 

赤司はコート上のとある一角、とある選手に視線を向けたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

花月のオフェンス。大地が中に切り込み、火神のブロックをダブルクラッチでかわし、得点を決めた。

 

 

第2Q、残り11秒

 

 

花月 53

誠凛 52

 

 

「おっしゃ、ナイッシュー大地!」

 

空と大地がハイタッチを交わす。

 

 

「…」

 

ボールを運ぶ新海。第2Q、残り10秒足らず。このオフェンスがこのQ、最後のオフェンスとなる。

 

「…」

 

新海の前に空が立ち塞がる。

 

「(1点リードで折り返し。ま、悪くはねえな)」

 

まずまずの試合展開にとりあえず納得する。

 

「――空!」

 

その時、大地が空に呼びかける。

 

「…っ!?」

 

僅かに集中を切らした空。大地の声で試合に意識を戻した時、目の前の新海がシュート体勢に入っていた。

 

「ちっ!」

 

慌ててブロックに飛ぶ空だったが、僅かに新海がリリースするのが速く、ボールに触れられず…。

 

「(数秒残して打って来た!? スリーは打ててもシューターじゃねえ新海が、スリーポイントラインから1m以上離れた位置から――)」

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

「っ!?」

 

空の予想とは裏腹に、ボールはリングの中心を潜り抜けた。

 

 

花月 53

誠凛 55

 

 

『おぉぉぉぉーーーっ!!!』

 

『早打ちのディープスリーを決めて来た!』

 

 

「何を意外そうな顔をしている」

 

「…っ」

 

新海の声に振り返る空。

 

「俺が相手なら、いつでも止められるとでも思ったか?」

 

侮蔑の籠った表情で告げる新海。

 

「昨晩、お前は言ったな。試合を白けさせるなと。その言葉、そっくりそのまま返してやるよ。俺を…俺達を舐めるな」

 

そう言って、新海はディフェンスに戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

『ビ―――――――――――!!!』

 

 

第2Q終了のブザーが鳴る。

 

 

第2Q終了

 

 

花月 53

誠凛 55

 

 

残り数秒残ってはいたが、花月はシュートまで持って行く時間はなく、第2Qは終了した。

 

「おーし!」

 

リードで試合を折り返す事が出来た誠凛。池永が喜びの声を上げ、ベンチへと戻っていく。

 

「決勝だぞ。気を抜くな」

 

ベンチに戻ってきた花月の選手達。出迎えた上杉が空を叱責する。

 

「…うす。すいません」

 

空はただただ謝罪の言葉を口にした。

 

「…分かっているならそれでいい。控室に戻る。迅速に行動しろ」

 

話を切り上げ、選手達に指示を出した。

 

「…厳しいね」

 

傍で話を聞いていた相川が横の姫川の耳に顔を口を近づけ、小声で話しかける。

 

「仕方ないわ。今のは完全に気を抜いていた神城君が悪いもの」

 

姫川も上杉の考えに同意であった為、この叱責は妥当とした。

 

「(もちろん、いくら隙があったとは言っても、あの位置から決めてしまった新海君も凄いのだけれどね)」

 

普通であればあの状況、残り時間を全て使い切って1本狙うのがセオリー。いくら、目の前の空が無警戒かつ、集中が切れていたとは言え、ただでさえ、確率が低いスリー。それをスリーポイントラインから1m以上離れた位置から、生粋のシューターではない新海は、リスクを負ってまで決めた。

 

「(決められる自信があったと言うよりも、絶対に決める、と言う強い意志を感じたわ。それだけ、この決勝に新海君は懸けているんだわ。新海君だけじゃない、誠凛の選手全てにその意思を感じたわ)」

 

誠凛には火神と言う、圧倒的な個を有しているものの、それでもチーム規模で比較すれば、黒子テツヤがいなければ花月の方が上回っていると見てもいい。途中、その黒子の介入や、空の離脱があったにしても、誠凛リードで試合を折り返している。

 

「(昨日の試合から感じていた神城君への違和感の正体がようやく分かったわ)」

 

空は一見気まぐれな性格に見えて、締めるべき所は締め、試合になれば相応の集中力を発揮する。ただ、昨日の準決勝と今日の決勝の前半戦の空は、決して集中してなかった訳ではないが、何処か、いつもの空らしく(・・・・・・・・)なかった。では、何故そうなったのか。昨日の試合に関しては準々決勝での、主に眼の疲労によるものかと思っていたのだが、昨晩の新海と池永と夜道であった時の事も含め、それがバズルのピースのようハマり、1つの答えが辿り着く。

 

「最後の1本で分かったでしょ? いい加減、目を覚ましなさいよ」

 

空の背中に向け、姫川は呟いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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・・・・

 

 

ハーフタイムとなり、花月、誠凛の両チームがコートから控室へと移動し、コート上から選手達が一時的にいなくなった。

 

「あれが、俺達と入れ替わりに高校バスケ界に現れた、次世代のキセキか…」

 

試合を観戦していた元海常、小堀。

 

「神城空、綾瀬大地。キセキの世代と互角にやり合ったって噂を聞いた時は耳を疑ったが、噂は本当だったな」

 

同じく元海常の森山。

 

「綾瀬大地、あのスピードで前後に緩急を付け、挙句にスリーを決めるとは、信じられん」

 

シューターである森山。大地のバックステップを駆使したクイックリリースでのスリーに驚きを隠せないでいた。

 

「神城空。とんでもないスピードだな。観客席から見ているから目で追えているが、もし、コート上でマッチアップをしていたら、反応すら出来るかどうか…」

 

空のクイックネスに小堀も森山同様、驚きを隠せないでいる。

 

「…」

 

胸の前で腕を組みながら静かにコートを見つめている笠松。

 

「神城は、タイプ的には笠松と同じタイプだな」

 

「…もっとも、スピードとテクニックは、俺より遙かに上だがな。おまけにスリーもありやがる」

 

森山の言葉に、笠松が苦い表情で頷く。

 

「(…だが、何処か引っ掛かる。今日の神城は、確かにボール運びも丁寧で、教科書通りのゲームメイクではあるが、夏見た時は、もっと派手で意外性のあるプレーヤーだったと思ったんだがな…)」

 

引っ掛かりを覚える空のプレーに、笠松は首を傾げたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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・・・・・・・

・・・・

 

 

『来た来た!!!』

 

『待ってたぜ!!!』

 

ハーフタイム終了の時間が迫り、両校の選手達がコートへと戻って来る。それぞれベンチに入り、各5人の選手がジャージを脱いでいく。

 

「行くぞ、花月ー、ファイ!!!」

 

『おう!!!』

 

円陣を組んだ花月。空の掛け声に合わせ、選手達が応え、5人の選手がコートへと足を踏み入れる。

 

 

「誠凛ー、ファイ!!!」

 

『おう!!!』

 

同じく誠凛も円陣を組み、火神の掛け声を合図に選手達が声を張り上げた。

 

 

OUT 竜崎

 

IN  生嶋

 

 

誠凛は選手交代無し。対して花月は竜崎を下げて、生嶋を投入。スタメンに戻す。

 

生嶋が審判からボールを受け取り、空にパスを出し、第3Q、後半戦が始まった。

 

 

『おぉぉぉぉーーーっ!!!』

 

同時に観客達の歓声が上がる。

 

 

「…」

 

ゆっくりとドリブルを始める空。空の前に新海がディフェンスに立つ。

 

「(何だ? さっきまでと雰囲気が…)」

 

空を纏う空気が変わった事を感じ取る新海。

 

「…ふぅ」

 

一息吐いた空が動く。

 

「(来る! こいつが得意のクロスオーバー! 止め――)」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

読み通り、クロスオーバーを仕掛けた空。しかし…。

 

「っ!?」

 

そんな新海を、空が置き去りするかのように一瞬で横を駆け抜けた。

 

 

――バス!!!

 

 

一気に加速した空はそのままリングまで突き進み、レイアップを決めた。

 

 

花月 55

誠凛 55

 

 

『っ!?』

 

ヘルプに向かう事すら出来ない程の空のスピードに目を見開く誠凛の選手達。

 

「悪かったな。さっきは不甲斐ないプレーして」

 

「…っ」

 

唖然としている新海に対し、ディフェンスに戻る空が話しかける。

 

「おかげで目が覚めた。こっからは、エンジン全開で行かせてもらうぜ」

 

そう言い、空は自陣に戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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・・・・

 

 

「1本、行きましょう!」

 

仕切り直し、ボールを運ぶ新海。

 

「…っ!?」

 

フロントコートまでボールを運んだ新海の前に、空が立ちはだかる。その時、新海に、強烈なプレッシャーが降りかかる。

 

「くっ!」

 

身体がぶつかり合う程に距離を詰め、激しくプレッシャーをかけながらディフェンスをする空。思わずボールを止めてしまう新海。

 

「(第2Qまでとはまるで別人だ! 気を抜いたら取られる!)」

 

激しく当たり、隙あらばボールを狙う空を前に、ボールをキープするだけで手一杯となる。

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

「っ!?」

 

空の伸ばした手が、ボールを捉える。

 

「おっしゃ速攻!」

 

すぐさまルーズボールを抑えた空がそのまま速攻に駆け上がる。

 

「くそっ! 戻れ! ディフェンス――っ!?」

 

声を上げ、先頭を走る空を追いかける新海。

 

「(追い付けない! それどころか、引き離される!?)」

 

空を追いかける新海。しかし、追い付けない。ドリブルをする空に対し、ボールを持たずに追いかけているはずの新海との距離は、縮まる所かむしろ、広がっているのだ。

 

「イヤッホー!!!」

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

先頭を走った空がそのままワンマン速攻を決め、ワンハンドダンクを叩き込んだ。

 

 

『出たぁぁぁっ!!! 神城のダーンク!!!』

 

空のダンクに、会場が割れんばかりの歓声が上がる。

 

 

「…ようやく、目が覚めたみてーだな」

 

青峰がボソリと呟く。

 

「元々、神城は尻上がりに調子を上げる傾向ではあるが、ここ2試合は、調子に乗り切れていない傾向があった」

 

緑間が昨日と今日のこれまでの試合の空を振り返る。

 

「私もそれ思ったけど、やっぱり、洛山に、赤司君に勝った事が理由?」

 

同じ事を想っていた桃井が原因の一端を口にする。

 

「それもあるだろうが、1番の理由は、あいつは、その時のモチベーションに応じて、パフォーマンス能力が変わるタイプだからだ」

 

1番の要因を語る青峰。

 

「目の前の相手が強ければ強い程、実力を…時に実力以上の力を発揮する。逆に言えば、相手が弱ければ、実力が出ねーって事だ」

 

「弱いって、新海君だって、全国レベルで見ても優れたプレーヤーなのに…」

 

青峰の解説に、桃井が首を傾げる。

 

全国レベル(・・・・・)でそうであっても、神城レベル(・・・・・)じゃ、話にならねえよ」

 

桃井の評価に、青峰がピシャリとぶった切る。

 

「この第3Q、誠凛にとっては試練の時間となるだろう。取り返しの付かない点差を付けられるか、あるいは、黒子を引きずり出されてしまえば、誠凛は負ける」

 

赤司はそう結論付けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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・・・・

 

 

誠凛のオフェンス。ボールを回してチャンスを窺う。

 

「っしゃぁ!」

 

ボールを受け取った池永がそのままボールを右手で掴み、リングに向かって飛び、ボールを叩きつける。

 

 

――バシィィィッ!!!

 

 

しかし、ボールがリングに叩きつけられる直前、後ろから伸びて来た手に、ボールは弾かれた。

 

 

『また神城だ!!!』

 

ブロックしたのは空。

 

 

「(なっ!? こいつ、さっきまでトップの位置にいたはずだろ!? 何でブロックに追い付けんだよ!?)」

 

リングからもっとも離れた位置で新海のマークをしていたはずの空にブロックされた事に目を見開く池永。

 

「空坊、張り切るのええけどな、全部1人でやらんでええで? 少しは俺らにも出番回しぃや」

 

リバウンドを抑えた天野が空に苦言を呈す。

 

「もちろん、俺の手が回らない所は、頼みますよ」

 

にこやかに答え、天野から受け取ったボールを運び始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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・・・・

 

 

「(まずいわね…)」

 

ベンチにて、試合を見守っているリコが、苦い表情をしながら焦る。

 

第3Q、ある程度、追い込まれる展開は予想出来ていた。空が尻上がりに調子が上がる傾向も事前に調べが付いていたので、先程のハーフタイムの折にも、その事は選手達に告げていた。だが、空がここまで調子を上げてくるのは予想外であった。

 

「(第2Q終了目前の新海君のスリーが、彼の目覚めさせちゃったみたいね)」

 

とは言え、新海を責める事は出来ない。新海は選手として当然のプレーをしたのだから。

 

「ここが正念場よ。皆、踏ん張るのよ…!」

 

願うように呟いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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・・・・・・・

・・・・

 

 

第3Q、残り7分48秒

 

 

花月 61

誠凛 55

 

 

「(まずいな…)」

 

胸中で焦る火神。

 

第3Qが始まって、未だ点が取れていない誠凛。空の躍動により、花月が確実に流れに乗り始めていた。

 

「(黒子に頼れねえ今、俺が何とかしねーと…!)…こっちだ!」

 

右ウィング付近で火神がボールを要求。

 

「頼みます!」

 

すかさず新海は火神にボールを託した。

 

「…」

 

ボールを持った火神の前に立つのは大地。

 

「…」

 

小刻みにボールを動かし、右足でジャブステップを踏みながら火神が牽制する。

 

 

――スッ…。

 

 

その時、火神がシュート体勢に入る。

 

「(スリー!?)」

 

これを見て、大地がすぐさま火神との距離を詰める。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

しかしこれはフェイク。火神はドライブで中に切り込んだ。だが…。

 

「行かせません!」

 

大地もこれを読んでおり、距離を詰めるのと同時にバックステップをし、切り込んだ火神を並走しながら追いかけていた。

 

「関係ねえ!」

 

火神は、並走する大地がいてもお構いなしに切り込む。そしてフリースローラインでボールを掴み、リングに向かって飛んだ。

 

「レーンアップ!?」

 

フリースローラインで踏み切った火神を見て、思わず声が飛び出る生嶋。

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

圧倒的な高さと滞空力から、火神がリングにボールを叩き込んだ。

 

 

花月 61

誠凛 57

 

 

『出た!!! 火神の代名詞のレーンアップ!!!』

 

火神の大技に、観客が大興奮しながら声を上げる。

 

 

「っしゃぁ!!!」

 

拳を握りながら火神が喜びを露にする。

 

「火神さん…!」

 

第3Q始まって、ここまで無得点だった誠凛。それだけに、この停滞する状況を打開する火神のプレーに安堵する新海。

 

 

「…」

 

ボールを運ぶ空。

 

『…』

 

ここまで、第3Q全ての得点を決めている空。誠凛の選手達は、空の一挙手一投足に注視している。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

空が一気に加速し、カットインする。

 

『来た!!!』

 

カットインする空に反応する誠凛の選手達。事前にマンツーマンでマークをしていた誠凛の選手達だったが、カットインする空に対応出来るよう、インサイド気味にポジション取りをしていた。カットインする空に対し、誠凛の選手達が、包囲にかかる。

 

 

「あーあ、それこそ思う壺じゃねえかよ」

 

呆れ気味に呟く青峰。

 

 

――スッ…。

 

 

包囲される直前、空が視線をリングに向けたまま、ビハインドパスを出す。

 

「視界は良好」

 

ボールは、左アウトサイドに展開していた生嶋の下へ。

 

「っ!?」

 

生嶋のマークをしていた朝日奈が目を見開き、慌てて反転して生嶋のチェックに向かう。しかし、それよりも速く生嶋がボールをリリース。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

放たれたボールは、リングの中心を的確に射抜いた。

 

 

花月 64

誠凛 57

 

 

『遂に出た! 生嶋のスリー!!!』

 

『ここでスリーは痛い!』

 

 

「ナイスパスくー」

 

「ようやく来たな。空いてればどんどんボール回すから頼むぜ」

 

空と生嶋がハイタッチを交わす。

 

 

「これが花月のオフェンススタイル。神城が個人技で点を取り、自身にマークが集まればそこからパスを出す」

 

赤司が解説をする。

 

「神城はあれで、フリーの選手を見つける視野の広さと、そこへ出す為のパスコースを見つける事に長けている。この形が出てしまえば、止めるのは難しいのだよ」

 

緑間が続いて補足する。

 

「かと言って、神城君はスリーもあるし、綾瀬君と生嶋君と言ったシューターもいるから、ゾーンディフェンスも組めない…」

 

情報を精査した桃井がこれに続く。

 

「流れを切る為に火神が仕掛けたが、今の花月はビッグプレーの1本や2本じゃ、止まんねえぞ。どうする?」

 

問い掛けるように青峰が呟いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

ボールを回す誠凛。どうにかシュートチャンスを窺う選手達だったが…。

 

「…ちっ!」

 

思わず舌打ちが飛び出る池永。なかなかシュートチャンスを作れない現状に、苛立ちを隠せないでいた。

 

「池永!」

 

新海が決死の声を上げる。ボールを持つ池永に対し、大地がボールを奪いにチェックに向かっていた。

 

「くそっ!」

 

たまらず池永は新海にボールを戻す。

 

 

――バシィィィッ!!!

 

 

ボールが新海の手元に収まる直前、そこへ飛び込んだ空がボールを弾いた。

 

『アウトオブバウンズ、誠凛()ボール!』

 

ボールはラインを割ってしまう。

 

「ちっ、惜しい」

 

悔しがる空。

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

『チャージドタイムアウト、誠凛!』

 

ここで、誠凛が申請したタイムアウトがコールされ、選手達がベンチに戻っていった。

 

 

花月ベンチ…。

 

「よしよし! いい調子だぞ!」

 

戻ってきた選手達を、菅野がタオルとドリンクを配りながら労った。

 

「とは言っても、点差はまだ7点。誠凛相手じゃ、あってないような点差です」

 

菅野の喜びとは対照的に、空は表情を変える事無く、タオルで汗を拭いながら冷静に返す。

 

「ここが正念場だ。ここで試合を決めるつもりで攻め立てろ」

 

『はい!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

誠凛ベンチ…。

 

『…』

 

活気づいていた花月ベンチとは対照的に、誠凛ベンチは静まり返っていた。

 

「監督、どうしますか?」

 

沈黙を破るように河原がリコに尋ねる。

 

「…」

 

リコは顎に手を当てながら思案する。

 

「ここはもう1度、黒子を――」

 

「それはダメよ」

 

降旗の提案に、リコが遮るように却下する。

 

「黒子君を投入すれば、確かに流れは変えられる。逆転し、点差もある程度付けられるかもしれない。…だけど、第4Qにトドメ刺されて終わりよ」

 

粛々と理由を説明するリコ。

 

「…」

 

当の黒子も、何も言葉を発しない。

 

「この流れを生んでいるのは、間違いなく神城君よ。この流れを止めるには、神城君を止める他ないわ」

 

『…』

 

リコの言葉に黙り込む選手達。その事は、リコに言われずとも理解している。しかし、現状、それが出来ない。

 

「…っ!」

 

新海が悔しさのあまり、拳をきつく握り、きつく歯を食い縛る。本来、それをやらなければならないのは新海の役目であるからだ。

 

「俺がやります」

 

その時、火神が声を上げる。

 

「神城相手に、フリーの相手を作るダブルチームは逆効果。なら、俺がやるしかないッスよ」

 

手を鳴らし、首を鳴らしながらそう続ける。

 

「…」

 

その提案を、リコは顎に手を当てながら思案する。

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

ここで、タイムアウト終了のブザーが鳴る。

 

「監督」

 

「…分かったわ。任せるわ火神君」

 

催促する火神に、リコは了承した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

タイムアウトが終わり、誠凛ボールで試合が再開。

 

 

――ピッ!!!

 

 

これまで通り、ボールを回しながら機を窺う誠凛。

 

「(相変わらず、シュートチャンスが作れない…!)」

 

やはり、シュートチャンスを作れないでいた。誠凛のトライアングルオフェンスに慣れて来たのもあるが、それ以上に要因となっているのが…。

 

「(神城と綾瀬のチェックが速過ぎる!)」

 

苦悶の表情をする田仲。

 

基本的にマンツーマンでディフェンスをしている花月だが、空と大地は状況に応じて自身のマークを外して動いている。スピードと運動量が豊富な2人が絶えず動き回る事によって、誠凛はシュートチャンスを作れない。

 

「(まるで、7人にディフェンスをされてるみたいだ…!)」

 

朝日奈は、花月のディフェンスに、そう感想を抱いたのだった。

 

「時間がないぞ!」

 

ベンチから福田が声を上げる。シュートクロックが残り僅かとなっていたのだ。

 

「…ちっ」

 

たまらず、朝日奈はスリーを放つ。

 

「(リズムはバラバラ、シュートセレクションも悪い。これは外れる)…リバウンド!」

 

外れると見た生嶋が声を上げる。

 

 

――ガン!!!

 

 

言葉通り、ボールはリングに弾かれる。

 

 

――バシィィィッ!!!

 

 

「もろたぁっ!!!」

 

リバウンドボールを、天野が抑えた。

 

「空坊!」

 

「あいよ!」

 

すかさず空にボールを渡し、空がボールを運ぶ。

 

「…おっ♪」

 

フロントコートまでボールを運ぶと、空が眼を輝かせながら笑みを浮かべる。

 

「…止める」

 

目の前には、新海ではなく、火神が立っていたからだ。

 

 

「かがみんが神城君のマークに入った!」

 

桃井が声を上げる。

 

「相手に応じてパフォーマンス能力を変える神城を前に、火神なんか置いたら、余計に調子付かせるだけだ。…裏目に出なきゃ良いけどな」

 

青峰が呟いたのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

始まった後半戦…。

 

目が覚めた空が猛威を振るい始めた。

 

そんな空を止める為、火神が空の相手の名乗りを上げ、立ち塞がる。

 

この選択が吉と出るか凶と出るか…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





いやー、WBC、熱かったですね!

国際試合で日本が見事、勝利を上げ、結果こそ予選リーグ敗退ですが、初のヨーロッパ勢を撃破し、日本の夜明けに相応しい内容でした。負けた試合も、何をやっても勝てない、と言った内容ではなく、可能性を見せた試合に個人的に見えたので、ここから先、日本のバスケは明るいのではないでしょうか…(^_^)/

サッカー、ラグビーと、日本が強豪国相手に勝つ事は不可能と言われ、長年煮え湯を飲まされて来ましたが、近年、強豪国相手でも勝利をもぎ取れるようになりました。バスケは正直、難しいかなと、思っていましたが、遂にやってくれました!

ここに、八村選手が加わる事も考えると、パリ五輪には期待しかありません!

っと、作品と関係ない事ばかり後書きに書いて、申し訳ありません…m(_ _)m


この興奮を、是非とも共有したかったので…(;^ω^)

感想アドバイスお待ちしております。

それではまた!
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